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2017年06月17日

98 真夏の夜の夢?! 〜夏祭りの晩に〜2   ❀三月さくら2017❀ 【三月さくらY-4】 


碧斗と未来の物語
「じゃじゃ馬ならしプロジェクト?!」の最終話。
初デート…
とっておきのシーンです★
小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
3950042朝顔.jpg


夏祭りの晩の続きから。
「好き」と伝え合った二人は…★


 未来は言った。「私、自分でも気が付かなかったけど、ずっと待ってたの。いっつもわがまま言ってるように見られるんだけど、ほしいものをはっきり言えなかったのね。ホントにほしいものって、ほしいって言えなかったりするのね」
「なんだよ、それ」
「私は我が儘で言いたい放題って思われてるけど、とても受け身的な人なの。最初の言葉は碧斗から聞きたかったの」
 碧斗は微笑んでもう一度言った。「ずっと未来が好きだった」
 未来のパッチリとした目に涙が溢れてきた。そんな潤んだ目で碧斗を見つめて言った。「碧斗のことだけ好きだった」
「うん。俺もだよ。…こういうこともやっぱり俺からってことだよね」
 碧斗は未来の手を引いて、人目の届かない木の陰に連れて行き、口付けした。
「今日は帰りも手を繋いで帰ろ」
 一度放していた手を繋いで、まだやっている屋台を覗きながら二人は歩いた。鳥居を過ぎて、そしていつのまにか駅の方まで来てしまった。
 店まで自転車を取りに行くのもなんだからと、電車で帰ることにした。
 未来を家に送り届け、別れ間際のなんと名残惜しかったことか…。

 “Jiro's Home”にいる志道からメールが入っていた。碧斗はその足で志道の許に向かった。
 入り口は開いていて、志道がピアノを弾いているようだった。灯りはほとんど消された中で、ピアノの音が際立つように聞こえていた。
 ひとしきり弾き終わると、志道は碧斗の側にやって来た。
「ごめん。邪魔しちゃった?」碧斗は言った。
「待ってたんですよ。送りながら、話しましょうか。今晩はどうでしたか?」
「うん、よかったよ。なかなか二人だけで会う機会がなかったから。毎晩自転車で送って帰るんだけど、いつもは照れ臭くってさ、まだ未来にはっきり好きだとも言ってなかったんだけど」
「今日は言えましたか?」
「うん。自然に言えてしまった。不思議だよね。俺って、こんなにも未来が好きだったんだって。好きだって言ったら、もう可愛いくてさ、キスまでしてしまった」
「へぇ」と言いながら、志道は何気ない顔の中に驚きを隠し込んだ。
「若者はやりますねぇ」
「志道兄だって、まだまだ若いでしょ」
「あなたの勢いには負けますよ」
「一気に行きすぎだったかなぁ。まだ、お祖父さんの許可ももらってないのに」
「ああ、そのお祖父様ですが、日曜の午前中なら時間が取れるそうですよ」

いよいよ次は
「じゃじゃ馬ならしプロジェクト?!」の
最終話となります。
「終わりよければすべてよし」となりますか、
お楽しみに!
引き続き、↓次の回もご覧ください。






2770182マメアサガオ.jpg


「じゃじゃ馬ならしプロジェクト?!」の最終話です 
碧斗と志道の会話の続きから…★


「日曜か」と、碧斗は言った。
「何か予定ありましたか?」と、志道。
「うん、大丈夫。未来とどこかに行こうと思っていただけ」
「お祖父様と会った後、時間がありますよ」
「そうだね。じゃ山はやめて」
「山?」
「兄貴に最初のデートのことを聞いたらね、“海、山、街”どこがいいって聞いて、海になったんだってさ。水族館に行ったらしい」
 志道も、さちと見た海岸の風景を思い出した。
「きれいな景色を二人で見るというのもいいものですよ」
「うん。じゃあ海プラス水族館コースといこう」
 碧斗を送り届けると、実は一番奥手であり、出遅れた感のある志道はつぶやいた。
「水族館か」そしてまた一言「キスか」

 碧斗は自分の部屋に戻ると、仕舞ってあった箱を取り出した。あの頃遊んでいたおもちゃと共に、あのお面も入っていた。
 碧斗は手に取りながら、何かに思いを馳せているようだった。その目と口許には微笑があった。


