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2018年02月24日

41 《雪洗YOU禅物語’18》 夢の通ひ路(かよいじ)2  〜盛夏篇〜



小説 ▼△ 雪洗友禅物語 △▼
ゆきあらいゆうぜんものがたり
鈴風。


なんのシーンかといえば
これは「両親への挨拶」ですね。
無事にできるでしょうか★


 私は緊張気味だったが、両親は既に待ってくれているような感じがあり、私は最初に切り出すことができた。
「今日はお許しを頂きに来ました。…結婚したいと思っています」商用でも何でも、こんなに緊張したのは、初めてだった。一瞬の沈黙に耐えられなく、私は言葉を重ねた。
「香苗さんと結婚させてください。精一杯大切にします」
 香苗の父が何と答えたのかよく意味がわからなかった。私同様、あるいはそれ以上にお父さんも緊張していたのだとわかった。
「近い内に私の両親がご挨拶に来たいと言っておりました」
 私がそういうと、香苗の母が待っていたように話し始めた。「ええ。ご両親や、お祖父様、お祖母様にも、よろしくお伝えください。うちの香苗をたいそう気に入って下さって。私たちから見ればまだまだ子供なのに」
 そこに遼平も入ってきて話に加わった。そして、私と香苗の二人を結びつけるために、いかに働いたか話し始めた。
 ひとしきり、話が尽きると夕食を勧められた。「もうそのつもりで支度してあるから」と、香苗の母は断る隙も与えないで、準備に席を立ってしまった。
「どうだった?京都は」遼平の問いに、
「よかったよ」と私が答え、
「楽しかった」と香苗も答えた。
 香苗も台所に立ち、続いてお父さんも部屋を出た。
 私は少しホッとして遼平に尋ねた。「お父さんは大丈夫かな。二人一緒なのに心配していなかった?」
「婚前旅行とは違うって、言ってあるよ。圭兄の親父さんがエライその点にうるさくてさ、だから爽雲先生のところにお願いしたわけ」
「それで、子供たちと同じ部屋だったのかな」
「爽雲先生は、『その気になれば、部屋を抜け出せばいいんやから、そこまでは責任持てませんで』なんて言ってたけど」
「冗談じゃないよ」
 遼平は笑った。「本当に結婚するんだ。圭兄もやる時はやるね。見直したよ」
「仕組んだのは、お前だろう」
「俺が仕組んだって?一気に『結婚させてください』ってところまで?京都でのことは俺は関知してないよ」
「親父が気合が入っててさ。明日はカナを連れて来いって言われてる。もう今日しかないだろ」
「さすが雪洗の会長だけある。一昨日の見合い写真の件はしっかり挽回してくれたよね。で、本当に香苗に務まるの?雪洗の嫁ともなれば」
「苦労はさせないとは、言えないよ。でもカナなら大丈夫」
「苦労も苦労と思わないか。買って出る方だから」
95

