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2017年11月28日

(終)16《ゼロ・ポイント’17》 リセット、ゼロポイントからの再出発2 / 〜エピローグ〜 「忘れられた零地点」



小説 ▼△忘れられた零地点
〜ゼロ・ポイント〜△▼
5883742乳房雲と太陽柱.jpg


クライマックスです。
プロポーズのYesが
新しいゼロ・ポイントを決定しました。
俊幸と奈津美の会話の続きから★


「誰もお前を求めなくてよかった。俺だけが求めれば充分だろ」
「うん。私、期待してないつもりで、でも俊幸がきっと来てくれると思ってた。ありがとう」
「きっと俺が唾を付けたからだな。それが効いたんだ」
 そういう意味では、奈津美への噂があったから、彼女に男を寄せ付けなかったのだからと、今まで忌まわしく思っていた噂のことさえ、これでよかったのかもしれない、と俊幸は思った。

「絶対あきらめないことだよ」
 俊幸の脳裏にいつか早瀬が言っていた言葉が蘇った。本当にそのとおりだった。
「気持ちを伝えきらないとね。真子を大切に思っていることも、すまないと思っていることも、とにかく伝えきらないで、あきらめられないと思ったんだ。実際、必死だったよ」
 やはり真子の時と同じように、奈津美も彼の愛のすべてを確信できなかったから即Yesと言えなかったのだった。

 参考までに、ここで真子の場合について、述べておこう。
「雄一のために、親として当然一緒になるのがいいと思う」と早瀬が言った時には、彼女は、心を完全に閉じそうになったのだった。
「そういう理由でもなんでも君と結婚できれば僕はいいんだけど、そうじゃないんだ。もちろん、雄一のいい親になりたい。だって、君と俺とのかけがえのない息子だから。
 でもね、どうしたら、君にこの気持ちが伝わるのかな。どうしてももう、今までのようなことを繰り返したくないんだ」
 早瀬が過去を悔いて心から謝り、何年分もの思いを込めて「愛している」と言った時、けっして簡単に靡いたりしないと決意していた真子の頑ななはずの心は、自分が流す涙に解かされるように、何かが流れ始め、せき止めていたものが取られてしまうと、簡単に崩れ去ったのだった。

 かつて奈津美にとって、いつも記憶が戻ってしまう瞬間といえば、ファーストキスの時だった。その日から初恋の相手を待ち続けてきた。
 しかしその相手の俊幸にとっては、それから四年後の別れた日の彼女が忘れられなかったから、そのファーストキスの思い出は、ほとんど思い出すこともなかった。
 奈津美が失くした四年間の記憶、それゆえに時間の歪みができたように、二人はすれ違ったまま時を過ごしてきた。
 今、二人が手を取り合って見つめあい、微笑み合うこの瞬間が、今後彼らが共通に思い出す原点になるだろう。
 零地点(ゼロ・ポイント)とは、人の心が決める出発の基点だとしたら、間違いなく今日をゼロとすれば、二人共に笑顔になれるはずだ。
 もちろん、人生を簡単にリセットすることはできない。しかし、“愛”という魔法だけがそれを可能にするようだ。

 奈津美は、カバンの中から鍵を取り出した。「これ」
 俊幸はその見覚えがあるものを、手に取って見た。「懐かしいな。このキーホルダーは俺があげたんだ。入社してすぐの社内研修で、関西に行った時の土産」
「この鍵は?」
「俺のアパートの」
「私が来なくなって、振られたと思ったの?」
「…その前に、別れたと思っていたから」
「これね、お守りにしていたの。何か大切なものだという気がして。病院で多分流産の後、なんであそこにいるかわからなかった。今思うとあの時記憶を失くしたのね。なんでこの鍵を手に持ってるかわからなかったの。ごめんね、覚えてないなんて」
「いいんだ。どっちでもいいよ、覚えてても覚えてなくても。俺だけ覚えてれば十分さ」俊幸はにっこりと笑って言った。「俺にとっては今が一番幸せだよ。無理に思い出す必要ない。これからはずっと一緒にいるんだから」
29

ゼロ・ポイントとは、
帰り道の道標みたいな
ものかもしれません。
俊幸、奈津美二人の家に帰る道は
ようやく発見できました。
ここで終わってもいいのですが
次はおまけのエピローグです。
引き続き、↓ご覧ください。





