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2016年05月13日

[終]9 《治郎の物語》 プロポーズ・シーズン 再びの初夏3   〜心晴れ渡る五月〜  【三月さくらW】 

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小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
カラスアゲハ。


いよいよ治郎のプロポーズ?!★



 さて、治郎にとっては次なるハードルが待っていた。それは緊張するコンクールを思い起こさせた。
「今からそんなに落ち着かなくてどうするんだ。ま、お前の場合、本番ではビシッと決めるんだろな」と、星一に言われた。
「これはコンサートとか何かの簡単なイベントじゃないんだから」と、治郎。
「確かに一大イベントだ」と、星一は笑った。
 人生で最高の、飛び切りの舞台とならなければならない。いつものコンサートであったとしても、趣向を凝らし、最高のものになる準備もし、本番では全身全霊を込めるのだが、それはまるきり質が違うものだった。
「頭が真っ白なんだ。どうしようかアイデアも浮かばない。浮かんできても、なんか奇想天外すぎて…」
 そんな治郎に、星一は自分の話を始めた。「俺の中ではプロポーズって、あんまり意識してなかったんだ」
「っていうか、マスターはプロポーズしたんだよね、やっぱ?」
「うん、付き合って二年近くたって、祖母ちゃんが動き出して、日取りが決まっちゃったじゃないか。最初からみどりのお母さんには結婚を前提の付き合いって言ってあったし。お前ほどのこだわりはなかったしな、プロポーズに。だからしないでいたんだけど」
「まさかしないで済まそうとしたの?みどりさんかわいそう」
「そういうこと。ある時突然、『なりゆきで、いやいや結婚するならしなくていい』って言われてさ。びっくりして、次の日それなりの店予約してさ、花束も用意してさ、言ったんだよ。
 イチの時もそこ予約してあげたんだけど、花束のタイミングが助かったって言ってた。席着いてさ、ウェイターがセッティングして行ってしまって、さぁというタイミングが難しいじゃないか。どうしようかっていう一分以内に花束が届くんだよ」
「うん。単純だけどいいかも」
「イチの時もちょうど一年前だな。お前も行くか、そこで?」
「そうだね。どうしようかな」
「それともやはりピアノを弾きながらか?」
「またって感じ。それって通常だもん」
「なんでもいいさ。心が通じれば」
「じゃあ、マスターとイチさんの成功を受け継ぐかな、やっぱり」
「いろいろ趣向を凝らさなくていいのか?」
「シンプルがいいかも。かえって野暮な気がするから。花束だけで充分だ。また後で指輪を買いに行くかな」
「そこ予約する?花も?」
「任せていい?」
 こうして治郎も、星一、一朗と同じ経路をたどることになった。
24

さて、プロポーズは
バッチリ決められるでしょうか。
明日は「治郎の物語」感動の(?)最終話です。
↓引き続き次の回も、お楽しみください。






お取り込み中。


あんなに緊張していた
プロポーズも
いつの間にか済んでしまい、
それからまた新しい年を迎えています。
治郎の物語は、
今日が最終話ですが、
これがすべての始まりでもあります★



