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2017年06月07日

88 月命日のプチ奇跡7  ❀三月さくら2017❀ 【Y-2】



小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
今日は、章の最終話☆
2012.06.27 追分市民の森 アジサイ


月命日の、次の晩、
父たちの会話をのぞいてみると…。
一朗が見た“いいもの”とは?
“星の家”より★


 一朗は昨夜の満月の明るさを思い出していた。
 月のあかりというのは、すべての森羅万象に染み透っていくかのようで、人が作り出す灯りとは違う波長を持っている。
 長い永遠という時間の中で、同じ時に同じ場所で、同じ月の光に包まれている二人が、まるで万物に宿る神々に祝福されたように見えたことを。 
 一朗はカウンターの中の星一に向かって話し始めた。「実はね、橘家の前辺りで、若いカップルが抱き合ってて、キスシーンまで見てしまった。俺も結婚する前のいろんな思い出が蘇ってきたよ」
「誰?星矢たちではないよね?」
「橘家の前だよ」
「じゃあ、そこの娘と空、もしかして?」
「そう」
「やるね。若い奴らは」
「なんか初々しくてさ、微笑ましかった。治郎に話しても大丈夫かな?」
「まぁ大丈夫だろう。交際を許してるんだし」と、二人が話していると、治郎が弾き終えて戻って来た。
 治郎は言った。「あのさ、空のことなんだけど…」
 一朗と星一は話していたことが聞こえたはずはないのにと、驚いたが治郎が続けて言うことには、「昨夜遅くに帰るなり相談があるって言ってきてさ。あのイチさんの姪っ子とは、かなり本気みたいでさ。正式に認めてほしいって」
 星一は言った。「付き合って二年位経つよな?今まで認めてきたんだろ?」
「健全に付き合う限り反対する理由はないから」
「本気ってことは結婚のことか」と、一朗が言った。
「二人姉妹の長女だからな。七海(ななみ)はどう思ってるかな?」
「婿取りって考えてるかもね、当然。葉奈ちゃんだって、実家の跡継ぎは心配だろうしね」と、星一。
「うん。じゃあ俺からまず七海夫婦に訊いてみるよ。でも、お前はどう思うの?」と、一朗が言った。
「空はね、婿養子ということも考えてるらしい。あいつが務まるかなって心配ではあるがな」
「空もあれだろ、最近は仕事もかなり責任持ってやってるみたいじゃないか?あの娘と付き合って、よかったよな」と、星一。
「うん。もしも志道が抜けても大丈夫だよ。店は空に任せてもいいかなぁと。事務所の方は、実は初樹を考えてるんだけどね」
「そうなんだ。婿には出さないよ」と、一朗。
「わかってるさ。最初は麗美にはもったいないと思ってたけど、なかなか重宝な奴でさ、実は喜多(きた)さんが仕込んでもいいって言ってくれてるんだけどね、聞いた時は自分の息子のように誇らしい気持ちになったよ」と、治郎が言った。
14

