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2017年12月13日

11 《あの人は広い傘をもっている'17》 Sean8 ポインセチアの魔法(後) 



小説 ▼△あの人は
広い傘をもっている△▼
2009.12.06 和泉川 薔薇


サンタクロースに願いを託すなら
イヴ・イヴがいい(?)
三歳の佑太の願いとは…


「佑君、サンタさんにプレゼントお願いしたの?」と並んで歩きながら美里は訊いた。
「うん、したよ!」と佑太はいかにもよいお願いをしたのだろう、嬉しそうにそう答えた。
「えー、何、教えて?」
「内緒」
 美里が暢を見ると、首をすくめて見せた。彼も聞き出そうとして難しく、お手上げ状態ということだろう。内緒では、サンタはプレゼントを用意できなくて困っているだろう。
「佑君、おんぶしてあげようか」
「うん」
「そのかわり、後でパパにサンタさんに何を頼んだか、教えてあげてね」
「いいよ」
 おんぶが大好きな佑太への、美里のうまい駆け引きだった。

 さて、百合子が、暢との狂言の縁談を進めようとしたのは、染野をその気にさせるための計画だった。
 結婚を言い出さない恋人を刺激したかったのだ。染野は、計画通りに動いてくれて、百合子は願い通りプロポーズを受け、来春には結婚する予定となっていた。
 染野が言った。「なんか、彼に会って複雑だったよ。一度はライバルだと思い込んだ相手だったからね。一生分の焼きもちを焼いたかもしれない。まだあの時の感じが残ってるよ。だからさ、無意識に長尾さんを睨みそうになったよ」
「今度は彼らをなんとかしなくちゃ」
「お似合いの親子に見えたな」
「そうでしょ。三人でいるのを見るとこちらも微笑ましくなるの」
「でも、二人ではどうかな」
「そうでしょ。ちょっと心配でしょ。なぜかあいつが結婚には完全シャットアウトなのよ。でも、ちょっとは揺さぶれたと思うの。あなたが美里さんと話すのを気にしてるみたいだったわ」
「そうか?彼はなんで結婚しないんだ?」
「子持ちだからって」
「まだ若いのに。彼は、自分が子持ちだということが、逆に魅力だとは気づいていないようだね」
「魅力というのはいい過ぎじゃない?リスクに違いないわ。まぁ、美里さんにとってはそうかも」
「いや、彼の魅力だよ。わかる女性にはわかるよ。いい家庭を持てるって証拠だろ?どんな男でもできることではない。同じ男から見たら、尊敬に値するよ。父親のオーラって言うか…」
 暢は若い染野に引け目を感じていたが、染野の側から見れば、反対に暢を評価していたようだ。
「子供は彼の財産だよ。そう思える人しかうまくいかないかもしれないけど」
「美里さんなら、バッチリなのに…。あんな人いないわよ。本当に佑太君のことが好きで堪らないんだから。あの時もね…」

 クリスマス・イヴのイヴ、この晩は静かにふけていった。
 数知れないカップルが愛を囁き、親子が笑顔を交わしているに違いないこの晩、染野と百合子、そして暢たち3人も、アパートに着くまでの道のりだけの、仮染めの親子ではあったが、他の幸せな人たちと変わりないように見えた。
24

さて、彼らの幸せは…?
遠くにでなく、すぐ近くにある
といわれますが…。
引き続き、↓次の回もご覧ください。






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今日はあの「狂言結婚」を仕組んだ時の
美里と百合子の会話、
回想シーンです★


