ぴかぴか(新しい)毎日クリックありがとうございます
にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へ にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・自作ポエムへ にほんブログ村 ポエムブログへ   にほんブログ村
 

2017年10月19日

19 《ひのくに物語'17》 仮面の犯した罪、そして愛?! 2  B面〜仮面(マスク)の章



架空の王国を舞台にした
愛と夢の一大ロマン
「ひのくに物語」──
ゆーらゆら。


ケインの、罪を償おうとする生活に、
入り込んできたもの、
それは、簡単には
排除できないようです。
それを人は愛と呼ぶのかもしれません。
印象的なシーンあり★


 罪人の立場というのは、辛いものだ。
 何が辛いかというと、丁重に扱われているため、暇があり過ぎることだった。
 その分、考える時間があまりにたくさんある単調な日々だったから。否が応でも、自分の罪の日々のことを振り返りらざるを得ず、それは辛いことだった。時間がある分、私はその痛みにさらされ続けた。
 自分の罪による呵責を忘れるためには、本を読むことぐらいしか、私にはすることがなかった。
「こもって体を動かさないでいるのはよくないわ。父に何か仕事をさせるように言うわ」と、蘭が言って、私には翻訳の仕事が回ってきて、更には曜日ごとにスポーツのインストラクターがやってくるようになった。
 乗馬、フェンシング、空手、そして水泳。必ず蘭が共にやってくるのが、困惑することだった。私としては一人で黙々とできる水泳が好きだったが、蘭の水着姿が目に入るので、また違った意味で困惑した。
 スポーツマンというのは清々しい人間が多いものだ。インストラクターたちと接するのも、体を動かして汗を流すのも気持ちがよかった。私はようやく人間らしさを取り戻したようだった。
 毎日の運動と翻訳の仕事は、私の心身を健康にしていった。
 私は長い期間、女には不自由しない生活をしていた。愛を求める女もいたが、いつしか夜毎に金で女を変えるようになった。乱れきった生活。心も冷え切って、女に愛を与えるのは苦痛だった。私の愛はからからで、何も与えるものはなかったから。
 愛なしで過ごすのは、それまで当たり前だった。
 蘭と時間を過ごすうち、私の心には何かが流れ始めていた。涸れ果てたと思っていた私の心が、潤い始めていた。
 このままではいけないと思った。このままでは、私は彼女を放したくなくなる。
 でも、もう少しは大丈夫だろう。心に言い聞かせて、会いに来る蘭を拒めないでいた。
 それにきっと遅かれ早かれ、私から離れていくに違いない、そうに違いないではないか。

 ある時、蘭は言った。「私、パリに留学するかもしれないの。デザインの勉強をしたいと思っていたから」
 迷っているようだった。私は、是非行ったらいいと留学を進めた。これは、彼女が私から離れるいい機会だ。
 蘭は言った。「引き止めてくれないから、行くのをやめようかな。私と会えなくなっても寂しくない?」
「寂しいですよ。でもインストラクターとの鍛錬を邪魔されなくてすみますし…」と、私が言う言葉を遮るように、彼女はいきなりキスしてきた。
 驚いた瞬間の次の瞬間、私は目を閉じてそのまま陶酔したくなった。しかし、それを振り切って、その体を放した。
 閉じていた目を開く時、蘭の長いまつげが揺れ、その瞳はまっすぐ私を見つめた。その様子はまるでスローモーションのように私の目に焼きついた。口付けの感触と共に。
37

印象的な…
キスシーンでした。
大罪人である自分の存在を悔やむケインは
蘭の愛情表現に惹かれながら
断ち切ろうという思いが強いようです。
愛する資格がない、と考えているのでしょうか。
引き続き、↓次の回もご覧ください。






シベシズク。


まっすぐな愛情表現をする蘭を、
ケインは心から追い出そうとします。
さて、どうやって?!
また、できるのでしょうか★


「留学して、いろいろ学んで来たらいいですね。国の外に出れば、若くて優秀で、魅力的な男はいくらでもいる」と、私は言った。
「私と、どれくらい前に出会ってたらよかったと思う?」と、蘭は言った。「お姉ちゃんに出会う前?」
「…まだ君は子供だったな」と、私は笑顔を浮かべようとした。
「出会おうとして出会ったんじゃないでしょ、私たち、最初は」
「偶然か、じゃなかったら、誰かが僕たちを会わせたって言うんですか?」
「きっと、神様じゃない?」と、蘭は笑顔で言った。「その次にはあなたが会いに来てくれた。だから、その後は私が私の意志で会いに来たのよ。偶然なのか、神様が会わせてくれたのか、確かめたいじゃない?」
 彼女を突き離さなければならないと思った。たとえ怒らせても、嫌われたとしても。今だ、もう今、はっきりと言うしかない、と心に固く決意した。
 私はできるだけ冷たく言った。「静かに過ごしていたいのに、君のお喋りに付き合うのは、疲れました。お嬢様の気まぐれで、大罪人にお情けを掛けてくれるのはありがた迷惑というものです。もう、会いに来るのはやめてください」
 言い切った後も、彼女を見送りもしなかった。
 断腸の思いというのが、あるとしたらこういうことを言うのだろうか。私は、自分が言い放った言葉に、自分で打ちのめされたような気分になった。

 次の日から蘭は姿を見せなかった。
 覚悟はしていたはずだが、簡単過ぎるような気がした。しかし、これでいいのだ。こんなに、あっけなく、終わるべき関係だったのだ。昨日までの彼女の笑い声が残っているような気配を感じてしまい、私はその雰囲気にまだ馴染めなかった。
 翌日の柔道の稽古が終わる頃、主税叔父が現われた。
「蘭は来ないよ」と、彼は言った。
「そうですか」と、私は言って顔を上げた。「もし、まだ来るようなら、私から叔父さんに言うつもりでした、ここには来させないようにと」
「娘というのは親の思う通りにはならないものだ。あんなに行きたがっていた留学に行かないと言い出している。前はどんなに反対しても行くと言い張っていたんだ。どうやって、あの娘(こ)の気持ちを変えさせたんだ?」
「留学に行けと言ったのに」
「頑固なところは、あの娘の姉も母も同じだ。事情があったとはいえ、薔子(しきこ)が結婚してくれるまで、二十年以上掛かった。菫ときたら、愛する男のプロポーズを受けることはとうとうなかったんだ。蘭の場合はどうだと思う?」
「何としても、留学に行くべきだ」
「行けと言うほど、頑なになるはずだ」
「…どうして行かないと言っているのか、知っているんですか?」
「お前に会いたいからだろう。一人でここに置いて行けないと言っていたよ」
「わかりました。私が、なんとかします」
「どうするつもりだ」
「伊達にプレイボーイと言われてきたわけではありませんよ。彼女には下手な芝居は通用しません。この間は、失策でした。大丈夫ですよ。私に任せてください」私は言った。「叔父さん、ありがとうございます。罪人の私を、こんな風に扱ってくれて。安心してください。一ヵ月後には蘭さんはパリに行っていることになりますよ。一、二年したら私のことなど、麻疹(はしか)に掛かってたように跡形もなく忘れてしまうでしょう」
「お前は、それでいいのか?」
「もちろん。寂しくなるのは確かですが、彼女といたら罪を償う心境にはなれなくなるんですよ。寂しいくらいがいいんです」と、私は笑って答えた。
38

ケインは
蘭を遠ざける
つもりのようです。
さてどうするのでしょうか?!★

登場人物の確認は→ 《B面の主な登場人物》
(2017版にリニューアルしました!)

 ※ ネタバレがありますので、A面をお読みでない方は、
 必ずこちら→ (解説・ひのくにWORLD) をご覧ください。





よい一日 よい夢を

クリックありがとうございます

にほんブログ村
写真は:ゆーらゆら。
シベシズク。
by (C)芥川千景さん
画像あるいはタイトルクリックで写真のページへ
撮影者の名前をクリックすると撮影者のページへリンク
撮影者に許可を得て使用しています
無断転用はご容赦願います



プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に小説を書き始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
夢を叶えたい人、カウンセリング募集中!(四柱推命鑑定も可。)
こちらから→幽霊っているんでしょうか


posted by kuri-ma at 06:11| Comment(0) | 小説 (再UPなど) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年10月22日

42 かすみの十年日記より  [THE PAST POST] 時の追いかけっこ

にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へ

[THE PAST POST]  
▼△時の追いかけっこ△▼
秋の贈りもの、あなたへ。


今日は、お話が戻りますが、
X-day以前のかすみの
十年日記より切り取りました★



<かすみの十年日記より>



 小学校の頃、私のひらがなの名前が大嫌いだった。お祖母ちゃんの名前をもらったんだから、「澄」をいれてくれたらよかったのに、といつも思ってた。
 学校で、消しゴムで作ったハンコ。ひらがなはいまいちで逆に彫りにくいので、「澄」って彫った。ちょっと難しかったけど、上手にできたから、使ってみたかった。
 斉藤先生への手紙に押してみたら、結構さまになって、名前は「澄子」っていうことにして、だって最初は五年後の先生だって知らなかったから、誰か知られたくなかったし。



 先生と澄子が待ち合わせた店に行った。
 最初は先生が、私と会って、喜んでいる様子なのが嬉しかった。
 会う約束が嬉しくて、なんだか舞い上がってしまって。
 でも、おかしいなって。澄子だと気づいていないし、澄子と会えないことも気にしていない。
 どういうことだろ。複雑な気持ち。



 同じページの五年前の日記を読んでみると、先生としょっちゅう手紙をやり取りしている。うらやましい。 先生が好きな人に告白するための相談、本気でしていたんだね、あの頃は。今ならとてもできないよ。
 先生がどういうつもりで私と会っているのか、会えば会うほどに分からなくなる。五年後の先生に聞けば分かるはずなのに、音信普通だから、しかたがない。



 9月23日。私の二十歳の誕生日にした約束。
 今の先生に会うより、ずっとずっと楽しみだったりする。おんなじ先生に会うのにね。
 この間は、澄子だって言えなかったから、気づいてもらえなかったけど、でも今度はそうはさせない。澄子はかすみって伝えよう。
 五年前に、その日来なかったと聞いた時には、大人になって事情ができたのかもと思ったんだけど、今考えても、私が約束を守らないなんて、信じられない。
 五年も大切にしてきた約束を。ありえない。
 それとも、逃げ出しちゃったの?あんまりに楽しみな日だから???



 もう、誕生日まで待てない。
 先生が誰かに告白する時が近づいている。
 日記を見ても、五年前の澄子も正確な日や時間は聞いていなかったから分からないし、聞くこともできないけど。
 澄子がかすみだと知ったら、すべて魔法が解けてしまいそう。だから、怖かった。
 でも、伝えるしかない。


 [THE PAST POST]
▼△時の追いかけっこ△▼

↓これ以前のお話は
目次 からどうぞ


よい一日 よい夢を

クリックありがとうございます
にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へ
にほんブログ村
写真は:秋の贈りもの、あなたへ。
by (C)芥川千景さん
画像あるいはタイトルクリックで写真のページへ
撮影者の名前をクリックすると撮影者のページへリンク
撮影者に許可を得て使用しています
無断転用はご容赦願います


posted by kuri-ma at 08:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 (再UPなど) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月12日

58《大作、一挙公開!》 初めての…喧嘩(!) 十七章 夏の踊り 秋の舞(3) 「雪洗友禅物語」《婚約・結婚篇》

今日は一挙3話掲載します!
小説 ▼△ 雪洗友禅物語 △▼
ゆきあらいゆうぜんものがたり

萩簾。


幸せな日々、気分のいいこと続きだった圭一ですが
なぜか、その日から
よい方に回らなくなったような…★


初めての…喧嘩(!)



 結納も済み、毎日のように会っては、どこかに出掛けていたある日、それは起こった。予兆のようなものは、今考えればあったのだが、それは突然起こったように感じた。
 そして、起こってしまうと、その勢いは止まらず、取り返しがつかず、収拾がつかず、元に還すのは、絶望的のような気がした。
 香苗が泣いて帰ってしまった後も、思い通りにならない、自分と相手の両方に腹立たしかった。次第に香苗が言い残していった「ついていけない」という言葉が大きくなり、後悔と、でもどうしたらいいかわからない戸惑いとがふくらんできた。苛立って、仕事も手に付かずにいる時、遼平から携帯に電話が入った。
「痴話喧嘩?」と、いきなり訊かれた。
「お前が言うと、下世話に聞こえる。」
「香苗、泣いてるけど」
「そう」
「何泣かせたの」
「泣かせるつもりはなかった。まぁ、ちょっと私が怒ったから」
「圭兄が怒ったの?へぇ」遼平は驚いたようだった。
 一呼吸置いて、彼は聞いてきた。「なんで?」
 あまり聞かれたくもなかった。それになんで怒ったのか自分でも説明できなかった。
「たいしたことじゃないさ」
「まさしく、痴話喧嘩だね」
「そういう言い方するなよ」
「するよ。婚約したんだろ?…ねぇ、最近二人でちゃんと話してる?男としてはあちこち連れ出すのが愛情表現でも、女は手握って、愛をささやいてあげないと」
「ついていけないって言われたよ」
「ほー、それこそ、どこまでもついていきたいと思っているからこそ、出る言葉だよ。優しくしてあげなよ、ちゃんと言葉に出してさ」
 そうだろうか。
「男は一度言えばいいって思ってるんだけど、女は毎日何度でも言ってほしいらしいよ」
 そういえば、しばらく愛していると言っていない。そのせいで、私自身も枯渇していたのかもしれない。言わないと言いづらくなる。そして言いたくなくなってくる。何かわからないが、白けたような思いがしていた。
 その日は、そういえば、何か正体不明の苛立ちがずっとあって、香苗と会っても晴れなかった。遼平にはちょっとと言ったが、果たして私は、今まであんなに激怒したことがあっただろうか?少なくとも、香苗の前では初めてだった。
116


圭一が激怒…!
ケンカですか。
犬も食わないと言うケンカもあるようですが
さて、このケンカは
どうなるのでしょうか。
引き続き、↓次の回もご覧ください。







ほおずき


ケンカしたようですね。
ケンカの原因、
そして圭一が怒った原因は
いったいなんだったのでしょうか★


 もう泣かせはしない、と誓ったのに、こんなにあっ気なくも、簡単に破ってしまい、後味が悪い感じだった。
「じゃあ、香苗とは仲直りしてよ。早いほどいいんだからね」と、遼平は言って、電話は切れた。
 私は電話を終えたまま、しばらく携帯を見ていた。ディスプレイはやはり香苗の写真にしてある。その彼女の顔をひとしきり眺めてから、電話を掛けた。
 呼び出し音を何回も数え、もう出ないのかな、と思った時、香苗が電話を受けた。
「…もしもし」と、かすれ掛かったような声がした。
「…もしもし?もしかしてまだ泣いてた?」
「…」
「ごめん」と、一言言うと、愛おしい思いが湧いてくる。さっきまでのいらだちは収まっていた。
「会いたいな。夕食でもしよう」
「だめよ」と、香苗は言った。「もう、お母さんがご飯の支度しちゃったわ。圭兄ちゃんのとこもでしょ。無駄にすると申し訳ないから」
 そう言われても、そのまま会わないつもりはなかった。私は、和泉家を訪ねた。香苗の母が喜んで迎えてくれた。
「お母さんの食事が頂きたくて、来ちゃいました」
「圭ちゃんにお母さんって言われるなんて、嬉しいわ」
「これ、家の夕食。カナが無駄にすると母に悪いというので」
「まぁすごい」
 夕食の準備が出来たところだったので、私がもくろんでいた通り、高校生の頃は時々そうだったように、一緒に食卓を囲むこととなった。
 香苗はいつもより黙りがちだったが、和泉家の明るい食卓を、共に囲むのは、楽しかった。夕食の後も、楽しく歓談して時を過ごしてから、帰ることにした。
 玄関のドアを閉めると、香苗の手を取った。向き合うと、香苗は俯いてしまう。あごをそっと引き上げて、口づけをした。そして、抱き締めた。
「愛しているよ」しばらく言ってなかったその言葉を囁くと、胸の波動に襲われた。もう離れたくない思いを断ち切るように、その日は別れた。
 婚約したということ、婚約者がいるということ…。その晩ベッドに入っても、私は香苗のことを思い出し、なかなか寝付けなかった。
 夜遅くに、私は長い長いメールを、香苗に送った。今まで口にしなかったこと、もう二度と伝えられないことまで、一気に打って送信した。
 もう一度、ベッドに横たわると、さっき「愛しているよ」と言った私の声が耳元にゆっくりこだました。
「愛している」私はつぶやき、その声に安心するように、いつの間にか眠りに就いた。
愛″という言葉には、やはりすごい力がある。私の理由のない苛立ちも消えさせるほどに。
117


ケンカの原因も不明なのに
圭一の中では解決したかのようです。
これほどまでに香苗を愛しているのですから。
一方、彼女は?
引き続き、↓次の回もご覧ください。






はぎ紅葉


初めてのケンカは
仲直りしたつもりの圭一。
一方、香苗の乙女心は
ちょっと複雑なようです…★



〈香苗の日記〉

  11月5日

 遼君に「けんかしたんだろ?」って言われたけど、けんかっていうんだろうか、やっぱり。昨日、圭兄ちゃんを怒らせてしまった。なんで、あんな風に、圭兄ちゃんの機嫌が悪かったんだろう。かなも、ちょっとキツイことを言ってしまったし。
 電話が掛かってきて、ごめんって、それだけで終わると思ったら、うちの夕飯の時間に現れて、とても嬉しそうに一緒に食事して行った。ママから料理、しっかり教わっておかなくっちゃ。
 帰る時、そこまで送って来いと、遼くんにうながされて、一緒に玄関を出ると、圭兄ちゃんはいつものすごく優しいお兄ちゃんで、キスして、ハグして、愛してるって言ってくれた。
 夜遅くというか、ほとんど夜中に、メールが届いた。京都で会社員だった頃のことまで、私にごめんって。やっぱり、お兄ちゃんもさみしくって、つらかったんだね。私が子供だったから、お互いどうしようもなかったのに。
 これから、お兄ちゃんの心のさみしさ、私が埋めてあげれるんだろうか。
 仕事が終わったら、すぐにお店に顔を出して、会うつもりでいたのに、何か会えないって気持ちになって、家に帰って来てしまった。どこか、圭兄ちゃんの目につかないところに隠れていたい気持ち。なんか恥ずかしくて、顔を合わせられない。こうしていたら、圭兄ちゃんがまた家に来るかもしれない…なんて思って、啓子を呼び出してしまった。
118


真珠貝の告白

しっかりと閉じていた
真珠貝がその口を開く時
中に隠されていた珠玉は
輝きを放つ

砂を一粒 呑み込んでから
大切に育んできた真珠の玉
愛を一粒 吞み込んでから
ずっと隠してきた僕の心
波に揺られ 潮に流され
耐えて来た

泡が立つのは
この愛がうずくから
心が震えるから

この愛を君に明かそう
固く閉じていた心を開こう
大切にしまってきた
僕のこの思いは
もう真珠の玉のように
大きく隠せなくなっているから

砂を一粒 呑み込んだことは
大切な僕だけの秘密だった
愛を一粒 呑み込んだ時
ちっぽけだった僕の愛は
痛みも渇きも 淋しさにも
耐えて来た

涙が流れるのは
海の水に浸かりすぎていたから
君を求めすぎて
心が干上がりそうだから

錨を下ろそうと思う
波に漂いながら 潮にもまれながら
岸を恋焦がれた

この愛を君に捧げよう
真実な思いは真珠のように
輝きを隠せなくなっているから
もしも受け入れてくれるなら
僕の大好きな笑顔を見せて


圭一の愛は海よりも広く…?
香苗の想いは秋の天気のようにつかめません
ケンカの波紋はまだまだ続きます

「雪洗友禅物語」の登場人物と
あらすじは ↓ から
「雪洗友禅物語」登場人物

雪洗 家系図1
作品講評*あらすじ*「雪洗友禅物語」

今までのお話
こちらから↓ 
雪洗友禅物語「目次」《大作、一挙公開!》版




よい一日 よい夢をぴかぴか(新しい)

クリックありがとうございます
にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へ
にほんブログ村
写真は:萩簾。 by (C)芥川千景さん
ほおずき by (C)akemiさん
はぎ紅葉
by (C)ヨマさん
画像あるいはタイトルクリックで写真のページへ
撮影者の名前をクリックすると撮影者のページへリンク
撮影者に許可を得て使用しています
無断転用はご容赦願います


posted by kuri-ma at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 (再UPなど) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする