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2017年10月11日

11 《ひのくに物語'17》 夜明け、そして契り1  A面〜素描(デッサン)〜の章



架空の王国を舞台にした
愛と夢の一大ロマン
「ひのくに物語」──
仙人草♪


国王、馨の
今日は結婚式のシーンです。
伝統的な八尾伽奈国(ひのくに)の
婚礼の儀式。
馨は未来を
踏み出すことにしましたが…★



夜明け、そして契り




 婚礼の日まで、私は妃となる女性と会ったことはなかった。事前に会う日を作ると、うるさかった母には、はっきりと断った。決めたからには、すぐに事を進めたかった。
 私はその女性の名前しか知らなかった。妃となる女性は、八尾伽奈(やおかな)八族の中の、王の家系である日向(ひゅうが)家と陽宮(ひのみや)家を除く家系から選ばれることになっていた。といっても、それは形式上のことで、日向・陽宮の出であっても、八族以外の出であっても、然るべき家に養女に入って嫁ぐということも稀ではなかった。
 妃として母たちが選んだのは、古くは軍師、外交の家系であり、数代前から米国住まいをしている望宣(もうせん)家の直系の息女だった。私も留学時代、その父と兄とは付き合いがあった。妹には会ったことはなかったが。
「そうね。あなたが留学していた頃、彼女はこの国にいたと思うわ」と、母からは聞いていた。
 国王の婚礼というものは、そこに至るまでに、気の遠くなるほどに面倒な手順があるようだった。伝統的なものであり、宗教にまつわる大切なものであると思うので、はしょることはできなかったが、不必要に贅沢な婚礼の支度は、改めさせ控えさせた。
 王家の婚礼は、伝統宗教に沿って行われ、基本的には両親と極少数の身内だけが、参席できる神聖なものだった。
 新郎新婦はその晩初夜を迎えて、次の朝家族と挨拶をする。今でこそ、そのようなしきたりに則った婚礼は少なくなったが、昔であれば、花嫁はその時本当に初めて婚家の家族と顔を合わすことも少なくなかったという。
 私たちの場合は、朝十時に、国民への挨拶という大切な行事がある。そして、その夜がいわゆる結婚披露パーティーとなる。

 婚礼の朝、皇太后となった実母、恵美が私の許に来て言った。「美しい花嫁姿よ。」
「妃は風邪を引いていると聞きましたが」
「ええ。数日前に熱を出されたんです。今日は回復されたようでよかったわ。まだ風邪声でしたが」
「今はまだ式まで余裕があります。時間までゆっくりくつろがれるように伝えてください」
「優しいこと」母は言った。「花嫁のご家族の到着が遅れるようよ。強風で飛行機が飛ばないようで。式は予定通りに進めます。主税(ちから)たち夫婦が代理で参加してくれるから」
 私たちは伝統的な婚礼の衣装に身を包んだ。
 横に座った妃の顔は、ほとんど見なかった。たとえ見たとしても、花嫁は頭から、西洋で言うベールあるいは中東女性のブルカのような、白い布で覆われていたし、彼女は俯きがちだったから、よく見ることはできなかっただろう。
 契りの杯を交わす際に、向かい合ったが、おしろいで覆われた白い肌が、ちらっと目に入っただけだった。
 私はそれよりも、皇太后が泣き出したことの方が気になった。気丈な母が泣くのを、初めて見たかもしれなかった。私の婚礼を喜んでくれているのだろう。
 母につられて、参列していた平和(ひらなぎ)の母(養母)と、主税叔父の妻となった菫の実母、薔子(しきこ)も泣き出した。花嫁も涙を拭っているようだった。私の心はなぜか女性たちの涙で洗われたように、平安になった。
 こうして、無事に婚礼を終えた。古式に倣って、新郎新婦は別々の部屋で着替えて食事を取り、夜までの時間を過ごした。
20

新節がスタート、
これがA面〜素描(デッサン)〜の章の
最終節となります。
どんな結末となるか、
最後までお付き合いください。
引き続き、↓次の回もご覧ください。






満月の夜?


伝統的な婚礼の後は、
初夜を迎える馨ですが…、
さて、首尾は?★


 日がすっかり落ちてから、寝所に案内された。広い部屋の入り口以外には、灯りというものがなかった。屏風で仕切られた奥に、寝具が準備されていた。王妃となった花嫁は、その傍らに座って、静かに待っていた。暗くて何も見えないほどだった。
 私は人を呼び、灯りを付けるように言った。
「今夜は、そのままで過ごされるようにとのことです」
「まるで暗がりではないか。王室のしきたりは、どうも無意味なものが多いようだ。今夜だけだ。不便だが我慢はできよう」
 私は明かりを求めて、窓の障子を開けてみた。窓ガラスの向こうの空は、月もなく星もまばらだった。私はあきらめて障子を閉めると、王妃の元に行った。
「今日は疲れたであろう」と尋ねると、彼女は掠れた声で、「いいえ」と答えた。
「これから、よろしく頼む」と、私は言った。「はい」と言った彼女の声はやはり嗄れていた。
 私は更に彼女の近くに行き、手を取った。「では、お祈りする」と、私が言うと彼女は頭を下げた。国王の祈りを側で聞くことは畏れ多いことだと、誰もが思うようだ。よく、菫がそのように身を屈めて私の祈りを聞いていたのを思い出した。
 私は、真摯にただこの国と民の未来の安寧を祈り、夫婦の契りを持つことになったことを感謝し、彼女を愛していくこと、そして国王としての使命を全うしたいという思いを祈った。

 暗がりの中で過ごすことは不思議だった。何か秘密のことをこっそりしているような、感覚があった。
 ずっと昔、物置の中で、菫と遊んだ時の事を思い出した。ゾクゾクとしたスリル、息を潜めて隠れて、脅かしたこと。一緒に過ごすことが、キリがないくらい楽しかった。
 それにしても、この暗がりは、目が慣れてきても、何も見えなかった。
 妃の手は、私の手の中にあった。私は、彼女を抱き寄せた。
 両手で顔をまさぐり、キスをした。
 瞬間によぎったのは、菫に口付けした時のことだった。たった一度のキスを私は今も覚えていた。
 その時とまるで同じ感覚だった。今腕に抱いている王妃が、菫のように思えてきた。私は愕然となった。私の細胞の全てが菫のことを覚えていて、彼女を求めていた。
 今日婚礼の儀式を受けた愛すべき相手と体を寄せ合いながらも、別の女性を求めている、自分の不謹慎さが我慢ならなかった。
 とはいえ、はっきり見ていない妃の顔は思い浮かべることもできないのだった。愛そうと決めて、すぐに愛することはできない。妃には申し訳ないが、じっくり時間を掛けていくしかないだろう。菫の身代わりのように愛することしかできないとしても。
 私は彼女の体を放し、言った。「君は風邪を引いているんでしたね。早く休みましょう。明日の予定もありますから」
 ケインの手の者に追われて、夜中(じゅう)逃げ回ったことがあった。ようやく逃れて、白々と夜が明けてきた時のホッとした思い。
 あの頃は、命が惜しかった。今は…。国の為に生きると決めた。だから、命も捧げると。それは詭弁だったのかもしれない。ただ命が惜しくなくなっただけなのだ。
21

馨は今でも菫を忘れられないようです。
こうやって、
初夜は過ぎてしまいますが…。

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プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に小説を書き始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
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2017年10月10日

10 《ひのくに物語'17》 夢、そして目覚め3  A面〜素描(デッサン)〜の章



架空の王国を舞台にした
愛と夢の一大ロマン
「ひのくに物語」──
訪れ・・・


このシーンのために
この物語を書いたとも言える
kuri-ma渾身の回。
本日、必読の
感涙シーンです。
菫の死を馨は乗り越えられるのか?!★



 私は無事即位して、国王となり、国政も主税叔父や側近に守られながら、こなしていた。菫を失った悲しみを埋めるために、何かに没頭しなければやりきれなかったから。
 私の即位と同時に、母も皇太后となった。亡き父王の妃として初めて正式に認められたのだ。

 菫が亡くなって、二年がたとうとしていた。
 私は命日に先立って菫の墓前で、神に祈り、そして心の中で彼女に別れを告げた。妃を迎える決意をしたからだ。
 菫に話し掛けてみると、彼女の言葉が胸に蘇った。「私はずっとあなたのお側にいます」
「君は約束を破ってばかりだ。もう、側にいてはくれないのか?」と、私は声に出して言った。二年たっても、菫との思い出だけを糧に私は生きてきた。ここに来て、一気に様々なことが思い出されて、胸に迫った。
「私も君との約束の全ては守れない。国王になって、国を立て直すという約束を守る為に、もう一つの約束を放棄させてくれ。君ではない別の誰かを伴侶にすることにした。王に後継者がいなければ、また国が割れるだろう?」
 もう一生の分を流し尽くして涸れたかと思っていた涙が、また泉のように起こってくるのをそのままにしながら、私はまた話し続けた。
「そういえば、君が言っていた通りになるわけだ。他の女性が隣に座ると。私が何度求婚しても、うんと言ってくれなかった。でも、わかっている。君の本心は私を求めていたはずだ。一言でいい。君の口から聞きたかったよ。私を『愛している』と」
 菫が私を愛しているのは分かっていた。その言葉を聞けなかったのは、今更ながら心残りだった。そう言わせてあげることのできなかった自分自身がふがいなかった。そして、頑なだった彼女がほんの少しだけ恨めしく、後は不憫でしかたがなかった。
「ねぇ、君には答えがわかる?この世で結ばれなかった愛は、あの世でも実らないのかな?
 泣くのは今日だけだよ、心配しないで。君を愛せなかった分、妃を愛することにする。そして国民のことを考えるよ」
 そう菫の前で宣言することは、すでに心に決めたことであっても、自分の身となっていたものに決別するような痛みがあった。
 心の内に秘めた思いも丸ごと、さらけ出し、搾り出し、根の生えたような思いも、すべてその根元から抜き去った。何も残らないくらいに。
「私は何も持っていないものはないんだ、一番大切なものの他はね。持っているもの以上は望むことはできない。…本当は君の他は何もいらなかったのにね」
 そのように、思いを吐き出してみると、今までまとわりついて離れることがなかった、辛さ、悲しさ、寂しさ…、どうしようもなかった気持ちが、一緒に拭い去られたような新鮮な感覚になった。
 そして私は再び神に祈った。
 この二年近く、形式的な祈りだけで心から神に祈ることが実はできなかった。久し振りの、祈りだった。
 すると、全部吐き出して、空っぽになった心に、何かが満ちてきたのだ。
 不思議なことに、菫がすぐ近くにいるような気がしてきた。彼女の魂が側にいるのかもしれないと思った。
 そして、何か浮き立つような、素晴らしいことが起こるのを待つような予感を感じて、仕方がなかった。
19

夢、そして
目覚めた現実の悪夢についての節でした。
次回からは
新節となります。
結婚を決めた馨に待つ、未来は?!

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2017年10月09日

9 《ひのくに物語'17》 夢、そして目覚め2  A面〜素描(デッサン)〜の章



架空の王国を舞台にした
愛と夢の一大ロマン
「ひのくに物語」──
枝葉末節。


まさか・・・
夢が現実のことに?!
馨と菫に悲劇が襲いました★


「菫、死ぬな、死んではいけない」
 私は彼女の体を揺すり、声を掛けたが、もうその目が再び開くことはなかった。嘘だと思いたかったが、私の心の隅で『やはり』という思いが起こった。
 そう、私は夢の中で何度もこんな場面を体験していた。しかし、それが現実に起こると、こうまで生々しく、心が切り刻まれるような痛みが伴うものだとは。
 私も重症を負っていた。その痛みも心の痛みに比較できなかった。
 夢がとうとう現実になってしまった。絶対に彼女を守るとその度に心に固く誓っていたのに、それは夢のシーンのようにあまりに突然で、気づいたら私をかばった菫が崩れるのを支えるしかできなかった。
 どうして、私は彼女を守れなかったのか。どうしても、こうなる運命だったのか。
 今日までしてきたことは、全てこうならない為だったというのに。こんな悲劇的な終わりではなく、幸せにしてやりたかった。
 私は何かを祈っていた。菫のためになのか、この国のためなのか、とにかく祈らずにはいられなかった。
 昂が走り寄って来た。大声で人に指示しながら。実際の時間では数十秒のことだったのだと思う。
 菫と私はそれぞれに運ばれた。担架に乗せられた菫の腕がだらりと垂れるのが見えた。
 祈りながら、私の意識は遠のいた。

 気付いた時、私は病室に一人だった。
 警護の武官が、嬉しそうに声を掛けた。「気付かれましたか」
 私は数日間意識がなかったらしい。
 連絡を受けて、昂と養母がやって来た。
 その日は菫の告別式だったのだと、後で知った。二人もその会場から駆けつけて来たのだった。