 百合子は暢との狂言のために美里を欺かなければならなかった時のことを、恋人の染野に話し始めた。「私が『抜け駆けだと思わない?』て言ったらね…」


「本当に結婚するんですか?」
 美里の問いに百合子は答えた。「…無理でしょうね。あいつがする気ないし」
「あの、どういうことですか?」
「私と、彼のお母さんとで決めたことよ。どうせ、断固拒否されるって分かった上で、ギリギリできるところまで結婚話を進めるわ」
「?」
「お母さんがね、どうしてもあいつを結婚させたいみたいなの。情にほだされちゃったのよ。私は捨石みたいなものなの。ちょっと追い込まなければ、誰とも結婚しないでしょ」
「はぁ」
「わからない?つまり狂言のようなものよ。一芝居打ってるの、ちょっとした作戦なのよ」
「百合子先生は、結婚しないと言うことですか?」
「ええ。少なくともあいつとはね」
「よかった。じゃあ何にも変わらないんですね」
 百合子は微笑んだ。「安心して、あいつと私は結婚しないわ。私があなたに『あきらめるな』って言ったのよ、前。自分の言ったことに責任持つわ」
 美里はその日、何度目になるかわからないその言葉をまた言った。「ホントよかった」そして、涙がにじんできた目で百合子を見た。
「百合子先生はそういう人じゃないって思っていましたけど、今まで優しくしてくれたこと、忘れてませんから」そう言いながら、目に溜めた涙はとうとう溢れて来た。
「よかった」と何度も繰り返しながら。


「私あの時、『負けた』って思ったのよ。勝ち負けじゃないけど、なんかね。美里さんのためなら何でもするわ」と、百合子は言った。
「僕たちは借りもあるんだしね」と染野が言った。
 二人は鍵を掛けてそのマンションを後にした。
「鍵は私から返しておくわ」と、百合子が言った。

 そして翌日百合子が会ったのは、暢の母、春子だった。鍵を受け取ると春子は言った。
「どう、お部屋はだいぶ準備できていた?」
「ええ。居間と台所だけは。とても素敵ですよ」
「早く住まわせてあげたいわ」
「まだ、美里さんには言わないんですか?」
「今日話そうと考えているの。問題は暢よ。あの子は頑固だから」
「昨日のことは効果あったと思いますよ」
「そうよね。染野さんにまで無理なお願いをしてしまって、今度こそと期待してるんだけど。それにね、佑太も協力してくれるの」
「佑太君が?」
「ええ。今夜が楽しみ。さぁ今日は忙しいわ」と、春子はいかにも楽しそうに言った。
25


お寄りくださった皆さまに愛を!!

さあ、今までの計画が明かされます
さて、誰が関わっていたのでしょうか
目次・登場人物・見どころは
こちらから ↓

目次 ▼△あの人は広い傘をもっている△▼




よい一日 よい夢を

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プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に小説を書き始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
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【関連する記事】
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2017年12月12日

10 《あの人は広い傘をもっている'17》 Sean8 ポインセチアの魔法(前) 



小説 ▼△あの人は
広い傘をもっている△▼
お寄りくださった皆さまに愛を!!

 
季節は更に進んでいきます。
今日は新展開、
なんと美里が…!
一挙3話★



Sean8 ポインセチアの魔法 127486796702016104458.jpg



 “さと”の店内ですら、ポインセチアが置かれクリスマスが近づいたことを感じさせた。
 いつもと変わりのないようなある晩、「実は美里にはいい話があってさ」とマツが言った。
 その突然の言葉に、内心、暢はひどく驚いていた。
「先生に片思いしても、埒(らち)があきそうになかったから、本当によかったよ。話がとんとん拍子に進んでね、今日も新居の準備があるって遅いんだけどね」
 少しして現れた美里は、いつも通り佑太に笑って話し掛け、「バイバイ」と、店の外で見えなくなるまで送ってくれた。
 そういえば、暢は買い物中の美里を街で見掛けたことがあった。食器を見ているようだったが、新婚生活の準備だったのか。
「何も変わらないって言ってたのに」と、暢は呟いた。
 どこかで、美里は自分をずっと好いてくれていると思っていた。ずっと変わらないと思っていた。あまりに急に湧いて出たような美里の結婚話に、戸惑っている自分のことを、暢は、いつものように気づかない振りをしようとしていた。
 
