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2017年04月17日

(終)22 祈りの行き着く処  《八月 はじめて愛を知りました》 【三月さくらV2】



小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
「一朗の物語」
今日は最終話まで★

2009.02.11 こども自然公園 梅-2


最愛の妻に先立たれた
一朗のたどった生涯の
終焉が近づいています。
彼が一年でも最も待ち焦がれる、
梅の花の時期が
また来ようとしています★



  第四節 祈りの行き着く処



 何度この季節が巡って来ただろう。また今年も、梅の花がぷっくらと蕾を膨らませていた。
 年長の星一がこの世を去り、治郎夫婦が相次いで亡くなってからも久しかった。青山家は一朗の孫の代になっていた。息子の初樹は仕事を引退しても何かしら出掛けることが多く、一朗は、ひ孫たちと家で過ごすことが多かった。
 ほころび始めた梅をひとしきり見てから、一朗は斜向かいの橘家の方に歩いて行った。
 庭で、既に亡くなった七海の曾孫に当たる男の子が遊んでいて、一朗に声を掛けた。橘家の梅も同じように、つぼみを膨らませていた。
 彼は大海(ひろみ)といって、一朗のひ孫、大樹(たいき)と大の仲良しで、一朗のことも“ひいじい”と呼んで慕っていた。
「ひいじい、タイちゃんといつ遊べるの?僕はお友だちとも遊べるけど、タイちゃんはお外に行けないんでしょ。可哀想」
「インフルエンザだからね、もう少しお外に出れないな」
「ねぇひいじい、タイちゃんと遊んであげてね。僕は遊べないから」
 一朗は家に戻り、曾孫の大樹と話をした。もう熱も下がり、十分元気なのに、誰とも一緒に遊べないのを寂しがっていた。
「早くヒロちゃんに会いたいなぁ」
「そんなに会いたいか?」
「うん。今日も昨日もずっと会ってないの。ママは後三つも寝ないと駄目って。ずーっと待ってるんだよ、僕」
 一朗は自らが幼児の頃、何かの病気で、葉奈と何日か遊べなかったことがあったことを思い出した。小さい子供にとっては、たとえ一週間か数日でも、とてつもなく長く感じたものだった。
 いつの間にか時の流れが速く感じられるようになった。一日は長く、一年は短い。一朗の長寿と言われる一生も、実は短いものだったのかもしれない。
「ひいじいもな、ずーっと待っているんだよ」と、一朗は言った。
「ひいじいも、お友達を待っているの?病気なの?」
「遠くにいるんだ。大樹や大海よりずっとずっと長く待っているんだよ」
「会いたい?」
「会いたいな」
「ひいじい、きっともうすぐ会えるよ」
「そうだな。きっといつか神様が会わせてくれる。ただ待ってればな。
 大樹も、元気になるまで待ってよう。それまで、ひいじいが一緒に遊ぼうな」
「うん」
16

2009.02.11 こども自然公園 梅

梅の花が咲こうとしています。
ずっと待っていた花の季節。
それ以上に待っていたものがある
一朗の人生でした。
明日は最終話です。
↓引き続き次の回も、お楽しみください。






白梅。


いよいよ「一朗の最期」の時が
来ようとしています。
そして、「夢が繋いだもの」で見た
夢の種明かしが!★



 梅がすっかりほころんだ頃、一朗は床に伏していた。
「風邪をこじらせてね」
「もう高齢だからね」
 集まった者たちがささやいていた。とうとうその時は来たのだった。
 臨終の床を、子供たちや孫たちや曾孫、家族が囲んでいた。
 死期を前にして、一朗は、昔交通事故に遭った時の夢を思い出した。自分の臨終の場面のようだったその夢。今、まさにその再現のように、家族に囲まれている。
 あの時、枕元に座っていた葉奈だと思った女性は、娘の葉摘だったのだと、一朗は気づいた。小さい頃は父親似だった葉摘は、年を重ねるにしたがって、その母親の面影を持つようになっていた。そしてもうすっかり、いいお婆さんになっていた。
「初樹、葉摘。ようやく、母さんの所に行けるよ」と、一朗はかすれた声でゆっくり言った。
 二人は頷いた。けっして、今までただの一度でも、葉奈の許に行きたいとは口に出したことのない、一朗だった。
「そうだね。母さんが待ってる」と初樹は言ったが、葉摘は言葉にしてあげることができず、ただ頷いていた。
 一朗は最期の時を、こうして穏やかに迎えた。そして、梅の花に見守られるように、この世を生き切って、その息はついに果てた。

 お通夜で身内に囲まれながら、葉摘が父を偲んで呟いた。
「お父さんは充分待ったわ。神様がくれた時間の分だけ。お母さんの所に行けて、よかったわね。無事に会えたかな。
 おんなじ月命日よ、お母さんと。お父さんとお母さんはひとつなのね。今までと同じように、月命日を供養すればいいの。今度はお父さんも一緒に。
 どんなにお父さんがお母さんを愛してたか…」
 葉摘は、思いを巡らせるように、また言った。
「神様が死ぬ時を決めてくださるって言ってたけど、そうだとしたら、神様もお父さんの愛をわかってくださったのよ」


 数ヵ月後。
 子供たちの笑い声が響いていた。二人の男の子が、抜きつ抜かれつしながら、橘家の門から飛び出してきた。
 同じ木から出た二つの梅。いつも同じ日に萌立ち、同じ日に咲き誇り、同じ日に散り始める、お揃いの梅の木が、もう離れられなくなった二つの家の門から見える所に立っていた。
 今も佇んで木を見上げる一朗の影が見えるかのようだったが、それは、彼が何十年もの間、梅の向こうに見ていたものと同じように、目には見えなかった。

− 終 −
17

これで「一朗の物語」の終了となります。
いかがでしたか?
一郎の思い出した夢は
後の「志道の最期」にも繋がるものです。
こうして、一朗の生涯をお届けしましたが、
「三月さくら」本編では
子供たちの物語の中に
一朗は名脇役として、随所に登場します。

「一朗の物語」は「三月さくら」では
第V部にあたり、
「四月しあわせの始まり」と
「八月はじめて愛を知りました」
との2章からなっています。
前後のお話 はこちらから→ 三月さくら 目次
   登場人物の確認は家系図で→ [三月さくら 家系図]




よいい一日 よい夢を

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写真は:梅-2

(C)ひでわくさん
白梅。
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無断転用はご容赦願います


プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に、書き溜めた小説を編集し始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
夢を叶えたい人、カウンセリング募集中!(四柱推命鑑定も可。)
こちらから→幽霊っているんでしょうか


2017年04月15日

21 夢の残り香2  《八月 はじめて愛を知りました》 【三月さくらV2】



小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
2010.01.23 和泉川 梅


あの世にいる葉奈と、
この世に残された一朗。
二人の間に確かにあったはずの愛は
どこに行ってしまうんでしょう。
時と共に
色褪せてしまうのでしょうか?★


 葉奈が愛した庭の木や花は、一朗の母が手入れをし、畑は父が引き継いだ。
 父が孫たちを連れては、収穫や様々な作業をし、出来た野菜をフリーマーケットに売りに行くのが、毎週日曜日の恒例になった。
 葉摘と初樹が可愛い声で「いらっしゃいませー」と言うと、野菜は午前中の早い時間にすぐ売れてしまい、後は公園のフリーマーケットを覗いて歩いたり、子供たちを遊び回らせて帰るのだった。

 子どもと接していると、季節が瞬く間に過ぎていった。夏から秋に、そして長い冬も、もうすぐ終わりになる兆しが見え始めていた。
 ある晴れた休日、一朗が子供たちとその祖父とで、フリーマーケットにいた時、ある年配の男性が声を掛けて来た。
 父が葬式に来ていたことを覚えていて、お礼を言った。「橘さんの親戚の方でしょう?その節は…」
 それは、葉奈が話していた、あの早世した伯母の連れ合いの男性だった。その名を小原といった。

 一朗は、生前葉奈が入院中、言った言葉を即座に思い出した。
「私、前はね、お祖父ちゃんも曾お祖父ちゃんも、早く亡くなって可哀想だと思ってた。残されたお祖母ちゃんや曾お祖母ちゃんやその子供もみんな。
 でもね、今はそう思わない。子供を残せたんだし、一緒にいる期間は短くても、奥さんや子供を愛せたんだし…。
 でも、あの伯母さんだけは可哀想。残されたご主人も。再婚してるようなことを聞いたけど…」

 一朗は日を改めて、小原と会うことにした。
 小原は言った。自分は長男だし、跡継ぎも必要だから、周囲の勧めで仕方なく再婚したが、ずっと先妻が忘れられなかったし、今の妻も、心からは愛してあげられなかった。
 そういうことを今まで誰にも話せなかったのか、繰り返し言うのだった。
 一朗は、ずっと以前に見た夢を思い出した。
 葉奈だったのか、それとも葉奈に瓜二つのその伯母さんだったのか、それとも二人の姿を借りた梅の化身だったのか…。
 その夢の女性は、一朗に向かって「会いたかった」と、言っていたが、それは伯母さんの、夫に対する思いだったのかもしれない。その夢の無常観が、昨日のことのように蘇ってきた。
 思えばあの時から、一朗は葉奈を失うことを予期していたのだ。いつか、触れることのできない処に行ってしまうことを。
 小原は、何度か同じことを重複しながら、更に話を続けた。
「亡くなった妻は久恵というんだが、今でも不憫で仕方がないんだ。家同士の縁談で出会った仲だが、私たちは幸せだったよ。久恵が病気で伏せるまではな。
 かといって、今の家内も、折角子供たちを産んで育ててくれたのに、すまない思いがある。久恵にどうしても心が残っていたんだ。私が言う立場でもないが、あんたの気持ちがよくわかる」
16

葉奈の伯母さんは
やはり浮かばれてはいなかったのかも
しれませんね。
↓引き続き次の回も、お楽しみください。






紅梅


若い頃、妻を亡くした小原が
その本音を語ります。
そして一朗は…★


「ここだけの話だ。再婚をしたことを悔やんでいるわけではないが、やはり、もしももう一度あの頃に戻れるなら…、しないでおくだろう。久恵のことを考えると不憫でね。
 独り身が辛いといっても、たとえ子供もいなかったとしても、その方がましだったよ。
 これまで誰にも久恵の話はできなかった。心の中でそっと思い出してあげるしか。供養も形だけしかしてやれなかった」思い出して泣くこともできなかっただろう小原は、少し目を潤ませていた。
「ただ、息子が後を継いでくれて孫もいるから、先祖には顔向けができたがね。
 あんたも若いから、これからいい話も来るだろうが」
「俺は絶対無理なんですよ、他の相手なんて。俺たちは、二人でひとつみたいなものだから。葉奈が引っ付いて離れないし」
「寂しいだろうが」
「俺には子供たちもいるし。両親もいるし」
「そうだな。あんたはそうするのがいいだろう。葉奈さんも幸せだ。どうやら、久恵もこれで浮かばれたような気がする。気になっていたんだ。そんなことはないだろうが、もしかして、久恵があんたの奥さんを引っ張って行ったような気がしてしまって」
「そうかもしれないと、俺も思ってました。どうしようもないですよ、みんないつかは死ぬんだから。俺は葉奈と離れて暮らしてるだけ、という気がしてるんです。いつか会えるまで、子供たちや家のことを守っていかないと。やることが多過ぎです」と、一朗は笑って言った。
 一朗はそうやって彼と話しながら、しっかりと覚悟が固まったような気がした。
「私もこれからは、罪滅ぼしに家内を大事にして、子供や孫を可愛がることにするよ」小原は「この年でようやく吹っ切れた」と、笑顔で言って一朗と別れた。

 季節が過ぎていった。
 思えば、葉奈が亡くなったのは、暑い盛りの頃だった。半分以上の季節が巡ったことになる。
 梅は一年で一回しかない、花の時季を迎えようとしていた。
 その木をまぶしそうに見上げる一朗の姿があった。
 その眼差しは、梅を見ながらも、連れ合いのいた昔を思い出しているようでもあり、遠い未来を思っているようでもあった。


 そして、更に時は過ぎ、子供たちも成長していった。一朗の顔にも年々皺が刻まれるようになり、髪にも白いものが混じっていった。
 よく考えてみれば、彼はずっと待ち人を待ち続けていた。
 葉奈と生き別れて再会するまでは八年だった。結婚して連れ添ったのは十二年。
 その期間に比べたら、何倍もの期間をこれからも過ごしていくだろうが、もう彼女は行方知らずではなかった。会えないとはいっても、ある意味すぐ傍らにいてくれ、彼の一部になっていた。
 一朗が過ぎし日を思い出している時は、人が軽く思い出したり、忘れたりするのとは違う趣があった。
 壊してはいけない大切なものを扱うような、ちょっとした気配でも舞い散ってしまう、はかないものを、そっと集めているような。
15

「夢の残り香」いかがでしたか?
あの世に行ってしまった人を
思い続けることは、切ないけれど、
美しいものかもしれません。
きっと今日も
梅の木を見上げる一朗の姿が
あるような気がしてきます。

明後日には最終節を
一気にお送りします。
お楽しみに。
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プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に、書き溜めた小説を編集し始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
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2017年04月14日

20 夢の残り香1  《八月 はじめて愛を知りました》 【三月さくらV2】



小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
愛妻を亡くした一朗の
忘れることのできない一晩の思い出…
「三月さくら」随一の
ファンタジックな
怪奇(?!)的エピソード★

夢に咲く・・


永遠の愛と魂の世界に
触れることのできる人もいるはず。
葉奈の死後の一朗は…★




  第三節 夢の残り香



 その朝、一朗は寝ている横を手でまさぐった。幸せな夢を見ていた。そして、葉奈をしっかりとこの手で抱き、愛したその余韻が残っていた。
 目覚めると、その傍らには愛する妻はいなかった。いるはずはなかった。
 亡くなって四十九日を迎えようとしていた。
 同じ布団で寝ている子供たちは、一人は布団の外に、一人は足元に丸まっていた。子供に気を付けながらそっとシーツをはがし、子供たちを布団に直に寝かせた。
 そしてシーツを洗濯機にかけながら、一朗は、その回転を見るともなしに見ていた。その頬を涙がつっと伝った。
「葉奈、来てたのか」一朗は微笑んだ。
「本当?じゃあ私の心も誰も持っていけない?磁石のように、いっちゃんにくっ付いたままでいい?」いつかの葉奈の言葉が耳元で聞こえるように蘇ってきた。
 とてもリアルな体験だった。感触も匂いも温もりも、葉奈そのものの存在感があった。

 その日の仕事帰り、一朗は治郎の所に行き、ひとしきりピアノ演奏を聞いた。
「マスターんとこ行こうか」と、治郎に言われて、“星の家”に行った。
 一朗は星一と治郎に言った。「夢じゃなかった。じっくり愛したんだから。生きてる時と同じだった。起きたら俺は裸で、シーツが濡れてた。起きる前は夢を見ていたような気がする。でも、その時は夢じゃなかったんだ。とってもリアルだった」
 ポツリポツリと話していた一朗は、涙を流し始めた。「また出てきてくれないかな」
「まるで雨月物語だね」と、治郎が言った。
「そんな話があるのか?」と、星一。

 ──その昔、故郷を何年も留守にした男が帰郷した。その晩、残されていた妻に迎えられ、積もる話もし、久方振りに枕を共にして休んだ。目覚めると、家には妻の姿はなく、そればかりか、その家は荒れ果てていて、崩れ掛けた屋根からは月が見えた。そして人に聞くと、その妻はもう亡き人だった。

 治郎はまたピアノを弾き始めた。美しく少し物哀しい、しかし優しい曲調だった。
 星一は一朗に訊いた。「葉奈ちゃんはどんな感じだった?悲しそうだった?」
「いや、にっこり笑ってた。何ていうか、死ぬ前の葉奈と同じだよ。悲しそうじゃなかった」
「よかったじゃないか。会えて」
「そうだね。きっとずっと側にいるんだ。だけど、会えないって点では、ずっと遠くにいるって感じだな」
「お前が葉奈ちゃんを幸せにしてあげたんだから。淋しそうな娘だったじゃないか、前は。お前が愛して、愛して、妻になり、母になれたんだから、幸せだよ」
12

↓引き続き次の回も、お楽しみください。






梅ひとえだ♪


夢か現実か、
亡くなった葉奈と再会し
一夜を過ごした一朗…
今もその余韻が残っているようです★


「幸せだって言って、逝ってくれたから、俺にとっても、救いだよ。あんなに病気で弱ってたのに。……あっ!」何かに気付いて、一朗は穏やかに微笑んだ。
「何だ?」と、星一が尋ねた。
「うん」一朗は何やら嬉しそうに見えた。「昨日の葉奈は死んだ時と違って、とても健康そうだったんだ。死んだ時は、痩せて小さくなったみたいに見えたけど。心なしか若返ったような…」
 治郎が戻ってきて話に加わった。「何?なんかいいこと話してるの?」
「俺は、二人より幸せだよ」と、一朗は言った。「もう、喧嘩することもないし、別れることもない。離婚の危機が迫ることもないんだ。二人は、奥さん大切に」
 さっきと違い、一朗の口調は明るかった。「俺は大丈夫だよ。いつかまた会えるつもりでいるから。出てきて欲しいなんて言わないよ。あまりに感動的だったから、それに浸っていることにする」
「確かにお前が一番幸せもんかもな。新妻と言えども、いつまでも若くはないし、だんだんおばさんになっていくものだ」と、星一が言うと、治郎が言った。「だんだん強くなってくるしね」
「ずっと、若いままの妻を抱けるなんて、叶わないことだ」
「ねぇ、そんなによかったの?」と、聞きたがりの治郎が訊いた。
「ああ、よかった。とっても」と、一朗は純情な青年に戻ったように、はにかんだ微笑を浮かべながら言った。
「なんか、新婚さんの話を聞いてるみたいだよね」と、治郎は言った。
「やっぱ、また出てきてくれないかな」一朗は夢を見ているように言った。その目には、もう涙はなかった。
 星一と治郎は、本当によかったという風に、顔を見合わせ、一朗を友情のこもった温かい目で見ては、笑顔になるのだった。
 生き別れ、死に別れ、となぜいうのか、一朗にはわかった気がした。
 葉奈ともずっと遠くに離れて、すぐには会えないようなもの。生き別れ、死に別れとは、時間と空間が入れ替わっただけなのだ。


 葉奈の死後、一朗は、きっと一人だったら抜け殻のようになったかもしれなかったが、幼い子供たちゆえに、救われたかもしれなかった。両方の両親の助けがあるといっても、手を掛け心を配ることがあまりに多かったので。
 そして、周囲も一朗に子供たちと共にいろんなことに関わらそうと、配慮してくれていた。
13

亡くなっても、私たちの側に
大切な人はいてくれるんでしょうか?
会えないから、遠くにいるようですが…

前後のお話 はこちらから→ 三月さくら 目次                        
  登場人物の確認は家系図で→ [三月さくら 家系図]



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梅ひとえだ♪
(C)ヨマさん
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ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に、書き溜めた小説を編集し始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

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