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2013年01月20日

仮面、そして始まり(2)B面〜仮面(マスク)の章「ひのくに物語」28


日陰者。


この章の主人公であるケイン。
裏切り者、反逆者、罪人…、
そんな彼が本当に求めていたものとは?★


 留学先の大学では、学業以外の多くのものを培ったが、あまりいいものを培ったとはいえなかった。ある意味で私は選択を間違えた。賢く渡っているつもりだった。悪いものであってもそれを知るために、経験しても自分は染まらない、そんな馬鹿ではない、そう思っていた。全てを利用してやるつもりだった。
 国では出来なかったことが、留学先では自由だった。私は未成年でありながら、この世にある欲望を充たしていった。酒も女も。優秀で金もある私を、人はチヤホヤした。
 今になって思うと、本当の意味で私を思ってくれる者はいなかった。
 国の中では父は最高の権力を持っていた。絶対的だった。そうではないとわかった時、私はまるで世界を知ったような気になっていた。
 私の心持がよくなかったのだろう。馨より自分が優秀であると、人に認めさせたかった。チヤホヤしてくれる者たちを、愛したことはなかった。本当は愛を求めていたのに、その求め方がわからなかった。ただ馨より自分を愛してくれる人が、一人いてくれればよかったのだ。愛されたいと、表現すればよかったのだ。家族に私への愛がなかったわけではなかったのだから。
 全てが馨の為に回っていることの意味を、私は考えなかった。素直に自然に、家族と同じように、彼の為に回ればよかったのだ。誰よりも上手にそれができたはずなのに。そうすれば、両親は簡単に喜んでくれただろう。
 経営学の修士課程まで取り帰国後、父の会社に入ると、私はすぐにそこで実力を発揮した。
 馨は、思春期の少年になっていた。更に、誰もが彼を愛するようになっていた。両親は私の帰国をさして気にも留めないくらい、馨の成長が嬉しいらしかった。
 彼は十五で留学することになったが、それは私より一年早かった。
「兄さんを目標にしてきたからね」と、馨はさらっと言った。そして、董を私に託したのだ。
 初めて董に会った時、すでに彼女は美しい少女だった。しかし、私がすぐに彼女に恋したのではなかった。
 馨に対するジェラシーが董を通して、燻り始めるようになったのだ。董は、一途に馨を慕っていた。馨に取っても、彼女がかけがえのない大切な存在であるとわかっていた。
 ただ、彼は遠く離れた彼女を放って置きすぎた。その年の男だったら、そうだろう。故郷の小さな少女のことよりも、夢中になることは沢山あるはずだった。
 私は、そんな二人の隙間に、うまく入り込んだ。最初は、彼女の相手をしていることは、退屈しのぎにすぎなかった。子供相手だと思っていたから。しかし、いつの間にか、それが楽しみに変わっていった。
 董は、馨の兄として私に信頼を寄せてくれた。手紙もくれない馨のことを愚痴りながらも、様々なことへのアドバイスを求めてくる、その信頼に応えられるのが嬉しかった。菫のように自分を必要としてくれる人が、私には他にいなかった。
28


菫を蹂躙したケインでしたが、
その背後の思いは
切ないものがあったようです。


登場人物の確認は→ 《B面の主な登場人物》
 ぴかぴか(新しい)ネタバレがありますので、A面をお読みでない方は、
  こちら(A面登場人物)をご覧ください。



よい一日 よい夢を

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写真は:日陰者。
by (C)芥川千景(沈没寸前)さん
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無断転用はご容赦願います



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posted by kuri-ma at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ☆ひのくに物語 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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