 結婚の狂言話がなくなって以来、暢と百合子は以前の友人関係に戻っていた。
「美里さんが新居の準備を?!」と百合子も驚いた声を出した。「いつの間に話が進んだんだろ。まだ2週間くらいしか経ってないのに」
 百合子の説明によると、美里が準備しているマンションの持ち主の男は、もともと百合子の知り合いだった。
「じゃあ、お前が紹介したのか?」
「そういうことになるわね。そうだ、クリスマスの誘いを受けていたんだった。佑太君とあなたもどうかって」
「僕が?」
「イヴじゃなくて、23日よ、前倒しでお祝いするのもいいかなって。美里さんも祝日はお店が休みでしょ。佑太君も喜ぶわ、お邪魔しましょうよ」


 休日であっても、教師は仕事が山積みだった。高校は小中学校ほどではないというが、授業は高度なのにそれ以外の仕事が多いのだ。家に持って帰っても佑太がいるから仕事にならないことはわかっていたから、彼はできるだけ出勤して仕事をした。
 日曜や祝日は保育園が休みなので預けられないことが、悩みだった。大体は実家の母、春子の世話になることになる。
 12月23日の祝日は、もう冬休みに入っていたとはいえ、残務が残っていたのでやはり、出勤した。
 この日は、百合子と美里が佑太を見てくれて、そのまま夕方からクリスマスのホーム・パーティーをすることになっていた。
 美里たちの新居となるマンションに、その日は招かれていた。相手の染野という男にも会うことになる。
 彼が遅れて到着すると、「パパ」と、上気した顔の佑太が玄関まで飛んで迎えた。すっかり、染野とも親しくなって楽しそうにしていた。
「まえ…」前川と言い掛けて暢は言い直した。「百合子先生は?」
「買い物に行ってくれているの」と、美里が言った。
21

美里が結婚?!
そんなことが、あるようですね…!






2009.11.08 和泉川 スギナ


さぁ、イヴ・イヴの始まりです。
美里が結婚するという染野とは
どんな人?!


 佑太は、美里と、染野との間ですっかり打ち解けており、その雰囲気に、暢はほのかな疎外感を感じるのだった。
「お姉ちゃん、お腹すいた」と、佑太が言った。
「祐君、もう少し待っててね。百合子先生がケーキを買ってきてくれるから」
「うん」と佑太はよく聞き分けていた。
「そういう風に呼ぶと、なんか僕のことを呼ばれているかと思って、思わず返事しそうになるよ」と、染野が言った。「僕も小さい頃、『ユウクン』と呼ばれてたんだ」
「ああ、そうですね」と美里。
「僕は、勇治というんです」と、染野は名刺を取り出し、暢に渡した。
「申し訳ない。準備してなくて。ほとんど名刺が必要なことはないので。長尾暢といいます」
「大丈夫。聞いてますから。前川さんと同級生だったら、僕は二つ後輩なんです」
「そう」
「佑太くんはどんな字を書くんですか?」
 染野は、人好きのする性格で、年齢よりも童顔に見えた。やはり若く見える美里と並ぶと、よく似合っている。大した年の差ではないのに、なんだか世代ギャップを感じてしまう暢だった。自分が年寄りのような気がしてきた。
 その場は佑太に合わせ、和やかに過ぎた。染野はちょっとした手品も披露して、佑太は尊敬の眼差しで彼を見つめた。本当の魔法使いだと信じ込んでさえいるようだった。
 暢は なんとなく引け目を感じた。彼は日々の仕事と育児に追われるだけで、そんな風に佑太を喜ばせることなど考えたことがなかったから。
 そして、彼が美里と言葉を交わす様子に、なんともいえない思いがよぎった。言葉にすると「嫉妬」という言葉になるが、暢は否定するに違いなかった。誰も気に留めないような微かな心の動きだったから。感じたとしても、勘違いで済ませるくらいの。
「美里さんが揃えたの、ここの物?素敵ね。食器もインテリアも」と百合子が言った。
「そうだよ。全部任せて正解だっただろう?」と、染野が言った。
 広いリビングは緑と赤のクリスマスカラーがそこここにあった。ツリーとポインセチア。そのほかにも観葉植物やシクラメンなどの鉢もの。派手すぎない飾り付けが白い壁にマッチしていて、新婚のカップルが今日からでも暮らし始められるような明るい雰囲気に満ちていた。
 そして美里が準備した食事は、いつものごとく、みんなを大満足させるものだった。
 職業柄しゃべるのは苦手ではない暢だが、今日は話すのが億劫だった。佑太を喜ばせるために皆が盛り上げてくれるのを、微笑んで見ていた。
 初めて会った染野のことを正直、暢はいい男だと思った。
 感じはいいし、生活力もあるし、女性から見ても理想的な男性に違いなかった。美里にはそういう相手がいいと、漠然と考えていた男性のはずだった。いや、それよりよ過ぎるくらいだ。申し分のない相手だった。
 いつまでも続きそうな談笑が、少し煩わしくさえ感じられた。
22