 次の日曜日を待たずして、直接その人はやってきた。
 三和孝司は、“星の家”のドアの鐘が鳴り終わらないうちに、自然に常連客であるかのように、カウンターに迷わず来て座った。
「コーヒー」
「お祖父様!」と、思わず言ってしまった未来に、星一が言った。
「未来ちゃん、お冷とお絞り頼むよ。コーヒーお聞きしてるから」
「はい」と言って、未来は「いらっしゃいませ」と言いながら、水とお絞りを出した。
 そこへ奥の厨房から碧斗が現われ、「はい、イタスパあがったよ」と、カウンターに置いた。
「丹波野さんセット行ってる?」
「あ、まだです」
「じゃあ一緒に持っていって」と碧斗に言われ、「はい」と、フォーク、ナプキン、タバスコ、粉チーズを持って、未来が運んで行った。
 それを見送ってから、碧斗は孝司に気付いた。
「こんばんは。ようこそいらっしゃいました」と碧斗はそう言って頭を下げた。
「聞いてはいたが本当だね。この目で君たちの姿を見てみたくてね。百聞は一見にしかずと言うからね。口では何とでも言えるが、これを見れば納得せざるを得ないね」と孝司は言った。
「普段の通りにしていてくれたまえ」と、孝司は碧斗を仕事に戻らせ、星一に向き直って言った。
「孫娘まで預かってもらって、本当にありがとう。あなたはどう思っているのかな、ふたりのことを?」
「正直言って、まだしっかり賛成しているわけではないんです、私は。二人の様子を見守って、賛成できるようになったら応援する、自重して付き合えって言ってあるんです」
「当然のことですよ」
 孝司の存在が気になりながらも、碧斗と未来は客の応対があったので、いつも通り動くしかなかった。
 孝司は星一と話を交わしながら、二人の様子を見ていた。
「治郎君の時と同じだな。どうも私は、あなたの息子さんを気に入ってしまったよ」
 そう言いながら孝司は治郎の時には断念したことを、今度こそ果たしたいと胸の内では思っていた。
 この晩の月は、もう後がないほどに薄くなって剣のように光り、きれいな弧を描いていた。

碧斗の兄とは星矢。
「海、山、街」の主人公ですね。
碧斗と未来は大学4年の夏。
志道は27歳。まだ若いですが
学生の勢いは刺激になるようです。

「じゃじゃ馬ならし」プロジェクト?!は
シェークスピアのスピリットと
もしかしたら“星の家”に住んでいる妖精の仕業
はたまた月のパワーで?!
区切りがつきました。

また次章からは
志道がメインのお話になります。
「水族館」と「キス」は
次章でもキーワードとなります。
碧斗と未来は
次の章にも少し登場しますが、
Z部「九月 孔雀の羽が広がる瞬間」
が続編となります。
前後のお話 はこちらから→ 三月さくら 目次                        
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プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に、書き溜めた小説を編集し始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
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2017年06月16日

97 真夏の夜の夢?! 〜夏祭りの晩に〜1   ❀三月さくら2017❀ 【三月さくらY-4】 



小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
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まるで夢のような、
夏祭りの夜のお話です。
碧斗と未来の初デート★



  第四節 真夏の夜の夢?!
           〜夏祭りの晩に〜




 その夏祭りの宵宮の晩は、“星の家”にとって、日が暮れると夜が進む毎に忙しくなり、日付をまたいでもまだ客が引かない時もある、一年でも類をみない、書き入れ時だった。嫁いだ茜も出産等で来れなかった以外は手伝いに来ていたし、蒔原家は親子総出となるのが常だった。
 未来もバイトに慣れ始めていた。毎晩碧斗が自転車を並べて送っていく、それが唯一の二人で過ごす時間だった。高校で始まるはずだった二人の恋だったから、それがふさわしかったかもしれない。しかし今度は確かに始まっていた。
 その晩も例年に漏れずに、ひっきりなしの客に追われていた。そして、静かにだが客足が引いていくのだ。通りを行く人の声も、ひと時よりは少なくなったようだった。
 星矢が、星一にもうあがったらと勧め、星一は息子たちに甘えて帰って行った。
 そして、星矢は碧斗にも言った。「お前も今日はもうあがっていいぞ」
「え、なぜ?」
「未来を送って帰るんだろう?」
「だって、客はこれからも」
「いいって。お前たちがいなくてもなんとかなるさ。この前見捨てた代わりだよ」
 つまり、「じゃじゃ馬ならし」のため二人で店をやらせた、その借りを返すということなのだろう。星矢は声を落として言った。
「今からならまだお参りして、祭の屋台くらいは覗いて行けるだろ。デートらしいデートしてないんだろ?」
 碧斗はありがたく兄の言葉を受けて、未来と店を後にした。店の脇で待っていると、出て来た未来はさっきと装いが違った。
「着替えたの?!」
「うん。いつかみたいに濡らした時困ると思って、持って来てあったの」と、未来は答えたが、仕事用とは思えない、可愛いワンピース姿に、華奢なサンダル履きだった。
 二人は自転車は店に置き去りにして、人通りは少なくなったとはいえ、まだお祭気分がしっかり残る街を歩いた。
 お宮さんの入り口付近で、砂利道にサンダルの足を取られないように、初めて二人は手を繋いだ。いや、ずっと幼い頃、そういえばこういうことがあったような気がした。
 同い年の二人は、幼い頃は仲がよい時もあれば、けんかもする、そんな近しい関係だった。一緒にいる日は、必ずけんかで未来が泣くか、しかめっ面をして「碧斗、大嫌い」となるのが落ちだった。
 二人は参拝して、まだやっている屋台を見て歩いた。早い時間だと人の波で自由に前に進めないくらい混み合うのだが、今は人もまばらになってきている。
「ここ、前に来たことある」未来が言い出した。
52

手をつないで、
神社の鳥居をくぐる。
子供の頃のことも思い出されて
胸が高鳴るようです。
引き続き、↓次の回もご覧ください。






2395620朝顔.jpg


夏祭りの晩、
碧斗と未来の初デートのつづき★


 未来は幼い晩のことを思い出して更に嬉々として言った。
「金魚すくいしたの、そういえばここよ。さっき、お参りした所も、人が多すぎてお賽銭箱まで届かなくて」
「そうだね。イチおじさんに僕たち兄弟はいつも連れてきてもらってたんだけど、君たちが来たこともあったと思うよ」
「行く時は、碧斗と手をつないで行ったの」
「帰りは?」
「多分、お兄ちゃん。碧斗がお面被って変なことをしてたから」
 屋台で買ってもらったお面を被って、碧斗がおどけたり、ちょっと怖い声を出すと、未来がすごく嫌がった。
「ああ、思い出した。あのお面、しばらく家にあったんだけど」
「どうして私の嫌がることばっかりしたの?」
「ガキの頃ってそうだろ。好きな子にちょっかい出すんだ。未来が好きだったからだよ」
「そうなの?」
「未来だってそうだろ。いつも思い切りしかめっ面されてたよ。あれって、俺が嫌いだったから?それとも好きだったから?」
「…」
「どっちだよー」
「知らない。忘れちゃった」
 面接の時、碧斗の両親に向かって臆することなく、彼をずっと好きだったと言っていた未来だったのに…、そういう思いが湧いて、碧斗は小さく呟いた。
「なんだ、言ってくれないのか」
 未来が言った。「嫌われてると思ってた」
「えっ」
「いつも私のこと無視してたでしょ」
「いつの話?」
「高校の頃だって、お店に集まるようになってからだって」
「高校の時は、勇気がなくて。君はたいてい周りに友だちが一緒で。“星の家”で集まった時って、二年前?」
「うん」
「久し振りに会って嬉しかったな」
「最初の時にはちょっと話したけど、後はあまり話してもくれなかった。だからてっきり嫌われてるのかなって」
「君のこと、見るに見れなかったんだ。ずっと気になってた。話し掛けるなんてできなくて、ずっと見てない振りで見てたんだ」
「無視されてると思ってた」
「俺も葛藤してたんだ。君が…」
「男付き合いが激しいからって?」
「まぁ」
「付き合ってた人なんていないわ」
「そう?」
「そういう風に見せてただけ。合コンなんて好きじゃないけど、よく誘われるの。いるだけでいいからって、男の子からも女の子からも。パパたちが付き合ってると思ってたのはみんな友だちとか、たまたまそこにいた人たちよ。今までは暇だったから、退屈しのぎで行ってたけど、よけい退屈になるだけだった。もう行くこともないと思う」
「本当にもう行かない?」
「もう一回、碧斗がちゃんと言ってくれたら」
「なんて?」
「まだしっかり言われてない。私のこと…」
「未来が好きだよ」碧斗ははっきり言った。
「私も碧斗が好き」
 その言葉を直接聞くと、碧斗は胸がいっぱいだった。

