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2017年08月09日

144 夏の忘れ形見 さちの娘みち6 ❀三月さくら2017❀  【三月さくらZ-3】



小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
掟破り。


みちが女優デビュー?!
それも昂輝と共演?!
そして、ロミ・ジュリ?!
さて、一旦断った昂輝でしたが…。
二人は再会するのでしょうか?
今日は一気に展開します★


 初樹は治郎の話をひとしきりして、昂輝の心を解きほぐしていった。そして、最後に余裕の口調で言った。
「実はね、君の事務所からは、OKを既にもらってるんだ。もちろん、君が嫌なら正式に契約はしていないから、白紙に戻せばいいんだけど…」
 今日の初樹は若い頃から会得したその微笑みと、覗き込むような視線で、完全に彼を落としてしまった。昂輝は、どうして自分が受けてしまったのかわからないうちに承諾していたが、それはまんざら本心に適わないことではなかったから、当然の結果だったかもしれない。

 その、“ロミオとジュリエット”の舞台は、二人の瑞々しい演技で、まずまずの成功に終わった。
 そして、次がテレビドラマの連載だった。初樹が知り合いのテレビプロデューサーと既に話を進めてあり、みちや昂輝はそのままレールに乗せられて、撮影が始まった。
 昂輝とみちが主演の純愛ものだったが、これが短い連載ながら、好反響だった。初樹が、第一週の反応を見て即座に、先のロミ・ジュリの舞台のDVD化を決めたたほどだった。

 恋人役を演じながら、仕事の合間ですら昂輝はみちに対しそっけなく、挨拶以外は口もきかなかった。
 二人は役に集中し、収録は終わった。
 みちは、昂輝のそんな他人行儀な態度が気にならないわけではなかったが、ほんの時折、撮影のOKが出た時など、ふっと笑いかける笑顔は、役からも解放され、素顔が見えるようで、ほっとするのだった。
 それは、以前志貴の友人として家を訪ねて来た頃、夜道が危ないからと自転車で送ってくれた夏の日、また“星の家”の集まりに顔を出していた頃と、何も変わらない笑顔だった。
 そして再び、素っ気ない冷たいほどの態度に変わるのだが、その一瞬の笑顔を、みちは、いつも見逃さず、ただ彼は役作りに没頭しているのだと思い、自分からも声は掛けなかった。

 クランク・アウト後の打ち上げの際も、彼の態度は変わらなかった。
 実は彼にしてみれば、自分の思いを必死で抑えているのだった。好きな女性と、仕事上親密な関係になることは、却って苦しいものだった。
 仕事での共演を役得と思えるには、彼はみちのことを愛しすぎていた。
 また夏が来ようとしていたが、それさえも昂輝は苦しかった。バイトの帰りに送る口実が、どれほど嬉しかったか。あっという間に終わってしまったあの夏を思い出し、踏み込めなかった自分の不甲斐なさ、また、もがいたこの二年間がたっても、まだ自信が持てない苛立ちで、どうかなりそうだった。
 役から解放されたみちの姿は、以前にも増してきれいだった。彼は近づかずに遠くからその姿を盗み見た。
39

今日は話が一気に進んでしまい、すみません。
共演が終わった昂輝とみち。
このまま、また始まる前に
終わってしまうのでしょうか。

引き続き、↓次の回もご覧ください。






ワガパンサス。


あきらめられない昂輝の思い…。
このままでは
望みはないように見えますが
打ち上げの席での
昂輝の回想シーンから★


 先日、志貴からは、みちの婚約者がもうすぐ発表されるということを聞いていた。
「今からでも、お前が立候補する気はないのか?」と、志貴に訊かれて、昂輝は言いよどんだ末言った。「立候補しても、叔父さんたちが選ぶ相手の方が、みちさんを幸せに出来るって、思うんだろう、お前だって?」
「心変わりも、あきらめもしないと、お前は言ったじゃないか。まさか、前言撤回か?」
 まだ、あきらめたわけではない。昂輝は「いや」と小さく首を振った。ただ、あきらめなければならなくなるかもしれない。
「結局、誰が決めたんだ、みちさんの相手は?」
「初樹叔父だよ。もう、これ以外にいないっていう相手だって、言ってたよ。もともと、麗美叔母がいいって言ってた人みたいだから、かなり強硬だよ。あの夫婦は結束固いから」
「じゃあ、俺が立候補しても、勝ち目はないかもしれないよな。決まった相手がいるのに、割って入るべきかな?みちさんが困るだろうし」
「弱気だね。とにかく、相手を確認しよう。勝ち目がないと決めるのはそれからでも遅くない。今度の日曜の集まりは来いよ」

 志貴との会話を思い出しながら、昂輝はため息をついた。
 打ち上げの席では、みちが昂輝に近付いて来てそっと言った。「終わっちゃって寂しいですね」
「うん」と、昂輝は答えた。寂しいけれども、近くにいなくなるなら、こんなに辛くはなくなるかもしれない。
「昂輝さんって、以前うちによく遊びに来てた頃と、雰囲気が変わりましたね」
「そう?」とだけ、昂輝は答えた。
 みちは言った。「あの、今度の日曜、“星の家”でまた集まるんです。来ませんか?」
 昂輝は思った。『婚約相手が来るというのに、平気で来いと言うんだな』
「あの、みんな喜ぶので、絶対に来てくださいね」と、みちは言うと、彼の元を離れた。
『そりゃ、話題ドラマのカップルが登場すれば、みんな喜ぶだろうけど…』
 昂輝はまたため息をついた。どうして、あんなにまっすぐ、自分を見るんだろう。まるで、ドラマの中の恋人か、ジュリエットのように見えてしまう。女優になって、そんな表情もお手の物だろうが、彼には痛いくらいだった。
 昂輝にとって、みちは、ずっと手が届かない得難い女性だった。心が痛くても、やはりそばにいたかった。さっきまで、そして役がある間は、せめて近くにいられたのに、更に遠くなってしまったと、彼は感じた。

 その日曜日、志貴からはメールが入っていたし、初樹からも誘いを受けて、昂輝は少し遅れ気味で、“星の家”に現れた。着くなり、みちににこっと笑い掛けられて、彼も思わず笑顔を返してしまった。
40

“星の家”の妖精は
二人を覚えているでしょうか…。
登場人物の確認は家系図をどうぞ。 
(さちの父、志道が亡くなった頃の家系図。この物語は、数年後の設定です)
  「三月さくら」シリーズ 前後のお話は こちらから。




よい一日 よい夢を

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写真は:掟破り。
ワガパンサス。
by (C)芥川千景さん
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撮影者に許可を得て使用しています
無断転用はご容赦願います






プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に、書き溜めた小説を編集し始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
夢を叶えたい人、カウンセリング募集中!(四柱推命鑑定も可。)
こちらから→幽霊っているんでしょうか

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posted by kuri-ma at 07:40| Comment(0) | さちの娘みち 【三月さくら】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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