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2017年12月09日

8 《あの人は広い傘をもっている'17》 Sean6 抜け駆け(後)



小説 ▼△あの人は
広い傘をもっている△▼
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これは、やはり抜け駆けでしょうか。
百合子は一体
どんなつもり?!
“さと”の祖母、母、そして
美里の会話から★


「なんで、うちに言うんですか?」と、芳子は気持ちが治まらないようだった。
「佑太君が美里になついているからだろ」と、マツは言った。
「お祖母ちゃん、まさか、佑太君もうお店に来ないとか?」と、思わず心配になって美里は言った。
「そんなことないだろう。来るのは先生と佑太君の自由だから。まぁ、結婚することになったらわからないがね」
 美里は、佑太と会えなくなるのは、耐えられないと思った。インフルエンザの一週間がどれだけ寂しかったか。縁談のことよりもまず、今は佑太のことを考えると、大事な宝物を突然取り上げられるような、かわいがって餌をあげていたネコに、立派な飼い主がいることがわかった時のような…、それよりも辛かった。
 どこかで、美里は佑太とつながっている気がしていた。彼はもう美里の一部のようになっていて、あの小さな存在がいないことが、考えられなくなっていた。にっこり笑うと何もかも通じ合うような関係、それを手放すことは考えられなかった。
 佑太を通じて、暢ともつながっていた。辛うじて、ぎこちないながら。そんな、ささやかな関係もだめだというのだろうか。
 ハンバーグの晩のようなことは二度となくなるというのか。
 佑太が暢と一緒にいつもの時間に店に現れた時、美里は思わず涙ぐみそうになって、それを抑えた。佑太にはいつも通りおいしい食事をして、笑顔を交わし合って帰ってほしかったから。


 暢は佑太を寝かしつけるとすぐに実家に電話を入れた。
 父の声が言った。「母さんなら、もう休んどるぞ。いい縁談があったと、もう決まったように喜んでいたが、お前、承知したのか?」

 特にこんな夜、人を呼ぶことは滅多にないことだったが、佑太が寝入っている隣の部屋で、暢は百合子を呼んで話していた。
「僕は絶対結婚しない。知っているだろう?」
 百合子はふっと笑って言った。「知ってるわ」
「じゃあ何で急にそんな話になる?!どういうつもりだ?」
「怒らないでよ」
「何で僕が知る前に、“さと”ではみんな知ってるんだ、おかしいじゃないか」
「…何て言ってた、美里さん?」
「美里さんは何にも」さっきの明らかにショックを受けていた美里の涙ぐみそうな顔を思い出した。
「お祖母ちゃんは?」
「『おめでとうございます』って言われてさ、面食らったよ。もっと何か言いたそうだったけど、多分佑太が一緒だったし、客もいたから言わなかったんだと思う」
「…私は、いいわよ」唐突にさらっと百合子は言った。
「何が?」
「だから、あなたとの話、悪くないと思って」
16

と、ちょっと大胆な発言!
これは本気かもしれません
引き続き、↓次の回もご覧ください。






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百合子先生の更に大胆な言葉は続きます。
さて暢の反応は?!★


 いきなりの百合子の言葉に暢はしばらく声を失った。
 百合子は更に言った。「私はあなたと結婚してもいい。子持ちだって構わないわ。作る手間がはぶけるし。私もね、親からお見合しろって矢の催促なの。この際、いいかなぁと思って」
「そんなに簡単に決めることなのか?」
「あなたのことなら、よく知ってるし、真面目で情に厚いことも、義理堅いことも。それに教師なら大丈夫、親も説得できるわ」
「許すわけがないだろ、お前の親が。それに、僕は結婚する気はないよ、何度も言うけど」
「なかなか意志が堅いのね。お母さんは、とにかくあなたに早く結婚してほしいみたいよ。私が断ったら、他のお見合い話持ってくるわよ、いいの?」
「仕方ないだろう」
「でも、私はあなたのお母さんの提案を受け入れることに決めたの。親から来年の春には結婚するように言われていたから、ちょうどいいのよ。でないと、誰か他の人と結婚させられることになるの」
「勝手なことを言うなよ、僕は関係ないだろ。
 それより、美里さんのことは、どういうことだ?母さんと何を話したか知らないけど、彼女を巻き込む必要はないだろ」
「私も、美里さんには悪いと思うんだけど、どうせあなたは受け入れる気がないんだし、だったら、お母さんの気持ちを汲んであげたら。悪い話じゃないと思うわ」
「お前、さっきから、何を言ってるんだ?!」
 暢は、百合子を睨むように見た。そして、もうわかったというように、百合子との話を切り上げた。
「後十五分だけ、いいか?」と、暢は百合子に言った。「佑太が起きるかもしれないから、ちょっといてくれるか?少し出てくる」

 暢が向かった先は“さと”だった。店の奥に横瀬家の住居がある。歩きながら、彼は美里に電話を入れた。
 一旦閉店して暗くなっていた店に灯りを燈し、鍵を開けて、暢と美里は向き合って座った。
「話って何でしょう」
「とにかく、謝りたかったんだ、今日のこと」
「謝ってもらうことは何もないです」
「ごめん。僕は何も知らなかったんだ。いつも君には世話になっているのに、母が失礼なことをして。何て言ったのかは知らないけど」
「お母さんは、ただあなたと百合子先生の縁談を進めるっておっしゃったみたい」
「君に伝える話じゃないよ。それに、僕の意思じゃないから。前に君にも言ったように、結婚する気はないんだ」
 美里は暢をそっと見つめた。「どうして、私にそんな話をしてくれるんですか?」
「僕は気の利かない男だけど、君がどんな風に感じたかくらいわかるよ。母もひどい。君と佑太を引き離すことだけは、しないから」
「じゃあ、今まで通り、ここに来てくれるんですか」
「もちろん、お願いするよ」
「よかった。何も変わらないんですね」
「何も変わらないよ」
17

「何も変わらないよ」ですか。。。
そんなふうにいくのでしょうか。。。

目次・登場人物・見どころは
こちらから ↓

目次 ▼△あの人は広い傘をもっている△▼




よい一日 よい夢を

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写真は朝太郎さん
許可を得て掲載しています。
無断転用はご容赦ください。



プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に小説を書き始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
夢を叶えたい人、カウンセリング募集中!(四柱推命鑑定も可。)
こちらから→幽霊っているんでしょうか

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2017年12月08日

7 《あの人は広い傘をもっている'17》 Sean6 抜け駆け(前)



小説 ▼△あの人は
広い傘をもっている△▼
朝の光に輝いて。
 

暢の母の登場に伴い
何やら起こりそうです★



Sean6抜け駆け 127486796702016104458.jpg



 それから数日ほど経った頃、佑太が高熱を出した。調子が悪そうだと美里が心配していたのが的中して、その夜中から熱が上がり、診断はインフルエンザだった。
 暢は実家の母親を呼んで看病や家事をしてもらったから、“さと”にはしばらく行かなかった。
「美里さんが心配してたわよ、様子くらい知らせてあげなさいよ」と百合子に言われて、暢は“さと”に顔を出した。
 佑太の様子はもう熱が下がり、外に出たいのを抑える方が大変なくらいだという話を聞いて、美里は心からホッとした。
「本当によかった」と何度も言う美里を見ながら、暢は微笑んだ。
「ところで、今日お祖母ちゃんは?」
「うん、風邪かなぁって、今日、百合子先生のところに掛かって、今家で休んでるの」
「佑太のが移ったってわけじゃないよね」
「多分。お祖母ちゃんは丈夫だから、またすぐよくなるわ」
「そうだね。お大事に」以前、“鬼のかく乱”だと言って笑い合ったことを美里は思い出していた。二人きりだと会話も少しぎこちないようだ。
 美里の母、芳美がレジから戻って暢に言った。「先生、今日は食べていかないの?」
「ええ。佑太と母が待ってるので。また治ったらお世話になります」

 佑太が元気な顔を見せたのはそれからしばらくしてからだった。暢の母、春子も一緒だった。
「ねぇお姉ちゃん、お祖母ちゃんだよ」と佑太は紹介した。
「この子が、お店に行くって聞かないので」と暢とどこか似た雰囲気の温厚そうな春子は、微笑んで美里の方を見た。きっと佑太が「お姉ちゃんに会いたい」と何度も言ったに違いない。
「いつも息子たちがお世話になっています」と春子は丁寧に言った。
 佑太と美里は、大の仲良しが再会した嬉しさで、何度も顔を合わせてはにっこりし合った。二人の親しさは隠しようがなかった。

 暢の母、春子は、とても穏やかに、佑太にもよく接していた。
「母さん、今回は助かったよ、ありがとう」
「私はいいんだけどね、これからはやめておこうと思ってるの」
「どうして。父さんがうるさいの?」
「あなたや佑太には、他に世話する人がいるでしょう。私の出る幕ではないようだから」
「何を言うの。そんな人はいないよ」
「いないって。いつまでも独りでいるつもり?」
「なんとかやってるよ。まぁこういう時は困っちゃうんだけど。いつもじゃないんだから、母さん頼むよ」
「私の目をごまかしたつもりでしょうけど」
「何のことだよ」
「佑太の言うお姉ちゃんでもいいし、女医の先生もいい方よね」
「え」
「どっちでもお母さんは賛成よ」
14

やっぱり母親といえば
結婚の心配をするんですね。
さぁどんな抜け駆け、いえ
どんな展開が待っているでしょうか。
乞うご期待!
引き続き、↓次の回もご覧ください。






家をつくるなら。
 

さあ、誰がどんな
抜け駆けを…?!★


 暢の母、春子は物静かに見えたが、行動力もあるようだった。次の朝、片づけが終わったら帰ると言っていたが、その足で向かったのは内田医院の近くのレストランだった。
 風邪が流行っていたから、午前の診療が延びて、お詫びを言いながら、百合子は向かいの席に座った。
「唐突なんですが…」と春子は百合子に向かって話を始めた。
「私が長尾…クンの、ですか?」と百合子は話を聞くなり驚いた声を出した。
「ええ。あの子は子持ちですし、失礼かと思ったんですが…」
 百合子は、その普段はよく回転する頭を巡らして考えをまとめようとしながらも、どう答えようか迷っているようだった。
「長尾君のお母さん、私は彼の…、その、佑太君が生まれた経緯も聞いています。同級生はこの街には他にいないし、私には男友だちのように話しやすいようで。高校の時には、結構もてたんですよ、長尾君。だから、彼が子持ちだから結婚相手にふさわしくないというんじゃなくて…」そこまで話した時、百合子は意を決したように話し始めた。
「お母さん、実は前から私…」


 春子は、百合子と別れると、途中で電話を入れて、マツを呼び出した。
「直接、お孫さんとお会いしようとも思ったんですが、年長者のお祖母様にお話しするのがいいかと思いまして…」
 マツは話を聞いていたが、最後に言った。「わかりました。孫にはかわいそうだが、心を鬼にすることにしますよ」
 春子と別れると、マツは独り言を言った。「さて、何から話せばいいのか…」
 美里が、当人の暢より先に彼の縁談のことを知った時、裏切られたような気がしたのは確かだった。いつも応援してくれていたと思っていた人が、抜け駆けのように、縁談の相手になるなんて…。
 美里は祖母から聞かされ、まだ頭が混乱していた。
「つまり、百合子先生と、先生が結婚するということ…、はぁそうなんだ」と美里は言った。
「結婚するかどうかはわからないよ。先生のことだから、結婚する気があるかどうか」
「先生って、どっちの?長尾先生か、百合子先生か」芳子は、事情を聞いて誰よりも感情的になっていた。
 マツはたしなめて言った。「私たちが口を挟むことではないよ。佑太君の世話をしてきたっていっても、こちらはただお節介でやってきただけで、何も下心があったわけではないんだから」
「そりゃ、関係ないって言われればそれまでだけど…」
「先生のお母さんに言われたんだから、仕方ないよ。縁談の邪魔をするつもりはないからね」
15

え、え!
百合子先生が抜け駆けってことですか?!
美里に優しかったのは、
策略だったのでしょうか???

目次・登場人物・見どころは
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写真は:14 「朝の光に輝いて。
(C)芥川千景さん
15 「家をつくるなら。」
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2017年12月07日

