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2017年10月18日

17 《ひのくに物語'17》 取れない仮面、そして贖えない罪2  B面〜仮面(マスク)の章



架空の王国を舞台にした
愛と夢の一大ロマン
「ひのくに物語」──
道端のハナニラ。


悪事はいつまでも続かない、
と言いますが、もうケインは
観念するときが
やって来ました★


 この道を行く限り、蘭との接点はあるはずはなかった。彼女が敵でないと言ったとして、私たちの関係は敵同士に変わりなかった。
 そして馨たちに対して、私は完全優位に立ち、ほぼ全てのものを手に入れ尽くしていた。
 元皇太子、英晴の王座への擁立も、もうすぐで成立するという時、全てが崩れ去った。
 元王の代理人による記者会見、これには、完全に不意を突かれた。全然予期もしない形で、私たちの砂上の楼閣はもろくも崩れ去った。
 悪事は長くは続かない。全てが、罪と偽りと暴虐で築いたものだったから、崩れ始めたと気付いたら、あっという間に全てが引っ繰り返されて、跡形もなくなった。
 昨夜までこの国の最高の立場にいるかと思っていた私と元王妃は、反逆者となり果て、拘留され裁きを待つ立場となった。
 もう、私の未来はなくなったと思った。あるとしても、罪を償うだけの負の時間が残されるだけで、喜びもなく幸福にも無縁な者となったのだと。
 どうして、私はああまで馨を妬んだのだろうか。全てが終わって私はふと思った。ああまで、彼のものを執拗に奪おうとすることはなかったのに、と。

 裁きを受ける立場であったにも関わらず、私は一般の監獄に行くことはなかった。身柄を預かったのは、ずっと叔父、梵野主税(ぼんのちから)だと思っていた。それが、馨のたっての願いだったと後で知った。
 御許引受人として立った主税は、実際は私の叔父ではなく、菫と蘭の父親だった。そう、董の父だった。
 娘にむごいことをした男を許せるはずがないのに、彼は言った。「馨様が許しておられるのに、私が根に持っても仕方なかろう。私は今でもお前を甥っ子だと思っている。悪さをした子供には罰も必要だが、憎いからそうするんじゃない。
 馨様は言っておられた。お前が、罪の道へと踏み外したのは、自分がいたからだと。あの方は、今でもお前を、憎むことが出来ないんだ。私がいくら憎い相手だと言っても、あの方はそれが出来なかった。兄だと思っているんだ。
 それから、お前の父のことだが、いつもお前を自慢にして信頼していた。嗣業を馨様に譲るのは、あの方が王になる為のステップで、いずれお前にその座を戻しても、いつでもお前ならやっていけると。頼みにしていたんだ。
 今更知っても仕方ないだろうが、蓉子(ようこ)(元王妃)は、あの時お前を父親殺しに仕立て上げる計画だったんだ。それを逆手に取って、家統(いえすみ)は自ら殺されに行った…」
 私は、父が馨に嗣業を譲るつもりだと言った時以上に、愕然とした。
34

