ぴかぴか(新しい)毎日クリックありがとうございます
にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へ にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・自作ポエムへ にほんブログ村 ポエムブログへ   にほんブログ村
 

2017年01月03日

〈終〉24 《あの人は広い傘をもっている'16》 Final Sean 雨降って地固まる



小説 ▼△あの人は
広い傘をもっている△▼
2011.06.19 和泉川 紫陽花に架かる橋
 

ようやく最終章です。
いくらか時が流れているようですが
彼らはどうなったんでしょうか★



Final Sean 雨降って地固まる 127486796702016104458.jpg



「今だから言うけど、あの時の体験談はここに残ったみたいで、気がついたら同じことをしてたんだよね」暢は染野と話をしながら、胸の辺りを押さえた。
 その部屋は、いつだったか染野がマジックを披露したマンションのリビングで、あの時は真新しかったが、今はそこかしこに生活観が出ていた。ベランダには、小さな男の子の服や、暢のものと思われるTシャツなどが干してあった。
「体験談って何でしたっけ?」
「君が奥さんを射止めた時の話だよ。プロポーズの時しょっぱなに…」
「ああ、キス。…もしかして長尾さんもしたってことですか?」
「君が、キスした瞬間この女は自分のことを愛してるってわかったって」
「…ああ、そんな話をしましたね。今では錯覚だったかとも思うんですがね、とってもかわいく見えて、絶対に離してなるもんかって思っちゃったんですよね」
「なんか後悔してるみたいに聞こえるよ」
「…それは誤解ですよ。僕の奥さんに変なこと言わないでくださいよ。僕は熱烈に愛してるってことにしておいてください。後が怖いんですから」
「いったいどんな結婚生活してるわけ、君たちは」と、暢は言って笑った。
「二人のお姫様に毎日仕えてますよ、僕は。長尾さんはいいよな…」と染野が話している時、「パパー」と子どもの声がした。
 そして駆け来ると、暢の胸に飛び込んだ。3歳くらいの男の子、佑太かと思う風貌だったが、顔を上げると別人なのがわかった。
「お兄ちゃんは?」と、父に聞かれてその小さな男の子は回らない舌で「もう来るよ」と言った。
 彼らが結婚した春から、5年が経っていた。
 間もなく、凛々しい小学生の姿に成長した佑太が現れた。
「まいったよ。タクは足がメチャ速いんだよ。僕は荷物持ってたから、ダッシュかけられたら追いつけなかったよ」
 そう言ってから、染野を見るとしっかり挨拶した。「こんにちは、モモちゃんたちも、もう来ますよ」
 そんな話し方には、かつてのたどたどしい幼児言葉は片鱗もなかったが、にっこり笑った顔には面影が残っていた。

「へえ、佑くんはお祖母ちゃんの亡くなった時のこと、覚えてないの?」と、染野。
「曾お祖母ちゃんは、とってもかわいがってくれて、お店でおいしいものを出してくれたことは覚えてるんだけど、僕、タクが生まれる前のことは忘れちゃったみたいなんだ」と佑太は言った。
 それは幸いだと暢たちは思っていた。
 美里が子どもを身篭ったニュースをとても喜んでくれたマツは、その子をその目で見ることなく他界したが、葬儀の一連の式に参列し、不思議そうに一部始終を見ていたはずの佑太は、その時のことを覚えていないのだった。
 佑太は美里を実の母であると思っていた。マツの死の前にあった両親の結婚式のことも、当然記憶にはなかった。
56

五年の期間は
どんな風に過ぎたんでしょうか。






2011.06.19 和泉川 ハルジョオン


今日は回想シーン。
暢がマツと交わした会話、
そして三歳の佑太との会話など★


 普通の母子以上に、美里と佑太は仲がよいかもしれない。
 美里だけでなく、暢にとっても佑太は特別な子供だという意識があった。この子がいなければ、自分たちは結ばれることはなかっただろうという、一種の恩人のような思いがあった。
 そういう意味では、病気が発覚し入院してから、一年しないで亡くなったマツも、彼らの大きな恩人だった。祖母の命と引き換えに、自分たちの幸せがある、と折りにつけ彼らは思い出すようにしている。
 以前、マツが仏様に向かって手を合わす姿を見てきた美里は、小さい遺影を置いて、報告するように朝に晩に拝むようになった。
 料理が上手で尽くすタイプの女だと思っていた美里は、それはその通り間違いなかったし、しっかり者だから主婦としては申し分なかった。ただ、年はまだ若いが、どこかマツに被るような口うるささも見えるのは気のせいではないと、暢は思っている。