本当に一気に結婚に
話がいきました。
ホームドラマでは御馴染みのシーンですが
なんでこんなに緊張するんでしょうね…。
引き続き、↓次の回もご覧ください。






2011.07.05 和泉川 泥遊び


圭一が和泉家の団欒に
加わることは
高校生以来。
「思春期の陽だまり」は
アラサー圭一にとっては…★


 香苗の家族と共の食卓は明るく楽しかった。ここに自分もいるということ自体、幸せなことだった。失っていたものを得て更に余りある今の状況だった。どうしても他人だった私が、優平がいない事で来るきっかけを失ったままだったというのに、今はどうだ。家族の一員になったようだ。私の場所がある、歓迎される場所が。
 嬉しい復活だった。もうない事だと思っていた。
 木蓮の花が太陽を求めるように、いつもこの家庭の温かさが恋しかった。失ったと思っていた思春期の陽だまりの中に、もう少年ではない今の私が、再び入ることができるとは。
 これもすべて、香苗ゆえにだ。今と現実との間に、しっかりと橋を架けてくれていたので、私たちの縁を実らせることができた。
 食事後、居間に出してあったアルバムを、香苗と見て過ごした。家族もそれぞれ同じ空間でくつろいでいた。
 それは、私たち二人が和泉家の皆から、受け入れられ、守られているような、そんな感覚だった。皆が私たち二人を注目し過ぎることなく、見守ってくれているのは、嫌ではなかった。とても心地よかった。
 香苗の誕生の頃のアルバム。私が知らない、生まれたばかりの香苗、よちよち歩きの頃、兄妹一緒のところ。優平や遼平の幼い姿も、両親が今より細く若々しい姿も残っていた。
 そして、香苗の三歳の頃の写真。
「こんなにかわいかったっけ?」私の記憶に刻まれている、小さかった頃の香苗の姿が重なった。
 私の思春期の、もしかしたら孤独と憂鬱で根腐れしたかもしれなかった時期に、その純粋さと率直さと明るさで私を救ってくれた、かけがえのない香苗の姿。
 そうだった。あの、おしゃまな小さな女の子に会っていなければ、今の私がいなかったかもしれない。既にこの頃、私がまだ自らを僕≠ニ言っていた頃から、香苗はかけがえのない大切な存在だった。
 写真を見ながら、また傍らにいる香苗を見ながら、何度も魂の波動が襲って来て、涙ぐみそうになりながら、今の幸せをかみしめていた。
 二人でめくる香苗のアルバムは、そのうちに、私が彼女に会わなかった頃に差し掛かった。
 私が社会人となり、自らを遠離(とおざ)けるとともに、私の視界からも香苗を遠離け続けた期間。
 京都への修学旅行の写真が数ページを占めていた。
 あの時、会えば会えたのに、会わないようにして、簪(かんざし)だけプレゼントした。本当はどれだけ会いたかったか。会えばよかったのに。…しかしやはりどうしても会えなかったなと、当時の自分を、自身で初めて理解した。
「会ってあげなくてごめん」
「そうね。いつも絶対会えなかった。わざとだったの?でもいい。会えなかったから、私も頑張ってこれたのかもしれない。会ってたら、お兄ちゃんに甘えちゃってたと思うから」
96

香苗の思春期の
会えなかった日々…。
どうして会えなかったのでしょうか。


「雪洗友禅物語」の登場人物とあらすじは ↓ から

「雪洗友禅物語」登場人物
  
雪洗 家系図1
作品講評*あらすじ*「雪洗友禅物語」



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プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に、書き溜めた小説を編集し始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
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2018年02月23日

40 《雪洗YOU禅物語’18》 夢の通ひ路(かよいじ)1  〜盛夏篇〜



小説 ▼△ 雪洗友禅物語 △▼
ゆきあらいゆうぜんものがたり
波の玉ボケ


新章は、圭一と香苗の
離れていた距離と年の差、
それを越えて、
時間と時間を繋いだ
不思議な夢の話です★



 十五章 夢の通ひ路(かよいじ)



 京都を後にして、帰途に着くと、夕方には香苗の家の近くまで来ていた。香苗を誘って、堤防に登った。
 私は言った。「京都から帰ると、海を見たくならない?」
「そうなの?やっぱりお兄ちゃんも?」
「海を見ないと禁断症状が出るんだ。前から、ここが好きだった。落ち着くだろ」
 私たちは、ゆっくり、堤防の上を歩いた。そして、また来た方向に折り返して、ヘリに腰掛けた。香苗の祖母が亡くなった時に来た場所。ここから見える海の景色は変わらない。
「懐かしいな」
「忘れてたんじゃなかったの?」
「君が覚えてるのに?」
「ねぇお兄ちゃん、きっと言霊ってあると思うの。ここで圭兄ちゃんが一生懸命話してくれたこと、ここにいるとわかってくるの。全部覚えているはずがないのに、不思議でしょ。何かが教えてくれるみたいに。カナのお祖母ちゃんは光になったんでしょ。だから見えないようでも側にいてくれるの」
 私はあの時のように、また香苗の頬に触れた。
「ここは、カナの指定席なの」
「ここでいつも、いつ泡になろうかって、考えてたの?」
「そんなはずないでしょ。圭兄ちゃんのことばかり考えていたわけじゃないんだから」
「ふうん」
「あんまり何も考えないで、ぼーっと座ってるのが好きだったの。波を見たり、海の色を見たり。
 なんか、いろいろ、教えられちゃうの。雪洗のおばあちゃんも凄いけど、海も凄い」
「祖母ちゃんは、海と並べられるくらい凄いのか」
「比べられないくらいよ。
 いつだったかね、波を見ていて思ったの。波って、寄せるだけじゃなくて、引いていくんだって。それまで、どんな風に、波が寄せてくるのか、そっちばかりに目がいってたのに、そうだ、引いてみるのも必要なんだって。
 おばあちゃんにも、おんなじ事を言われてたところだったから、だから、私も京都に行くことにしたのよ。日舞もやめて。
 お兄ちゃんが、約束を忘れたわけじゃないこと、どこかでわかってた。時々、何かの時に、ポロって、出ちゃうのよ。カナを好きじゃない振りをしてたんでしょ。約束も忘れた振り。」
93