親父たちの話すことは、
息子娘の恋愛と結婚の話です。
婿取りとか、
最近の若い方は気にしないでしょうが、
父たちにとっては、大問題です。

明日は、この章の最終話です。
↓引き続き次の回も、お楽しみください。






歩道沿いのアジサイ


月夜は更けていきます…。
父たちの会話には
どうやら結論が。
今日は最終話です★


 星一が言い始めた。「志道はそこの跡継ぎで、空が橘家に行き、麗美はそうか、青山家と」
「マスター、気が早いよ」と、一朗。
「とすると、未来だね。適当な相手を婿にして、三和家にやれば?」と、星一は話をふくらました。
「未来はもともと会長のお気に入りではあるんだけどね」と、治郎。
「ふーん、いいかもね」と、一朗。
「我ながら、いい筋道だと思うよ」と、星一。
「でもね、その肝心な、適当な婿というのが難しいんじゃないかと。最近は次男三男が少ないし、三和家に入れるとなるといないよ、なかなか」と、治郎。
「三和家だったらいくらでも婿志願者がいそうじゃないか」と、星一
「お祖父さんが世話するんじゃない?」と、一朗。
「未来が納得しないといけないし。それが至難の業だよ。誰が猫に鈴を付けるかって」と、治郎。
「じゃじゃ馬ならし出来る相手と」と、一朗。
 星一が笑って言った。「お前たち夫婦はロミオとジュリエット≠フ成れの果てで、娘はじゃじゃ馬と」
「じゃじゃ馬ならし≠チて話もおもしろいんだよね」と、一朗。
「未来の相手なんだけど、ちょっと候補の心当たりがあるんだけど」と、治郎が言った。
「それならいいじゃないか」と、星一。
「じゃじゃ馬ならしできる相手?」と一朗。
「未来のことを愛せる相手なら大丈夫だと思うんだ」と、治郎。
「そうだな、愛が前提だよな」と、星一。
「マスター、どうだろ、そちらの末息子なんだけど」
「碧斗か?!……冗談だろ?」
「未来のことを全然追い回さないのが、すごいと思ってるんだ」
「その気がなければ当たり前だけど。違うのか?!」
「こう言っちゃなんだけど、未来は見た目がかわい過ぎるからさ、気にしない男はいないだろ。できればマスターの所と縁続きになりたいんだよね。ていうか、未来が連れてくる男は、もう認める以前の問題だ。理解できないし、したくもない。考えてみてよ。碧斗ならって思うんだ」
「三和家に行くかもしれないんだろ?」
「それはまだ話も出てないんだから。未来のことを考えると、お先真っ暗という感じなんだ。ね、なんか上手にお膳立てできない?」
「子供たちに相談してみたら」と、一朗。
「そうだね。碧斗のことも実は志道からの情報があってさ」と、治郎。
「じゃあ、俺からも星矢に訊いてみるか」と、星一が言った。
 何やら何かが動き出しそうな気配だった。そう、これが壮大な(?!)じゃじゃ馬ならし<vロジェクトの始まりだった。
「ところで、イチさん。いいもの見ちゃったってなんのこと?」と、治郎が言った。
「空と美和のキスシーンだよ」
「へぇ、見たかったな、俺も。イチさんち前でしょ。週末辺り行こうかな。なんか見れそう」
 昔から聞きたがりの治郎が、嫌いなはずのない話題だった。

 満月だった昨夜に継いで、今日も晴れ渡った夜空だった。
 ちょっと夜が更けすぎた。かつての“星の家”に黄金コンビ在りと言われたあの頃であったなら、一晩中でも語っていられたのに。
 蒔原家では、居間の灯りは消え、それぞれが寝室に入っていた。
 丹野家では、志道は、明日早朝に恋人を迎えに行くためすでに床に就き、みんなの頭を悩ませているとは知らない末娘の未来は、爪の手入れに余念がなかった。やはり可愛いこだということは、何度見ても間違いなかった。
 めっきり夜には弱くなってしまったかわりに、朝寝坊だった一朗でさえも、六時頃に目覚めるようになった。こんなふうに月の照らす梅の木を見るのが好きなのだが…。一朗は口には出さずに、木に目をやると、家に入った。
 葉摘が風呂上りの髪を拭きながら迎えてくれ、初樹は、ソファーで寝ていた。
「仕事で疲れてるのか?」
「ううん。今日は大学行ったらしいの、午後から」と葉摘が説明した。
「ほら、初樹、部屋に行って寝ろよ。風呂入ったのか?」  
 初樹と葉摘が二階の部屋に行くのを見送って、一朗は湯船に浸かりながら、ふと葉奈に再会した頃感じた思いが湧くように蘇るのを感じた。
 この腕で抱き締めたことが、夢だったかのように儚く感じられたあの感覚を…。
 今となっては、夢とも変わらないのかもしれなかったが、あの時に感じた畏れのような思いからすると、まるで達観したかのように、一朗は静かなもので満たされるのを感じていた。
14

はい、「月命日のプチ奇跡」は
これでおしまいです。
「空と初樹の物語」については
まだ続編がありますが、
明日からは、
じゃじゃ馬ならし<vロジェクトと
お待たせ、志道の続きのお話を
からめてお送りします。
どうぞお楽しみに
前後のお話 はこちらから→ 三月さくら 目次                        
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プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に、書き溜めた小説を編集し始め、その後ブログをはじめました。
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2017年06月06日

87 月命日のプチ奇跡6  ❀三月さくら2017❀ 【Y-2】


空の特別なシーンあり☆
小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
2010.06.22 和泉川 紫陽花 白


まだ、これはパーティーの翌日の夜です。
月命日のプチ奇跡は
もっと起こるでしょうか?


「純愛クラブ≠チて何?」と初樹。
「僕もそれは初耳ですね」と志道。
 星矢がひとしきり説明した。
「ふーん、それで男女の付き合いに厳しいわけ」と、空が言った。「で、この三家からカップルが出来ざるを得ないと。親に敷かれたレールでもいいじゃない。その方が幸せになれるよ、初樹」
「俺は外れるつもりはないよ」と初樹は言った。
 それまで黙っていた蒔原家の末弟、碧斗が言った。「でも、この中では二組だけだよ。うちの姉ちゃんたちも片付いたし、志道兄と空兄にはお相手がいるみたいだけど、俺はなんか女は面倒くさい」
「そう言ってるお前だってかわいいと思える女性がきっと現われるさ。志道兄だって、星矢兄だって突然だったんだから」と、空が言った。「お前のお父さんも三十代だろ、結婚したの。この中から探そうとしなくてもいいさ、残ってるのは未来だけだし」
「そういえば未来は?」と麗美。
「きっと、どこかで遊んでるんだ。合コンの女王だから」と、空が答えた。


 と、そこへ「遅くなっちゃって。よかったぁ、まだみんないて」と、未来が現われた。
 やはり合コン帰りかなというような華やかな装いをしていた。
 未来は、更には見慣れない顔の男を伴っていた。少し酔っているようでもあった。
「ほら、入って。高橋君よ。送ってもらったの。何か飲み物お願いしていい?」
「ようこそ」と、空が言った。「未来、お前のお客様だから、自分で何か用意してあげたら」
 一同がその、ちょっと自分たちとは毛色が違うようなその若い男を見た。一通り、皆にこやかに挨拶はした。
 まず初樹が言った。「麗美さん、もうそろそろ帰った方がよくない?明日の仕事に響くよ」
「そうね」
「家庭ごとに解散しようか?青山家に誰かが車出したらいいね。俺が送ってもいいんだけど、酒飲んでないから」と、星矢が言った。
「僕が行きますよ」と、志道が言った。「そうしたら、空も麗美も車があるし」
「兄貴は明日朝早いだろ?寝ときなよ。俺、行くから」と、空が、さちの迎えに行く志道を気遣って言った。
「よかった。俺、帰りも電車かと思ったよ」と碧斗が言った。
「悪いね、来たばかりなのにね。もうそろそろ解散なんだ」と、空が未来の連れの男に言った。「妹は、兄姉の車で帰れるから。ご苦労様」
 その高橋という男は飲み物を一杯飲んだだけで、そそくさと退散した。
 彼の閉めたドアが完全に閉まるかどうかという時、空が言った。「未来。俺たちがいなければ家まで送ってもらったのか?さっきの奴は父さんじゃなくても、アウトだね。場所を考えろ。休日といってもここは会員制なんだから」
 志道が止めなければまだ何か言いたそうだった。
 未来はうな垂れることなく言い返した。「先週はみんな盛り上がってたのに、どうして今日は飲んでないの?」
「飲まなくても、盛り上がったさ」と空は言った。
 先週は皆飲みすぎてタクシーで帰らなければならなかった。反省して、誰彼となく今晩は自粛したのだった。


 そして志道は、未来を車に乗せて帰りながら言った。「最近のあなたは、ちょっと自分でも見失ってるものがあるって思いませんか?」
 未来は嫌そうに言った。「お兄ちゃんまでうるさいこと言うの?私に構わないでほしいんだな。お父さんやお母さんの気に入るようになんかしたくないし」
「だからって、敢えてあんな男と付き合わなくてもいいでしょう」
「あんな男って。お兄ちゃんたちよりずっと優しいし」
「下心が丸見えでしたが」
「送ってもらっただけでしょ」
「それだけなんですね?」
「わかるわよ。下心がある危険な男は。私だって好みじゃないもの」
「だったら、送ってもらわないことです。家族に声を掛ければ迎えに行きますよ」
「そうかなぁ。最近みんなそれぞれ忙しいじゃない。大切な人もいるんだし。麗美姉(ねえ)もなんてね、灯台下暗しよね」
「妹を迎えに行くのを嫌がる相手とは、みな付き合ってないですよ。家族も大事なんですから。
 あなたは小さい頃から、皆に可愛がられすぎたんですね。大切なものは、誰かが簡単にくれるものではないですよ。家族皆あなたを大切にするあまり、やってあげすぎたかもしれないですね。恋人はいなくても、あなたの今ある大切な存在を確認してください。父さん、母さん、家族あってのあなたでしょう」
「そういうお説教はたくさん」
「今のあなたを、どんな男が好きになるんですか?」
「わかってるわよ、自分自身が一番」
「だったら、方向転換しないと。まずお父さんとお母さんの信頼を回復することですよ。そうすれば、未来が元々持っていた魅力がまた輝き始めるはずですよ。自分だけで、いくら外見を着飾っても、人の魂に届く魅力にはならないですよ。親に認められないってことは、あなた自身も本心では認められないってことでしょう。いつか出会う未来の大切な人のために、今から自分自身をもっと大切にするんですね」
「…」
「ところで、さっき碧斗が、『女は面倒くさい』って言ってたんですが、あなたが関係してたりしないですか?」
「碧斗?…碧斗なんか私のことを見てもいなかったのに」
「ふーん。それはおかしいですね。なんで彼があなたを見ないんですか?」
「だって…」
「見ないなら、理由があるはずですよね。それに見てほしいなら、男連れなんかでわざわざ来るもんじゃないでしょう」


 一方、初樹は、Jiro’s Home≠フ駐車場で、麗美と別れると、空の車に乗り込んだ。葉摘と一緒に家まで送ってもらうのだ。
「なんだか元気がないな、初樹、嬉しいはずだろ?」
「別れるのって、こんなに辛いのかなって…。
 また明日会えるのにね。それに、まだ夢みたいで実感がないんだ。これって、明日になったら俺はリハーサル用の代役だったとか、落ちがあるような気がして」
「ないない、そんなこと。麗美もお前のこと、あれはかなり好きだぞ」
「そうかな」
「麗美はいい加減な女じゃない」
「そうね、麗美さん今日はなんかいつもより輝いてる感じだったものね」と、葉摘も言った。
「はぁー、いざとなるとね。麗美さんが俺を、なんて。昨日さちさんにそうじゃないかって言われた時は、とても信じられなかったけど」
「さちさんが、麗美のこと気付いてたのか」と空。
「だから俺も勇気が出て、声掛けたんだ」
「それで、麗美をデートに誘ったってわけ?」
「それがそうじゃなくて、今までのパターン通りで、俺から誘ったわけじゃないんだ」
「どういうこと?」と空。
 葉摘が口を挟んだ。「うちのお祖母ちゃんに麗美さんが朝言ってたみたいよ。『誘ってくれないから、私から声掛けちゃったけど、いいのかな』って」
「今までのパターンってのはお前、おねだりでもしたんだろ?いつまでも飼い主とペットのみたいな関係のままいくのかなぁと思ってたんだが。最近、確かにお前のこと認めてる感じはあったよな。志道兄の件ではさ、お前の評価で昨日のことを踏み切ったんだから」
「ちょっとこれからは、男らしくキメテいきたいんだけど」
「そうだな。成長しろよ」

「ところで空兄」と初樹は言った。「美和ちゃんとはどう?」
「うん、まぁね。今日も会ったよ。いつもと同じで、けんかもしない換わりに進展もしないって感じ」
「進展っていうのは、結婚ということに関して?」と、葉摘が訊いた。
「お互いの家ということになるとね。彼女はあんまり家同士のことはだめなんだ。触れさせてくれない。俺も惚れた弱みで、何も言えないって感じ」
11

純愛クラブというのは、
星一と一朗の会話の中だけの
架空のクラブなんですが、
なんか実際稼動していそうな
雰囲気がありますね。
明日は、“微笑みの法則”を身につけた空のお話になります。
引き続き次の回も、お楽しみください。






2010.06.26 和泉川 アジサイ


今日は、微笑みの達人、空の
とっておきのシーンです★


 葉摘が言った。「前から、美和ちゃんとこの叔母ちゃんは、空兄のことをお気に入りで、婿に入ってくれないか、私にも訊くのよ。美和ちゃんはそういうこともあって、おうちのこと言わないんじゃないかな。空兄のこと、きっととても好きだと思うわ。見せないのかもしれないけど」
「そう思う?」と空は言った。
「ええ」と、葉摘が言い、「俺も思うよ」と、初樹も言った。
「じゃあ俺も、そう思う」と、空が言った。
 空は青山家の前で二人を降ろし、近くの空き地で方向転換すると、元の方向を戻りかけた時、人影が立っているのが目に入った。徐行して行き誰であるかわかると、彼は車を止めた。橘家の梅の木が見える所に、美和が立っていた。
 空は車を降りて言った。「どうして?」
「そろそろ来る頃だと思って。葉摘がメールで知らせてくれたから。あなたこそ、ここまで来て、素通りで帰るつもりだったの?」
 そうやって二人はしばらくその場で会話を交わした。
 空は得意の笑顔で美和を見つめた。それから、おそるおそるその女性の髪に手を伸ばし、触れた。そして静かにその身体(からだ)を引き寄せて抱いた。
「私もお店に行ったらよかった?」と、美和が言った。
「うん、まぁね」
「昨日のパーティーも?」
「そりゃもちろん」
「もうちょっと誘ってくれたら行ったのに。あんまり来てほしくないかなぁと思って」
「来てほしくないわけないだろ?君が気が進まないのかと思ってた」
「気が進まないのは、なんか認められてるわけじゃないのにって思っちゃうから」
 その時、美和の目に一粒光るものが浮かんだ。空にも、その一粒で充分だった。空は夢中で口づけをすると、きつく抱き締めた。
「俺がこんなに愛しているのに、嘘だと思うの?」美和が首を振った。
「もしかして、俺のこと愛してくれている?ずっと君を失いそうで訊けなかった」
「愛してるのに決まっているでしょう」
「そうなんだ」空は、再び美和の心を奪った笑顔で、自らの全身と美和の心を包んだ。
 明るく丸い月が二人を照らしていた。


 葉奈の月命日で、若者たちが何かを感じた翌日、一朗と治郎が、“星の家”のカウンターに並んで座っていた。
「イチさん、なんか今日は嬉しそうなことない?」と、治郎が一朗を見て言った。
「わかる?昨日ね、ちょっといいもの見ちゃったんだ。葉奈の月命日だったんだけどね」
「なに、なに?」
「それがね」と、一朗が言い掛けてやめた。
「何なの?また葉奈さんが出て来た?」と治郎が言うと、「いいや」そう言いながら、一朗は遠く何か思い出すような風情で、微笑んでいた。
 治郎は一朗を残し、ピアノを弾き始めた。
12

橘家の美和は、二人姉妹の長女。
美和の母はどうやら婿養子として、
空を考えているようですね。
父親たちの会話も
息子たちのお話となります。
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2017年06月05日

86 月命日のプチ奇跡5  ❀三月さくら2017❀ 【Y-2】



小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
2009.06.07 明月院 紫陽花-2


わかりにくいかった麗美の恋心
少しずつ、
彼女の思いが明かされます。
空に「初樹のどこが好きか?」
と訊かれて…★


「だって、みんなが初樹はいい奴だ、いい奴だって。私の方がもっと知ってるわよ、と思うのに。いい人だからってわけじゃないけど…。訊かないでよ、そんなこと」と麗美。
「じゃあ、きっかけは?」と、空。
「函館、かな」
「もしかして、最初のコンサートツアー?」
「うん」
「かなり前からじゃないか」
「その時は、楽しかったなってだけ。ちょっとホームシックになってた時、初樹が来てくれて、なんかホッとしたの。パパやお兄ちゃんたち以外の男の子と二人で過ごすのって、初めてで。そういう風に仕向けたのは、今思えばパパよね。パパとママがいいと言う相手以外には、私には考えられないし。別に意識することなく、楽しく過ごしたんだけど、初めてのことって、やっぱりしっかりインプットされるっていうか」
「いつでも楽しく過ごせたり、気持ちを楽に出来る相手っていうのは、実はなかなかいないと思うよ」
「うん。初樹でよかった。確かに楽だもの、一緒にいると」
「初樹、よかったってさ」
 初樹は照れ隠しに俯きがちにしていた顔を、上げて言った。「ねぇ空兄、俺のことは訊いてくれないの?」
「何を訊くわけ?」
「いつ頃からとか、どこが好きかとか」
「ガキの頃から、麗美の追っかけしてたじゃないか。お前の気持ちはわかりきっていたのに、今更興味ない。…そんな目で見つめるなよ」
 初樹の上目遣いの瞳を逸らして、空は言った。「麗美は案外、これで落とされたのかも」
 麗美が微笑んで言った。
「考えてみると、いつも何か初めてっていう時とか、大切なポイントで必ず彼がいたの。ラッキーボーイかもって、ちょっと可愛いから側に置いておいたんだけど…。可愛いって言うと嫌なのよね」
「大切なポイントって?」
「私が、ここでピンチヒッターで弾いたきっかけの時もそうだし、パパのアルバムに参加するきっかけも、初樹が『ちょっと聴かせて』って言うから、ここで作曲したのを歌ってたら、ちょうどパパが入って来たの。
 いつも私がここで演奏する時は欠かさず聴きに来てくれていたし、それが当たり前だったのに、デビューして、コンサートツアーは、最初は無我夢中だったからよかったんだけど、だんだんホームシックっていうか」
「なるほど。一番いいタイミングで父さんが行くはずが、初樹に譲ったわけか」
「いると癒されるというか、いつでもずっと側にいてくれたから、安心だった」
 初樹が言った。「俺ってつまり、安心で、一緒にいて楽ってこと?可愛い、てのは卒業したいけど」
 志道が口を開いた。「一緒にいて安心で、楽だっていうのは、高ポイントですよ、初樹。麗美はあなたをしっかり評価しているようですね」
「そうかな」と言って、初樹は微笑んだ。空から伝授された完璧な微笑だった。
9

若者たちの会話は
まだまだ続きます。
明日は、いよいよ奇跡の秘密が明かされます
お楽しみに。
↓引き続き次の回も、お楽しみください。






2009.07.18 四季の森 玉紫陽花


“Jiro's home”にて
初樹と麗美のカップル誕生を喜びながら
それを肴におしゃべりは盛り上がります。
今日は 彼らの上に起きている
“プチ奇跡”の答えがわかるかも★


 葉摘が麗美に訊いた。
「麗美さんって、眼鏡かけてたでしょ、前?」
「あれはね、高校に入る時ママが昔掛けてたのを真似して作ったの。私、デート志願者が多かったから。自分でも男の子への憧れとか理想とかすごくあって。なんか、現実とそぐわないんじゃないか、って怖かったから。誰でも王子様に見えてきそうで。ママにも厳しく諭されていたし」
「なんて?」
「『麗美にふさわしい相手はいつか必ず現われるわ。その人のために、すべて取っておくのよ』って。一度でも他の男の子とデートしたり、偽物でも多感な時期だから、ときめいてしまったりするのよって」
「へぇ」
「私が『その人だってどうやってわかるの?』って訊くと母はね、『こっそり来る人はだめよ。出会いはなんでもいいけど、いい人ならきっと正々堂々と現われるから。あなたをそのままさらって行ったりしない。パパとママから合格点をもらおうとするから』って」
「すごいね、やっぱお母さんの言葉って」と、葉摘は言った。
「葉摘ちゃんとこの、お祖母ちゃんも最高じゃない」と、麗美。
「うん。最高の祖父母に最高の両親」と葉摘は皮肉もなく照れもなく言った。
 葉摘にとって、生きて世話してくれる母親は羨ましかったが、亡くなってもいなくなったのではなく、父と母はいつも切り離さず両親と考えた。父がいつも当たり前のように「俺と母さんはね…」と言うのを聞いてきたからかも知れなかった。
「そういえば、今日はお母さんの月命日だろう」と、星矢が言った
「うちのお袋なら絶対言うよ。『葉奈さんが導いてくれたんだ』って。俺たちが初めてデートした日も、月命日だったし、そもそもね、うちの両親はそれぞれ片親を亡くしてるんだけどその親同士が同じ月命日でさ…」と星矢は両親の馴れ初めの話をした。
「あ!」と、初樹が思い出したように声を出した。
「函館のコンサートの日、俺の二十歳の誕生日の二日後だったんだ」
「ああ!ママの月命日」と、葉摘が言った。
 一同からは「月命日ねぇ…」という共通の言葉が漏れた。そして、しばし皆の頭の中に浮かんだまま留まった。
 空が言った。「俺たちってさ、ちょっと特殊だよね。親が純愛主義者だから」
「純愛主義者?」と初樹。
 星矢が言った。「そうだよ。純愛支持者と言ったらいいかな。イチおじさんに純愛クラブ≠ノ入らないと、葉摘と付き合わせないって言われたよ」
10

「月命日ねぇ…」というところは、
マンガの大きな吹き出しが、
みんなの上に浮かんでいるイメージです。
月命日に、ちょっとした奇跡が起きることもあると、
少なくとも彼らは思ったはずです。
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