誰からも愛されないと
感じていたケインでしたが、
父は、自分の命すら彼のために
犠牲にしてくれたようです。
引き続き、↓次の回もご覧ください。






晩秋の光景・三保市民の森。


ケインはようやく
自分の罪を
悔いることができるように
なったようです。
そして、馨にとって
辛いあの出来事が…★


 父は、自分の命を掛けて私を守ろうとしたのか。考えてみれば、私は確かに信頼されていたのだ。馨の成長を願い、守っていくことに命を掛けている両親を支える者になってくれると。
 ただ私は、ちょっと認めてもらいさえすればよかった。強がっていずに親にも甘え、馨にも普通に弟にするように、喧嘩したり、引き下がらず譲らずに、欲しいものを欲しいと言ってくればよかったのだ。よい兄の仮面の下に、本音を隠しこむようなことをしなければよかった。
 大切な家族だったのに。全て失ってしまった。
 今は何もない。それすら、私のまいた種だ。
 私には警察と、主税叔父の抱える監視が常に付いた状態だったが、生活は守られていた。自由はなかったが、何も不満も心配もなかった。
 捕らえられてからは、私は馨のことを、理解できるようになった。全てを奪おうとした憎い相手であるはずの私を、馨は決して恨むようなことをしなかった。これまで私が、彼のものを奪っても、命まで狙っても、彼は決して屈しなかった。
 私は今ではよくわかる、彼が王たるに、ふさわしい男であることを。
 そんな折、馨と菫が襲われた報告を受けた。菫は助からず、馨も重症を負っているということだった。
 襲った相手は、私の以前の配下の者だった。頭(かしら)の私が捕まって、もう反撃するつもりもないというのに、蛇の尻尾のように、私の配下はまだ動いていたのだ。嫌、命令するトップを失った悪党たちは性質(たち)が悪い。何をするかわからない。
 でももう、この事件を機に、部下も一掃されることだろう。すべて、片がつくはずだ。

 私が自分の罪を振り返って、後悔の思いに襲われながら過ごしている時、私は馨の訪問を受けた。菫を失った馨は、生気がなかった。
「とうとう、王になることになりそうだ」と、彼は言った。
「おめでとう」と、私は言った。
「心から言っているの?」
「心からだよ。お前は立派な王になる」
 馨はフッと笑った。
「あんまりなりたくないようだね」
「私が望んだものなんか何一つないよ。たった一つあったけど、その望みは完全に絶たれた」
「菫のことは、すまなかった」
「兄貴がさせたことではないんでしょ。もう、誰とも連絡できなかったはずだから」
「そうだが、私の部下だった者たちがしたことだ。私が始めなければ、こんなことにはならなかった」
「謝ってもらって、菫が帰ってくるわけでもないさ。よく思うんだ。あの時、兄貴に言われたように、全てを兄貴に譲って、菫と一緒になってたらなって」
 馨はひどく辛そうだった。「でも、だめだったよな。菫は私を決して受け入れなかったから」
34

菫と愛し合っていたことすら、
確信がもてない様に見える
傷心の馨の姿です。

登場人物の確認は→ 《B面の主な登場人物》
(2017版にリニューアルしました!)

 ※ ネタバレがありますので、A面をお読みでない方は、
 必ずこちら→ (解説・ひのくにWORLD) をご覧ください。




よい一日 よい夢を

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写真は:道端のハナニラ。
晩秋の光景・三保市民の森。
by (C)芥川千景さん
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無断転用はご容赦願います


プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に小説を書き始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
夢を叶えたい人、カウンセリング募集中!(四柱推命鑑定も可。)
こちらから→幽霊っているんでしょうか

posted by kuri-ma at 06:02| Comment(0) | ☆ひのくに物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月17日