この章は全8話でお送りします。
夢のお話、そして以前に日記の章でも
出てきた和歌も登場します。

夢、Dream 英語で言っても
夜見る「夢」と 心に思い描く「夢」と
両方の意味があるのですが
ここでは、夜見る夢のお話です。
引き続き、↓次の回もご覧ください。






フウセンカズラとアブ。


堤防で、海を見ながら会話。そして、実は
この後大切なイベントが…
行く先は香苗の家、というと?!★


 私は香苗の手を握りながら、海の方をずっと見ていた。
「おばあちゃんは、厳しいようだけど、いつも私の力になってくれた。おじいちゃんも大好き。いっつも『嫁に来い』って言ってくれるから。環ちゃんも、私の味方だった。
 わからなかったのは、圭兄ちゃんが、ただ優しいだけなのか、それとも、とんでもない卑怯者か、ってこと」
「なんだよ、それ。どっちだったの?」
「自分で、わかるでしょ」
「カナの結論が聞きたかったのにな」私は香苗の目をじっと見つめた。
「教えてあげない。海を見ていると、大体答えがわかるの」
「ずっと、私がカナを好きだったことも?」
「…」
「そうだよ、君が好きなくせに、言えなかった、ずっと卑怯者だった」
「今、わかった。私は、お兄ちゃんのこと、優しい人って、ずっと思って来たもの」
「本当の卑怯者にならなくて済んだよ、君のおかげだ」
「お兄ちゃんは、天然に優しい人だと思ってた」
「それって、褒められてるような気がしないな」
 香苗は、私が優しい説を主張し、私は、香苗にだけ優しいのだと、説明しようとしたが、難しかった。私ではなく、香苗がそうさせるのだと上手く言えなかった。
「いいよ。これから、見ててくれればわかるから。これからは、本当の優しい男になれるように、頑張るよ。さぁ、もう君の家に行かなければ」
 そう言って私は、もうこれ以上の口論は無駄だと、あきらめることにした。香苗は、私の敵う相手ではなかった。

 これから私がしなければならないことは、これもまた避けては通れない大切なことだった。
 私たちは、和泉家の前に立った。
「十年振りよね」
「やっとひとつ約束を果たせた。でも、この間一回泊まったんだよ、聞いてなかった?君が風邪で倒れた晩」
 実は、酒を飲んで意識を失くしたあの時の状態を思い出すと、恥ずかしくて更に緊張が増すようだった。しかし、あの時の、また堂々と来たいという願いが叶ったことは、実に嬉しかった。
 香苗の両親と遼平は、温かく私たちを迎えてくれた。
「先日は失礼しました。ご無沙汰していたのに、十分なご挨拶もできず…」と私が言いかけるのを、遼平が「あの日は俺がつき合わせたんだから」と助け舟を出してくれ、私たちは促されて、上にあげられた。
94

和泉家に
また来ることができましたね。
ということは、これは…。
続きは明日をお楽しみに!
「雪洗友禅物語」の登場人物と
あらすじは ↓ から
「雪洗友禅物語」登場人物

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2018年02月22日

39 《雪洗YOU禅物語’18》 泡になった人魚姫2  〜盛夏篇〜


今日は「泡になった人魚姫」
一挙に最終話まで☆
小説 ▼△ 雪洗友禅物語 △▼
ゆきあらいゆうぜんものがたり
ゆらめき。


香苗の話の続きから。
アンデルセン童話
「人魚姫」に話は展開します★


「私が最初に工房に行った時、結美さん『ああこの娘(こ)かって』思ったんだって。そういう話を少しずつ聞いていたらね、なんかお兄ちゃんの様子が見えてきた。きっと私のことを大切に思ってくれてるに違いないって、妹って言いながら。ねえ、もう一人の妹≠チて誰のこと?」と香苗は曇りのない笑顔で訊いた。   
 もう、とうに両手を挙げてしまいたい気分の私は、照れくさくて黙っていた。逃げ続けていた私を責めることもせずに、香苗は話を続けた。
「一年掛けて納得したの。お兄ちゃんの気持ちはどうであれ、私の気持ちは、はっきりしたの」
「カナの気持ちって?」
「私は圭兄ちゃんがとても大切。私は人魚姫になろうって」
「…人魚姫?!」
 アンデルセンの『人魚姫』の話を知らないから出た疑問符ではないのだが、香苗は分かり易く語ってくれた。
 嵐で溺れかけた王子を救った人魚姫は、王子に恋して、自分の声を犠牲にして人間の姿になる。一方王子は隣国の王女に介抱され、親しくなる。…
「王子様は人魚姫を妹のようにしか見てくれなくて、王女に夢中なの。唖(おし)になった人魚姫は、王子が他の女性と結婚したら泡になって消えなければならないのに、何にも言えないの。自分の気持ちも、自分が本当は王子を助けたことも。そして、結局王子様は隣国の王女様と結婚してしまって、人魚姫は、海に身を投げて、泡になって消えてしまうの」
「悲しいね」
「私は今までずっとお兄ちゃんにこの気持ちを伝えられなかったけど、泡になって消える自信もなかったの。でも一年間京都にいて、踏ん切りがついたつもりだった。
 お兄ちゃんの妹でも何でも、空気のように、ただお兄ちゃんの側で喜ばせられたらいいって。…でもね、難しかったな。だって、泡になる決心したつもりだったのに、心のどこかで王女様になれる期待も持ってて。ほんの少しの期待だと思っていたんだけど。
 …ちょっと人魚姫になり損ねちゃった」
「本当に泡になって消えられたら大変だった。…こんな風につかんだり、抱き締めたりできなかっただろ」私は香苗の肩を抱き言った。「私のことを王子様なんて言ってくれるのは、君だけなんだから。…でもその王子はそれからどうしたんだろう、人魚姫がいなくなって」
「王女様と幸せに暮らしましたってお話」
「ふーん」
「気に入らない?」
 ちょっと王子の方に感情移入しそうになったのをやめ、私は言った。「で、君は人魚姫をやめて、王女になったってことだよね」
90

人魚姫というのは片思いの代表ですね。
悲恋、純愛というものの象徴でもあるようです。
もう思いが通じたのですから
当然、人魚姫は卒業、ということでしょうか。
引き続き、↓次の回もご覧ください。






2010.03.12 池上本門寺 雲


泡になって消えるしかなかった
人魚姫の気持ち
それは香苗のそれと
重なるものがあったようです★


 香苗は私の方に向き直って言った。「簡単に言うのね。必死だったのよ。だってお兄ちゃんが言ったのよ。『女の子から言っちゃ駄目だよ』って。子供だったからって、馬鹿にしてたの?」
「君を馬鹿になんて…」するはずがない。馬鹿にできるわけがないのだ。
「だから私は唖(おし)になるしかなかったの」
「そうだね。すごいよ君は。願っていることを何でも叶えていく。ありがとう、あきらめないでいてくれて」
「本当に必死だったのよ。だから人魚姫は私のテーマだったの。
 …寂しかったし、辛かったけど、黙って待っててよかった。お兄ちゃんから本当にプロポーズしてもらえたし、本当に幸せ」と言い、香苗は私の肩に頭を預けてきた。
 よかった。父からのゴー・サインがなければ、プロポーズに至れたかどうか。私の言葉通りに、ずっと待っていてくれた香苗に対し、プロポーズこそがその約束を果たすことだったから。
「プロポーズって言えるようになったんだ」
「言えるわよ。お兄ちゃんは忘れちゃったのかと思ってた」
「忘れられるわけがないよ。顔を合わせば毎日のように言われていたんだから」
「嫌々約束したんだ」
「違うよ。とってもかわいかったんだ、君は。言われないようになって、ちょっと寂しいくらいだった。言われるのは嬉しくても、責任を感じてたんだよ。
 君は小さかったけど、しっかり覚えているんだね。…でも初めて会った時のことは覚えてないだろ?」
「お店で?いつなのかわからないけど、初めて会った時から、お兄ちゃんが大好きだった」
 あの、ショーウィンドー越しに初めて幼い香苗に出会った時の事を、香苗は覚えていないとしても私には忘れられない。あの時の目は、今も同じだ。
「私もだよ。愛している。今もこれからも、それから昔も。あの頃から、ずっと愛していた」
 彼女に愛の言葉を伝えると、不思議に私自身にそれがこだまし、魂の内から感動と快感が広がった。そして、自分自身が思っていた以上に、それは確信に変わっていった。私自身が認識していた以上に、私は香苗を愛していた。その思いは更に溢れるように大きくなっていくのだった。
 私の胸の中で盛んに沸き立っていたものは、泡になった人魚姫なのかもしれない。消えても、消えても、沸き起こる、天然のソーダのように、私の心の中に残り続けているから。

 山院を後にして、私は香苗を馴染みの問屋街に伴った。案の定、着物好きの彼女は十分に楽しんでくれたようだ。
 小物を扱う店で、今日の目当てのものを見つけた。友禅の小物入れ。
「ほら、簪(かんざし)はこういう物に入れるといいんだよ」
 香苗に好きな柄を選ばせて、金を支払った。
「昨日もこれを買ってもらったのに」香苗は着ているワンピースをつまみながら言った。
 何かを買ってあげて喜んでもらう、こんなささやかな事が、嬉しいのだと知った。毎年、簪や髪飾りを選ぶ時も、振袖を融通しようとした時もそうだった。思えば、いつかアイスクリームを買ってあげたあの少年の頃に、既に与える喜びは知っていたというのに。

91

圭一が少年の頃
そして香苗が幼い頃からの思いが
ようやく、糸がほどけたように
うまくまとまりました。
圭一があげたべっ甲のかんざし
そこに込められた思いも
それぞれに感じたようですね。
引き続き、↓次の回もご覧ください。






2010.04.30 祇園 都をどり


片思いが成就したとしたら
人魚姫は
王子様と幸せに暮らせたでしょうか…?★


 簪を仕舞い直す香苗に私は訊いてみた。
「日舞はなぜやめたの?」
「もう、いいかなと思って。そもそも着物をたくさん着たかっただけだから。正直、習うのはいいけれど、お月謝以外のお金が掛かりすぎるの。納得もできないのに。もう、はっきり言って、環ちゃんの踊りが師匠のよりも、いい位だと思ってるから、私」
 着物代や、新年の挨拶、発表会の時の御祝儀など、日舞をやり続ける限り、かなり掛かることは確かだろう。長くやれば、組織の嫌な面も見えるだろうし、環の名取の件で揉めたことからも、続けたくない理由があったかもしれない。

 例の帯の店に立ち寄ると、主人は香苗を見て言った。
「いやぁ、あの振袖のお人どすな。本人はんがお見えになるとは」
 主人は、香苗に、私がいかに丹念に帯を選んでいたか、明かした。
「あんな上物の振袖と帯を貢がはるお相手は、幸せや思ってましたわ」
 香苗は主人の話しを聞きながら、恥ずかしそうに微笑んでいた。

 午後には、帰途につくため京都駅に来ていた。
 私の胸には、その日ずっと沸き立つものがあった。この‘魂の波動’は愛から来るものらしい。香苗を愛しいと思うと、泡のように沸き立ってくる。そして時々、更にギュッと締め付けられるような感じになり、私は胸を押さえなければならなかった。
 人魚姫は泡になって消えたのではなくて、昇華して、天に昇ったのではないか。
 気化して、王子の妃となった王女の魂と同化したのかもしれない。泡になるというのは、最も純粋な姿になるということ。
 人魚姫は、ちょっと前までの唖になっていた香苗。でもそれはもう過去のことで、今はこうして私と手を携えている。成長した一人の女性として。でも、人魚姫だった頃の思いは泡になっても消えはしなく、香苗の中に息づいているのだ。
 そして、王子は本当に自分を救ってくれた存在に気付いたはずだ。あの妹のように可愛い人魚姫の存在に。私も香苗の中に見るだろう、涙に暮れていた人魚姫の姿を。
 私は帰りの新幹線の中で、香苗の手を握りながら、そんな事をとりとめもなく考えていた。



〈 香苗の日記 〉

  7月6日(日)

 今日もあまりにいろんなことがあって、
全部は書けないくらい。

「愛している」と言われたのも初めて。
初めて抱き締められ、初めてのキス。
そして、二度目のキス。

圭兄ちゃんがもっともっと、好きになる。
もう、声が聞きたい。

人魚姫って言った時のお兄ちゃんの顔、
思い出したら笑ってしまう。
クウェスチョンマークが100個くらい浮かんでた。
92

泡になって消えてしまった
人魚姫…。
香苗が自分を人魚姫と重ねた理由を
圭一もそれなりに理解したようです。
今日は章の最終話。
次回からの章では
「夢」がテーマになります。

この小説に関しても、連載のたびに推敲し
より読みやすく、また内容もよくなるように編集を重ねています。
藤野という魅力的な人物の恋バナもあり、
まだまだこれから、盛り上がる展開もあります。
では、明日からの連載をお楽しみに!
「雪洗友禅物語」の登場人物と
あらすじは ↓ から
「雪洗友禅物語」登場人物

雪洗 家系図1
作品講評*あらすじ*「雪洗友禅物語」



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91上 池上本門寺 雲
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