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2017年08月07日

141 夏の忘れ形見 さちの娘みち3 ❀三月さくら2017❀  【三月さくらZ-3】



小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
脱皮。


高校生の夏休み。
“星の家”のバイトをしながら、
一朗の家に滞在するさち。
今日はイケメン・キャラの登場です★


 また、滞在先が青山家だったから、みちは一朗と接する機会も多かった。
 七月の終わりの葉奈の月命日の日、みちは従兄姉や叔父たちと共に早朝からお墓参りをし、その後、いつもなら一朗が一人で巡るという葉奈との思い出の場所を、一緒に周って過ごした。
 その時、生前父、志道が妻子に伝えてほしいと言っていたという話を、一朗から直に聞かされたのだった。
 亡くなった人が、目には見えなくても近くにいるのかもしれないということは、みちもなんとなく感じていたことだったし、母、さちが、今でも志道に毎日報告するように話していることを見聞きしてきたので、極自然なことでもあった。
 彼女も、そっと心の中で父に話しかけることはよくあった。そうして話すことで落ち着く気がして、密かなみちの癖のようになっていた。
 一朗に聞いた後、父からの答えはあるかもしれないと思うと、今まで思い当たることがいくつもあった。それまでは偶然だと思い込もうとしていたのだが、それは確かに「父からの答え」だったと素直に思えるようになったことが、みちには嬉しかった。

 ある早朝、まだ空気が爽やかな頃、みちは畑でその日に食べ頃になった野菜を取っていた。それは野菜好きのみちのその夏の役目になっていた。
 取り終わって顔を上げた時、「みっちゃん?!」という声が聞こえた。
 それは、志貴の俳優仲間の一人、昂輝(こうき)だった。やはり俳優を目指す斜向かいの橘家、空の次男、海斗(かいと)を訪ねていて、前の晩泊まったらしかった。
 彼はみちに恋心を抱いていたので、予期していなかった出会いを、隠すことなく喜んだが、みちは兄の友人として、自然に接していた。男兄弟に囲まれていたから、男性に妙に構えたり、恥ずかしがったりすることはなかった。
 一方の昂輝は、心臓が激しく鼓動し始めたような気がしていた。機会があれば接近したいと思っていたので、ちょっとしどろもどろになりながらも、会話を交わして、その日の予定を聞いた。時間が合えばお茶でも誘えただろうが、聞くとみちには“星の家”のバイトの予定があった。
「バイト?!何時から?」
「今日は十時からです」
「どこにあるの、そのカフェ?送っていこうか」
「いえ、帰りが困るから自転車で行きます」
「自転車じゃ暑いだろ?」
「ええ。暑いけど、帰りは夜だから、気持ちいいですよ」
 故意なのかどうか、みちにスキはなかった。
「じゃあ、今度海斗か志貴に聞いてお店に行くよ」と、昂輝は言い添えるのが精一杯だった。
33

畑での場面は、
今年5月に再連載した「海、山、街」での、
葉摘と、星矢との出会い(再会)のシーンと
かぶるものがあります。
俳優志望の昂輝。
彼の恋心は
さちに届いていないようですが…。

引き続き、↓次の回もご覧ください。






つぎの休みにまた会いましょう。


自転車で“星の家”のバイトに通う
汗びっしょりのさちの姿は、
かつてのみちの叔母、未来を
思い起こしてしまいますが…★


 その日、自転車でバイト先に向かったみちの後ろから、一台の自転車が追い越していった。振り向いた顔を見て、みちは驚いた。
「昂輝さん」
「どうせなら君に教えてもらおうと思ってさ、“星の家”の場所。一緒に行けば、覚えるだろ。海斗の自転車、借りて来たんだ」
「この時間は暑いですよ」
「うん。暑いね。カフェで冷たいものを飲みたくなるよ」という言葉の如く、みちが入って少しすると、昂輝は客を装って“星の家”にやってきた。お冷を二杯お替りして、アイスコーヒーも一気に飲み干して、すぐに出て行ったのだったが。
 帰りは帰りで、みちのあがる時間には、彼はどこからともなく現われて、やはり青山家まで送っていった。
「女の子一人で夜道は危ないよ」と、彼は口実をつけ、仕事などで無理な時以外は、夏中この夜の自転車での送りは密かに(と、思っているのは二人だけだったが)続いていた。

 そして、里帰り公演≠ニ後に呼ばれるようになるその公演の日を迎えた。丹野家の兄たちは演奏者の側だったから、みちは激励のため、楽屋となる事務所で、歓談していた。
 そこへ、昂輝が現われた。彼は嬉しそうに親しくみちに話し掛け、その日の公演は二人隣合わせて聴くことになった。
 男兄弟でもまれてきて、兄たちからは優しい配慮は受けたことのない、みちだった。女心のわからない兄たちにとって、妹の存在は、からかいの対象になりこそすれ、大事に扱うことは皆無だったから。
 名はなくても俳優だけあって、昂輝は見た目もよく、話しても好青年だった。みちと昂輝が並んで座っている姿は、初々しく微笑ましい姿として映った。
 しかし、そこに海斗がさっと昂輝の横にやってきて、みちのいとこや又いとこたちも取り囲むように座ったので、たちまち二人は若者の中に隠されるように紛れてしまった。
 それは実は志貴の配慮だった。昂輝がバイトの帰りにみちを送っていることはすでに叔父・叔母たちの耳にも入っていて、二人の関係に神経質になっていたからだ。
 当人たちは全然気づいてもいないことだったが、彼の真剣なアプローチは、お節介な大人たちの心配の対象になった。「まだ高校生なのに…」ということだ。若者から見れば“もう”と思うことが、大人たちから見れば、「まだまだ」ということになる。
 そもそも、夏休み前から昂輝はマークされていた。麗美や未来が派遣されたのも、いわば偵察のためで、相談の結果、みちが“星の家”でバイトし、初樹と麗美の所に預けられることになったのだった。

 大人たちの心配をよそに、昂輝は一度も狼になることもなく、みちを送り届ける役をもらったかのように守り続け、それだけであっという間にその夏は過ぎていった。
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みちは
結構の箱入り娘ではあるのですが、
丹羽家の娘に対して、
男性はなぜか
とてつもなく得がたい女性と
思うようですね。
夏は過ぎていってしまうようですが…、
やっぱり、まだ高校生ですから…。
それとも“もう”でしょうか。
登場人物の確認は家系図をどうぞ。 
(さちの父、志道が亡くなった頃の家系図。この物語は、数年後の設定です)
  「三月さくら」シリーズ 前後のお話は こちらから。



よい一日 よい夢を

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写真は:脱皮。
つぎの休みにまた会いましょう。
花はアガパンサス
(C)芥川千景さん
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撮影者に許可を得て使用しています
無断転用はご容赦願います



プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に、書き溜めた小説を編集し始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
夢を叶えたい人、カウンセリング募集中!(四柱推命鑑定も可。)
こちらから→幽霊っているんでしょうか

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posted by kuri-ma at 05:00| Comment(0) | さちの娘みち 【三月さくら】 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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