 暢は美里にも話していないが、入院してすぐマツと話をしたことがあった。
「ここに寝てるのが私でよかったと思ってるんだろ?」と、マツは病人とは思えないしっかりとした口調で、彼の心を見抜くように言ったのだった。「美里じゃなくて私にお呼びがかかって本当によかったと思ってるよ」
 マツは店で彼と話した時に、暢の勘違いに気づいたらしかった。
「目の前に本当の病人がいるのにさ、美里のことしか考えられないようだったね。誰もあんな間違いを犯しっこないと思ってたんだけどね……」
 しっかり嫌味を言ってから、マツが暢に残した言葉は、感謝と祝福の言葉だった。
 そして、「佑太君と三人で本当の親子におなり。陰口や心配事は、私が全部一緒にあの世に持って行ってあげるから」と言って、いつもの頼もしそうな笑顔を見せてくれた。

 マツとの会話の他に、もう一つ、暢が今でも思い出す会話があった。
 あの時、誰よりも佑太にそのことを伝えたかった。そして、喜びを共感したかった。
 暢と佑太は、血の繋がった親子以上に通じるものを持っている二人だった。それは今でもそうかもしれないが。
「佑太よく聞くんだぞ」
「パパ、なんのお話?いいお話と悪いお話があるの?」
「お祖母ちゃんに聞いたのか?」
「パパに聞きなさいって」
 ふと思いついて彼は言った。「あのなぁ、佑太、お願いがあるんだけど…」
「なぁに?」
「佑太は美里お姉ちゃんをお嫁さんにしたいのか?」
「うん、そうだよ。佑が大きくなったら」
「あのさぁ、佑太。パパがお嫁さんにしたいんだけど、いいかな?」
「いいよ」ブランコの順番を譲るように、佑太は執着なく言った。「やっぱり、パパと佑はおんなじだね」
57

こんな会話を覚えているのは暢だけなんですね。
マツは亡くなり、
佑太は大きくなって…。
引き続き、↓次の回もご覧ください。






雨宿り。
 

3歳の佑太はもういません。
少しシャイで
しかし、幸せな少年がいます。
5年前の回想シーンから★


 暢は微笑んで頷いて見せてから言った。「でも、佑太、お姉ちゃんはこれからずっとお前のママになるんだよ」
 喜んだ佑太はそれでもしばらくの間、美里がシンデレラのように消えてしまうと思っているようだった。
 彼は自然に「お姉ちゃん」ではなく「ママ」と呼ぶようになり、魔法のように消えてしまわない幸せというのに浸かって日々を過ごすようになった。
 もう美里はどこにも行かないことをすっかり当たり前に感じるようになり、弟を通して、きっとこの子のように自分も生まれたのだと刷り込みができたのかもしれない。
 気がついた時には、マツの死も覚えていなかったし、暢と美里を結びつけるためにあんなに天然のキューピット役をしていた頃の自分の姿を佑太は忘れてしまっていた。
 だからこそ、暢にとっても美里にとっても、佑太は特別の存在だった。

