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2017年05月25日

77 眠り姫と眠り王子6  ❀三月さくら2017❀ 【Y1-1】



小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
a pink lady.


「告白」の最終話。
志道の「わかってないですね」の意味って?
「僕のことをどう思っているんですか?」
さちの答えは得られるんでしょうか?
今日はずっと二人の会話です★


「おしゃべりって言われたのは、久し振りだな。おしゃべりの座は、さっき電話してきた弟に譲ったんですよ。僕は何かを論じたり、証明したりするのが好きだったりするんです、実は。人に受け入れてもらえないから、黙ってるんですけど」
「私もあんまり理屈っぽ過ぎるのは苦手。やっぱり、結論から言って」
 志道はいよいよにっこり笑った。
「結論はね、あなたの答えです。僕のことどう思ってるのか、聞きたかったんです。すべてがそのためのことですよ。
 いいですか?僕はあなたのことが好きで、少しでも長く一緒にいたいから、仕事帰りに送る口実で近付いてる。今日はあなたに、僕といる時間を意識してほしかったんです。あっという間に着いちゃって、大切なことも言えないって、言わせたくなかったんです。本当はもっと帰れないような遠くに行きたかったくらいです。あの涙は一つの答えかもしれないけど、今日ははっきりした答えを絶対もらうぞって思って、こっちまで来たんです。あなたの気持ちにはお構いなしにね。男に送ってもらうのは、そういうことなんですよ」
「そういうこと。あなたにも下心があるってことかと」
「ありますよ。当たり前でしょう。僕にだって下心は大有りなんですが、あなたに認められたいし、好きになってもらいたいので抑えてるんですよ。
 そういうことよりも、今日はまず答えを聞きたいんです。どうか、答えてもらえませんか?」
 さちは言った。「どうして、私のこと好きなんですか?ろくに何も知らないはずなのに」
「また逆に質問ですね。好きになるのに理由は必要ないって言いますよね。その通りでした」
「だって私もよくわからないのに。あなたに送ってもらうのは嫌じゃないし、今日は楽しかったし。ピアノを弾いてもらうのも初めてで。好きって言われて、なんだか胸がいっぱいで、涙がいっぱい出て来て、ドキドキしたり、安心だったり、よく自分自身でもわからないのに」
「僕も同じです。なんだか、説明できないような厄介な気持ちを、『あなたが好きです』と言ったら、すべてそれに納まったんです。あなたも、僕のこと好きなんでしょう?」
「多分…」
「多分じゃないでしょ。絶対ですよ」
「そう思う?」
「ねぇまた僕に訊くでしょう。聞いてどうするんですか。答えてください」
「あなたが好きです、多分」
「多分は取って」
 さちは、ほとんど囁くような声でようやく言った。「あなたが好き」
 志道も同じくらいの小さな声で「やった!」と言った。
「不思議ね。あなたが確かに好きだって思えてきた」
「でしょ?よかった。結局結論はわからないって言われたらどうしようかと思ってました」
「そうしようと思ってたのに。あなたがしつこいから」
「ありがとう」
「私もありがとう」
「最高だな、また曲が出来そうです」
 感動を受けた顔で志道は言った。「今朝の夜明け空、とってもきれいだったんですよ。あなたは眠っていたけど。その時、今日のゴールを決めたんです。一緒に同じ景色を見て感動を分かち合いたいって、そして通じ合いたいって。それが僕の下心ですよ」
「ふーん」
「そういうことの方が刺激的ですよ。…ねぇ、さちさん」言ってしまってから、志道は照れたように言った。
「そう呼んでもいいですか?」
「ええ。私は何て呼んだらいいですか?」と、さちは言った。
「僕も名前で」
「…志道さん?」
「嬉しいな。母が父を呼ぶ時に似てますね。僕の父は治郎っていうんですけど」
「ええ。お店の名前ですよね。ピアニストなんですか?」
「そうです」

 志道は、父の治郎が小さい頃から語ってくれた両親の馴れ初めを話しながら、さちを笑わせていた。と言えば父は気を悪くするだろうが、本人はロマンティックだと信じている話も時が経ち、他の視点から見れば微笑ましい話に変わるものだ。
 生真面目のように見える志道が、このように冗談を言うのかと、両親が見ればその方が意外かもしれなかった。さちは泣く時もあのようにとめどなく涙を流したが、今は志道の話にずっと笑い続けていた。
 楽しい時間だった。どうして、さちが笑うとこんなにも気持ちが満たされるのか、志道にはわからなかったが、それこそが最高に刺激的だった。
 話しながら車を進ませ目的に近付くうちに、だんだん二人の距離も縮まってきた。
「もうすぐ着いちゃいますね」と志道。
「やっぱり、あっという間だった」と、さち。
「でも、寝なかったですね」
「ええ、だってさっき寝たもの。楽しかったし」
「僕もです。楽しかったです。名残惜しいな」

「好き」と言い合う
言葉だけでも、
確かにとても刺激的です。
満たされた思いの志道とさち。
もうさちの家に着くのでしょうか★
前後のお話 はこちらから→ 三月さくら 目次                        
登場人物の確認は家系図で→ [三月さくら 家系図]

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写真は:a pink lady.
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プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に、書き溜めた小説を編集し始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
夢を叶えたい人、カウンセリング募集中!(四柱推命鑑定も可。)
こちらから→幽霊っているんでしょうか


2017年05月24日

76 眠り姫と眠り王子5  ❀三月さくら2017❀ 【Y1-1】



小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
こんにちわ〜^^


心を通わせ合う志道とさち、
今日は「眠り姫と眠り王子」という
タイトルがなぜついたのかが
よくわかるお話です★


「さあ、送って行きましょう」
 志道はさちの手を引いた。そして車まで来ると、躊躇なく助手席のドアを開け中へ促した。
 しばらく走ると夜が明けてきて、この時間にしか見られない素晴らしい朝焼けが広がってきた。
「すごい!きれいですね」
 志道は感嘆の声をあげたが、さちは返事をしなかった。既に熟睡していた。
「信じられない?!」志道は言った。「ねぇこんなにきれいなのに」
 彼は穏やかに微笑んだ。
「やはり心配ですよ。僕じゃなければ食べられちゃうよ」
 先程の彼女の泣き顔を思い出した。
『ごめんなさい。……何度も言おうとしたけど、いつもあっという間に着いちゃって…』
「そうですよ。いつもずっと眠ってばかりいるんですから」と、志道はつぶやいた。「あっという間なんて言わせませんよ」

 志道はずっと車を走らせた。彼女の家からも、すでに離れた方向だった。だいぶ走ってから、車を止めた。さちはまだ眠っていた。
 車をそっと降りて、家に電話を掛けた。自宅では、母親が朝食の準備をしている時間だろう。
「母さん、うん。ずっと店にいたんです」
「また作曲していたの?」以前から母は志道のその秘密に気付いていた。
「ええ。その後病院に行って、古永さんを送るところです。そのまま店に出るので、朝ご飯はいいです」
「話が出来たのね」
「はい。母さんのお蔭で。ありがとう」
「よかったわ。じゃあ気を付けて」
 陽子は電話を切る時、思わず受話器を胸に当てて、嬉しそうな顔をしていた。治郎が起き出して来て言った。
「誰だ?」
「志道よ」
「今頃どうした?」
 さちのことを伝えようかどうしようか一瞬迷って、陽子は言った。「あの子、最近、夜お店で作曲しているの」
「へぇそうか、一度聞いてみたいな」と、治郎は嬉しそうに言った。

 志道は車の中を覗いたが、まださちは眠ったままだった。外で体をひとしきり伸ばしてから、またそっとドアを開け、運転席に戻った。
「古永さん。…さちさん、こんなにきれいな景色なのに、まだ寝てるんですか?」小さく声を掛けてみた。
「まるで眠り姫ですね。百年も眠り続けそうだ」
 彼女の寝顔を見ながら、いつしか彼も眠ってしまった。

 暑いくらいの明るい日差しで、志道が目を覚ました時、さちは外のその眩しい光の中にいた。彼も、起き出して彼女の横に立った。
「きれいな所ね」と、さちが言った。
「すみません、僕までまた眠ってしまいました」
「徹夜は苦手みたいね」とさちは笑った。
8

初対面同士でも眠ってしまった、
そんな二人ですから…。
そして、それって
無意識に心休まる相手ということかも…。
眠り姫と眠り王子の所以です。






続・・薔薇


志道が車を走らせて
さちを連れて来た海岸。
二人にとって、
どんな風に見えたんでしょうか★


「ここはどこ?」
 志道は大まかにどこかを伝えてから言った。
「いつも、あっという間に着いちゃうって言うから、あっという間じゃないってことを、ちょっと距離でも知ってもらおうと思ったんですよ。もっと走れたんですが、ここの景色がきれいだったから、一緒に見たいと思って。男に送ってもらうってことは、こういうことですよ」
「こんなきれいな所ならいいわよ、いつもじゃなければ」
「わかってないですね」
「何が?」
 彼は笑顔でそれには直接答えなかった。
「あなたもきれいだって言ってくれたから、少しは気持ちがすみました。さぁ、食事に行きましょう。お腹すきませんか?」
「ええ。とっても」
「僕もぺこぺこです」
 食事を取ってから、二人はゆっくり歓談していた。志道の携帯電話が鳴った。空からだった。
「ちょっと失礼、弟からです」
 空は電話口で、何やら思わせ振りに言った。「兄貴、今日はいつ出社ですか?」
「すみません。ちょっと遅れるので、任せようと思ってたんですよ」
「早めに店に来てみたらさ、グラスが二つ。ピアノも空いたままだった。母さんに着替えを持たされたんだけど、さて、どこにいるの?」
「それはまた後で。それでは頼みますよ」
 後で何を訊かれるかわからないぞと思いながら、ひとまず電話は切った。
 さちが言った。
「お仕事大丈夫?」
「ええ、大丈夫ですよ。でも、もう帰らなければ」
 車に乗るとさちが言った。「訊いてもいいですか?さっき答えてくれなかったんだけど、『男に送ってもらうっていうことはこういうことですよ』って後」
「ああ」
「『わかってないですね』って言った?」
 志道は可笑しそうに笑みを浮かべて言った。「あのですね、あなたがあっという間に着いちゃうから言うタイミングがなかったって言ったでしょ。今日は着くまでに一、二時間掛かるから充分かなって。大切なこと、答えてないのはあなたの方ですよ」
「…何が?」
「僕のこと、どう思っているんですか?」
「答えてなかったっけ?」
「ええ。聞きたいんです。さっきは涙でごまかされちゃったけど。それとも今度はまた眠っちゃいますか?」と、志道は楽しそうに笑みを浮かべながら言った。
「…」
「ねぇ」
「あの、それと、さっきの『わかってないですね』と、どうつながるの?」
「突っ込みますねぇ。ちゃんとつながりますよ」
 実は答えてもらわなくても、気持ちは済んでいたのだったが、こうやって話すのが、楽しくて仕方がなかった。
「あなたは頭がいいですね。出来るだけ僕に答えさそうとしているでしょ。でも最後にはさっきの質問に行き着くんですけど」
「何で?全然わかんない」
「いいですよ、僕から答えますよ。でも、肝心のあなたの番の時、眠り姫にならないでくださいね。よく友人にもわかりにくい奴だ、結論を言えよって言われるんですよね。結論を言っても、さっぱりわからない、難しい奴だって」
「結構おしゃべりなのね、なかなか本題に入らないみたい」
「眠り姫は、僕に話す時間をくれたことなかったじゃないですか」
「その、眠り姫って何?」
「ぴったりでしょ」
「あなただって、今日も眠ってたのに」と、さちはつぶやくように言った。
9

「わかってないですね」って?
男に送ってもらうのは一体、
どういうことなんでしょうか?
ただの男女の会話ですが
明日をお楽しみに。
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状況は変わりませんが、
この時から2年が過ぎています



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by (C)ヨマさん
続・・薔薇
by (C)akemiさん
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プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に、書き溜めた小説を編集し始め、その後ブログをはじめました。
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見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
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2017年05月23日

75 眠り姫と眠り王子4  ❀三月さくら2017❀ 【Y1-1】



小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
「告白」…?!
志道は
最後のけじめをつける
つもりのようです★
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志道のけじめのつけ方とは?
さちとは、最後と思うなら
潔く告白して散るのでしょうか★


 志道は車を走らせて、“Jiro's Home”の方に向かった。普段ならすぐ寝入ってしまうさちだが、その晩は眠らなかった。
「今日は眠くないんですか?」
「暗くてわからないけど、いつもと道が違わない?」
「いつもは道もわからないくらい、よく眠ってると思いましたが。確かに。僕の店に寄って行きたいんです。聞いてほしいものがあって。ちょっとだけいいでしょう。さぁ、着きました」
 志道は店のシートにさちを座らせた。
「この間、従姉に子供が生まれた晩に受けた、感動と閃きを基に作って、さっき完成したんですよ。聞いてもらえますか?」
 彼はピアノに向かうと、弾き始めた。生命の誕生の喜び。まだ小さいけれども確かに息づいていた命への、微かな戸惑いと慈しみが感じられるその曲を。
 弾き終わって見ると、俯く彼女は心なしか目を潤ませているようにも見えた。
「何か飲み物でも持ってきましょう」
 志道が準備した飲み物を彼女の許に置くと、さちは言った。
「素敵な曲でした。赤ちゃんが生まれるって、とても感動的ですよね。何度立ち会ってもそうだから」
 志道はさちの言葉を微笑んで聞いてから、言った。「でも、本当はね、他の人のことを考えて作ったんですけど、実際は。何をしても考えてしまうんです」
「もしかして、好きだっていう人のために作ったの?」
「ええ」
「その人に聞かせるんですか?きっと喜びますよ。女性は自分のために演奏してもらったりしたら、きっと感動するわ」
「よかった」
「その彼女も幸せですね。こんな素敵な人に好かれるなんて」
「僕には彼女はいませんよ」
「好きな人がいるって。自分の気持ちを伝えていないの?」
「ええ」
「ああ、お母さんが紹介する人のことで悩んでいるんでしたね」
「どうしたらいいと思いますか?相手の気持ちがわからなくて困っているんです」
「伝えなければわからないわ」
 志道はさちの目を見つめて言った。「僕の気持ちを伝えますよ」
「えっ」
 そして、更に彼女を見つめた。
「…僕は、あなたが好きなんです。あなたのために弾きました。あなたを思いながら作ったんです」
 乳児室に押してきた小さなベッドから、赤ちゃんを抱きあげて見せてくれた時のさちの姿が、志道の頭によぎった。彼が作曲をしながら、そしてピアノを弾きながら、浮かんでいたのは、やはりその彼女の姿だった。
 さちの目には光るものがあった。
「僕に言うことないんですか?」
「…」
「嘘ついてたでしょう」
「…結婚のこと?」さちはおそるおそる言った。
「嘘なんでしょう?知らせてくれる人がいて、わかったんですよ」志道は穏やかな口調で言った。
「ごめんなさい」と言いながら、さっき潤んでいたように見えたものは、誤魔化せない涙となって流れた。
「どうして泣いてるんですか?」と、志道は訊いてみた。彼女が答えられないのをわかっていて。答えてくれるならそれもいいし。
「…」
「いつまでも、そうやって泣いていると、誤解したくなるでしょう。もしかして、僕のことを少しでも思ってくれているって」
6

告白シーンでした!
なぁんだ、さちは結婚していなかったんだー。
二人のシーンは次回に続きます。
志道ならではの濃い台詞が続きます。






さちは結婚していなかった!
そして、志道の告白に、彼女は…★


 志道は優しく言った。「どうして結婚してるなんて言ったんですか?どれだけ見えない相手に嫉妬して、どれだけ気持ちを抑えて、どれだけあなたを偲びながら眠れなかったか」
「ごめんなさい。何度も言おうと思ったんだけど、いつもあっという間に着いちゃって…」
 さちの言葉に、志道はくすっと笑った。
「あっという間のはずはないでしょう。あなたが眠っている間、僕は起きてるんですから」
「ごめんなさい。仕事の間は気が張ってるからそんなことないんだけど。私、以前睡眠障害があって。助産師の試験前、勤務の合間に勉強だから本当きつくて、でも仕事柄不規則だから、夜勤とか眠くても眠れないし、頑張って起きてたら、寝なくちゃいけない時でも眠れなくなって、その頃は睡眠薬を常用してたの。今でも眠れない時はなかなか寝付けないんだけど…」
「僕の車に乗ると立ちどころに眠ってしまうのはどうしてですか?」
「…どうしてだろ」
「そもそも、あなたは送ってくれる車なら誰でも乗るんですか?」
「そんなことはありません」
「それが聞きたかったんですよ」
「今まで送ってくれるって言う男性で、何と言うか、下心がない人がいなかったんです。結婚してるって言えば、大抵もう寄って来ないから」
「僕以外はってことですね」
「自分から何時に勤務が終わるなんて、教えたこともなかったのに、言ってしまってからなんか恥ずかしくって。だから結婚してるなんて…。ごめんなさい。迎えに来てくれてびっくりした。でもこの間来なかった時、きっと、つくづく嫌な女だと思われたんだろうなって思って」
「どうして?」
「夫がいるのに他の男性に仕事帰りに送らせて」
「ああ確かに。僕は、あなたに善意の害のない男と思われてるんだろうと情けなくて、会うのも辛くて。でも、あなたを嫌になんて思えるわけがありません」
「もう絶対嫌になったんだって思ってました。もう送ってくれることはないんだなぁと思ってたら、また現われるし、好きな人がいるって言うし…」
「すみません。ちょっと、騙されてた仕返しのつもりで。こんなにあなたを泣かすつもりじゃなくて。たいして僕のこと思ってないだろうからって。僕のこと、どう思ってるんですか?」
 さちの目からは、また涙が溢れた。彼女は志道が真っ直ぐに見つめる視線を逸らした。拒否とも恥じらいとも取れる行為だったが、今では後者だと思える自信が生まれていた。
「どう思っているんですか?」再び彼は尋ねた。
「…」
 さちは泣いて返事が出来なかった。
「あ、それから、母が紹介したいって人のことですが…」と志道は言った。
 さちは涙に濡れた顔を少し上げた。
「それも、あなたのことでした。母もあなたが気に入ったみたいで…」
 志道が何を言っても、さちの涙を更に誘うようで、さちは言葉を出すこともできなかった。
「じゃあ、もう一度弾いてもいいですか?あなたのために弾くので、嫌なら言ってください」
 志道はピアノに向かい、もう一度弾き始めた。
 さちは、しばらくすると涙を拭いて志道の傍らに立った。志道の口許には微笑が浮かんでいた。演奏が終わると、笑顔で彼女を見上げた。そのスマイルには父親譲りの魅力があった。
7

ピアノを弾いてなんて、
父、治郎を思わせますが
志道はチト違う…。
そして、二人のシーンは続きます。
明日もお楽しみに!
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登場人物の確認は家系図で→ [三月さくら 家系図]

 ↖この時から2年の時が流れています



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プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に、書き溜めた小説を編集し始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
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