 治郎のプロポーズについては、きっと彼はバッチリ決めただろうし、陽子の涙は、やはりあったかもしれないが、割愛する。
 治郎の店は、順調に準備され、生ピアノが聴けるカフェ・バーとして秋にはスタートした。
 自称ロミオとジュリエットの治郎と陽子は、悲恋に終わることはなく、死に至ることももちろんなく、反対する者もなく、結ばれることになった。物語ならここであってもいい、どんでん返しも、ついに起こらず仕舞いだった。
「お前のファンは卒倒するかと思ったのにな。最近の若い娘(こ)たちは、割り切ってるんだな」と、星一が言った。
「そこまで雲の上のスターじゃないからね」
「三和産業の面目もあるしな」
 治郎のファンたちの様子は、もっとショックを受けるだろうという予測とは裏腹に、案外静かにそれを受け止めていったので、肩透かしを食った感じでもあった。
 陽子は卒業した一月半後には、花嫁となる予定だった。
 四年前は、ビン底眼鏡に素顔を隠すようにして、俯きがちな引っ込み思案の女の子だったのに、見違えるような輝く瞳と、愛を受けたからこその紅潮した頬が、幸せを物語っていた。別人と言っても言い過ぎではないほどの、変化だった。
 披露宴の衣装合わせで、ウェディング・ドレスをまとった陽子を、眩しそうに見ながら、治郎は、『本当にきれいだ』と、心の中で呟いた。
 そうして、二人はこんな会話を交わした。
「あの時、お前を見つけなかったら、どうなってただろうな、俺」
「治郎さんが見つけたの、私を?」
「そうだろ?」
「ありがとう、治郎さん。普通、私のことなんか、見過ごすのに誰でも」
「お前の下手くそなノクターンのせいだ。お陰で、俺の胸はあれからおかしくなったんだから」
「胸が?どんな風に」
「ドキドキしたり、苦しくなったり…。わからないか?今もだよ。陽子が、可愛いから」
「今でも嘘みたい。治郎さんが私を、なんて」
「何度でもみつけるさ。でも、あんなところで、ピアノを弾くのは普通よほどの自信がないと…」
「それも不思議だったの、今思うと。たまたま、触ってみたら鍵が掛かってなくて、ピアノのふたが開いたの。なんか弾いてほしそうで…。誰もいなかったし、ちょっとだけのつもりで…」
「ピアノが、選んだんだな、お前を。そういうことって、あるさ。『ノクターン二番』を弾いたのは?」
「うーん、それもなんとなく」
「なんとなく、か?」
「もっとうまく弾ける曲もあるのに」
「うまく弾いちゃ駄目だったんだよ。俺が見つけられなかっただろ?」
 二人は、にっこりと笑い合った。
「俺のことだけ、見てろよ、これからも」
「うん。…でも親衛隊の子たちは、もっと前から治郎さん一筋だったのに…」
「それは、どうかな。俺じゃなくてもよかったんだよ、彼女たちにとっては。なんていうか、好きな趣味やブランドみたいなものだろ」
「中学から一緒だった人がいたでしょ?」
「?」
「私はかなわないって思ってた。今でも一番のファンだって言ってる」
「ああ、会長のこと?」と、治郎は言った。
 彼の親衛隊だったかつての女子大生たちは、治郎のファンクラブを運営する主力メンバーになって、今でも篤い声援を送り続けている。
「へー、陽子がやきもちを焼いてくれるわけ?」と治郎はおかしそうというよりも、嬉しそうに言うと、彼女をやわらかく抱擁した。
「お前の視線はいつも逸らすのが大変だった。この胸がおかしいのも、お前のせいだし…。今ピアノを弾けるのも、お前のせいだ。責任を取れ」
「…」
「一生側にいろよ」
「うん」
 その約束は、きっと守られるに違いなかった。咲き始めた桜が二人の未来を祝すように、この日を忘れられないものにするために、飛びっきりの演出をしていた。
 また再び初夏を迎える時、彼らの晴れ姿が見られるはずだった。

これでおしまいです。
予想通りの展開に終わって
なんの障害もなくゴールインさせてしまって
面白みにかけ、申し訳ありません。
でも、治郎の場合は
こうならざるを得なかったかも…。
行動パターンが
読めてしまう単純さ、
そして、結局は人に好かれてしまう
魅力も
治郎なんですから。
第V部の後半と第W部からなる
「治郎の物語」に
お付き合い頂きまして
本当にありがとうございました。
前後のお話 はこちらから→ 三月さくら 目次                        
  登場人物の確認は家系図で→ [三月さくら 家系図]




よいい一日 よい夢を

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2016年05月12日

8 《治郎の物語》 プロポーズ・シーズン 再びの初夏2   〜心晴れ渡る五月〜  【三月さくらW】 

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小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
2011.04.29 和泉川 クロアゲハ


治郎の両親は
厳しいのかと思ったらその逆で
もしかしたら甘すぎなんじゃないでしょうか?
治郎と陽子の前にもしかして
誰も反対するものはないのかも?!


 治郎によく似た眼元と口元をした母は、笑うと更に彼に似ているようだった。
「そんな良い所のお嬢さんと、あなたが付き合ってるなんて。何にも言わないんだから。でも大丈夫なの?事業資金の為にお付き合いしてるんじゃないでしょうけど」
「もちろんだよ。いい娘だよ。三年も見てるから。付き合ってからも、もう一年以上経つんだ。その頃からずっと三和の家には出入りしてたんだ。ごめん、ここには連れてきてないのに。デビューしてからは忙しくて、あっちにも顔を出せなかったんだよ」と、治郎は言った。
 治郎は、ここ何年も家族と話をする習慣がなかったが、これを機会にその心の距離が縮まったようだった。学生時代はわざと避け、最近は忙しさにかまけて、しっかり向き合って来なかった。両親に理解してもらい、兄姉からも温かい声を掛けられて、彼は心からホッとした。
 彼は家族から愛されていることを、よくよく知っていた。だからこそ、期待を裏切って大学に入ったことを、申し訳ないと思っていた。ようやく胸のつかえが取れ、彼は甘えん坊の末っ子に戻れたような気がした。