そっか、「好き」というのは
初めてだったんですね。
「好き」と言って
「好き」と返ってくる。
ちょっと甘酸っぱ過ぎですが…。
初デートはまだまだ続きます。


 初めての戸惑いは 
 はじらいか 
 反発か 
 華やいだ その思い 
 はずんでも すぐ沈む 
 半分は 嬉しくて 
 半分は 困ってる 
 早く過ぎてほしいのか 
 早く行くのが惜しいのか… 
「 初デート 」

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2017年06月15日

96 終わりよければすべてよし?! 〜「じゃじゃ馬ならし」の種明かし〜  ❀三月さくら2017❀ 【Y-3・2】


第三節の3話を
まとめてどうぞ☆
小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
コンボルブルス.jpg


兄たちの計画は何だったのか。
新節スタートです★



   第三節 終わりよければすべてよし?!
    〜「じゃじゃ馬ならし」の種明かし〜




 時季は八月の暑い盛り。動き出した「じゃじゃ馬ならし」プロジェクトは、とんとん拍子で、好結果をあげた。まるで、ドミノ倒しの一駒目を押し出しただけで全てが流れるように、一組のカップルが誕生した。
 あの、初樹と麗美を結びつけたプチ奇跡の晩は、その時には顔も合わさずにいた碧斗と未来にも何かを与えたのに違いなかった。愛のエネルギーを充満したように丸く明るかった月が、日に日に痩せていったのは、二人にそのパワーが注がれていたからかもしれない。
 そもそも「じゃじゃ馬ならし」プロジェクトとは、父親たちの後押しの下に、星矢と志道が組んだ筋書きだった。
 星矢はお見合いに碧斗を引っ張り出すだけで、表には現われなかったが、“星の家”での二人きりの一日を作るために陰で環境を設定したのだ。
 志道は、祖父・三和孝司を動かして、お見合い候補者を集め、またお見合いの場を設定した。
 孝司はその計画を知らなかったのだが、治郎からもお願いの声が掛かり、腰をあげたとなると、あっという間にその候補者たちを集めてしまった。
 日曜の午後の見合いでは、林という男を推しているように見えた孝司だったが、それは、やはり考えがあってのことであった。
 見合いの場から去る碧斗と未来を見送ると、志道が孝司の傍らに立って言った。
「いい奴ですよ」
「お前の回し者か」
「僕たちの大切な未来を取り返せるのは、彼しかないと思っています」
「誰だ?…ああ、蒔原と言ったな」
「“星の家”の次男ですよ」
「元々未来と付き合っているということは?」
「そんなことはないです。そうだったら、わざわざお祖父様に縁談を探すようにお願いしたりはしないですよ。未来のことを父さん、母さんも心配していたので、何とかならないかと思ってお願いしたんですから」
「お前の狙いは悪くなかったな。あの娘を三和家の跡継ぎにすることも真剣に考えることにするよ。四人の男性を前にして怖気づかず、誰一人も気を悪くさせずに帰して、本命を掴むんだから」
「本命だって思いました?」
「あの娘を本気にさせるために、わざともう一人にチャンスを残したんだ」
「さすがです。お祖父様」
 孝司は、治郎を初めて見た時に好感を持ったように、実は碧斗にも惹かれるものを感じ始めていた。


 丹野家で未来と付き合うことを許可された翌朝、碧斗は自分の両親と話をしていた。
 星一夫婦は昨夜治郎から報告を既に受けていたし、承知していたことであったのだが、こと男女のこととなると偏屈さを発揮してしまう星一は、今まで放任主義で 伸び伸び育てていたはずの碧斗に対しても、はっきりとうんと言わないのだった。
「治郎おじさんの所は喜んでくれたのに」
「知っているさ。まぁ、二人とも若い。会うなとはもちろん言わない。自重して付き合うんだな。二人の様子をよく見てから俺も応援する時には応援することにするさ」
「だめってことでは、ないってわけ?」
 陽子が助け舟を出した。
「ねぇ、とにかく未来ちゃんを呼んで、話を聞いてみましょうよ。バイトの面接も必要でしょ?」
「そうだな」星一はようやく承知した。
 父のいない所で碧斗は母に訊いた。
「ねぇ父さんって反対なの?未来のこと、きっと誤解してるんじゃないかな。それとも俺がまだ半端だから…」
「違うわよ、碧斗。お父さんは、この間あなたが店をちゃんとやれて、すごく喜んでいたのよ。誰よりもあなたたちのことを考えてるから、敢えて厳しいこと言うの。でも、未来ちゃんに会ったら大丈夫だと思う。女の子に弱いのよ。実は面接もしたことないの」
49

オヤジ、星一は何か言っていますが…。
プロジェクトの全貌についても
(といっても大それたことはないのですが)
この節で明かされていきます。

第三節のタイトル「終わりよければ全てよし」も
ご存知、シェークスピアの戯曲の一つです。
この小説では
「終わり」の節ではないのですが…。






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未来は本当は
どんな女の子なのか。
汗をかいても暑苦しく感じない
爽やかさを持っているようです★


 その日は午後になって更に暑さを増していた。外は街路樹の陰だけが日差しをしのげるわずかな空間だったが、アスファルトからの照り返しで、その陰の中でさえ過ごしやすいとはいえなかった。
“星の家”の前には、朝顔のカーテンが作られていて、その一角だけ、自然な陰が涼しさをかもし出していた。
 二時に未来がやってきた。汗びっしょりだった。
「自転車で来たの?!」碧斗が驚いて訊いた。
「うん。二十分くらいで着いたわ。ちょっとこの時間は暑いけど、帰りも困らないし」未来は笑顔で答えた。
 未来は、碧斗の両親、星一とみどりが面接するため、奥のスタッフ休憩室に呼ばれた。
 碧斗は気になりながらも中に入ることはできなかったので、もう一人のバイトに「客が来たら知らせて」と一言言い置いて、休憩室の外で中を窺った。ずっと以前に、未来の母・陽子が面接を受ける時、治郎が外で途中まで聞いていたように。
 星一が話すことはなく、ほとんど、みどりが未来に質問していった。
 どうしてバイトしたいのかと質問されて、未来は答えた。「二日間、お留守番の時お手伝いに来て、大変だったけど、とても楽しかったんです。私に役に立つことがあるなら嬉しいですし、お客さんに喜んでもらうのも」
「碧斗がいるからってことはないの?」
「…もちろんないってことはないです。だってご両親のお店なんだし、碧斗君も働いてるんだし」
「ここはね、実はスタッフ同士の恋愛は厳禁なの。私たちもあなたのご両親も結婚してるのになぜって思うかもしれないけど、皆卒業してからとか、バイトを止めてからお付き合いしたのよ。もしも恋愛を目的にここを使うなら、お客さんや他のスタッフにもよい印象はないし、本当の意味での愛情は育たないと思うの。けじめを付けられないなら、バイトは無理よ」
 碧斗が部屋の外で思わず呟いた。「母さん、そりゃ父さんより厳しいよ」
 しかし未来は「はい」と、はっきり答えて言った。「けじめを付けるというのは、どうしたらいいんでしょうか」
 みどりと星一は顔を見合わせて微笑んだ。「お母さんとそっくりね。マスターの方針はね、厳密には付き合っちゃいけないってことではないのよ。勝手にしないで、相談すること。二人だけで盛り上がるとバイトどころじゃなくなるからってことなの」と、みどりは言った。
「はい」
「あなたのお母さんがバイトしたいって言って来た時も、私が面接したの。その頃のこと聞いてない?」
「パパのことが好きで、側にいたい一心でバイトすることにしたって」
「お母さんはね、個人的な思いはずっと抑えて、スタッフとして一生懸命働いてくれたわ。お父さんへの思いは私たち皆知っていたけど、その一途さには感服したものよ」
 ずっと黙っていた星一が口を開いて言った。「碧斗が好きなら、二人でどこかに遊びに行ったり、外で付き合えばいいんじゃないか?ここで働かなくても。そもそも何で君が?本当に碧斗のことを好きなのかい?急なことだから驚いてるんだ」
「私の方が一番びっくりしてるかも。つい、この間までは考えもしなかったことをしようとしているんですから」
 未来は真っ直ぐに二人を見つめて言った。「でも、碧斗君が好きなのは本当です」

引き続き、↓次の回もご覧ください。






4803659西洋アサガオ.jpg


今日が本当の
プロジェクトの種明かしとなります。
まずは、未来が
碧斗の両親の前で
「碧斗が好き」と言った場面から★


「実は高校の時から。ずっと私の片思いだと思ってたから。もうあきらめていたのに、この間お店で一緒に過ごせて、とても幸せだったんです。私も彼の役に立って。楽しかったし。だから、卒業までの期間、一緒にこのお店で働きながら過ごせたら嬉しいってやっぱり思います。母のようにうまくやれるかわからないけど、けじめも付けてやってみたい。無理でしょうか?」
 今も未来は、純粋な高校生の頃のような目で、星一とみどりに碧斗への思いを恥じることなく伝えてきた。
 星一はそんな未来の姿を見て、かつての陽子やみどりの姿が重なったに違いなかった。
「まぁやってみたら?なぁみどり」と、彼は言った。
 碧斗も、胸を撫で下ろしたが、別の意味で、その胸はさっきより落ち着かなくなった。その場をすばやく立ち去って、何気ないように業務に戻りながら、胸の鼓動を抑えた。
「碧斗君が好きなのは本当です」未来の言葉が蘇ってきて、彼は平常心ではいられなかった。「やばいよ」と、碧斗は呟いた。


 碧斗と未来を急接近させたのは、二人だけで店をやった一日があったからだが、それは実は仕組んだものだったと、星矢が碧斗に明かしたのは、もう少し後のことだった。
「お前らしさを最大限に発揮させて、二人が近づくにはこれが一番だろうと思ってさ。茜もわざとドタキャンしたわけ」
「それはないよ、兄貴。うまくいかなかったら、どうするつもりだったの」と、碧斗が言うと、星矢は言った。
「信じてたさ、お前なら絶対勝つって」
「勝つって何に勝つんだよ」
「思った通り、やってくれた。じゃじゃ馬ならし≠セよ」
「へ?」と碧斗はしばらく不思議そうな顔をしていたが、笑いをこぼし始めた。「未来がじゃじゃ馬=H」
「見事だったよ」
「冗談じゃないよ。もしかして、全部仕組んでたの?」碧斗は空いた口がふさがらないという風だった。
「お前が父さんたちの留守も店は任しとけ、と大見得切っていたからさ」
「まさか…」
「親父たちには1泊多く引き伸ばしてもらって、旅行がてらゆっくりして来てもらった。いい親孝行になったぞ。店があるから、旅行なんてしたことないだろ、父さんと母さん?」
「そうだったんだ」
「みんなお前たちのためを思って、考えたことだ」
 碧斗はしばらく何も言えなかった。そして、笑い出した。
「どうして、そんなこと考え付くんだよ。見合いとも知らずに俺は、店の助っ人が見つかると思って行ったんだから。悔しいな。どこからどこまで仕組んだの?」
「ほとんど仕組んでないよ。お前たちが自然体でなるようになったという感じだろう?」
「ねえ、まさかあの派手な見合いも芝居?」
「だから仕組んでないって。ちょっと三和のお祖父さんをつついてもらって、本当の縁談を用意してもらったんだから」
「て言うことは…?」
「お祖父さんは、未来の相手選びにかなり本気みたいだ」
「そこは、本当なの?…厄介なことを」
「お前の方からお祖父さんに会いたいと言ったそうだな?余裕じゃないのか?」
「一番現実味のない芝居っぽかった部分が、芝居じゃなかったと」碧斗は首を振って、溜息をついた。「大体わかった。もういいよ」
「碧斗、これは大成功だと思うんだが」
「大成功だって?」
「うん。別の言葉では『終わりよければ全てよし』というだろ?」
「兄さん、ありがとう。でも、借りはちゃんと返してもらうからね」と、碧斗は言ったのだった。

次が、いよいよクライマックス?!
この章の最後の節に入ります。
どうぞお楽しみに。



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