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2017年06月22日

102 水族館とキス4   ❀三月さくら2017❀ 【三月さくらY-4・1】


今日は「水族館とキス」の最終話★
小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
1900517ブルー朝顔 by kokkon.jpg


初水族館はいかに★


 その日曜の朝の水族館は、志道とさちの、初めて約束したデートらしいデートだった。そしてもしかしたら、最後の水入らずのデートとなるかもしれなかった。
 二人は一番乗りした水族館で心置きなく楽しみ、出て来た時、これから入館しようとする碧斗と未来にばったり会った。
 二つのカップルは、それぞれの携帯を交換して写真を撮り合うと、志道と碧斗はハイタッチしてから、それぞれの方向に進み始めた。志道は、思い出したように、入り口に向かっていく碧斗に声を掛けた。
「碧斗、中にあなたにそっくりなのがいましたよ!」
「探してみるよ!」と、碧斗が答えた。
 さちが志道に言った。「志道さんのが一番似ていたのに」
「そう?碧斗のが最高におもしろいと思いましたが」
「わかるかな」
「大丈夫。わかるようにしておきましたから」
「そうよね」

 ある水槽の前で、碧斗たちが突っ立っていた。未来が小さな札を見つけたのだ。学名アオト〇〇≠ニそれらしい名が書いてあった。
 未来が笑い転げ、碧斗は「そんなに似ているか?」と、不服そうだった。書いたものを剥がすと、それは“Jiro's Home”の志道の名刺だった。
 次に見つけたのが「ミライイカル…」。未来は水槽の中の魚と同じように口を尖らせて怒り、碧斗は失笑した。志道は即席の札を上手に水族館側がしたもののように付けてあった。
 二人がその水槽の前で写真を撮っていると、館員が近づいて来て言った。「これもお客様のものですか?」
 差し出された志道の名刺の裏には、「シドクラテス…」と、書かれていた。
 館員は言った。「お客様に質問されてわかったんです」
「すみません。今、回収していますから」碧斗は慌てて言った。

「水族館」、「キス」
共にクリヤです。
続けて次のお話もどうぞ。







バラが咲いた・・・・真っ赤なバラが。


「水族館とキス」の
最終話の今日は、
碧斗と未来の水族館です。
志道の大胆さ+お茶目さを
表わすようなエピソードも★


「あの」と、未来は臆せず尋ねた。「これって、どこにあったんですか?」
「こちらですよ」館員は案内してくれた。
 その深海魚は瞑想している志道そのものだった。二人は思わず笑った。
 館員が不思議そうに尋ねた。「どういう意味なんでしょうか?」
 二人は顔を見合わせてから、笑顔で謝った。
「そんなまじめなものじゃなくて、私の兄の悪戯です。兄は志道というんですが」と、未来は名刺の表を見せてから、さっき携帯で撮った写真を見せた。
「ああ。このカップルですか」
「さっき帰ったんですが」
「ええ、朝早くから来ておられましたね。雰囲気がよくて、どこか名がある方のお忍びかなぁなんて思ってたんですよ。外国暮らしをされてたような雰囲気があって」
「生粋の日本人ですよ!」
「なんというか、外国の恋人同士のようでしたよ。ずっと寄り添って、時々キスしたり…」
「えーっ!」二人は思わず叫んだ。
「シド兄が…!」碧斗は驚いたが、館員に向かって笑顔で言った。「今はともかく、いずれ、名が出るかもしれませんよ」
 館員は本気にしたのだろう、言った。「その御名刺を頂けませんか?」
「どうぞ」と、未来がそれを渡した。
「妹さんも、女優さんかなんかですか?」
「ただの学生ですよ」
「もし、よろしかったら…」と言いつつ、館員が離れないので、未来は先の二つの名刺も渡してしまった。ようやくその館員は去って行った。

「碧斗が変なこというから、絶対誤解してるわよあの人」と、未来が言った。
「まんざら、嘘でもないかもだろ?志道兄もピアニストで売り出せば」
「お兄ちゃんまで、変わってほしくないな」
「あの人を、誰も変えられないだろ?大胆だよね、外国のカップルみたいだって。こんな所でキスしたり出来ないよ、普通」
「え、だめ?」
「で、き、な、い」
「そんなに強調しなくても」未来は可笑しそうに笑った。「これくらいならいいでしょ」と言いながら、彼女は碧斗の腕を取った。
「…ここではいいけど、外では暑いから離れろよ」
「うん」未来は嬉しそうだった。
 碧斗もまんざら嫌ではないのだったが、照れ隠しにまた言葉を発した。
「志道兄、まさかまだ名刺残してたりしないよね」
 未来が電話を掛けた。
「お兄ちゃん、一体いくつあるの?水族館の人に見つかっちゃったのよ。名刺よ」
 電話口で志道は笑った。
「寝起きの空と、歌ってる麗美は見つけてくれましたか?名刺の持ち合わせがなくて、それだけですよ」
 そして、志道は碧斗にすぐに写メを送った。エンゼルフィッシュが群れているのがちょうど六人家族のようにも見えた。
『先頭の澄ましたアップのが父さんのようでしょう』
 それを見て、碧斗はメールを返した。
『エンゼルフィッシュか、丹波野家らしいね』
 そして、実際のその目でも優雅に泳ぐエンゼルフィッシュを見ていると、その華やかさも気品のある姿も、丹波野家の一人一人のようだと、碧斗は思った。

0107_s竜宮城ツアー.jpg


「水族館」は、そして
「キス」はいかがだったでしょうか?
さて、志道のピアニストとしてのスタートは?
また、時々志道の背後に見えた影の真相も
気になります。
第二節は
ほとんど志道が本領を発揮していきます。
「丹波野エンゼルフィッシュ」は
その後の話でも
重要なイメージとなります。
どうぞこれからもお楽しみに!
前後のお話 はこちらから→ 三月さくら 目次                        
登場人物の確認は家系図で→ [三月さくら 家系図]

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プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に、書き溜めた小説を編集し始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
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【関連する記事】

2017年06月21日

101 水族館とキス3   ❀三月さくら2017❀ 【三月さくらY-4・1】



小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
秋薔薇 パープルピンク


手をつないで
胸に手を当てると、 
繋がれた魂は
何か感じるのかもしれません。
志道とさちの会話の続きから★


 さちは、はにかんだように微笑んでいた。
 そして、言った。「…志道さん、私に止めろって言ってほしかったの?」
「もしかしたら、そうかも。あなたのために潔く断念するのもいいかなって。あなたの為なら何でもできるって示したかったのかも」
「あなたは音楽をするべきよ。“志道”って、きっとあなたにとっては音楽の道でしょう?きっとうまくやれるわ」
 志道はさちの手をまたつかんだ。「新しい曲が出来た時は、いつも真っ先に君に聞かせたい。聞いてもらえますか?」
 そして、さちの手をつかんだまま、もう片方の手をこぶしに固めて、胸に強く当てた。「こうしていると、二人の魂が握られてるって気がしますね」
 さちも自分の胸に握りこぶしを押し当てた。「そうね」
 しばらく二人はそうやっていたが、志道は手を下ろして、彼女に微笑みを向けた。
「ありがとう、僕の前に現われくれて。愛しています」
 そういうと、志道はじっとさちを見つめ、ゆっくり彼女に口づけをした。
 二人は時間も忘れて話をしては、楽しく笑った。口にはしなかったが、ずっと一緒にこうして過ごしていたかった。何か別れのきっかけになるようなことは、したくなかった。
 今日別れてもまたすぐ会えることはわかっているのに、いずれ、こういう時間が持てなくなるかもしれないと、なんとなく予感のようなものを感じていたのかもしれない。

 

 志道がピアノを弾き始めた。
 さちとの出会いは、いつも生命の誕生の感動と同時に連想される。
 従姉の赤ん坊を抱き上げて見せてくれたさち。その時の閃きを元に作った曲「祝福」は、「命の誕生」そして「出会い」のひらめきを形にしたものだった。
 初めて、さちをこのピアノの前に座らせて曲を聴かせた時のことを、志道は思い浮かべながら弾いていた。志道が告白した言葉に、やはり今日のように泣き続けていたことを。
 さて、最初の何曲かは、彼が時々見せる笑顔に応えていたさちが、うつらうつらし始めた。志道は音楽の世界に没頭し、弾きたいだけ弾くと、さちの横に座って寝顔をみつめた。
「ずっとこうしていられたらいいのに」と、志道はまた呟いた。
 そしていつかのように手を握って肩を抱くと、志道も目を閉じた。
 今回は暗い内に目を覚ましたさちは、それもそのはず、志道にほとんど押し潰されそうな形になっていた。
 さちは志道の重みに耐えかねて言った。「もう!眠っちゃう前に起こしてよ」
 そして、必死でその状態から抜け出した。つまりは志道は突き飛ばされて、その弾みで彼の体はソファーから転げ落ちた。
「ごめんなさい」さちは言った。
 志道は薄目を開けて「今何時?」と言った。
「四時頃かしら」
「ごめん。僕まで眠ってしまいました」
「必ず眠るんだから、先に起こして」
「うーん、やってみますけど、あなたの寝顔を見てるのが好きなんです。でも見ていると、つい眠くなってしまう。あの、うつらうつらとなる瞬間がとても幸せなんですよ」
 志道に微笑まれると、さちは「もう」と言いながらもそれ以上言えなかった。
「さあ行きましょう。お腹がすくから、外で何か食べましょう。どうせ朝帰りだから、いいでしょう?」と、志道は言った。
 店の外に出た時、やはり二人の背後に何者かの影があった。店から遠ざかる彼らの背後からフラッシュが光った。

 さて、志道とさちは、その日、車の中で一緒に朝日を見た。「きれい」だと言い合えることができて、志道はしごく御満悦だった。
 さちが言った。「今日は帰って仮眠するわ。今夜また夜勤だから。夜勤明けの後、水族館に行きましょう」
「水族館?!」
「行きたかったんでしょ?」
「そうですけど」
 志道は“水族館”に連想されるもう一つの言葉を瞬時に思い出していた。“キス”。すっかり忘れていたが、既にクリヤしていたではないか。
 志道は別れ際に心の中で“キス”と呟き、さちにもう一度口付けした。そして、声に出して「水族館」と呟いた。
「ええ、楽しみね。じゃあ、明日」
 さちは、にっこり笑った。その笑顔は更に志道の心を満たした。
 志道の中の何かが、スイッチが入ったように切り替わっていた。
 隠れピアニストだった彼と、さちに触れることすらもできなかった彼。志道はそんな自分が遠くに行ってしまったような気がした。
 光を知った者は、もう知らない昔に還れないようだった。

二人で初めて一緒に何かをする。
例えば朝日を一緒に見て、きれいだと言う。
そんなことから始まるものもあります。
大胆な志道、発動です。
「キス」は、ばっちりクリヤしましたが、
そして、いよいよ念願の(?)
「水族館」デートです
前後のお話 はこちらから→ 三月さくら 目次                        
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2017年06月20日

100 水族館とキス2   ❀三月さくら2017❀ 【三月さくらY-4・1】



小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
秋薔薇 イエロー


「僕にはもうひとつ
大切なものがあるんですよ。
絶対に失いたくないんです」
志道が言います。
大真面目に★


「…」
「何なのか訊いてくれないんですか?」
 志道の言葉に、さちは首を傾(かし)げた。
「音楽は、大切な、僕にとって、とてもかけがえのないものなんですが、その音楽を生み出すための源というか、絶対なくてはならない存在なんですよ」
「なぁに?」
「なんだかわからないですか?」
「ええ」
「なんでその本人がわからないんでしょう」
「えっ」
「僕の大切な人といったら、あなたしかいないですよ」
「…」
「音楽の道に行ったら、今のようにあなたに会えなくなるかもしれないんです。今でさえ、会えないのが辛くて仕方ないのに」
 さちの目にはまた見る間に涙が溢れた。
「やっぱり僕のことで泣いているんですね」志道はさちのほほを伝う涙を指でぬぐった。涙は後から後から溢れてきた。
「困ったな。どうやって止めたらいいんですか」
 指ではもちろん抑えようがなかった。涙が触れそうなくらいの至近距離に、彼の顔は近づいていた。
 そして、気づけば、彼女の唇に、自らの唇を重ねていた。念願だった初めてのキスは、無我夢中で涙の味がしたことしか覚えていなかった。
 彼は止まらないさちの涙を、胸で受け止めようと、その体を抱いた。涙はまだまだ止まなかった。

 しばらくして、二人はソファーに座り直し、さちはタオルで顔を拭いた。そして、志道の濡れたワイシャツの胸をそのタオルで押さえた。
「結構濡れてる。冷えて来ちゃうわよ」
 志道はタオルを受け取り、にっこり笑った。さちも笑い返した。
「よかった。ずっと止まらなかったらどうしようと思いました」と、志道は言った。「涙って、あったかいんですね。この涙って、どこから来るんですか?」
「…」
「あんなに泣いてたのに、泣いてた本人はわからないんですか?」
「あなたの質問は難しすぎるわ」
「でも、涙はあなたの中から出て来たんじゃないんですか?」
「涙のコントロールが出来ればいいんだけど、なかなか出来ないの。涙がどこから来たのかはわからないけど、きっとどこかに溜まってるのね。私の心と連動していることは確かよ」
「あなたの心もあったかいんですね」と、志道が言って、にっこり微笑むと、さちは可笑しそうにクスッと笑った。こんなことを口に出して言う人はあまりいないと思うのに、大真面目に、でもさらっと言ってくる。
「不思議ですよね」と、志道は話し始めた。「ピアノを全然やってない時期があったんですよ、僕は。“Jiro's Home”を継ぐことが僕の目的になってから、ずっと何年も。いつも音楽に囲まれてはいたけれど、自分はピアノを弾くことはなかったんです。
 ある時、曲が閃いて、作曲するようになって、二年くらい前なんですけど、一人で弾いていても全然平気だった。それが秘かな愉しみだったんですよ。
 人の前で弾くなんて考えもしなかった。あなたにピアノを聞かせた時、なんかとっても気持ちが良くて、なんでかわからなかったんですけど。
 あなたに会ってから、僕は変わってしまった。大好きなピアノだって何年も弾かなくても平気だった僕が、あなたのことが恋しくてたまらないんです。ずっとこうしていられたらいいのに」
 志道はさちの肩を抱いた。

おっと、水族館の前に
キスが来てしまいました。
それにしても、さちは泣き過ぎ?!






真っ赤な薔薇〜情熱〜


志道とさちの魂は
つながっているようなのです…★


「初めて病院で会った時、曲が閃く時みたいな感じがあったんです。ちょっと違うのは、もっとドキドキするというか、ずっと胸が高鳴っているというのか。つかまれたように痛いんです。これが、きっと両親が出会った時に魂に感じたものと一緒かなぁと思いました。
 その時から、僕の魂はあなたに握られてしまったんですよ、きっと」と、志道。
「そんなつもりはなかったのに…」と、さち。
「そうですか?あなたは感じなかったのかもしれませんが、僕にとってはそうなんです」
「私は…」今度はさちが話し始めた。「ずっと隠れているつもりだったのに、あなたにふいに見つけられてしまった、そんな感じだった。ドクター以外は女性ばかりの職場でしょ。若い男性といえばパパになったばかりの幸せを絵に描いたような人とか、逆にとまどっている大丈夫かなっていうような人とか、とにかく幸せなカップルと赤ちゃんと、お祝いに来るお祖父ちゃんお祖母ちゃん、そういう人たちしか縁がない、そんな中で安心しきっていたら、急にあなたが現れて。あなたが誰かもわからないのに、手を引かれて行っているみたいな。魂を握られたのは私の方だと思う」
「やっぱり」志道はにっこり笑った。「おんなじだったんですね、僕と」
 志道は胸にこぶしを当てる仕草をした。
「まさしくハートを射抜かれた、というような感覚ですよ。お互いの魂をつかんでいるんですね、僕たち。だから、あなたが泣くと僕もおろおろしてしまうんです」
 志道は握ったこぶしを解いてさちの手を取った。
「さっきの話に戻っていいですか?」
「ピアニスト・デビューのこと?」
「あなたが嫌なら僕はやらない。今のままでいますよ」
「でも、あなたはやってみたいんでしょう?」さちはにっこり笑った。「私はあなたがピアニストでも、御曹司でもなんでもいいの」
「なんでもいい、か。…もしかして、僕が三和産業と関係があること、気になりますか?」
「玉の輿って言われたのね。あんまり嬉しくなかった」
「うーん、でもね、僕が三和の会長の孫だということは、変えようがないんです」
「私が産婆の孫ということと同じね。あなたに張り合うために変えるわけにもいかない。今更どうしようもないもの」
「へぇ、そうなんですか。やっぱり突然助産師になったわけじゃなくて、血筋なんですね」
「母方の祖母の家は、何代も続く産婆だったの」
「すごいな。じゃあ、あなたは助産院を開いたらいいんじゃないですか?」
「…いつか、そうしたいと思っていたんだけど…」
「それがいいですよ。そうしたら僕はそこにひとつ部屋をもらって、ピアノを弾いていたいな」
「助産院でピアノ?」
「いいじゃないですか。そしたらずっと一緒にいられる」
「普段はコンサートだとか、レコーディングとかで忙しくなるんでしょ?」
「いいんですか、やっても?」
「だって、私は止める資格も何もないから」
「また話を繰り返させるんですか?僕はあなたがやってほしくないなら、ピアニストなんかにならなくていいんです。何よりあなたが大事なんですから、音楽よりもずっと」
「だから私は、あなたがなんでも構わない。あなたの好きにしてほしいって、言ったでしょ」
 志道は笑った。
「堂々巡りだ。やっぱりお互いの魂をつかんでいるんですね。あなたは強いな。泣き虫の癖に」
「普段は強いと思ってた。こんなに泣く人だって、私自身が驚いているの」
「最初にあなたにピアノを聞かせた時も、ずっと泣いてましたね」


 涙は潮のように満ち引きし 
 涙は微かに海の味がする 
 
 何を願うのか 人は 
 泣いても愛を求め 
 何を信じるの あなたは  
 何でも笑い飛ばしてくれる 

 何かが違う 昨日の私とは 
 内心の動揺を隠して… 

 涙はどこから来るの?
 なんで温かいの?


 泣いてしまうのはきっと 
 波が海を知ったから 
 
 涙は泉のように沸いて溢れ 
 涙のかけらが集まって 虹を作る 

 波間をみつめて答えを探しても 
 涙の理由は 自分でも わからないことがある 

 懐かしいのはきっと 母の胎中の海を思うから 
 懐かしいのはきっと 
 涙の記憶が海馬を通って蘇るから 

 泣いてしまうのはきっと 
 波が海を知ったから


お互いの魂をつかんでいる…、
これって、わかるものなんでしょうか。
ようするに、お互い
首ったけ、ぞっこん、というヤツですね。
このシーンは、
まだまだ続きます。

今回は挿入詩「泣いてしまうのはきっと…」
を挿入してみました。
第Z部のタイトルとなる詩なので、
今までは入れていなかったのですが。
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