 また初夏が来ていた。三和家の西洋風の庭園には、様々な植物が咲いていた。菖蒲だろうか、紫と黄色の群生が気持ちよさげに立っていた。治郎は、陽子とその庭を歩いていた。去年にも見た紫陽花がまた咲いているのを見た。赤紫の明るい色合い…。
「今日今から、お父さんにこの間の話の返事をするよ」と、治郎は言った。
 陽子は、どんな話をする予定か、訊こうとしなかった。
「お前も一緒に来る?」
 陽子は静かに首を振った。
「何にも訊かないの?」と言って、治郎はにっこり笑った。
「じゃあ何にも言わないよ今は。後にとっておく」 
 こういう時、治郎は陽子が愛おしくてたまらない気持ちになる。抱き締めてキスしたい思いを抑えて、そっと抱き寄せてから言った。
「じゃあ行くよ」

 治郎は、陽子の両親に自分なりの思いを告げた。資金の一部を治郎自らが出し、後は出資してもらいながら、やはり治郎自らが経営していきたいということ。陽子が一緒にしてくれるならそれも嬉しいが、それは陽子の意思に任せること。そして陽子との結婚の許可を改めて請うた。
「いやぁ、安心したよ。もしかして何もかも突っぱねられるかと心配していたんだ」孝司が言った。「君は実に骨があるよ。情も豊かだし、才能もある。陽子のことを大切に思ってくれることがありがたいよ」
 孝司は上機嫌でこんな話もした。「実はね、陽子を眼鏡で過ごさせたのには、悪い虫を付けさせない私の思惑があったんだ。三和の娘であることもあまり出さないようにして、私なりに守ってきたんだよ」
22

やはり、治郎と陽子の前に
反対する人は
いないかのようですが…
↓引き続き次の回も、お楽しみください。






次はどこへいこうかな。


飾らないままの
治郎の心は、
陽子の両親に届いたようです★


 孝司は治郎に心からの感謝の思いを伝えた。「君は陽子の心がきれいだと言ってくれただろう。外面で寄って来る品性のない奴らとは違った。私も、君が陽子を想ってくれる様子というのか、その愛し方に感動していたんだ」
「そんな…」と、治郎は恐縮した。
 陽子の母が言った。「聡子も言っていたけど、陽子は治郎さんと会ってから、とってもきれいになったって」
「そうだな。三人姉妹の二番目だから、親としては可愛がってるつもりでも、つい問題のない娘だから、一番手を掛けないで来たかもしれない。自己主張も激しくないし、目立たない娘だったから」と、孝司が言った。
 陽子の母が言った。「ええ。でも気立てがいい娘なんですよ。親に対しても誰に対しても、わきまえてるし、控えめすぎるからわからないけど。でもね、お店で働くようになってからですよね、とても明るくなって。今はとても活き活きしてるから、姉や妹が翳むくらいだわ。よく、きれいになって、って言われるの」と、言いながら母は嬉しそうだった。
「もともと美しかったんですよ、陽子さんは」と、治郎が言うのに対して、また孝司が言った。
「愛されるときれいになると言うが、その通りだと驚くよ。父親としては娘を取られるようで、複雑な気持ちになるんだろうが、私の場合は息子が出来たようで、かえって嬉しいんだ」
「そうまで言ってもらえると…。僕はそこまで喜んでもらえると思ってなくて」
「受け狙いでないところが、爽やかというか、いいんだよ」
 確かに、治郎はこの三和家の雰囲気を変えたようだった。すっかり治郎を気に入った孝司たちは、当然のように、治郎の魅力を知っていたが、彼自身は、彼らほどには評価していなかった。三和家の家族はある意味、彼の一番のファンのように、篤く応援してくれるのだった。三和家の内外の後押しが、今後治郎の将来には、更にかけがいのないものになっていく、兆しがもう見えていた。


緑と青と白い花。
23

いよいよ、プロポーズとなりますか…!
乞うご期待!
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2016年05月11日

7 《治郎の物語》 プロポーズ・シーズン 再びの初夏1   〜心晴れ渡る五月〜  【三月さくらW】 

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小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
2011.05.08 和泉川 ハナダイコンにアゲハチョウ


新たな初夏の物語。
順風満帆なように見える治郎ですが、
自分の人生の選択に
迫られることになります。
彼は、結構マジなんです…★



 第二章 プロポーズ・シーズン 再びの初夏



 新しい年を迎えると、治郎は徐々に音楽活動をセーブし始め、自分のペースをつかめたようだった。
 週末に必ず休みがあるサラリーマンのようにはいかないが、時間がある時には、陽子にも会って、それを充電のように、精力的な活動ができるのだった。
 五月の爽やかなある日、以前のように三和家でピアノを弾く治郎の姿があった。
 大企業の社長である陽子の父、孝司は、彼に自分の店を出してみないかと、持ち掛けた。
「実は“星の家”のマスターに以前提案したんだが、断られてね。学生相手にこの場所でやっていたい、てね」と孝司は笑って言った。
「マスターらしいな。俺もマスターにはずっとあの店を続けて欲しい」
「君はどうだ?自由にピアノを弾きながら、得意の接客を活かして。ライブハウスのようにしてもいいし、ジャズ喫茶のようにしてもいいし。君のアイディアで好きなものをしたらいい」
「仕事以外では、陽子さんの側でしか弾きたくないな、弾けないですよ、もう。学生時代のブランクを埋めて、ピアノを復活できたのも陽子さんのお陰だし。今日のように時間を取れたら、一緒にいたいんですよ、出来るだけ」
「結婚して一緒にやったらいいだろう」と孝司は言った。
 治郎と陽子は顔を見合わせた。孝司は続けた。
「陽子も卒業だし、“星の家”のバイトも辞めるだろう。コンサートやレコーディングはいつものことではないんだから、ライフワークの中に組み込めるような場所があってもいいと思うな。ここだけで弾いてるのはもったいないだろ」

 孝司は熱心に勧めたが、治郎は考えておきますと、即答しなかった。そして、やはり星一の所に行った。
「お前が婿に入るなら問題ないんだよ」と、星一は言った。
「今まで結婚は意識しないできたのに…」
「目の前にニンジンをぶら下げられたって感じか?」
「お父さんはしてあげたくて仕方ないみたいなんだ。こういうの、チャンスって言うんだろうか」
「棚ボタていうんだ。しっかり筋道立てないと、三和さんの好意も活かせないぞ」
「結婚のこと?」
「店のこともだよ。お前はやりたいのか?」
「うーん、気持ちがないわけじゃない、っていうか、やりたくなってきてる」
「それは、三和さんに経済的サポートしてもらうんだろう?お前の力では無理だよな。場所にもよるけど、俺に話があった時もいいとこばっかだったし」
「うん」
19

結婚。
考えていなかったということですが、
したくないはずはないでしょう。
とっておきの季節になったら
いいのですが…






2011.05.06 和泉川 セイヨウシャクナゲにアゲハチョウ


結婚話と出資の話。
おいしい話にはのっちゃいけないの?
治郎と星一の会話の続きから★


「出してくれるものは出してもらうってのは、やっぱ駄目かな?」
「お前のためにならないな。お前、働かなくなるぞ。これから家庭を持つって男がさ、そんなんで家族に責任持てるのか?わずかでも自分が出せる分は出して、後は絶対返すつもりでやらなければ、いい店になんかなるか?」
 星一は大体は辛口の意見を言うのだが、治郎には参考になることも多かった。
「俺もここの店を引き継いだ時、前のマスターは俺がやってくれればいいというので、ここの契約書もそのまま渡そうとしたんだ。俺は断って、月々返していたんだ。家賃を払うような感覚で。
 十年目になって、ちょうどみどりがバイト始める前の年だったかな。買い取ることにしたんだ。ここの土地建物の価値を専門家に出してもらって、月々払っていた分を差し引いて。銀行でも借りてね。
 すっきりしたよ。それまではどこか雇われ店主みたいでさ、買い取ることにしたら、店主の自覚が更に持てた。
 その頃は売り上げがよかったし、お前が入ってワンツーコンビの頃は更にアップしたんだ。気が付いたら借金はすっきり返せたし、もしかして所帯を持てたのも、そのせいかな、と思うんだ」
「へー。俺たちも随分ボーナスをもらったけど、充分稼いだんだね。その、前のマスターって、去年くらいに亡くなった人だよね」
「ああ。一人娘がいて。やはりあの時に返してよかったよ。娘も顔見知りだが、結婚して旦那もいるわけだし、自分の家の持ち物を他人が使ってるとなると、いい気がしないじゃないか。生きてる内に、正当に自分のものにしたから。実は少し負けてもらったんだが」
 星一の“星の家”を買い取った話は、説得力があった。彼は、それで目に見えない運のようなものが変わったと実感していたから。
『買い取ろう』と、心で決めた時点で、運命の糸が何かを引き寄せるように、生涯の伴侶になる、みどりが店に入り、縁ができた。そして、実際に買い取ってから、一朗と治郎が続いてやってきた。商売も繁盛した。
 最上の運はいい人との出会いだと、星一は思っていた。運は人を引き寄せる。ムシのいい話に乗るだけでは、そういういい運勢は回ってこない。責任と自覚も必要だ、と、彼ははっきりと感じていた。運命を司る神様は、人の内面の動機をよく見ておられるようだ。
 星一はこのように自分の話をした後、更に言った。
「お前の場合はどうだ?お父さんから言われるから、やってもいいか、くらいの感覚だろ。今はピアノの方も、CDも売れるし、コンサートも出来るしって思ってるだろう。一時はピアノの王子様の知名度かなんかで人は来ても、中身がなければ両方うまくいかない。人は正直だよ。魂があるところにしか、また来たいと思わんよ」
「そうだよね。店の雰囲気も主人次第だもんね。いつかマスターがみどりさんと付き合い始めた時、腑抜け状態のマスター支えるの、結構きつかったもんね」
「それを引き合いに出すか。あれはな、お前たちが頼りになったからできたんだ」
20