16 《ひのくに物語'17》 仮面、そして始まり3・取れない仮面、そして贖えない罪1  B面〜仮面(マスク)の章



架空の王国を舞台にした
愛と夢の一大ロマン
「ひのくに物語」──
晩秋を飾るもの。


罪を重ね続け、
ケインは
いったいいつ
止まることができるのでしょうか。
この節の最終話★


 そして、父の遺言で馨に譲られていた平和(ひらなぎ)家の家督権を、合法的に私のものにしようと考えた。それは、簡単に進むはずだった。
 しかし当初の菫を介した計画は、私の思惑通りにはいかなかった。
 馨は亡くなった先王に似て、憎いほどに清廉潔白だった。後に調べてみると、留学先の大学でも、彼を悪く言う人はいなかった。明るく、友人たちからも、教授たちからも尊敬され慕われていた。女との浮名を流すことも、なかったらしい。
 酒、女、そしてドラックにも手を出して上手に遊んでいるつもりだった私の学生生活とは、全然違ったようだ。その点からも、彼と私は差がついていた。環境に流されず、品性を保ち続けていた馨との、勝負は既にわかりきったことだった。
 菫はもう、私の元に帰ってくることはなかった。わかっていたことではあった。
 すぐさま別の策を講じて、平和家の嗣業を自分のものにした。そして、馨の命を奪うため、様々な策を練り、刺客を送った。
 元王妃、菱倉蓉子(ひしくらようこ)と結託しつつ、その関係を利用するつもりだった。しかし仲間になるというのは都合のいいものだけを得ることはできない。いつの間にか私は王妃の行ったのと同じ道を歩いていた。弟を裏切り、父を殺害した、恐ろしい男になってしまった。
 蓉子は、夫である元王を殺し、妹を裏切り、全ての人に偽り生きてきた。今、全てを暴露されて、廃人のようになっているということだ。
 彼女がボタンを掛け間違えたのは、情けない男を愛した時からだ。見かけだけで、一人の女性さえも守ることも出来なかった恋人。
 彼の子供を身籠ったまま、王妃になるという恐ろしい行動を取り、その途方もない企みを守るために、この国の太陽のような存在だった王を殺害した。巧妙に。そして、病弱な息子を王として立てるために、様々な策を講じてきた。
 同じ反逆者の元王妃と私は、二枚岩のように、最強だと思っていた。その時まで、全て私たちの思い通りにならないものはなかった。
 私は財や権力で手に入るものはすべて求めてきた。果てることのない欲望の醜さは、人を通しても、自分を通しても嫌というほど知った。欲望や快楽というものは、求めてもキリがないものだ。しかし、金で買える快楽には限界がある。必ず終わりがある。
 私は少し遊ぶだけのつもりだった。利用するだけのつもりだったのに、気が付けば自分が利用され、うまく立ち振る舞っていたつもりだったが、自分自身がおもちゃにされたようだった。利用尽くされ何もかも失おうとしていた。
 はたと気付いた時には、引き返せなかった。心を失くしたまま、惰性で、これ以上失わない為に、さらに強奪に強奪を繰り返した。
31

父を殺し、
弟からは、恋人を奪い、
地位も財産も全て奪い、
命まで狙ったケイン。
今は囚われの身となって、
ようやく、これ以上
堕ちることはない、ということでしょうか。
引き続き、↓次の回もご覧ください。






いずれが がくか花びらか。


新しい節のスタート。
ニュー・ヒロインの登場?!
そして、ケインの
罪の行き着く処は?!★



取れない仮面、そして贖えない罪



 蘭(らん)に初めて会ったのは、そんな頃だった。主税叔父と彼女の母親の関係は世間に知られる前で、彼女は、まだ菱倉(ひしくら)姓を名乗っていた。
 私は悪事の沼にはまり込んで、いよいよ抜けられなくなっていたが、外的には、国の大臣の補佐も務め、何もかもが順調のように見えた。
 元王妃と蘭の母は姉妹で、彼女は*元皇太子、英晴(ひではる)、通称エイセイの従妹に当たるから、それまでに会っていてもおかしくなかったが、蘭の母親は、姉との関わりを極力避けているという噂で、蘭もこれまで社交界に出ることはなかった。高校生になった彼女は、母親の束縛を逃れ、自由に行動するようになったのだろう。
 大臣主催のパーティーの席で、私たちは同席した。董によく似ていると思ったが、話してみると、姉を思わせるところは、容姿の他は微塵もなかった。
 彼女は、少し話すだけで誰もが魅了されるような、天真爛漫で屈託のない明るさを持っていた。
 その晩彼女は私との会話を楽しんだ。私もつい時と立場を忘れて、長く話してしまった。
「あなたのこと、気に入ったわ」と、蘭は言った。「この国にも、話して面白い人がいるなんてね」と言って、自分から連絡先を教えてきた。
「もう、会わない方がいいですよ、私たちは」
「どうして?」
「君にお姉さんがいるでしょう」
「姉のことを知っているの?!」
「私は彼女に、相当憎まれているはずですから」
「…」
「だから私たちは敵同士のようなものです」
「でも、伯母さんと仲がいいんでしょ?」
「知らないんですか?元王妃はあなたの母君とは犬猿の仲です」
「知っているわ」
「とても複雑な関係だ、私たちは」
「あなたが敵なの?私は伯母も従兄も敵だとは思えないんだけど」
「君には知ってほしくないな。きっと私を憎いと思うはずだから。軽蔑されるかも」
 私の話の重さを理解していなかった蘭は、ただ花のように笑っていた。
「…もっと早くに会いたかったですよ、君とは」と、私は本心からそう思いながら言って、蘭と別れた。もう、会うことはないと思った。
32

*元皇太子、英晴(ひではる)、通称エイセイ:
一旦は元王の子として名づけられたので、
王の実子である馨と対の名前をもつ。
(馨のセカンドネームは英雨(エイブル))

元王妃と愛人との私生児だが、
母はなんとしてもこの息子を王に擁立したいと画策し続けた。
実際は元王の死の前に王家からは出されて、菱倉姓となっていたが、
それを隠して、通称エイセイで通してきたらしい。
病弱で、王の器ではない。
物語には彼は名前以外は登場はしない。


これが菫の妹、蘭とケインとの
出会いのシーンですね。
彼らの立場はいわば敵同士、
もう会わないほうがよい
関係でしたが…。

登場人物の確認は→ 《B面の主な登場人物》
(2017版にリニューアルしました!)

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ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に小説を書き始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
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posted by kuri-ma at 07:30| Comment(0) | ☆ひのくに物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月16日

15 《ひのくに物語'17》 仮面、そして始まり2  B面〜仮面(マスク)の章



架空の王国を舞台にした
愛と夢の一大ロマン
「ひのくに物語」──
花びら占い。


エイブルとケインの物語。
やはりそこには
愛憎が隠れているようです。
ケインの秘められた菫への思いは…★


 そして、いつしか私は彼女をかけがえなく愛するようになっていた。いつも、彼女にとっては優しく頼れる男でありたかった。
 時々錯覚した。菫の向ける笑顔が、私への愛に基づいていると。
 そんな折、父親との会話の中で、私が力を入れている事業も含めて、会社をいずれ継がせるのは馨であることを知った。国では嗣業(しぎょう)として受け継ぐ地位がいくつも存在したが、それも馨に継がせようと父は考えていた。実の息子ではなく、馨に。
 高貴な血が流れるというのがその理由だろうか。父は持っているもの全てを与えたいのだろう。実の息子には、その残りかすを与えれば気が済むというのに。馬鹿なドラ息子だったら、理解できる。普通なら自慢になるはずの息子のつもりだった。父の目には馨の他は何も見えない。私は愕然となっていた。
 馨への嫉妬は、日に日に強くなっていった。私はそんな気持ちを、家族にも菫にも隠していた。
 その日から、数年掛けて、私は彼女を誘惑していった。知恵の働く私は、あからさまな誘惑はしなかった。確実に、菫の信頼を勝ち取り、自分に心を向けさせようとした。
 元王妃、菱倉蓉子(ひしくらようこ)に近付いたのもその頃だ。彼女は、したたかな女だが、私にはその欲望に満ちた生き方が、理解できた。私たちは同族だった。元王妃にとって、私のような男は、策士として打って付けだった。
 負の方向に自分が行き始めたことに危惧を覚えもしたが、引き返すことは遂になかった。ことを成し終えるまで。
 ちょうどその頃、病に臥せっていた私の婚約者が亡くなった。病気がちなことを理由に、相手方から既に婚約は解消するように申し入れがあったから、正確には既に婚約者ではなかった。
 彼女を深く愛してあげることが出来なかった。婚約した当時は私の留学前で、彼女は健康だった。家同士が決めた縁だったが、私は彼女を好ましく思ったし、結婚相手としては最適だった。おそらくその頃は、彼女を愛していた。留学前に、体の関係を求めると、応じてくれた。私の初めての女性だ。
 しかし私は、故郷を離れ彼女への貞操を守ることなく、解き放たれたようになって、女性遍歴を経ていった。女性関係を繰り返す度に私の心は冷めていくようだった。そんな不実な婚約者だった。
 婚約者を亡くした私を菫は気遣ってくれた。
「私が可愛そうだと思うなら、愛してくれないか」
 菫は言った。「ケインさんなら、どんな女性でも嫌と言わないでしょう?」
「私は君がいいんだが」私は冗談めかして言ったが、そこには本音が混じっていた。
「…」
「君のように聡明で美しい人がいいんだ。君にお姉さんでもいれば、紹介してほしいくらいだ」
「…妹なら、いますが」
「君に妹さんがいたの?君に似ている?」
「私も会ったことがないの。写真なら持っています。今年撮ったものということだけど…」と言って見せてもらった写真には、菫とよく似た少女が写っていた。それが蘭(らん)・陶子(とうこ)だった。
29


この蘭と、ケインとの出会いまでには
もう少し時がかかります。
さてケインの鬱屈した思いは
菫にどのように向かっていったのでしょうか。
引き続き、↓次の回もご覧ください。






風を待って・・・


ケインの屈折した愛情は
報われず、
心も晴れず、
とうとう恐ろしい罪に
手を染めていくようになります★


 恐ろしい仮面を被ってしまった私は、あくまで菫に対しても、善意の男を演じ続けた。
 その後も、菫に自分を愛してもらおうと、必死だった。菫がそんな私に応じるはずがないと、わかりすぎるくらいわかっていた。
 彼女は、ある意味私を愛してくれたが、あくまでも友人として、愛する人の兄の域を脱することはなかった。
 馨を妬ましく思うからか、菫を恋焦がれるからなのか実のところよくわからなかったが、私はもう抑えられなくなっていた。彼女の心を得たいと思った。どんな手を使っても。
 そして、どうしても心を許さなかった菫に対して、金と人と薬を使い、とうとう奪った。
 そこで私は止まらなかった。そのようなことをすればするほどに、彼女は私を愛するどころか、憎んで恨むに違いないとわかっていても、もう、手放したいとは思わなかった。
 馨をこれで苦しめることができるということは、私にとって快感でもあった。しかし菫を愛で縛り続けることは、とうとう一度も出来なかった。私は、彼女を監視下に置き、恐怖で自分の元に縛りつけた。
 父のことを殺害するつもりは最初からはなかった。
 菫のことを咎められて、もうこれでお終いだと、観念しかけたのだったが、同時に様々な思いが、湧いてきた。父はいつも馨のためしか考えない。このままでは、私が会社において作ってきた実績も何もかも、そのまま馨に譲ることになる。今まで私は何のためにやってきたのか。
 元王妃も私に耳打った。「父を殺害すれば、全てをお前のものにすることができる。父の後を継いで。家と会社が持っている全ての地位と名誉と財を。国を牛耳ることのできる権力も手にすることが出来る。そして、女も」
 馨のものになるはずだった女をも、手篭めにしているのだ。誰にも邪魔させたくなかった。
 私は、その悪魔の囁きをとうとう無視することができなかった。完璧な方法で、血を分けた父を殺害した。
 実際は、私は何もしなかった。元王妃が手の者にさせたことだ。しかし、たとえ直接手を下したのではなかったとしても、同じことだ。
 強姦と殺人と、そして馨の持つもの全てを奪った私は、ありとあらゆる罪の権化に成り果ててしまった。そして、王妃たちと共に皇太子の擁立と、馨を完全に失脚させる為に、手を尽くしたのだった。
 馨の帰国に備えて、私は、董に対して手を打ってあった。
 彼女は私を恐れていた。馨に救いを求めようとしても求められないように、逆に馨を誘惑しろと言った。そうしないと、彼にも危害を加えると脅したのだ。
 菫の誘惑に馨が乗るとすれば、全てが私の思う通りになるはずだった。菫を通じて馨をコントロールするのも可能だった。恋に盲目になって、そのためになら何でもしたいと思うだろう。薬漬けにすることもできる。
30


次回はこの節の
最終話です。

登場人物の確認は→ 《B面の主な登場人物》
(2017版にリニューアルしました!)

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よい一日 よい夢を

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写真は:花びら占い。
by (C)芥川千景(沈没寸前)さん
風を待って・・・
by (C)ヨマさん
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プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に小説を書き始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
夢を叶えたい人、カウンセリング募集中!(四柱推命鑑定も可。)
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