 菫の死を受け入れるのは、辛いことだった。
 私に関わったがために、彼女は人並みの幸せすら味わうことが出来ず、犠牲にならなければならなかったのだ。
 国など負う立場でなければ、二人だけでささやかでも暮らすことが出来たのに。
 いや、叶わないことだった。
 どちらにしても、菫がそれを受け入れることはなかっただろう。彼女は私が国の為に立つことを願っていた。いつでも身を引くつもりでいた。
 私の愛を受け入れようとしないのは、私を誰より愛しているからだとわかっていた。
 離れていた頃を思えば、ここずっと、近くで過ごせるようになったのは嬉しかった。私の立場は常に公的であり、自由に愛し合うことはできなかったとしても、頻繁に目にすることが出来、声も聞くことも出来た。
 菫には、ようやく少女の時のような笑顔が戻って来ていた。
 ある時、私がプロポーズのつもりで言った言葉に、菫は思いがけずその花のような笑顔で即答してくれた。「はい」と。「私はずっとあなたのお側にいます。私の命がある限り、ずっとお近くで、お仕えすることに決めました」
 しかし、続けて菫は言った。「将来、あなたの隣に座る方が現れたら、その方にもお仕えするつもりです」
「私の隣に座るのは君だ、菫・薫里」
「それは許されないことです」
「どうしてそんなことを?誰にも文句は言わせない。私が望むのだ。君以上の女性はいない。私の母の折り紙付だよ」
17

引き続き、↓次の回もご覧ください。






In the early morning rain.


死んでしまった菫。
彼女との回想シーンから★


「私は私生児です」
「それなら、私も同じだ」
「私はあなたに捧げる最も大切なものを持っていません」
「最も大切なもの?持っているではないか」
「私は既に貞操を失くしているのに」と、微かな声ながら、はっきりと菫は言った。
「私はそうは思わない。少女の頃から、君は私を愛し続けて、誰にもそれを奪われはしなかった。心の貞操というものがあるだろう?」
 私は、彼女の心を解こうと、あらゆる言葉を使って試したが、彼女は一筋縄ではいかないくらい頑なだった。
 私は彼女の手を取り、そっと抱き寄せた。菫の目には涙があった。
 私は言った。「いいよ。君が私の側にいてくれると約束してくれたことで今は満足するよ。私は君だけを愛しているんだし、君もそうだろ?」
 菫は答えはしなかった。Noと言わなかったということは、Yesということだ。
「覚えておいてくれ。私は君を生涯の伴侶にと考えている。私が国王になったとしても、君以外にはあり得ない」
 菫を想う時、嬉しさや温かさを感じると共に、いつも何か切なかった。私たちの秘められた境遇のせいかもしれないし、菫が人知れず流してきた涙のせいかもしれない。
 何度心に言い聞かせても、もう菫がこの世にいないことは納得できなかった。
 夢と違うことは、現実は覚めることがないということ。終わりのない悪夢のような現実がずっと続くのだ。
 私は祈ることも出来なかった。祈れば、神をも恨み呪いそうだったから。

 毎日を、涙と後悔で暮らしていた時、私の実母がやって来た。彼女は私に慰めの言葉らしい言葉は掛けなかった。
「あなたの即位の日が決まったそうね」
「ええ」
「主税がこぼしていたわ。あなたが腑抜け状態をいつまでも抜け出さないと」
「…」
「もう、地固めもすっかり出来ているのよ。今即位しなければ、時を失うわ」
「…わかっています。私の命はすでに国に捧げているんだ。国王になるのがいいというなら、なるまでです」
「今のままでは、国民が寄せている期待を裏切るかもしれないわ」
 母の言葉は厳しいものだった。わかってはいたが、私は菫の死によって、身が削がれるような辛さの中にいて、日々をその傷を舐めることすらなく、ただ過ごしていたのだ。国の状況を考える余裕もなかった。
 母は言った。「あなたが立ち直る為に、一番の話を持って来たわ」
「?」
「最高のお妃候補がいるのよ。あなたさえよければ、そのまま話を進めるわ」
 私は首を振った。そんなことが考えられるはずがなかった。
「よくそんな話が出来るよね。菫を妃にふさわしくと一から仕込んで、あれほど可愛がっていたのに」
「菫さんは、もちろん素晴らしい女性だったけれど、最後まであなたと結ばれることを拒否していたのよ。あなたは将来を考えなければならないわ。国王になって一人でいるつもり?また後の時代に心配を残したいの?大丈夫。とても美しくて聡明な女性なのよ…」
 母の話す言葉は流れるように、私の心には残らなかった。
 私が今まで国の為にと、耐えて、忍んで、頑張って来られたのは、実は菫がいたからだ。国の為などではない、彼女の為だった。ただ菫が私に願っていたようになりたかった。

18

馨はいよいよ
王様への階段を登っていきます。
菫の死を乗り越えられるのか?!

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In the early morning rain.
by (C)芥川千景さん
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ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
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