6 《あの人は広い傘をもっている'17》 Sean5 手作りハンバーグ



小説 ▼△あの人は
広い傘をもっている△▼
2010.04.13 和泉川 麦


美里は、暢の息子・佑太と
絆を深めていっているようです★



Sean5 手作りハンバーグ 127486796702016104458.jpg



 ある晩のこと、カウンターの席に座って、目の前の美里をしっかり見つめながら佑太が言った。「ねえ、お姉ちゃん、僕、ハンバーグ食べたい」
「ハンバーグ?」
 和食を中心の“さと”にも和風煮込みのハンバーグはあったが、それではダメのようだった。
「お姉ちゃんのハンバーグがいい」
「困ったな」
「パパも食べたいって言ってたよ」
「え?」
「前、作ってくれたよね、お姉ちゃん」と佑太はその味を思い出すように、にっこり笑った。「おいしかったー」
「覚えててくれたの」
「パパが言ったんだよ」
「え、いつ、何て?」と美里は思わず連発して聞いてしまった。
 佑太はいつどこで誰がどうしたということを筋道を立てて話すことはできなかったが、その何か一つについては答えられたから、聞く相手がそれを補ってあげれば話は通じるのだった。
「えっと…」
「じゃあ、パパは何て言ったの?」
「『あれはうまかったな』ってパパ言った」
「…本当?」
「本当だよ」
「そう」
 横にいた百合子が佑太に何か耳打ちするように言った。
「うん」と返事すると佑太は、側で聞こえない振りをしていた暢に向かって言った。「パパ、いい、お姉ちゃんのハンバーグ?」
「佑太、わがまま言うなよ。“さと”には、いろいろおいしいものがあるだろ」
「お姉ちゃんのハンバーグがいい」
「先生、佑太君がこう言ってるんだから。また、二人の邪魔をするのかい?」とマツが暢に言った。
 美里は佑太に向かって言った。「佑君、今日は無理だから、今度作ってあげる」
「今度?!いつ?!」
「そうね…」
「ハンバーグは焼き立てがおいしいからね。先生のとこで作らせてもらったら。日曜は店も休みだよ」とマツが言った。
 美里は困ったように暢を見た。佑太も期待のこもった目で父を見た。マツからも、百合子からも、ただ見られているだけで、暢はプレッシャーを感じるのだった。
 その状況で、Noと答えられるはずは、もちろんなかった。
 こんな風に、それまでも日曜日毎の時間を積み重ねてきた。しかし、その日曜は、格別に美里にとっては嬉しかった。佑太だけでなく、暢も望んでくれている、例えそれがハンバーグのためだとしても。
 最近の美里は、暢との関係の進展はあまり期待していなかったし、百合子からのアドバイスに従って、手作りの差し入れはしばらく控えていたので、心を込めて料理してあげることだけで純粋に喜びを感じたのだった。
 そして佑太はとてもかわいかった。自分を慕ってくれる存在は、とりわけかわいいものだ。美里は、佑太と心が通じているような気がしていた。
12

さて、どんなハンバーグになるのか…!
引き続き、↓次の回もご覧ください。






2010.04.21 和泉川 スギナ


こういう何でもないような
日常が
とても貴重に感じる人もいるのです。
ふっくらジューシーな
ハンバーグがあれば、尚更★


 その日曜日、暢と美里両方の要請で百合子も同席して、美里の手作りハンバーグの夕食をとることになった。
 佑太は台所の近くにいて、美里の姿を見てニコニコしていた。ハンバーグをこねる時には一緒にやりたがった。
「佑太君、ご機嫌ね」と、百合子は暢とキッチンの見える居間に座りながら言った。
「ああ」
「二人は相思相愛だわ」
「そうだな」
「二人の仲を裂く気はないようね」
「この方が一週間、平和に過ごせるからな」
「そうでしょ。無理に佑太君から好きな人を引き離したらかわいそうよ」
「うん。あいつが不機嫌になると手がつけられないんだ。ちょっと前は、寝れば昨日のことは忘れてたのに、執念深くなったしな」
「賢くなってきたのよ」
「毎回、約束を取り付けるのは、誰かの入れ知恵だろ?」
「お陰で助かってるでしょ」
「まあな。仕事で疲れてるのに、佑太がごねたら寝る間もなくなる」
「もっと感謝すべき人が他にいるわよ。何の見返りも求めずに、食事を作ってくれるなんて」
「わかってる、感謝してるさ」
「感謝しても感謝しきれないわよ。…あのことを知ったら…」
 暢は急に厳しい顔をして、百合子を諭した。「それ以上言うなよ」
「はいはい」と百合子は言うと、立ち上がってキッチンの美里に声を掛けた。「う〜ん、いいにおい。手伝おうか。盛り付けとか」
「じゃあ、サラダをこのお皿に入れてください」
「了解」と言ってから、百合子は暢に声を掛けた。「ほら、佑太君を見習ってパパもお手伝いしたら!」
 暢が、盛り付けをして、百合子がご飯やスープをよそい、…佑太がハンバーグの皿を、居間に用意したテーブルに運ぶと言い張って、転ばないように一歩一歩真剣な顔で運んだ。慎重になるあまり、かなり時間が掛かった。しかし、四皿を運び終わると、その達成感で、頬が紅潮するほど誇らしげで嬉しそうだった。
 そして、言うまでもなくそのハンバーグは、その頬が落ちそうなくらいにおいしかった。
「本当おいしい。美里さん、私がお嫁さんにほしいくらいだわ」と、百合子が言った。
「だめだよ、お姉ちゃんは僕のお嫁さんになるの」と佑太が言った。
「そうとう競争率高そうよ」と、百合子が暢を見た。彼がそれに乗るはずがなかった。
 しかし、その代わり「うまい」と、しっかり褒める言葉は忘れなかったので、美里はそれで良しとした。ハンバーグのためであっても、彼が喜んで自分を受け入れてくれている、それだけでいいではないか。
 佑太と目が合えば、笑顔になった。二人の思いは同じだったから。いつまでもこうしていたいと。
13

ハンバーグのためであったとしても、
その人の存在を受け入れるのは
案外、そんなところからかもしれません。
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