「かわいかったのよ」と母となった美里は、折りにつけ思い出しては話してみる。
 今や、かわいいと言われるのは苦手の佑太は、かゆいような、くすぐったいような顔をして、耐えているだけだった。
「タクは?」と、あの頃の佑太と同じ年頃になった弟、卓也が聞いてくるが、「だってタクは怪獣だもん。それにかわいいの嫌でしょ、かっこいいのがいいんだよね」と、笑って美里はかわしてしまう。
 お兄ちゃんっ子だし、愛されるのが当然だからか、現金なところがある子だった。我が子はかわいいが、あの時の佑太の貴重さは、また別物だった。個性は違うが、愛情で分け隔てることはないつもりだった。
 美里は夫となった暢を見た、想いが通じないと思い、片思いだと思っていた頃を考えれば、夢のようだ。
 初めて傘に引き込まれた時のことも、大切な思い出だ。実はあの頃から暢がやはり自分のことを思っていたことは、いつだったか白状してくれた。あの時に感じた大きい傘のように広い心の人だというのは、ある意味その通りだった。
 しかし、彼が誰にでも優しいというのは、特別の愛情を受けている今となっては、時と場合によるということも分かっていた。「同情」というチャンネルにピタッと合わない限り、垂れ流しのような愛情を注いだりはしないということも。
 だから当然、突然の雨で、傘を差しかけて一緒に歩く相手というのは、百合子が以前推察した通り、美里以外にはありえなかった。それに無条件で加わるとしたら、佑太と卓也くらいだろう。他の人だったら、例えば両親だったとしても、彼は傘を渡して、自分は走って濡れていくだろう。
 そして、美里は、自分は折りたたみ傘をしっかり持っているタイプにも関わらず、暢が傘を差し出したら、肩を抱かれて歩きたいと、今でも思っていた。
THE END
58


「あなたは広い傘をもっている」
お読みくださり、
ありがとうございました。

明日から数日間は
小説の連載をお休みします

目次・登場人物紹介は
こちらから ↓

目次 ▼△あの人は広い傘をもっている△▼




よい一日 よい夢を

クリックありがとうございます
にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へ
にほんブログ村
写真は:56 紫陽花に架かる橋
(C)ひでわくさん
実はこの橋を渡っている何者かの姿が…
拡大して見てください
57 ハルジョオン
(C)ひでわくさん
58 雨宿り。
(C)芥川千景さん
画像あるいはタイトルクリックで写真のページへ
撮影者の名前をクリックすると撮影者のページへリンク
撮影者に許可を得て使用しています
無断転用はご容赦願います




プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に小説を書き始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
夢を叶えたい人、カウンセリング募集中!(四柱推命鑑定も可。)
こちらから→幽霊っているんでしょうか



2017年01月02日

23 《あの人は広い傘をもっている'16》 Sean14 余命数ヵ月の花嫁(後)


今日の3話は、最高のクライマックス
シーンがあります★
小説 ▼△あの人は
広い傘をもっている△▼
祈り・・・朝の光
 

暢が心に決めたこととは…。
今日は一番のクライマックスになるはず★


 早朝の厳しい寒さに向き合うかのように、暢は風を受けて歩いていた。
 もう気持ちは決めていた。
 彼女が病気を理由に身を引こうとするのではないか、というのが唯一の心配だったから、彼は伝えることしか頭になかった。
“さと”に入っていくと、美里はにっこり笑った。暢にとってはもうすでに愛しい、守るべき存在だった。
 彼女を見た瞬間、いつだったか染野が話してくれた決死の体験談をふと思い出した。
「話って何ですか?」と、美里が言った。
 カウンターのこちら側に来るように手で示して、彼女が隣に来るなり、彼は抱き寄せて口付けをしていた。
 そのキスは、暢の高まっていた思いを表すかのようだった。愛おしくてたまらなかった。
 美里の目は潤み始め、驚きと戸惑いと、そして喜び…様々な感情が混じっているようだった。その目で暢を見た。
 彼は微笑んだ。染野の言う通りだった、と彼は思った。
「入院前のこんな時に言うべきじゃないと君は言うかもしれない」
「…?」
「結婚しよう」暢は言い切った。驚いている美里を前にして、暢は断られないために言葉を重ねた。
「結婚してほしいんだ。もっと早く言うべきだった。辛い思いをさせてごめん。…愛しているんだ」
 美里はしばらく暢を見つめながら、耳を疑うようにしていたが、その目からは涙がこぼれ始めた。
「…本当ですか?」
「本当だよ。君を愛している。ずっと側にいたいんだ」
「…結婚しないって、絶対しないって言ってましたね」
「しないでもいられると思ったんだけど、無理だよ。後悔してる。許してほしい。昨日、話を聞いて、君が大変な時だから、よけいに側にいたいと思ったんだ。君のお父さんにも許してもらう。お母さんもお祖母ちゃんも喜んでくれるはずだ」
 美里の命のあるうちに、一刻も無駄にしたくないと、暢は思った。
 美里は涙に濡れた顔で、暢を見た。暢はその涙を手でぬぐった。そして、その体を抱き寄せた。
 すると、愛の喜びが暢を包むようだった。
 同時に、彼女が持っている死に向かう悲しみも伝わって来るような気がした。さっきより、更に何かの力が加わったように、暢の決意は固いものになっていた。
 今はこんなに温かなこの存在が冷たく変わる時が近づいているのだ。死のうとする人間と結婚しようとする馬鹿さかげんよりも、この健康に見える美里が死に近づいているということの方が、現実感がなかった。
53

今まで決断できなかった暢でしたが
いきなりのキスと
いきなりのプロポーズ…!
余命数ヵ月の花嫁が見られるのでしょうか
引き続き、↓次の回もご覧ください。






明日への希望
 

余命数ヵ月の病におかされた美里に
プロポーズした暢。
彼女はそれを受け入れるでしょうか?
そして彼女の病気は…★


「でも、ダメです。今はそれどころじゃないんです」予想した通りに美里が言い始めた。
「わかっているさ。だからこそ、ずっと君の側にいて力になりたい」
「ありがとう、でも…」
「嫌だなんて言わないよね」
 暢はしっかりと美里を見つめて、視線を外させなかった。
「…」
「今度は君が僕を受け入れて。断わらないで。断っても無駄だけど。…僕は一度決めたら、絶対にその通りにするから。
 いいよね?」
 暢の言葉はあくまでも優しく、しかし決して揺るがない堅い覚悟を感じさせた。
 美里はゆっくり頷いた。

「今日、僕も病院に行くよ。早めにご両親に話したい」
「話せるかどうか」
「大丈夫、無理はしないから」
「佑太君はどうしてるんですか。保育園はまだですよね」
「朝早く母に来てもらった。多分実家に連れて行ったと思う」
 暢は一緒に病院に行くつもりだったが、学校は休むなと美里に言われ、渋々承知した。
 笑顔を交わし合って、二人は別れた。
 暢の心は晴れやかだった。その奥に悲しく苦しい塊のようなものが、重石のように沈んでいたが、後悔は一つもなかった。
 どうして、もっと早くに美里の手をつかまなかったのかと思うのだった。そうすれば、彼女の笑顔をいつでも自分のものにできたのに。

 その日仕事が終わると、正確には、取り合えず授業だけは全て済ませると、暢は病院に向かった。
 メールを入れていたので、美里が入り口の付近まで迎えに来ていた。まだ入院患者の寝巻き姿でなかったから、そうは全然見えないのに、彼女は病人なのだ。
「こっちです」と言われて、彼は続いて行った。病院というのは、どこか緊張するものだ。二人は言葉も交わさずに、ただ病室に急いだ。
「ここです」と言って、美里はドアを開けた。
 ふと確認した入院患者のネームプレートには、横瀬の名前があった。──しかし、書かれていたのは「横瀬マツ」の名前だった。信じられなくて、何度も見てしまったから、間違いはなかった。
「先生」と美里が呼んだ。
 もちろん、瞬時に暢は全てを理解していた。
 頭が真っ白になりそうだったが、恐る恐る彼は部屋の中に向かった。
 六人部屋の全てにカーテンが掛けられ、仕切られていた。
 美里が手招きしている所に向かった。
 ベッドに寝ていたのは、今になって思えば当然、マツだった。何度となく、そこに力なく横たわる美里の姿を思い浮かべていたというのに。
「さっきまで起きていたんだけど、眠っちゃったみたい」と、美里が言った。
 暢は、一気にいろんな感情が湧いてくるのを感じた。彼は美里の手を取った。
54

な、なんと
入院したのはお祖母ちゃんでした
それでは…?
引き続き、↓次の回もご覧ください。






入院したのはマツでした!
ということは、
暢と美里はどんな結末に…?★


 正直な思いを言えば、これは不謹慎だと分かっていたが、美里がベッドではなく、こちら側で自分の隣にいてくれるのが感動的なほど嬉しかったのだ。
 そんな思いを胸に持って、マツの姿を見るのは、申し訳ない気持ちだった。
「お祖母ちゃん」と、暢は呟いたが、後は言葉も出なかった。
 その様子を見て、美里は言った。「面と向かって病室で見ると、ショックですよね。私も、どこかでお祖母ちゃんが病気なんて信じられなかったから、複雑だった…」
 そして、美里は気を取り直したように言った。「あっちに、喫茶室があるんです。行きましょうか」
 紙コップのコーヒーを持って、二人は座った。
「お父さんとお母さんは?」
「今日はもう帰りました。夜からお母さんが替わってくれるって」
「君の風邪はもう大丈夫?」
「風邪?ええ。百合子先生に薬出してもらったから。それにお祖母ちゃんにも移したくなくて気が張ってたから、もう平気、大丈夫です」
 その風邪のせいで、とんでもない勘違いをしてしまったのだ。そう思うと、何か可笑しかった。
 美里の手を取った。もう、この手を放したくはなかった。
 暢は、以前マツにお説教された時のことを思い出していた。
「私はあんたたちはとってもお似合いだと思うんだけどね。先生と美里が一緒になってくれるためだったら、私の命でもなんでもあげてもいいと思っているんだけどね」こんなことをマツに言われた時、実は心はかなり動いていた。
 暢は自分の勘違いを誰にも話すつもりはなかったが、マツのことは伝えたいと思った。
「実はね、お祖母ちゃんのおかげなんだ。前に、君と結婚してあげてほしいと頼まれたことがあってさ。今まで踏み切れないでいたんだけど、やっぱりお祖母ちゃんが言っていた通りにしたいと思ったんだ。僕と君が結婚するためだったら、何でもするって言ってたんだよ、お祖母ちゃん」
「お祖母ちゃんはいつも言ってくれてた。もうちょっと待ってなさいって」
「…そうだ。ご両親に話してもいいよね。きっと説得するよ」
「今朝、話しちゃったわ」
「えっ」
「先生を見送った後、私嬉しくて涙が止まらなかったから、お祖母ちゃんの入院の日になんて、不謹慎なんだけど…」暢と同じように、美里も不謹慎と思いながらも、嬉しさを隠せなかったようだ。「そうしたら、家族に気づかれちゃって、だから…。みんな喜んでくれてる」
「お父さんも?」
「ええ、もちろん」
「僕みたいな子持ち男でいいわけ?」
「佑くんはいい子ですよ。佑くんがいなければ、結婚しませんから」
「僕の方がおまけだったわけ?」
「そうかも」
 暢は手に取った美里の手を、更に強く握った。
 二人はまた笑い合い、お互いの目を見つめ合った。
55
これは、きっと感涙ものの
「余命数ヵ月の花嫁」の話になると思ったのに、
こういう、オチで落ち着いてしまい
申し訳ありません。
しかし、数ヵ月後には
きっと
美里の元気な花嫁姿が見られるはずです。

次回ははラスト・シーンに突入します。
明日は最終話まで公開します。

目次・登場人物紹介は
こちらから ↓

目次 ▼△あの人は広い傘をもっている△▼


よい一日 よい夢を

クリックありがとうございます
にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へ
にほんブログ村
写真は:53 祈り・・・朝の光
by (C)akemiさん
画像あるいはタイトルクリックで写真のページへ
撮影者の名前をクリックすると撮影者のページへリンク
撮影者に許可を得て使用しています
無断転用はご容赦願います



プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に小説を書き始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
夢を叶えたい人、カウンセリング募集中!(四柱推命鑑定も可。)
こちらから→幽霊っているんでしょうか


2016年12月31日

22 《あの人は広い傘をもっている》 Sean14 余命数ヵ月の花嫁(前)


今年一年ありがとうございました。
良いお年をお迎えください☆
小説 ▼△あの人は
広い傘をもっている△▼
キラリ!春〜^^
 

今日は急展開!
どこかで聞いたようなタイトルを
持ってきてスミマセン★



Sean14 余命数ヵ月の花嫁 127486796702016104458.jpg



 正月は過ぎ、“さと”も営業が始まり、暢の冬休みも終わった。
 何も以前と変わらないように見えるが、今までは間に入ってくれていた百合子は介さずに、暢は美里に直接電話やメールで連絡をくれるようになった。
「毎日お店に来てくれるし、メールもくれるから。それに日曜にはアパートにも行ってるんです」と、美里は百合子に報告した。
「そんなんで、いいわけ?」と百合子はあきれたように言った。

 今年に入ってから、祖母のマツは店を休みがちで、出ても早めにあがることが多かった。
「お祖母ちゃんの小言を聞かないと、なんか一日が締まらないんだけどね」と、暢が言った。
「今まで、働きずくめだったから、これからはゆっくりしてもらいたいの」と、美里は言った。
 店は忙しく、バイトを雇う予定にしているようだった。美里も、正月から、ずっと風邪気味なのに店があるので体を休めないようだった。
「私はお祖母ちゃんに似て、丈夫だから、寝れば元気になります」と、美里はいつも言っては疲れを見せないようにしていた。しかし、その日の美里は特にしんどそうだったので、暢は百合子の所の受診を勧めた。
 そして数日後のことだった。とうとう美里は風邪で寝込んでしまったようだった。
 美里の携帯に電話してみると、マツが出た。
「ちょうどよかった。あんたに話があるんだよ」と彼女は言った。

 暢は佑太を迎えに行く前に、“さと”に寄った。本日休業の札が掛かっているが、手動で引き戸を開け、中に入った。
 中ではマツが待っていた。
「思い出すね、前あんたにお説教したことがあったね。覚えているかい?」
 忘れられるわけがなかった。「覚えてますよ、もちろん」
「今となっては、もう、あの時のようには頼めないがね、言ったことは本当の気持ちだよ。あんたの気持ちは今更探ったりしないよ。そんな時間もないからね」
「…お話というのは?」
「入院することになってね」
 風邪で熱を出したのではなかったのだろうか。そんな深刻な状態だったのか、と暢の頭の中でいろんなことが渦巻きのように回った。
「確かにずっと疲れているみたいでしたが、入院ですか?」
「ああ。相当根気強く、養生した方がいいということだ」
「美里さんは、あの、大丈夫なんですか?」
 暢の真剣な質問に、マツは思い切ったように話し始めた。
「医者ははっきりは言わないが、実はかなり深刻らしいよ」
「いつ、入院ですか?」
「明日だよ。徹が仕事が休めるから丁度いいらしい。今日は、自宅でしっかり休んでればいいということだ」
「あの、まさか、命に関わるってことはないですよね」
「人間、いつまでも命を持ってはいられない、いつかはお呼びがかかるんだから」
「でも、突然すぎて…」
「事故とか、戦争で爆弾でも落ちれば、一発でおしまいだ」
「そうですが…。何と言ったらいいか…」
「美里のことをあんたに頼みたかったのに…今となってはね」
「…」
「ただ、あの娘が心細いだろうと思ってね。せめて佑太君とお見舞いでも、来てもらえたら嬉しいと思うよ」
「はい。わかりました」そう答えてから、少し間を空けて言った。「あの、…美里さんに会えませんか?具合が悪いから、無理ですよね」
「さっき食事に起きて来ていたから…待ってなさい」
 しばらくして、部屋着にジャンバーをまとった美里が、家の方から、店に入って来た。
「先生…」
「休んでいたのに、ごめん」
「大丈夫。今日昼間たくさん寝たから…」そういう美里の顔は、いつもより青白かった。
「…入院なんだって?お祖母ちゃんに聞いたよ」
「ええ。しばらくはこのお店も閉めなくちゃ」
「そうだね。お店どころじゃないよね」
「…ええ。お祖母ちゃんと何か話しましたか?」
「入院のことを聞いて、佑太とお見舞いに行ってくれって」
「…実はお祖母ちゃんには話してないから知らないと思うんですけど、パパとママがお医者さんと話しているの、私も聞いちゃって。」
「結構深刻だと言ってたんだけど、養生すれば治るんだろ?」
 美里は首を静かに横に振った。
「どういうこと?」
「末期の癌なんです。分かりにくい場所で、もう手遅れになってて…」
 癌で余命数ヵ月の宣告を受けたのだという。
50

こういう急展開です
さぁ、暢の反応は?
引き続き、↓次の回もご覧ください。






春待つきらめき☆〜


余命数ヵ月?!
あまりに突然の衝撃的な話に
暢は…★
 

 美里は言った。「もう手術もできないみたい。これ以上進行しなければいいけど、多分数ヵ月ってこともあるから、覚悟しなさいって」
「そんなことって…!」暢は声を失った。
 美里の目から涙がこぼれた。
「大丈夫?」ようやく暢は声を掛けた。
「私は大丈夫。まだ心の整理はつかないけど、先生に話せてホッとしました。聞いてくれてありがとうございます。びっくりしたでしょう?」美里はこのことでかなりショックだろうに、涙を浮かべながらも、暢に笑い掛けた。
「こうはしてはいられないですね。数ヵ月だから、悔いのないようにしなくちゃ」
 美里は気丈な姿を見せていた。
 もう一度「大丈夫?」と言い掛けて、彼は口ごもった。平気そうでも、そんなはずはない。何度も安易にかけられる言葉ではない。
「…僕にできることがあれば、なんでも言って」
「ありがとうございます。お祖母ちゃんが言うように、今度、佑くんとお見舞いに来てください。…あ、お迎えいいんですか?」
 保育園の迎えの時間が迫っていたので、去らなければならなかった。何か言おうとするのだが、暢は美里に言うべき言葉が見当たらなかった。

 佑太を迎えに行ったが、彼は心ここにあらずで、あやうく佑太の荷物を忘れてくるところだった。
「パパ、“さと”に行かないの?」と佑太に言われて「“さと”は休みなんだ」と答え、コンビニで弁当を買って、なんとかアパートには到着した。
「パパ、食べないの?」と言われても暢は箸を持つ気にもならずに言った。「パパはお腹すいてないんだ。佑太はたくさん食べろ」
 あまりに突然のことだった。数日前、調子が悪そうだったので内田医院に行くように勧めて、こんなにすぐに大病院に入院が決まるなんて。検査の結果なのだから間違いはないはずだとはいえ、にわかには信じられなかった。
 いたたまれず、暢は百合子に電話した。
「この間美里さんが行かなかったか?入院のこと知っているのか?」
 畳み掛けるように質問してから、何か言おうとする百合子を制して、アパートに来るように言った。
 百合子はすぐにやって来たが、狭いアパートで佑太に聞かせる話ではない。好きなDVDの中で長めのものをかけた。見させておけば、彼はそれに集中して、同じ部屋で起こっていることも気づかないはずだった。
 それでも、念のために二人はダイニングに行き、小声で話をした。
「どうして急にこんなことに?!」と、暢は言った。
 百合子はなかなか口を開かなかった。
「もう手遅れなのか?数ヵ月しか持たないかもしれないって、本当なのか?!」
「美里さんから?」
「ああ、お祖母ちゃんに会った後、美里さんとも話したんだ。さっき」
「彼女は、よっぽどあなたを信頼しているのね。あのねぇ、こういうことはね、医師の口からは言えないのよ。でもまぁ既に聞いていることなら、その通りよ」
51

百合子からも確認して
間違いないようです。
こんなことって!
いきなりの展開で申し訳ありません。
引き続き、↓次の回もご覧ください。






咲いています・・・♪〜


動揺している暢です★

 
「私がK病院を紹介したの。後は専門の医師に任せたから、美里さんが言うなら、間違いないと思うわ」と、百合子は言った。
 どこかで否定してほしかったのだが、百合子の口から聞いたのでは、もう疑う余地がなかった。
 しばらくしてから、暢はかすれたような声で言った。「何をしてあげたらいいんだろう」
「できるだけ顔を出してあげたら、家族のように」
「家族…」と暢は呟いた。
「こういう時、家族は大変よ。患者を支える立場だから。話を聞いてあげたり、笑わせてあげたりそんなことがきっと嬉しいと思う。いつものように接してあげるのがいいわ」
「…そう」と、暢は考え込んだままだった。
 そのうちに幼児用のDVDはすぐに終わってしまい、佑太が「パパ」と言い始めた。

 百合子が帰り、佑太を寝かしつけてからも、暢は考え込んでいた。
 彼はすごく動揺していた。自分でもそれは自覚していた。美里があの若さで入院し、数ヵ月後には帰らぬ人になるかもしれないのだ。
 彼女に深く同情した。
 以前母、春子が言ったように、彼は同情心に人一倍篤かった。百合子が「最大の弱点」と言った通りだった。
 今までの人生で一番、後悔を感じていた。いつも、正しいと思うことをしてきたから、罪悪感、というものとは自分は無縁だと思っていたが、さっきから波のように湧いてくる思いは、同情と罪悪感の混じった後悔の繰り返しだった。
 かつて、教え子である佑太の実母、佑美が窮地に陥った時、自分の立場を考えずに、その子を引き取った。その時以来の強烈な感情だった。その時も同情心に従って行動したが、今でも後悔はしていなかった。
 しかし、今回は同情だけで彼が動揺しているのではなかった。彼は抑えがちにしてきたが、美里を心から愛していた。
 いつまでも変わらないで、彼女の笑顔を見ていられると思っていたのに、何もしてあげられないまま、永遠に別れなければならないのかと思うと、耐えられない気持ちだった。
 かわいそうなことをした、と思った。
 自分が結婚には逃げ腰だったのだ。彼女の父親に何か言われたとしても、本当に好きならば、簡単にあきらめるなんてできないはずだった。なんと薄情だったのだろう。
 彼女から告白までされて、それまでも突っぱねた。そのくせ、完全に関係を絶つことができずに、曖昧な関係を続けて来た。
 失ってからしか気づけないことがあるというが、その通りだった。
 美里の顔が浮かんできて、胸が苦しかった。
 母たちに仕組まれたことが、どこか癪だったのだ。しかし、素直に受け入れていればよかったのかもしれない。そうすれば、今、恋人として近くにいてあげられたはずだった。
 もう、そういう機会がないのだろうか。
 自分に病状を打ち明けてくれ、話してホッとしたと言っていた美里の顔を思い出した。ああいう時に、優しく抱きしめてあげ、寄り添ってあげる存在を彼女は求めていたはずだ。不憫でならなかった。
 同情と罪悪感の波よりも更に強いのは、彼女を慕う思いの波だった。
 彼はその晩まんじりともできなかった。
 暢の同情心と正義感は、彼の愛情を後押しして大きく動き出し、ひとつの結論を導き出した。
52

暢が出した結論とは…
おそらく彼のことですから?!

あと2日分を残していますが、
今年もこの作品の連載中に
年を越すことになります。
どうもありがとうございました。
目次・登場人物紹介は
こちらから ↓

目次 ▼△あの人は広い傘をもっている△▼



よい一日 よい夢を

クリックありがとうございます
にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へ
にほんブログ村
写真は:50 キラリ!春〜^^
51 春待つきらめき☆〜
52 咲いています・・・♪
by (C)ヨマさん
画像あるいはタイトルクリックで写真のページへ
撮影者の名前をクリックすると撮影者のページへリンク
撮影者に許可を得て使用しています
無断転用はご容赦願います


プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に小説を書き始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
夢を叶えたい人、カウンセリング募集中!(四柱推命鑑定も可。)
こちらから→幽霊っているんでしょうか