雨上がりの空.jpg


思えばこの物語の初めも、
奈津美との
同じ診察室のシーンでした。
美春先生にもお世話になりました。
最終話、どうぞ★


エピローグ



 俊幸は、美春医師の所を久し振りに訪ねた。
「奈津美さんから、あなたの様子は聞いていたわ。すっかり良くなったようね」
「はい、お陰様で」
「よかったわ。奈津美さんとのことも、上手くいってるようだし…」
「はい。家族と一緒に過ごせるのが今はとても自然で。結婚も許してもらえたし」
「実は、あなたの方が心配な状態だったのよ、最初に会った頃は。奈津美さんの方は、安定していたところだったし、あなたと再会して純粋に嬉しそうで、精神的にも落ち着いていた。
 でも、あなたは以前彼女から別れ話を持ち出されたことでも、自分でも気付かないうちに大きな傷を持っていたのよ。お互いに愛し合ってるのに、それがうまく通じ合わなかったのね。お互いに傷を持ってた。
 その上、あなたは、彼女があなたとの過去の一番大切な記憶を失くしていることを知って、それだけでもショックなのに、彼女のトラウマを作った張本人だったことがわかった。きっと、彼女の人生を壊した≠ュらいに責任を感じてたはずよ。そういうことを気にしない人ならいいけど、あなたはまじめな人だから」
「確かにショックでしたよ。子供のこともだけど、奈津美に悪くて…。でも覚えてないんだから、謝ることもできなくて」
「赤ちゃんのことは、まだ整理できない?」
「俺は実感があったわけではないし。きっと何か意味があったと思ってますよ」
「これから、あなたたちが結婚して、幸せな親になればその痛みも越えられるわ」
「はい」
「いい家庭を持てるわ、あなたたちなら」
「これからは、いい報告も出来そうです」
「何かがなくても、また来てね」
「先生には、なんて感謝したらいいか。一番救われたのは、奈津美が俺をずっと待っててくれたって、知ったことかな。到底無理だと思ってたけど、ファーストキスのあそこから、もう一度、やり直すことが出来たんです。高校生の時のように。
 奈津美がどれだけ大切か気付かせてくれて、ありがとうございます。そして、奈津美にとって、俺が大切な存在なんだって、先生が繰り返し言ってくれたから、自信が持てたし」
「私は何もしてないでしょ。私が言う前から、あなたは奈津美さんを大切に思ってたじゃない、そう言ってたわ。私がしたことといえば、二人から、愛の告白をそれぞれ聞かされるのに耐えたことくらい。おのろけ話嫌いじゃないから」
「本当に先生のお陰です。俺も昔は照れて言えなかったことも言えるようになったし、生まれ変わったようです」
「ちゃんと言葉で確認しあって、愛情を表現する。やってる?」
「七か条、守ってますよ」
「夫婦になったら、夫婦生活のことが加わるから。まあ、今までの応用だけど」
「それは、結婚してからでいいです」
「あら、奈津美さんには既に言ってあるわ」
 美春の言葉に、俊幸は絶句し、空を染める夕陽のように赤くなった。

30

全30話を16回に圧縮して
お送りしました。
お楽しみ頂けましたでしょうか。

よろしかったら、
以前書いた「あとがき」もどうぞ
「ゼロ・ポイント」はパクリだった?!「あとがき」1
「ゼロ・ポイント」恋愛論☆「あとがき」2



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プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に、書き溜めた小説を編集し始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
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こちらから→幽霊っているんでしょうか


2017年11月27日

15《ゼロ・ポイント’17》 リセット、ゼロポイントからの再出発1 「忘れられた零地点」



小説 ▼△忘れられた零地点
〜ゼロ・ポイント〜△▼
6209707日の出と朝焼け.jpg


美しい日の入りと共に
クライマックスの節に突入です


第5節 リセット、再出発〜新しいゼロ・ポイント〜



 奈津美は俊幸の甥っ子たちを通して、自分が流産したという話を知ったのだった。
「お姉ちゃん、流産って何?」と訊かれて、突拍子もない質問に戸惑いながら奈津美は子どもにわかるように話してあげた。
「なんでそんなこと訊くの?」
「パパとママが話してたから」
「お姉ちゃんの赤ちゃんも、産まれなかったの?」
「死んじゃったの、赤ちゃん?」
「…赤ちゃんが?」奈津美は呟くように言った。
「かわいそうだね、赤ちゃん。でも、パパとママが、叔父ちゃんとお姉ちゃんは結婚するから、幸せになるって」
「ねえ、お姉ちゃん、記憶喪失なの?」