運命の神様には、
どうしたら気に入ってもらえるんでしょうか?
そして、治郎は
プロポーズにまで至れるでしょうか?!
↓引き続き次の回も、お楽しみください。






2011.04.25 和泉川 フユシラズにベニシジミ


星一のアドバイスを受け、
今日は今まで治郎が避けていた実家、
初公開です!
まずは星一と治郎の会話の続きから★


「ワンツーコンビのいた頃だったから、一通りのことは任せられたからね。店主としても一応どれ位外せるか考えてるさ。まあ、あの時は、お陰で客足も順調だった。やはり、お前は人を呼ぶものは、持ってるよ。店をやれば流行るだけのものはな」と星一。
「でしょ。そういう自信はあるんだ。でも、マスターに言われたことは、肝に銘じるよ」と治郎。
「結婚のことはどうだ?陽子ちゃんとのことが前提での話だろ?」
「結婚はしたいよ陽子と。プロポーズもしてないし。何をどうしたらいいか、ちょっと混乱してる」
「そもそも、お前が自分の家を敬遠してるからいけないんだろ。そっちから、筋道を立てるべきだよな。陽子の親をクリヤしたんだから、潮時だよな。」
「俺の家か」
「お前がデビューして喜んでくれてないのか?」
「喜んでるみたい。カチカチのクラッシックしかできない人たちだけど、人の音楽には理解があるんだ。音楽を愛しているから」
「お前のことも愛してるさ、音楽以上に」
「うん。それもわかってる」
「まず、店のことに関して、しっかり片を付けろよ。でも、その前にいい機会だから、お前の親にも報告して相談してみろよ」
「うん」
「そうしておいてから、経済的なことに関して、三和さんと話を付けて、プロポーズはやっぱその後だろ。すっきりしないで、結婚のために、うやむやにするなよ。結婚するからこそ、けじめを付けろ」


 治郎の実家は、音楽関係者がよく出入りする開放的な家だった。
 治郎は、子供の頃、そこでのアイドルだった。客が来るのが好きだった。皆が彼を可愛がった。誰からも愛されないことがなかった。
 兄姉からも、愛を受ける立場だった。兄姉との喧嘩はあったかもしれないが、いつも皆が彼に甘かったし、彼も甘え上手だった。
 最初からピアノが重荷だったわけではなかった。最初は誰かの真似であり、楽しい遊びだった。いつもピアノを弾くのを見てきたので、見よう見まねで弾くのは、いくらやってもあきることがなかった。
 治郎は、自然に気持ちよく遊び感覚でピアノを弾いていた、幼い頃の気分が蘇ってくるのを感じていた。
 ここから、自分は出てきたのだ。この家が自分と無関係だとは絶対言えない。今の治郎にはよくわかっていた。
 治郎は星一のアドバイスを元に、両親に、孝司からの提案と、自分の考えを話した。
「それで間違ってないと思う?」という治郎の問いに、両親は笑顔で推してくれた。
「それよりも、陽子さんをいつ連れてきてくれるの?」と、母親はそちらの方が気になるようだった。
21

え?!治郎の両親ってもしかして…。
治郎の家の問題って、
なんだったの???
さて、プロポーズに近づくか!
前後のお話 はこちらから→ 三月さくら 目次                        
  登場人物の確認は家系図で→ [三月さくら 家系図]




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