ぴかぴか(新しい)毎日クリックありがとうございます
にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へ にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・自作ポエムへ にほんブログ村 ポエムブログへ   にほんブログ村
 

2017年05月20日

73 眠り姫と眠り王子2  ❀三月さくら2017❀ 【Y1-1】



小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
2012.06.13 和泉川 バラ


志道は、あの丁寧な口調の中に
深い思いを包み込んで、 
きっと誰にも言わずに
大きく育てていたのかもしれません。
もしかして、彼に運命の出会いが?!


 志道は彼女の名札の名前を確認した。“助産師、古永(こなが)さち”。
 この二つの言葉を、彼は頭の中で何度も反復した。暗記しなければならない重要単語を覚えるように。助産師、古永さち。
「今、赤ちゃんはお母さんと一緒にいますが、五分か十分ほどで乳児室に移りますから、ご対面できますよ。そちらの前でお待ちになりますか?」と彼女は説明し、乳児室の前まで案内してくれた。
「お母さんはとても立派でしたよ。二人目は皆さん比較的安産ですけど」そんなことを伯父、伯母と話しを交わしながら。
「さぁこちらです。赤ちゃん連れてきますから、お待ちください」
 ガラス越しに、生まれたばかりの乳児を見て、従姉の病室に顔を出してから、志道は伯母たちを残して帰ることにした。
 階下に降りると、ちょうどその彼女、助産師の古永さちが分娩室の方に向かうところだった。
「おめでとうございました」と、さちは言った。
「これから、また生まれるんですか?」と志道は訊いた。
「ええ。今晩は何件か重なりそうなんです。不思議に波があるんですよ。立て続けに生まれることって、多いんです」
 遣り甲斐のある仕事に向かう彼女の姿は輝いて見えた。
 その晩、志道は店に行きピアノに向かった。閃きが形になりつつあった。

 朝になって家に戻ると、母の陽子が伯母からの伝言を伝えた。
「聡子伯母さんがあなたにありがとうって。すぐに車を出してもらえなかったら、途中で生まれたかもしれない勢いだったんですって?」
「うん。1時間もしないで生まれましたって。早かったですよ」
「聡子伯母さんの話では身内ならいつでもお見舞いに行けるそうよ、裏から入れるみたい。私も朝のうちに行って来ようかしら、午後からは用事があるの。赤ちゃんって本当に見飽きないのよ」と、陽子は言った。
「僕が送って行きましょうか?」と、志道が言った。
「あなた寝てないんじゃないの?お店で何してたの?」
「うん、ちょっと。でも、大丈夫ですよ。シャワーだけ浴びますね」

 よく考えてみたら、昨日の夜から仕事をしている彼女はもう病院にはいないと思われた。
 ただ、志道は昨夜感じ始めた、何か形になりかけていたものの、その欠けらを探し出して拾い上げたかった。彼女に会えるかもしれない期待も確かに、まだ持っていた。
「あっ」志道は小さく声をあげた。
 駐車場に車を留めて降りたところで、職員の出入り口から出て来た彼女とちょうど会ったのだった。
「今までですか。お疲れ様です」と、声を掛けた上で母に「ゆうべ赤ちゃんを取り上げてくれた…」と、紹介しようとした。
「取り上げたのは先生です。私は助産師ですから。お見舞いですよね。今日は休日ですから、こちらの入り口から…」と、彼女は言って、わざわざ受付まで案内してくれた。
 そして行こうとする彼女の背中に向かって、志道は名前を呼んで呼び止めた。「古永(こなが)さん」
 彼女は立ち止まって振り向いた。
「あの、車で帰られるんですか?」
「いえ、電車で」駅までは十分は歩くかという距離だった。
「よろしければ、駅までお送りしますよ」
 こんな時に実に感じがよく、頼もしいのは母という存在だ。
 陽子が言った。「そうよね。志道、夜通しのお仕事でお疲れでしょうから、お送りして差し上げたらいいわ」
 志道は微笑んで、さちに言った。「じゃあ、母を病室に案内するので、そちらを出た所で少しだけ待っていて頂けますか」
2