染野はよい男性のようです。
嫉妬でしょうかって、
嫉妬に決まっていますが…
引き続き、↓次の回もご覧ください。






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イヴ・イヴの夜は更けて…。
さて、男女たちのそれぞれの思惑は…!★


 夜の8時を過ぎて、佑太がもう眠いようだった。
「お姉ちゃんと帰る」と佑太が言った時、暢はどこかホッとする気がした。いつもの変わらない佑太のわがままだった。
「困ったわねぇ」と、暢の許可を求めるように見る美里の眼差しも、いつもと変わらなかった。
「百合子先生じゃダメ?」と、百合子が言った。
「ダメ。お姉ちゃんがいいの」限界になると、佑太はそれ以外の選択肢は受け付けなくなるのだ。
 そこで予想した展開として、大好きなお姉ちゃんを得たのは佑太だった。
 駄々をこねていた時が嘘のように美里を見上げ、また父を見上げては、この上のない満悦の顔をしていた。そして小さな両腕でさっきもらったお菓子の入った長靴を抱えるようにしていた。佑太の大事なものは全て揃っていた。
 夜の道を美里と佑太とで歩いていると、彼女が結婚を控えた人であり、こういう時間を持つことはもうないかもしれないのだということを、暢は忘れそうになった。
 美里の瞳はいつもと変わらず、優しく佑太と自分に向けられているような気がするのに、それは、もう自分たちが受けるものではないということが、頭で理解しながらも、心からしっくりこないのだった。佑太のためにも、いよいよ本当に距離を置かなければならない時が近づいていると、暢は思った。

 染野と百合子は微笑ましい親子の姿に見える彼らを見送ると、先ほどの部屋に戻った。
「なるほど」と、染野が言った。「彼が僕を嫉妬させて、プロポーズさせることになった相手か」
「上手くいくと思う?」
「うーん、どうかなぁ。僕の時のようにいくかなぁ」
「一石二鳥の計画だったのにな」
「白状しろよ。君は彼にまんざらでもなかっただろ」
「それは絶対ありません」百合子は笑って言った。
「怪しいな」
「高校の時に懲りてるもの。超鈍感な奴なのよ。私には無理」
「ほら好きだったんじゃないか!」
「もう時効でしょう。それに今思うと、あれは勘違いみたいなものだから。なぜかかっこよく見えたのよね。他の女の子たちが騒いでたから、ちょっと自分のものにしたいみたいな」
「へぇ」
 そんな会話を交わしながら、染野の両腕は、背後から百合子の体に回されていた。彼女は笑顔で彼を見ると、その手を重ね合わせた。
「…やっぱり妬けるな」と染野は言った。
23

えー、彼は美里の相手じゃなかったの??
ということは…?!
百合子先生の恋人?!
目次・登場人物・見どころは
こちらから ↓

目次 ▼△あの人は広い傘をもっている△▼





よい一日 よい夢を

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2017年12月11日

9 《あの人は広い傘をもっている'17》 Sean7 狂言結婚 



小説 ▼△あの人は
広い傘をもっている△▼
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「結婚してもいい」と言った
女医の百合子の申し出を、
暢は断りましたが…。
一挙3話連続でどうぞ★



Sean7 狂言結婚 127486796702016104458.jpg



 暢はアパートに戻ると、留守をしてくれた百合子に礼を言った。「ありがとう。送れないけど、大丈夫だよな」
「うん、そう思って車で来たから。何の用事だったの?」
「…」
「小さな子がいると外にも出れないものね」と、百合子は言って、そこを後にした。

「さてと」と、車に乗り込むと百合子は呟いてから、携帯を取った。
 呼び出された美里は、百合子の車で、話のできる所まで移動した。
 百合子は最初に切り出した。「私、長尾君とお見合いすることにしたの」
「ええ、聞きました」
「お見合いっていっても、もうお互い知っているからそういう形式的なことはなしにして、つまり結婚話になっているの」
「はい」
「怒ったり、責めたりしないの?」
「百合子先生から、話してもらおうと思っていました。私にはまだよく事態が呑みこめないので…突然のことで」
「私も親からの縁談に手を焼いていたから、ちょっと時間稼ぎのつもりだったんだけど」
 百合子は暢に話したのと同じ話を美里にした。
「あいつには、はっきり断られたんだけどね。そういうことなの。分かってくれた?」
 百合子の話を一通り聞くと、美里は首を傾げながらも言った。「分かったような分からないような…」そして、にっこり笑った。「でもよかったです」
「よかった?」
「先生と佑太君が変わらず店に来てくれるようだから」
「そうね。でも、美里さん落ち着いてるのね。てっきり泣かれるか、なじられると覚悟してたのよ。私なら抜け駆けされたって、自分から責めてるわよ。怒ったりしないわけ?」
「…そんな余裕なくて。わけが分からなくて。佑太君がもう店に来なくなって、先生とも会えなくなるのかと、そうなったらどうしようって思ってました。でも、ホッとしました」
 安堵したように美里は言った。「やっぱり何も変わらないんだ。先生も言ってくれたけど」
「誰って?」
「先生です。佑太君のお父さん」
「いつ?」と言いながら、百合子は気がついた。「もしかして、さっき会ったの?」
「はい。会ったって、五分もいなかったんですけど…」
 百合子は、美里を家に送り、自分も帰途に着いた。エンジンを切った後、また彼女はため息をつき、独り言を呟いた。「抜け駆けはいけないわね」
 そして、車を降りながら、また呟いた。「でも、あいつ、彼女には優しいのね」
18

さて、百合子の本当の思惑は…?
今後徐々に明かされていきます。
引き続き、↓次の回もご覧ください。






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この三人の思いは…。
そして結婚話は、どう展開するのでしょう。
暢と美里に会った晩の
百合子の呟きから★


 結婚には乗り気でない暢であっても、美里には優しくせざるを得ないのだと、百合子にはわかっていた。
 そして美里は、暢への愛情を押し売りはしなかった。今望んでいるのは佑太との関係が続くことだけ。佑太も美里を慕っているのだから、誰もそれは壊せないものになっていた。無欲のものは何も奪われないというのは事実なのだろう。
「美里さん、あなたには負けたわ」今夜は呟きの多い、百合子だった。「今日のところはね。でも、思った以上に作戦も上手くいったみたい」

 次の朝、暢は早速母に電話を入れ、一方的に自分の意志を伝えた。「わかったね。もう二度と勝手に話を進めないでくれよ」彼は言い放った。
 これで事は済んだと、暢は思い込んでいたのだったが…。

 百合子と暢の母、春子は実はそれからも頻繁に会っていた。二人は事もあろうか結婚式場を回り、そのうちの一つに予約まで入れた。まるで、本当の将来の義理の母と嫁であるかのように、仲良く楽しんでいるように見えた。
「住む所はいいかしら。新しい所が必要じゃない?」と、春子は言った。
「当分は今の所でいいですよ」
「そう?」
「十分だと思います」
「子どもができたらそうはいかないんじゃない?」
「そうですね。でもまだ時間はありますから」
「そうね」
 そう言いながらも、春子は今度は物件探しに回り始め、めぼしいところに決めると、百合子を呼んで意見を求めた。
「素敵です」
「そう?じゃあ、やっぱりここに決めましょう」