 奈津美は、以前から、自分に感じる近所の視線から、何かを感じていた。何か良くないことを言われている気がしていた。精神科に掛かっていることも関係があると思っていたが、そんな事実があるとは、思ってもいなかった。
 しかし、それを事実無根のことと言えなかった。自分が覚えていないことなのに、逆になぜか納得したのだった。
 俊幸が自分を見つめる視線にも何かを感じていた。彼はとても彼女に優しくしてくれる。しかし、言葉にしないながらも、その目の奥にどこか辛そうな淋しげなものを隠し持っているような気がしていた。言うに言えない思いを噛み殺しているような…。
 なぜ、時々あんなすまなそうな目で彼が自分を見るのか、奈津美は理解できたような気がした。推理を組み立てていくと、そうとしか考えられなかった。
 そういえば再会した時に、十二年も会っていないのに、彼があまり変わったように感じなかった。でも、ファーストキスの時に別れたままなら、あの時の彼の姿はもっと若かったはずだ。そのギャップが不思議だったのだ。
「私、多分覚えていることがあるの」と、奈津美は俊幸に言った。
「…?」
「あなたの声と、あなたの姿っていうのか、高校卒業の時とは違うから、おかしいと思っていたの」
 背後から彼にふわっと抱き締められた時、その感覚に記憶があるような気がしてそれも不思議だった。
 彼の低い声が耳元で響くように奈津美の名前を呼ぶ。高校生で別れた切りだとしたら、そぐわない記憶だった。
「奈津美…」と、俊幸が心配げに彼女を見た。
「私ね、俊幸に名前を呼んでもらうの好きよ。前からそれだけは覚えてた。遠くからじゃなくて、すぐ近くで呼んでくれるの。高校までは、そんな至近距離で話したことなかったから、おかしいとは思ってた。付き合ってた時の記憶だと思う」
 その頃は愛の言葉を口にすることのなかった俊幸が「奈津美」と呼ぶ時には、「愛している」と同じような思いが込められていた。
 俊幸にとっても別れている間、「奈津美」という名前だけで、愛の記憶がすべて蘇ってくるほどだったのだから。
 「声」というのは、普通の記憶よりも印象深かったりする。
 男性と付き合ったことのない奈津美が、見合い相手に紹介された早瀬の声を電話で聞いた時に意外な気がしたのは、どこかで俊幸のイメージをもっていたからだと、奈津美本人は気づいていた。
 人は千差万別、声からして俊幸と違うのは当然のことだというのに…。あの時、清水の舞台から飛び降りるような覚悟でお見合いをしたのが、まるでずっと昔のことのような気がした。
27


俊幸は低くよく響く声の持ち主。
愛する人に呼ばれた記憶というのは
忘れられないものなのでしょう。
引き続き、↓次の回もご覧ください。






5733411夕焼け.jpg


奈津美は
抜け落ちた記憶を
思い出せないまでも
認識しました。
ここから、また新しい出発です。


 記憶は失くしていたが、奈津美はずっと何かが足りない気がしていた。自分にはかけがえのない存在があるはずなのに、家族や友だちの数を何度数えてもそれ以上はいないのだった。ぽっかりと穴が開いたような何か。虫食いだらけの記憶、顔の抜け落ちた写真。
 奈津美はその頃のことではなく、子供の頃の懐かしい思い出に浸るようになった。恋人としての俊幸を記憶から消し去ったのは、もうそれ以上失わないためだった。
 恋人の存在を消すということは、恋人であった自分自身も消すということだ。消しゴムで消してもすっきり消しきれない残像が、奈津美の心を落ち着かなくさせてきたのだ。