志道に微笑んで、
「駅までお送りしますよ」と言われたら、
きっと断る人はいないのかもしれません
この、さちの場合は?
引き続き次の回もどうぞ↓






魅惑のうず巻。


志道はひらめきを感じ、
夜を徹して作曲を。
そして、彼女を
車で送ることに…!★


 古永さちは、外で待っていた。志道は助手席に乗せるのはためらいながらやめて、彼女を後部座席に乗せたところで、陽子からの電話をもらった。
「私はこの後用事ができたから、あなたはまっすぐ帰っていいわよ」と、母は言った。
「ここに戻らなくてもよくなったので、少し先まで送れますよ。どっち方面ですか?」と、彼はさちに尋ねた。
「へぇ大変ですね、乗り継ぎがあるからちょっと掛かるんじゃないですか?車では大した違いはないから送りますよ」と志道が言ったが、彼女が遠慮するので、快速の止まる乗り継ぎ駅まで取り敢えず行くことにして、走り始めた。
 着く前になって見ると彼女は、眠ってしまっていた。相当疲れているのだろう。志道は微笑むと、彼女の家の最寄り駅まで更に車を走らせた。
「古永さん、もう着きましたよ」
 志道は声を掛けたが、彼女は目覚めなかった。体を揺すって起こすしかないだろうか、と思いながらそれはためらわれて、志道は後ろを向きながら、シートにもたれて彼女を見ていた。そういえば徹夜だった彼も、つい寝入ってしまった。
 どれくらい経っただろうか。
 車のドアを開け閉めする音で目が覚めた志道は、行こうとするさちを呼び止めた。
「黙って行ってしまうんですか?」
「ごめんなさい、だって」
「勝手にこっちまで来てしまってすみません。あなたがよく寝ておられたので。声を掛けたんですが…」
「送って頂いてどうもありがとうございます。ここからは歩いて帰れるので」とさちは行こうとした。
「待ってください」と、志道はなおも言った。
「すみません、丹波野さん、今日はこれで失礼します」と、さちは言った。
「何で僕の名前を?!」
「…」
 きっと、面会者が記入した名簿を見たのに違いない、と志道はとっさに思った。昨夜なのか今朝なのか。そして勇気が出た。
 志道は自分の名刺を取り出してさちに渡して言った。「いつもあんなに疲れてるんですか?初めて会ったばかりのような人の車で眠ってしまうなんて、危ないですよ。誰かが送ると言っても、絶対に送ってもらってはいけませんよ」
「…あなたは大丈夫なのに?」
「私は、この会社と家族の顔に泥を塗るようなことは絶対しないですよ。だけど、確かに軽薄な誘いと言われても仕方がないですね。ただ善意から送ってあげたかったんですが、それ以上のものもあったから。
 あなたが眠ってる間、こうして夜勤明けの時だけでもいいから、あなたを送れたらいいのにって思ったんです。不覚にも眠ってしまって、僕も徹夜明けだったので。
 しつこく呼び止めたのは、これが最後の機会だったからです。ここで別れたら会う機会はないでしょう?」
 志道はさちを見つめながら話した。
 さちは目を伏せて言った。「次の夜勤明けは水曜日の八時です」
 一瞬笑が浮かんだ志道の顔は、次のさちの言葉で凍ったように強張った。
「でも、お伝えした方がいいですね。…私、結婚しているんです」
 あっけに取られる志道を残して、さちは「じゃ、助かりました。さよなら」と言って行ってしまった。
3

いくら「惚れ惚れする」ようないい男(美幸 談)
の志道でも
結婚している相手では…
無理がありますね。
残念、志道!
きっとあなたにふさわしい道が開かれるでしょう。
前後のお話 はこちらから→ 三月さくら 目次
                        
登場人物の確認は家系図で→ 三月さくら家系図2(「海、山、街」)




よいい一日 よい夢を✨

クリックありがとうございます
にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へ
にほんブログ村
写真は:バラ
by (C)ひでわくさん
画像あるいはタイトルクリックで写真のページへ
撮影者の名前をクリックすると撮影者のページへリンク
撮影者に許可を得て使用しています
無断転用はご容赦願います



プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に、書き溜めた小説を編集し始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
夢を叶えたい人、カウンセリング募集中!(四柱推命鑑定も可。)
こちらから→幽霊っているんでしょうか


http://ping.blogmura.com/xmlrpc/22631ot4ede4

http://novel.blogmura.com/rpc/trackback/76590/22631ot4ede4
http://novel.blogmura.com/rpc/trackback/86033/22631ot4ede4
http://novel.blogmura.com/rpc/trackback/77953/22631ot4ede4
http://novel.blogmura.com/rpc/trackback/106048/22631ot4ede4
http://novel.blogmura.com/rpc/trackback/73540/22631ot4ede4


【関連する記事】
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック