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2016年10月27日

東京はじめてストーリー (前・後編)  【三月さくら】番外編



小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
草食系。


上京したての女の子が
いきなりイケメンと二人きりで
一日を過ごすことに。
春の東京のデートスポットを舞台にした
短いお話です★


東京はじめてストーリー



 大学進学のため上京したばかりのまだ肌寒い春の日。彼女は初めての経験をした。
 東京の桜も初めてだった。
 よく考えてみれば、その日は初めての体験ばかりだった。
 子供の頃以来、東京は、修学旅行でディズニーランドに行ったきりだ。こちらの人は、そこは正確には東京ではないというけれど、彼女にとっては、どちらでも同じだった。
 高校を出たてのおのぼりさん、とまどうことばかりの東京で、そのエスコート役にはできすぎの、素敵なイケメンが一日彼女の案内をしてくれたのだった。
 若い男性と一対一だから、まるでデートのような状況で、彼女は丸一日彼と過ごした。本当のデートだったら、それが初デートとなるのだが、親戚の叔父さんに言われてつきあってくれただけだったから、ロマンティックな展開にはなるわけがなかった。それでも、彼女には、まるで夢のような一日だった。
 その日にどこに行ったのか、その時にはあまり覚えていなかった。
「どこに行きたい?」と彼は気さくに訊いてきた。
「浅草や羽田空港は修学旅行で行きました。東京タワーも」
「へぇ、そう。…海、山、街か。東京見物なら、街かな」
 そう、隅田川の桜はチラッと見たが、人が多くて遊覧船も、はとバスもあきらめた。
 スカイツリーができる前だから、それなりにその時に人気の場所に連れて行ってくれたらしい。
 それから、水族館に行き、東京タワーよりも高いという展望台で、東京の街を眺めた。明るいうちに行って、暮れなずんでいく風景はとてもきれいで、彼女の東京のイメージはきらきらと美しいものとなった。
 彼は、緊張しがちな彼女の気持ちをほぐすように、田舎のことや、家族のことを聞いてきて、それも楽しそうに聞くので、彼女はその日、よく話した。
 そして、彼も家族の話をしてくれたのだが、亡くなったお祖父さんの話はとくに面白くて、笑い転げてしまった。
 内緒で言えば、彼女はその日、とても楽しかった。その時間がいつまでも終わらないでほしいと思うその感覚を、初めて知った。
 健全なお出かけだったから、夕飯前に、祖母の家に送り届けられた。

 携帯で写真は撮ったが、ツーショットは一枚だけだった。日が暮れてくるとカップルばかりの展望台で、その中の一組に写真を撮ってあげると、お礼にどうぞと言われて、撮ってもらったもの。
 その写真を今見ても、彼は素敵だった。初めて一日過ごした人が、彼だったから、東京の男はみんなそうなのかと思ったら、誰も彼も普通に見えてしまう。また、同年代の学生は、少し頼りなくも感じてしまう。
 そして、この三年、その普通の男性とのデートの機会すらなく、大学とバイトと滞在先の祖母の家以外は、親戚のおじさんがやっているカフェに行くほかは、ほとんど行く場所もなかった。 
 三年前の、お下げ髪が似合いそうな顔立ちから、微かに幼げな表情が消えたように見える彼女の姿だった。
 都会にもまれて、学生服から一変、いつも着ていくものを気にしなければならないことにも慣れて、それが生活になった。
 三年住むと、多少東京も分かってくる。いまだにおのぼりさんには違いないが、彼と行った場所もどこでも、一人で行けるくらいには慣れてきた。

春の日の一日は、
デートではなかったんですね。
こんな彼女のお話。
あと一回でおしまいです。
三年経って、どうなるのか?!






都会の夜桜。


三年を経て
一人の少女はどのように
成長したのでしょうか。
そして、デートスポットを再び★


 桜の便りに誘われて、隅田川まで来てしまった。あの時、初めてだったものは、いっぱいある。東京の桜も、東京の街も、人の波も…。
 懐かしい。

 ロマンティックなことは何もなかったデートだったといったが、実は、もしかしたらと期待するような経緯があった。
 でも、それは自分の思い過ごしだったのだと、彼女は言い聞かせている。ちょっとかっこよすぎる男性に優しく言われたから、社交辞令でも、なんだか特別の言葉に聞こえてしまったのだと。
 帰り際、彼は言ったのだ。「今日では回り切れなかったから、じゃあ、この続きはまた今度行こう」と。
 そして、続けて、彼は言った。「僕は、木曜は空くんだけど、どう、食事でも」
 彼女の心は、舞い上がったようになったが、間が悪いことに、その日は予定があることをしっかり思い出してしまった。行くと言えばよかったと、その後何度も後悔した。
 彼は、これもきっと社交辞令だと思うが、ちょっと残念そうな顔をして、でもサラッと言った。「じゃあ、また今度。連絡するよ」
 そしてその連絡は三年間なかった。
 彼女の胸はあの日知ったときめきを再び感じることはなく、それは、甘酸っぱいような思い出として残った。

 人の流れは、かえって一人でいる寂しさを助長させた。一人で待つのは侘しいので、遊覧船にもハトバスにも乗らずに、なんとかサンシャインに行き着いた。
 一人で見ても、眺めは素晴らしい。今は東京タワーとスカイツリーの両方を眺められるスポットもいくつもあった。そこで一枚だけ、素晴らしい景観を撮影した。
 いつの間にか、外は黄昏てきて、なんともいいムードだ。一人で全部を回るのは、なんだか間が持たなくて、三年前の何倍かの速度で回り終えてしまった。
 若い女性向け、あるいは外国人などの観光客向けのグッズが満載の売店、そこで、あの時は、彼からストラップを買ってもらった。おじさんかおばさんに言われたのか、実家へ送るお菓子も一緒に。
 その携帯ストラップは気に入ってずっと付けていたのだが、ある時、壊れてしまった。
 多少配置換えはしているかもしれないが、以前と変わらない雰囲気だ。
 あの、ストラップと同じものが、もしかしてないだろうか、なんとなく探してみた。こういうところにあるものは、きっと商品の回転が早いだろうから、三年もたって、もはやあるはずがない、とも思った。
 まったく同じものはなかったが、よく似たものを見つけて、それで良しとした。
 また、あの時、名前つきのストラップも二人で見たのだった。ほんの小さな銀色の金属製のタグだった。彼女の名前はあったが、彼の名前は、ぴったりの漢字のものはなかった。
 すると、彼女の名前だけでなく、三年前になかったはずの彼の名前も見つかった。彼に渡す機会もないのだからと、一度手に取ったタグは戻して、先ほどのストラップだけ購入した。

 どうしてこんなに人が多いんだろう。
 帰りに乗り換える駅を間違えて、人々は行き先に向かって迷わず進んでいくのに、取り残されたような気持ちになった。
 そして、思った。
 自分は彼のことを秘かに思い続けてきたけれど、彼以外の人が現れるまでは、それも許されるのではないか、と。
 彼女は、その日、本格的に片想いを自覚したのだった。
 東京で「初めて」をたくさん経験した。三年越しの片恋も。
 まだまだ背伸びばかりの自分自身も認めてあげて、たまにはかかとをしっかり地面につけて、立ってみるのもいいか、と。そうしてみると、自分の本当の目の高さにある真実が見える気がした。

「東京はじめてストーリー」


これは一応、「三月さくら」の
番外編として挿入した小説です。
今後ともよろしくお願いします。
いつも本当にありがとうございます。

いよいよ 三月さくら
最終章をスタートする準備をしています。
できるだけ、早くおめもじできますよう
頑張っています。
COMING SOON !


前後のお話 はこちらから→ 三月さくら 目次


よい一日 よい夢を

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写真は:草食系。
都会の夜桜。
by (C)芥川千景さん
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無断転用はご容赦願います



プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に小説を書き始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
夢を叶えたい人、カウンセリング募集中!(四柱推命鑑定も可。)
こちらから→幽霊っているんでしょうか


2015年04月06日

〈桜week〉 東京はじめてストーリー (前・後編) 【三月さくら】番外編

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小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
草食系。


上京したての女の子が
いきなりイケメンと二人きりで
一日を過ごすことに。
春の東京のデートスポットを舞台にした
短いお話です★


東京はじめてストーリー



 大学進学のため上京したばかりのまだ肌寒い春の日。彼女は初めての経験をした。
 東京の桜も初めてだった。
 よく考えてみれば、その日は初めての体験ばかりだった。
 子供の頃以来、東京は、修学旅行でディズニーランドに行ったきりだ。こちらの人は、そこは正確には東京ではないというけれど、彼女にとっては、どちらでも同じだった。
 高校を出たてのおのぼりさん、とまどうことばかりの東京で、そのエスコート役にはできすぎの、素敵なイケメンが一日彼女の案内をしてくれたのだった。
 若い男性と一対一だから、まるでデートのような状況で、彼女は丸一日彼と過ごした。本当のデートだったら、それが初デートとなるのだが、親戚の叔父さんに言われてつきあってくれただけだったから、ロマンティックな展開にはなるわけがなかった。それでも、彼女には、まるで夢のような一日だった。
 その日にどこに行ったのか、その時にはあまり覚えていなかった。
「どこに行きたい?」と彼は気さくに訊いてきた。
「浅草や羽田空港は修学旅行で行きました。東京タワーも」
「へぇ、そう。…海、山、街か。東京見物なら、街かな」
 そう、隅田川の桜はチラッと見たが、人が多くて遊覧船も、はとバスもあきらめた。
 スカイツリーができる前だから、それなりにその時に人気の場所に連れて行ってくれたらしい。
 それから、水族館に行き、東京タワーよりも高いという展望台で、東京の街を眺めた。明るいうちに行って、暮れなずんでいく風景はとてもきれいで、彼女の東京のイメージはきらきらと美しいものとなった。
 彼は、緊張しがちな彼女の気持ちをほぐすように、田舎のことや、家族のことを聞いてきて、それも楽しそうに聞くので、彼女はその日、よく話した。
 そして、彼も家族の話をしてくれたのだが、亡くなったお祖父さんの話はとくに面白くて、笑い転げてしまった。
 内緒で言えば、彼女はその日、とても楽しかった。その時間がいつまでも終わらないでほしいと思うその感覚を、初めて知った。
 健全なお出かけだったから、夕飯前に、祖母の家に送り届けられた。

 携帯で写真は撮ったが、ツーショットは一枚だけだった。日が暮れてくるとカップルばかりの展望台で、その中の一組に写真を撮ってあげると、お礼にどうぞと言われて、撮ってもらったもの。
 その写真を今見ても、彼は素敵だった。初めて一日過ごした人が、彼だったから、東京の男はみんなそうなのかと思ったら、誰も彼も普通に見えてしまう。また、同年代の学生は、少し頼りなくも感じてしまう。
 そして、この三年、その普通の男性とのデートの機会すらなく、大学とバイトと滞在先の祖母の家以外は、親戚のおじさんがやっているカフェに行くほかは、ほとんど行く場所もなかった。 
 三年前の、お下げ髪が似合いそうな顔立ちから、微かに幼げな表情が消えたように見える彼女の姿だった。
 都会にもまれて、学生服から一変、いつも着ていくものを気にしなければならないことにも慣れて、それが生活になった。
 三年住むと、多少東京も分かってくる。いまだにおのぼりさんには違いないが、彼と行った場所もどこでも、一人で行けるくらいには慣れてきた。

春の日の一日は、
デートではなかったんですね。
こんな彼女のお話。
あと一回でおしまいです。
三年経って、どうなるのか?!






都会の夜桜。


三年を経て
一人の少女はどのように
成長したのでしょうか。
そして、デートスポットを再び★


 桜の便りに誘われて、隅田川まで来てしまった。あの時、初めてだったものは、いっぱいある。東京の桜も、東京の街も、人の波も…。
 懐かしい。

 ロマンティックなことは何もなかったデートだったといったが、実は、もしかしたらと期待するような経緯があった。
 でも、それは自分の思い過ごしだったのだと、彼女は言い聞かせている。ちょっとかっこよすぎる男性に優しく言われたから、社交辞令でも、なんだか特別の言葉に聞こえてしまったのだと。
 帰り際、彼は言ったのだ。「今日では回り切れなかったから、じゃあ、この続きはまた今度行こう」と。
 そして、続けて、彼は言った。「僕は、木曜は空くんだけど、どう、食事でも」
 彼女の心は、舞い上がったようになったが、間が悪いことに、その日は予定があることをしっかり思い出してしまった。行くと言えばよかったと、その後何度も後悔した。
 彼は、これもきっと社交辞令だと思うが、ちょっと残念そうな顔をして、でもサラッと言った。「じゃあ、また今度。連絡するよ」
 そしてその連絡は三年間なかった。
 彼女の胸はあの日知ったときめきを再び感じることはなく、それは、甘酸っぱいような思い出として残った。

 人の流れは、かえって一人でいる寂しさを助長させた。一人で待つのは侘しいので、遊覧船にもハトバスにも乗らずに、なんとかサンシャインに行き着いた。
 一人で見ても、眺めは素晴らしい。今は東京タワーとスカイツリーの両方を眺められるスポットもいくつもあった。そこで一枚だけ、素晴らしい景観を撮影した。
 いつの間にか、外は黄昏てきて、なんともいいムードだ。一人で全部を回るのは、なんだか間が持たなくて、三年前の何倍かの速度で回り終えてしまった。
 若い女性向け、あるいは外国人などの観光客向けのグッズが満載の売店、そこで、あの時は、彼からストラップを買ってもらった。おじさんかおばさんに言われたのか、実家へ送るお菓子も一緒に。
 その携帯ストラップは気に入ってずっと付けていたのだが、ある時、壊れてしまった。
 多少配置換えはしているかもしれないが、以前と変わらない雰囲気だ。
 あの、ストラップと同じものが、もしかしてないだろうか、なんとなく探してみた。こういうところにあるものは、きっと商品の回転が早いだろうから、三年もたって、もはやあるはずがない、とも思った。
 まったく同じものはなかったが、よく似たものを見つけて、それで良しとした。
 また、あの時、名前つきのストラップも二人で見たのだった。ほんの小さな銀色の金属製のタグだった。彼女の名前はあったが、彼の名前は、ぴったりの漢字のものはなかった。
 すると、彼女の名前だけでなく、三年前になかったはずの彼の名前も見つかった。彼に渡す機会もないのだからと、一度手に取ったタグは戻して、先ほどのストラップだけ購入した。

 どうしてこんなに人が多いんだろう。
 帰りに乗り換える駅を間違えて、人々は行き先に向かって迷わず進んでいくのに、取り残されたような気持ちになった。
 そして、思った。
 自分は彼のことを秘かに思い続けてきたけれど、彼以外の人が現れるまでは、それも許されるのではないか、と。
 彼女は、その日、本格的に片想いを自覚したのだった。
 東京で「初めて」をたくさん経験した。三年越しの片恋も。
 まだまだ背伸びばかりの自分自身も認めてあげて、たまにはかかとをしっかり地面につけて、立ってみるのもいいか、と。そうしてみると、自分の本当の目の高さにある真実が見える気がした。

「東京はじめてストーリー」


これは一応、「三月さくら」の
番外編として挿入した小説です。
今後ともよろしくお願いします。
いつも本当にありがとうございます。

〈桜week〉として
今日は、小説をお送りしました。
満開の桜が散り切ってしまわないうちにと
桜の詩をお送りしています。
[THE PAST POST] 時の追いかけっこの連載は
しばらくお休みしています。
いましばらくお待ちください




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都会の夜桜。
by (C)芥川千景さん
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無断転用はご容赦願います


2014年07月27日

東京はじめてストーリー 〈後編〉 【三月さくら】番外編

小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
都会の夜桜。


三年を経て
一人の少女はどのように
成長したのでしょうか。
そして、デートスポットを再び★


 桜の便りに誘われて、隅田川まで来てしまった。あの時、初めてだったものは、いっぱいある。東京の桜も、東京の街も、人の波も…。
 懐かしい。

 ロマンティックなことは何もなかったデートだったといったが、実は、もしかしたらと期待するような経緯があった。
 でも、それは自分の思い過ごしだったのだと、彼女は言い聞かせている。ちょっとかっこよすぎる男性に優しく言われたから、社交辞令でも、なんだか特別の言葉に聞こえてしまったのだと。
 帰り際、彼は言ったのだ。「今日では回り切れなかったから、じゃあ、この続きはまた今度行こう」と。
 そして、続けて、彼は言った。「僕は、木曜は空くんだけど、どう、食事でも」
 彼女の心は、舞い上がったようになったが、間が悪いことに、その日は予定があることをしっかり思い出してしまった。行くと言えばよかったと、その後何度も後悔した。
 彼は、これもきっと社交辞令だと思うが、ちょっと残念そうな顔をして、でもサラッと言った。「じゃあ、また今度。連絡するよ」
 そしてその連絡は三年間なかった。
 彼女の胸はあの日知ったときめきを再び感じることはなく、それは、甘酸っぱいような思い出として残った。

 人の流れは、かえって一人でいる寂しさを助長させた。一人で待つのは侘しいので、遊覧船にもハトバスにも乗らずに、なんとかサンシャインに行き着いた。
 一人で見ても、眺めは素晴らしい。今は東京タワーとスカイツリーの両方を眺められるスポットもいくつもあった。そこで一枚だけ、素晴らしい景観を撮影した。
 いつの間にか、外は黄昏てきて、なんともいいムードだ。一人で全部を回るのは、なんだか間が持たなくて、三年前の何倍かの速度で回り終えてしまった。
 若い女性向け、あるいは外国人などの観光客向けのグッズが満載の売店、そこで、あの時は、彼からストラップを買ってもらった。おじさんかおばさんに言われたのか、実家へ送るお菓子も一緒に。
 その携帯ストラップは気に入ってずっと付けていたのだが、ある時、壊れてしまった。
 多少配置換えはしているかもしれないが、以前と変わらない雰囲気だ。
 あの、ストラップと同じものが、もしかしてないだろうか、なんとなく探してみた。こういうところにあるものは、きっと商品の回転が早いだろうから、三年もたって、もはやあるはずがない、とも思った。
 まったく同じものはなかったが、よく似たものを見つけて、それで良しとした。
 また、あの時、名前つきのストラップも二人で見たのだった。ほんの小さな銀色の金属製のタグだった。彼女の名前はあったが、彼の名前は、ぴったりの漢字のものはなかった。
 すると、彼女の名前だけでなく、三年前になかったはずの彼の名前も見つかった。彼に渡す機会もないのだからと、一度手に取ったタグは戻して、先ほどのストラップだけ購入した。

 どうしてこんなに人が多いんだろう。
 帰りに乗り換える駅を間違えて、人々は行き先に向かって迷わず進んでいくのに、取り残されたような気持ちになった。
 そして、思った。
 自分は彼のことを秘かに思い続けてきたけれど、彼以外の人が現れるまでは、それも許されるのではないか、と。
 彼女は、その日、本格的に片想いを自覚したのだった。
 東京で「初めて」をたくさん経験した。三年越しの片恋も。
 まだまだ背伸びばかりの自分自身も認めてあげて、たまにはかかとをしっかり地面につけて、立ってみるのもいいか、と。そうしてみると、自分の本当の目の高さにある真実が見える気がした。

「東京はじめてストーリー」


これは一応、「三月さくら」の
番外編として挿入しました。
「青葉の季節の魔法」の再アップは
またもう少し後にずらしました。
明日からのこの時間は、
季節にふさわしいものを選んでお送りします。
今後ともよろしくお願いします。
いつも本当にありがとうございます。


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