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2016年07月02日

<終> 《空&初樹》 もしも大人になったなら(最終話) ・ 大人になった初樹  【三月さくら〜番外編〜】

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小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
2012.06.13 和泉川 アジサイ


今日はこの物語のとうとう最終話。
さて、麗美の父、治郎の示した
「待った」ならぬ
「おいしい条件」とは???★


「え!」と、それを聞いた時には初樹は思わず耳を疑ったほどだった。「社長…」
「仕事のことではないから、社長って呼ぶな」と、治郎は言った。
「って、俺はまだ大学も出てないんだけど…、治郎おじさん」と、初樹。
「これからは、お義父さんって呼ぶんだな」
「マジ、ですか?」
「麗美はお前より三つも上なんだ。お前がアメリカやらヨーロッパやら行っているうちに、いくつになると思う?麗美の母親は、大学出てすぐ結婚したんだから」
「って、しゃちょ、おじさん、俺はまだ…、麗美さんもまだ若いですよ」
「お義父さんだ」と治郎はすかさずチェックしつつも、続けた。「そんないい加減な付き合いをしてるのか?お前のいない間に悪い虫がついたらどうする?」
「麗美さんはそんな人じゃ…」言い掛ける初樹の言葉も退ける治郎の勢いに、結局は言う通りにするしか道はないようだった。
 もちろんこの後、治郎がその妻に愛を告白し、またプロポーズした時の話を、延々と聞かされることになったのは言うまでもない。

 星矢が葉摘にプロポーズするまでは大変だったが、それに続いて志道もということで、二組は近く式を挙げることになっていた。
 星矢と志道がプロポーズした場所は、“星の家”に程近い所にある、父たちも使った因縁の場所だった。例の如く空に相談した初樹は、その場所をやはり予約することになった。
 いきなり三家の間で“プロポーズのメッカ”となったその場所とともに、いつの間にか、花束などの手順も申し送りされているようだった。
「座ってさ、ちょっと、さぁってタイミングが難しいだろ、その時に花束が届くんだ」と、空が初樹に説明していた。
「へぇ」
「それで女性が喜んだタイミングを逃さず、一気に言うんだ」
「空兄、もう経験したみたいに話すね」
「ああ、もうバッチリ頭に入ってるよ。星矢兄の時も、志道兄の時も聞いたんだよ、三回目だから俺でも空で言えるさ」
 初樹は笑った。治郎が昔よく言ってた駄洒落を連想する言い方だったから。「空も空で言える」と。
「肝心なプロポーズの言葉は?」
「それは自分たちで考えるんだ。俺はものすごくシンプルでいくから」
 昨夜の予定が難しくなって、急遽空は今からその場所に向かうところだった。そして、二時間おいて、初樹が麗美と約束していた。
「お前が、本当の弟になるとはな」と空が言った。「いつの間にか大人の男になって」
 空と初樹は得意の微笑みを交し合った。
 初樹が言った。「ねぇ、プロポーズの言葉だけど、空兄は何て言うのか教えてよ」
「初樹、まさか真似するんじゃないだろうな」
 その時、初樹がどのような表情で空を見ていたか、そして彼はその表情に屈することになったかどうかということは、やはり言うまでもないことだろう。
19

「三月さくら」番外編「もしも大人になったなら」は
これにて終了です。
初樹は、少し大人になった…
ようですね。
そういうことにしておきましょう。

本来なら《空と初樹の物語》も
ここで終了ですが、
後日談といいますか
初樹と麗美のかなり渋くなってからの
ストーリーも以前書いていますので、
この際、併せて再紹介したいと思います。
↓引き続きお楽しみください。






2012.07.24 和泉川 アジサイ


初樹は帰国後、麗美や志道のマネージャーを経て
治郎の後を継いで“Jiro's office”
の敏腕社長となります。
そんな油がのった頃の初樹の様子を
今日はお伝えしましょう。
かつては“星の家ファミリー”の末っ子だった初樹の
愛妻、麗美との会話です。
話の中で「彼」と言っているのは、彼らの姪っ子と
付き合うことになったイケメン俳優の昂輝のことです
さて、初樹は
思い描いたような
素敵な大人になれたのでしょうか★


第三章 〜夏の忘れ形見〜
さちの娘みち

(20話より)

 麗美が傍らの夫、初樹にそっと言った。「彼、あなたに似ているかもね」
「そうか?どこが?」
「なかなか言い出さなかったところ」
「…」初樹はふっと笑った。「そうだったかもね。君は俺には高嶺の花で、お義父さんのことも怖かったしさ」
「パパが怖かったの?ふーん」
「今は奥さんの方が怖いけど」
「それはないでしょ」
「ねぇ、俺って怖いかな?」
「どうかな。貫禄はあるかな、初めてデートした時に比べたら」
「学生の頃の話を持ち出すなよ」
「あなたは、とっても優しいけど、厳しさがあるじゃない、真っ直ぐというか、それが昂輝君には怖く感じたかもね」
「昂輝と俺って似てる?」
「うん」
「イケメンだしな」
「そっちじゃないでしょ」

 “星の家”は、初樹がまだ学生の頃、熱い憧れをもって麗美を見つめていた頃と変わってはいなかった。古くなった店舗は改装を重ねていたが、昔の趣はそのままにしてあった。
 かつて治郎や、その息子たちが弾いていたピアノ。今もあの時と変わらないようだった。治郎の孫たち、亡くなった志道の忘れ形見の息子たちが、順番にそのピアノを弾いていた。

 仕事もプライベートもいつも一緒の、いわばオシドリ夫婦ともいえる初樹と麗美は、まださっきと変わらないような会話を交わしていた。
「俺が昂輝と似てて、昂輝がシド兄と似てるなら、俺とシド兄も似てるってこと?!」初樹が嬉しそうに言うと、麗美はあからさまに否定はしなかった。全然違うタイプであることは確かだが、似ているところがないわけでもなかったから。“星の家”に縁する男性は、なぜかとても一人の女性に一途なところがある。
「…」
「それ、否定の沈黙?俺にとってシド兄はひとつの目標でもあるからさ、いつまでたっても」
「否定なんかしないわ。仕事ぶりは兄さんのように大胆になってきたと思うわ、バリバリ楽しそうにやってる。でも…」と言い掛けた麗美の言葉尻を遮るように初樹は言った。
「そうだろ。長く一緒にいたんだ。やっぱ、俺とシド兄が似ているって言えば…」
「イケメンのところだって言いたいの?」
「さすが、奥さん」
「…今にも兄さんが現われそうな気がする。今、ツアーを終わって成田から直行したんですよ、なんて言って」と、麗美は言った。
 志道によく似た息子たちが、替わり替わるにピアノを弾いていた。ピアニストはちょうど志音にバトンタッチするところだった。きっとこの後ずっと彼の独壇場になることだろう。
「シド兄はここにいるよ、きっと」と、初樹は誰をも、つられて顔をほころばせる最高の微笑みを浮かべて言った。

2011.10.07 和泉川 紫陽花


《空と初樹の物語》 − 完 ―


初樹というのは、
丹波野家の男性のような
誰もが認めるイケメンではありません。
きっと、もっと普通の人なのですが、
その茶目っ気は、歳を経て
磨きが掛かったようでもあります。

さて、《空と初樹の物語》
もう1人の主役、空のその後ですが、
彼は、美和と結婚し、
跡継ぎのいない橘家の希望の婿となります。
また、“Jiro's home”の兄弟店として
レストランを開業して、盛況となります。
聞くところによると、
「空の笑顔講座」なるものが
どこかで開かれたていたとか。
彼は生涯「笑顔の師範」として
「微笑みの法則」を広めることを
ライフワークにしたということです。

長い期間、空と初樹の物語に
お付き合い頂きありがとうございます。
彼らがメインのストーリーは終わりましたが、
彼らはその後も、「三月さくら」の主要メンバーとして、
空や麗美の兄、志道の物語にも、
碧斗と未来の物語にも関わってきます。
これにて空と初樹の物語はおしまいです。
ご愛読ありがとうございました。
登場人物の確認は家系図をどうぞ。
    橘家家系図も参考にどうぞ
「三月さくら」シリーズ前後のお話は こちらから。




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2016年07月01日

26 《空&初樹》 もしも大人になったなら9  【三月さくら〜番外編〜】

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小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
紫陽花〜ピンク〜


さあ、近づいてくるクライマックスの瞬間。
初樹と麗美の出す結論は★


 彼は麗美の隣に来ると、手を握った。
 普段なら、その前から決意していたとしても、急にいい雰囲気の瞬間が訪れたとしても、三、四割の確率でしないで終わってしまうキスも、気がついたら、無我夢中の中でしていた。
 口付けをすると、いつも麗美はばら色に頬を染めて、俯きがちになる。
『可愛い』と、初樹は思った。
「やっぱり寂しいって思ってくれるんだね」
「…」
「ばれてるよ、もう」
 麗美はやはり俯いたまま、微笑んだようだった。初樹はその肩を抱き寄せた。しばらくそうやって、時間だけが静かに流れている様子を二人で見ているかのように、ただそうしていた。
 外はすっかり暗くなって、三日月はいよいよ主役の時間が来たとばかりに、にやりと笑っていた。
 生ピアノの奏でる音が聞こえてくる二人だけの貸し切りの空間にいて、今までにこんなにもお互いの存在を近くに感じたことがなかったかもしれなかった。
 初樹は寄り添う麗美を見た。側で見ているだけで嬉しかった頃から既に、本当はこうやって、かけがえのない存在になりたかった。その頃は見ているだけで、触れる勇気もなかった。
 今は密かに決意していた。彼女のために自分は生きていくのだと。少し前なら決めることのできなかった渡米の話も、麗美のためにと決めたことだ。ある意味将来の方向を決めたということになる。
 手を伸ばしても届かないと思っていた星を捕まえた少年は、しばらくそれを飾っておいてやはり眺めているはずだ。いつまで眺めてもあきないだろう。
 しかし、在り得ないことだと思っていたが、その星は、自分の腕の中ではもっと輝くことを知った。彼がその星を愛することが、さらに輝かせていくことになるのだと。それは、驚きでもあり、感動でもあった。
 この自分の存在が貴重に感じた。
 こんな自分でいいのだろうか。もっと愛していいのだろうか。戸惑いながら愛して来た。
 抱きしめたら、壊れてしまうと思っていたのに、愛は膨らんでいき、口付けしたら、汚しそうな気がしていたのに、心がほころんでくる。
 そして星をつかんだその少年は、もうとっくにひとりの男になっていた。
 自分がなりたいと背伸びをしていても、大人にはなれないが、一人前の自分を必要としてくれる存在、そして一人の男として願ってくれる人の存在が、彼をいつの間にか、大人にさせていた。もう、ナーバスで無責任な少年には戻りたいとは思わなかった。
 初樹は言ってみた。「アメリカ行き、止めた方がいい?」
 初樹の肩にもたれ掛けていた頭を、急に起こし、麗美は言った。「それはダメよ」
17

取って置きのキスシーンでした。
さて、渡米の話、
麗美は賛成ということ?!
↓引き続き次の回も、お楽しみください。






90140895_v1353759280.jpg


離れると思うと、
離れがたくなるもの
さて、さて…。
初樹と麗美はどのように…★


 初樹は拍子抜けしたような顔をした。
「一度決めたことでしょう」と麗美は言う。
「そうだけど」
「あなたは行きたくないの?」
「君が嫌だと思って」
「私は行ったらいいと思うわ。滅多にない機会よ、あなたにとって」
「俺に?!」
「初樹のためになると思うなら行ったらいい。私のために無理しなくてもいいわ」
 なんと、麗美は渡米しろと言うのだった。
「驚いた。だったら早く言ってよ。反対されてると思って…」
「反対って言った?」
「俺が行っちゃうと寂しいって、嘘?」
「じゃないけど…行くのがいいと思う」
「そう。…じゃ、何も問題ないわけだ、君が賛成なら」
 急に、渡米を阻むものは何もなくなって、悲しいとも嬉しいとも調子が狂ったともいえる表情をしている初樹に、麗美は言った。「お腹がすいた。のども渇いたわ」
「うん。じゃ、何か頼んでくる」と言って、初樹は席を立ち、階下の空の許に行った。
 初樹はすぐに空に報告したいところだったが、何と言ったらいいかわからなかった。それに、恋人を待たせているのだから、長々と報告をする余裕もなかった。
 初樹は二十歳の誕生日の晩に酔いつぶれていた、カウンターの椅子に軽く腰を掛けた。カウンターに肘を立てて、頭をこぶしに滑らせるように沈めると言った。
「空兄。俺、もうダメだよ。アメリカなんか行きたくない」
「ほう」
「もう、可愛すぎて麗美さんが」
「離れたくないってわけ」
「そうなんだ、でも行くと決めたからには行くんだ。空兄、食事と飲み物適当に頼むよ」と、初樹は言うと、また立ち上がって麗美の許に戻った。
 その名の通り美しい麗美、そして麗しいとしかいえない麗美の姿が初樹を待っていた。その晩の最後の客が帰っても、しばらく彼らの寄り添う姿は、残されていた。
 空の月は位置と傾きを変えながら、どんな洒落た照明器具にもまねできない、やわらかい白い灯りを灯していた。

 麗美との間で話が落ち着いて、初樹が卒業を前にして渡米の日取りも決めたところで、治郎の「待った」が掛かった。
「待った」というよりは、一つ「条件」を出したというところだろうか。
 それは初樹には、思ってもいないことであったが、渡米の「条件」というにはあまりにおいしい「条件」だった。
18


山あじさい展 2


明日は最終話です。
登場人物の確認は家系図をどうぞ。
    橘家家系図も参考にどうぞ
「三月さくら」シリーズ前後のお話は こちらから。



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18話 山あじさい展 2
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2016年06月30日

25 《空&初樹》 もしも大人になったなら8  【三月さくら〜番外編〜】

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小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
あ・じ・さ・い2


ロマンティックな
雰囲気に後押しされて、
初樹は、今日の目的を
果たせるでしょうか??★


「お腹すいていない?」
「大丈夫よ」
「飲み物は?」
「今はいいわ」
「うん。じゃあ後で頼もう」と言って、初樹は麗美を見た。それでは、目的に直進するのみだった。
「麗美さん…。こうやって、君を独り占めにしているのが、今でも信じられない気持ちになるよ」
 初樹はやはり麗美を呼び捨てでは呼べないようだ。ずっと昔、小さい子どもだった時には、「麗美ちゃん」と言っていた。従兄姉を呼ぶように。
 母、葉奈の十三回忌で来てくれた時からだろうか、初樹の高校がこの“Jiro's home”に近かったから、顔を合わせるようになって、心をときめかすようになった頃から、「麗美さん」と呼ぶようになった。彼にとって麗美は、空の星のように永遠に手が届かない存在であり、貴重すぎる存在だった。見上げれば見ることは出来るが、手を伸ばしても取れない、どこかそういう思いがしていた。
「ねえ、麗美さん」と、初樹はいつものように呼び掛けた、その問い掛けるような上目使いの視線もあって、彼がそう呼ぶ声にはどこか甘えるようなものが混じって聞こえる。
「何?」と、麗美が聞く。
「今日は麗美さんの考えを聞きたい。俺について、何でも」
 麗美は虚を突かれたような不思議そうな顔をした。
「急にどうしたの?」
「君の話が聞きたい。何でも言ってよ」
「『君』って言うの?」
「君がいいなら」
「…」それには答えずに、麗美は言った。「何を話せって言うの?」
「俺が麗美さんに甘え過ぎてるって思う?」
 麗美は笑った。「今更、なぁに?」
「わからなくなったんだ。俺は、一生懸命、大人ぶって来たんだけどさ、麗美さんにとって、年下の男の子のままでいた方がいいのか、どうか」
 麗美は更に笑って言った。「いつまでも、年下は変わらないわ」
「年のことじゃなくて。そのへんのこと、話してみてよ。ぶっちゃけた話、俺のこと、どう思ってるの?」
「どうって?信頼してるってること?」
「ふーん。で?続けて」
 なかなか答えられなかった麗美は、とうとうこう言った。「どうして、それを気にするのかな。大人ぶってたとしても、甘えてたとしても、私にはどっちでもいいわ。初樹は初樹だし」
「そう。そうだよね。よかった、気にし過ぎだった。この間母さんのことを話してしまったし、それで君が気を悪くしていないかって、それも気になってたんだけどね」
15

さぁ初樹の押しはいかに。
この章もいよいよ架橋を迎えました。
乞うご期待!!
↓引き続き次の回も、お楽しみください。







紫陽花・・PEN編08


初樹と麗美の
決定的瞬間が見られるかも、
の今回です★


「お母さんのことは、光栄だと思ってる。初樹がお母さんを亡くしてることは確かなんだし、私には想像がつかないんだけど」
「俺、母さんがいないこと、気にしていないつもりだった。でも潜在意識の中にあるのかな、誰か大切な存在がいるはずだって。きっと母さんのことをどこかで待ってたんだと思う。君のことは、もう、母さんより大切なくらいだ。母さんは誰にも換えられないけど、君もだ。そのことを、昨日言いたかったんだ」
 初樹はそう言い切ると、晴れやかに笑った。さっきの三日月のように。麗美はそれを見て、笑顔を返した。
「でも、俺がどんなに君のこと大切に思ってるか、わかってないよ、麗美さんは」と、初樹は笑顔のままでそう言った。
「…」
「本当は、君と離れて外国に行くなんて、自信がないんだ」
「初樹」
「きっと会いたくて、堪らなくなると思う」
 麗美はふふっと笑った。まんざらでもなさそうな表情は、隠してはいるが、かなり嬉しいに違いなかった。
 初樹は更に続けた。「君も心配だし」
「私が?」
「どれだけ君のこと、男たちが狙っているか、知らないの?」
「それってどういう意味?私が簡単に誰かに靡くって言うの?」
「心配しなくて大丈夫?」
「大丈夫よ」と、麗美は今度は少しふくれたように、そう言った。
「怒った?」
「怒ってないわ」
「目が怖いよ、麗美さん」
「だって」
「俺がいなくなると寂しいって思ってくれる?」
「…」
「俺は寂しくてどうかなりそうなのに」
 嬉しがらせられ、次は怒って目に力が入ってしまった後だったからか、麗美は感情を抑えられなくなった。眼元の緊張も急に緩んで、それが涙になった。
 彼女はめったに泣き顔を見せる方ではないが、いつの時も、初樹には実に効果的な涙だった。



「泣かない約束」

泣きたくなるのは夕暮れ
名もない花を見て
懐かしむ 母の面影
泣かない約束は いつでも
泣いた後で思い出す
七つの願い事が贅沢ならば
流れ星にひとつだけ託してもいい?
夏の夜の夢 
泣かずに超えたなら
夏の夜の夢 それはみんなの幸せ

内緒のはずだったよね…
仲直りが苦手な太陽が
仲良しの月と喧嘩した晩
失くしてしまったものは
泣いても 戻ってこないと知った
流れ星はいつも気まぐれだから
七つ星 私の願い叶えて
夏の夜の夢 
流した涙の分だけ
夏の夜の夢 それはあなたの幸せ

泣き疲れて 今朝は明けたのに
余波(なごり)を残さず 
凪いだ沖のように
和んだ一日
眺めのいい部屋から 夕空を見ると
泣き顔に 雨上がりの虹

涙はどこから来るの?
なんで温かいの?


七色の虹が
何かしら答えを教えてくれる
夏の夜の夢 
無しのつぶての初恋のよう
夏の夜の夢 それは私の憧れ


16

すみません。
決定的瞬間は
明日に持ち越しです。
それにしても
お母さんのことを持ち出しながら、
「君が大切」
に結び付けてしまうところ、
なかなか他の人には真似できません。
男はみなマザコンというけれど…。
最後につけた詩は、
初樹の姉である葉摘の思いを投影させて
第Y部第1章「海、山、街」に
挿入したものです
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    橘家家系図も参考にどうぞ
「三月さくら」シリーズ前後のお話は こちらから。




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写真は:紫陽花・・PEN編08
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