 そして、とうとう作戦決行の日がやって来た。
 始まりはいつもと変わらない休日だった。
 その日は土曜日で、昼を“さと”で取った後は、母の春子が来てくれて、暢は佑太を預けると、高校のクラス会に出かけた。
 そこで何事か起こったのは確かだった。すごく不機嫌になった暢が一人家に帰ってくると、春子だけで佑太はいなかった。
「佑太は?!」
「“さと”に預けて来たわ。どうしても美里さんの所から離れないし、彼女もいいというから私も根負けしちゃって」
「母さん、なんでそんなこと。昼に行ったのに夕飯にまで行くことなかったに。ごねても何でも連れて帰らなくちゃだめだろ」
 暢の言葉にも、春子はどこ吹く風という雰囲気だった。
「それより、どういうこと?!どうして披露宴の招待状が出回ってるんだ?!」
「披露宴って?」
「結婚披露宴に決まってるだろう。母さんが知らないっていうの?!しらばっくれるなよ」
19

温厚な母に対して、
いつもにない乱暴な言葉を吐く暢です。
百合子のいう「作戦」って?
まだ話は見えませんね。
引き続き、↓次の回もご覧ください。






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百合子がとうとう
何かをやらかしたようです★


「あなたが誰と結婚するって?相手は?」
「…前川だよ」
「百合子さん?」
「そうだよ。母さん、前に縁談を進めると言っていたじゃないか」
「クラス会だったら、百合子さんは一緒じゃなかったの?」
「クラス会では一緒だったけど、先に帰って来たよ。あそこで、もめたくはなかったから」
 暢は母親をまじまじと見た。「母さん。本当に知らないの?」
 本当は百合子と春子が結託して進めたことに違いなかったが、百合子の独断であろうと彼には同じことだった。

 暢が百合子に連絡を取って合流したのは、彼が佑太を迎えに来た“さと”だった。もう閉店した店の片隅で二人は向き合った。
「勘弁してくれよ。もう終わった話だっただろう」と暢は言った。
「親をこれで納得させようと思って、ごめん」と、百合子は白状した。「クラスのみんなには狂言だと言っておいたから大丈夫よ。私の親の手前、口裏を合わせてくれるの」
「答えろよ、どこまでやる気なんだ。狂言で結婚式までやるつもりか?」
「…それはできれば、ね」
「冗談じゃないって言ってるだろ。そんなことはすべきじゃない。金も使って。いろんな人を招待して。結婚は一生のものだろう。結婚したくないなら、そう言えばいいし、それか本当に狂言で結婚してくれる奴に頼めよ」
「そんな人いるわけないでしょ。あなたしか頼める人はいないのよ」
「頼まれてもいない。勝手にやっておいて…!」
「本当にダメ?」
「はっきり断るよ。お前のためになるとは思わない。どうして結婚しないんだ?」
「じゃあ、あなたはどうして結婚しないのよ」
「お前には関係ないだろ」
「そこまで言うんだから、理由を聞かせてよ」
「自分には佑太がいるから」
「理由にならないわね。佑太君のためにも結婚した方がいいと思うけど」
「大きなお世話だろ」
「じゃあ私のことも放っておいてよ」
「だったら、もう巻き込むなよ」
 仕方なさそうに百合子が頷いた。
「絶対だぞ。このままにしておくなら、お前の両親に僕から話に行くからな」
「わかったわよ」
 百合子が引き下がり、この話は永久に無くなった。本当に一切、百合子が暢からこの話に触れることはなかった。
 しかしなぜか、結婚式場の予約はそのままだったし、春子が準備した新居には彼女の他にも時々準備に訪れる若い女性の姿があった。
 どうやら、まだ作戦は続行中のようだった。そういえば、春子にしても、百合子にしても簡単に引き下がらないに違いなかった。暢の知らないところで、何事かが進んでいることは確かだった。
20

百合子先生と、暢の母は
絶対に何か策略がありそうですが…。
このseanは終わりです。
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