 奈津美の話を聞くと俊幸は言った。「みんなが、お前のことを、心配してたんだ。全部を知る必要はないよ。俺も今こうしてお前と再出発できてよかったと思ってる。これからの方が大切だろ?」
 奈津美は頷いた。
「俊幸にまた会えてから、嬉しいことばかりで、夢が覚めるみたいにお終いになりそうで、怖かったの」
「俺が嫌だった訳ではないんだ?」
 奈津美は首を振った。
「嫌だってことか?」
 奈津美は手を振って言った。「違う。嫌じゃなくて…」
 俊幸は奈津美の顔を覗き込むように言った。「じゃあ、何」
「嫌じゃないってば」
「俺にばっか言わせるんだな」
「…私は俊幸のこと、ずっと好きよ」と、恥ずかしそうに奈津美は言った。
 俊幸は彼女を見て微笑むと、その手を握った。奈津美はまた言った。
「中学の時だってそうよ。俊幸は優等生で、私とは釣り合わないって思ってた。女子にも人気があったから」
「そうか?高校からはそうでもないよ。E高に入ったものの、勉強も付いてくんで、やっとだったんだ。女にもモテタことないよ。知らないだろ、お前こそ。バラせば、俺の高校でさ、お前のことを紹介しろって奴がいてさ。コウジからの情報だけど。俺がガン付けてやめさせた。誰かに先を越されるかずっと心配だった。だから、あの日告白したんだ」
 俊幸は奈津美の手を更に強く握った。奈津美は俊幸を見つめた。
「私は幸せね。そんな風に俊幸に思われてるなんて知らなかった」
「もっと早く会いに来ればよかった。俺は自分に自信がなかったんだ。ずっと言いたくても言えなかった。お前を待たせて、ごめん」
「前にも言ってくれたじゃない」
「前は、十二年前のことを言ったんだ。これは八年前のこと」
「だって、それは私が別れるって言ったって…」
「俺たちは、お互い待ってたんだ。お前が誰かのものにならなくてよかったよ。知らないだろ、どれだけそれが怖かったか、お前が誰かと幸せになってる姿を見るのが。だから、帰って来れなかった」
28


いよいよクライマックス!
ゼロ・ポイントとは
なんだったんでしょう。

明日、一気に
エピローグまでお届けします。




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2017年11月25日

14《ゼロ・ポイント’17》 ターニング・地点(ポイント)3 「忘れられた零地点」



小説 ▼△忘れられた零地点
〜ゼロ・ポイント〜△▼
今日はプロポーズ・シーンを
一気にお送りしましょう★

6215010夕空と木の枝.jpg


そう、もうプロポーズをしなければ!
しかし奈津美の反応は??★



 俊幸は意を決してプロポーズをするために、奈津美を公園に呼び出した。どこか気の利いた店でというよりは、この公園が二人にとってはふさわしい場所だと思ったから。
 夕方になると、俊幸たちの子供の頃と違い、子どもたちは早々に家に帰っていく。帰宅時刻というのが決まっているらしい。
 その時間というのは、実はとても美しい時間なのだ。
 夕日を背に受けて俊幸は、口を開いた。単純な求婚の言葉だったとしても、奈津美には届いたはずだ。
 きっと受け入れてくれると、彼は考えていた。美春医師からの情報でも、彼女は結婚をとても望んでいるし、何より愛し合っている自信があったから。
 感動し涙で潤んだ瞳で、彼女が返事をしてくれるのを彼はどこかで思い描いていたのだ。
 奈津美はその言葉を聞いても、しばらく無言だった。顔には笑顔がなかった。
 彼女は尋ねてきた。「私でいいの?」
「だから、プロポーズしてるんだろ」
「でもね、私のことを、今まで求めた人は誰もいなかったのよ。俊幸が今度は後ろ指差されることになるわ、私なんかと結婚すると」
「…どうしてだよ」
 いい返事を期待していた俊幸にとって、奈津美の反応は理解できなかった。
 しばらく、彼はいろいろ聞き出そうとした。そして、彼が奈津美の様子がどうも変だと感じた時、彼女は話し始めた。
「…私知ってるの。あなたに辛い思いばかりさせてる。責任なんて取らなくていいの」
「お前…まさか」
「思い出したわけじゃないわ。聞いちゃっただけ。流産のことと、記憶喪失のこと。皆が私のことを何か噂しているのは前から知っていたけど…」
「奈津美」と言って彼は彼女を見た。「…大丈夫か?」
「大丈夫よ、事実を知っただけだもの。心配しないで。…ごめんね、俊幸」
「なんであやまる?」
「だって、私のこと、責任感じさせちゃってるでしょ」
「お前、責任、責任ってな、好きな女のことは、責任取りたいんだよ。
…もう一度言うよ。結婚してくれ」
「私は、あなたにふさわしくないと思う」
「ふさわしくないって、どうしてだよ!」俊幸は食い下がったが、奈津美は頑なに首を縦に振らなかった。
 奈津美のYesをどうしても聞けなくて、俊幸はもう少しで、そのままその場を立ち去るところだった。かつての彼だったら、ここであきらめたかもしれなかった。
 しかし、大きく息を吐き、思い留まった。奈津美のために何でもすると心に誓ったのだ。
 事実を知ったという奈津美は、今までの一心に彼に尽くしてくれた彼女とは別人のようにも見えた。
『いや、事実を知って動揺しているだけだ』
 このままでは彼女を失くしそうな気がして、彼は堪らない思いになった。
 辛うじて美春医師の忠告を思い出し、俊幸は率直に言葉にすることにした。
 そして、言った。「俺はお前と離れたくない。ずっと一緒にいたい。お前以外いないんだよ。
 …愛してる」
25

恐れていたことが
起こってしまいました。
ようやく
意を決したプロポーズでしたが…。
引き続き、↓次の回もご覧ください。






夕焼け.jpg


プロポーズしたものの…
さぁ、逆転なるか!★


 俊幸の両眼からは自然に涙が流れた。
「お前が嫌でも、俺はもう決めたから、絶対お前と一緒になるって。お前のお父さんお母さんもいいと言ってくれてるし、うちの家族もお前を歓迎してる。俺だけじゃなく、皆でお前を守る。お前が俺を嫌でも…」
 俊幸は、涙にむせて募る思いも言葉に出来なくなった。
 そして、奈津美をただ両手で抱いた。涙がこぼれるのをそのままにしながら。
 腕に抱いたままで、彼は思わず口に出していた。「お願いだ。もう、別れるなんて言うなよ。お願いだから…」
 言ってしまってから、俊幸はシマッタと思った。奈津美は記憶がないのだ。
「…私が前も言ったの、別れるって?」と、奈津美が訊いた。
「奈津美」
「そんな、はずない。違うでしょ?」奈津美が言ったが、俊幸は答えられなかった。
 数秒の沈黙の後、奈津美は急に笑い出した。気がおかしくなったのではないかと思うほどだった。何かそれまでの長い期間、押さえつけられていたものが、一気に噴出したのかもしれなかった。
 ひとしきり笑ってから、呟くように言った。「こんな俊幸は初めて。私のことを愛してるって本当なのね?」
 その顔には笑いが残っていた。恋人の愛を確信して思わず漏れてしまう笑みだった。
 俊幸は涙に濡れたままの顔を起こして奈津美を見た。「本当に決まってるだろ」
「私がきっと振られたんだと思ってた、前の時も。今も俊幸が無理に私と付き合ってたのかと」
「俺が、こんなに言ってるのに…。こういう照れ臭いこと言い出すのも大変だったのに」
「ごめん」
 俊幸はまた、奈津美をじっと見ると言った。「愛してる。本当だよ」
 奈津美の目は見る間に潤んできた。
 俊幸はポケットから、指輪を取り出した。
「受け取って」と、彼は言った。
 奈津美のその手が、恐る恐る指輪に伸びた。
「ありがとう、嬉しい」
「Yesってこと?」
 奈津美は頷いた。「俊幸がほんとにいいなら、結婚します」
 期待していたまさにそのごとく、潤んだ瞳で彼をみつめて「Yes」と言ってくれたのだった。
 俊幸はもう一度奈津美を抱き締めながら言った。「よかった。マジ焦ったよ」
 眼に沁みるような夕陽の眩しさは、心にも染み渡るようだった。

 二人は暗くなっていく公園のベンチに寄り添って座った。
 奈津美が言った。「ごめんね、やっぱりショックだったの、私」
「そうだろ。何をどう聞いたの?」俊幸は温かく奈津美を包み込むような優しさで満ちていた。
26

第4節は
これで終了。
いよいよ物語はクライマックスに…!




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