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2012年03月20日

《一挙再連載1》一生懸命な一月 逃げ出しそうな二月1~3「三月さくら待つ月 四月しあわせの始まり」


2011.03.04 義姉宅 シクラメン


今日からの連載は
「三月さくら」の最初の物語を再UPでお送りします。
学生街の喫茶店“星の家”を舞台にした
冬から春へのストーリー。
若き日のマスター、星一たちの登場です★



三月 さくら待つ月 四月 しあわせの始まり


第T部 一生懸命な一月 逃げ出しそうな二月



一生懸命な一月
一月と三月の狭間で

逃げ出しそうな二月

一生懸命な人の一月
息をつけないくらい 真剣に
一生懸命な一月を過ぎ
二月を行く時 
忍耐という言葉を 思いつつ行く

虹の七色は 涙の雨と 
太陽の笑顔で出来ている
人魚姫の流した涙は 届かなかったの?
(にせ)物の愛を選ぼうとするの?

逃げてしまいそうな二月 
寒さと厳しさの極まりの中で
人間と人情の 狭間で揺れる
一生懸命な分だけ
逃げ出しそうな二月
    

二月の詩(うた)


「いらっしゃいませー」と、女子大生アルバイトのみどりの声が店に響いた。彼女の声は店の雰囲気を明るくする。
 一瞬差で、一朗と治郎のワン・ツーコンビ≠熨アいて声を出した。昔風の少し老けた顔立ちで長身の一朗は、学生ながらチーフを任されている。
 治郎は、どう隠しても隠すことのできない魅力を持った青年で、接客を任せれば右に出るものはいなかった。
「いらっしゃい」星一(せいいち)は、コーヒーを入れる手を休めずに彼らに続いて言った。
 冬休みも近付いた頃で、学生街の街路樹も、その葉をすべて散らしてしまい、代わりにクリスマスのイルミネーションで飾られていた。

 この星の家≠ニいう喫茶店のマスターとして、星一は終日を過ごしていた。大学に程近いその喫茶店はいつも学生や大学関係者で賑わっていた。
 星一自身もその大学に通う学生の頃、バイトとしてこの店に入ったのだった。星一の名前から付けたかのような店の名前は、元々あったもので、「マスターのお孫さん?」と訊く客もいたが、関係はなかった。
 学生の頃から星一の入れるコーヒーは、得意客からも定評があった。「星一君に頼む」という馴染みの教授もいた。
 当時のマスターに頼まれて、店を任されるようになり、そのうち、欲のないその前マスターは星一に全てを譲って引退してしまった。それから十年以上になる。
 バイトをしていた頃と、経営者として責任を持つようになってからは、自ずとモチベーションも違っていたが、大学時代の延長のような部分もあった。
 客として来ていた後輩の大学生たちもどんどん卒業していって、OBとはいえ、世代のギャップを感じ始めていた頃、このみどり、一朗、治郎が毎年連続で入って来た。
 この今が星の家≠フ黄金期といえるかもしれなかった。

 日が暮れて、街路樹のイルミネーションに灯が点った。もう卒業を控えたみどりが、星一に尋ねた。
「マスターは卒業前、進路に悩まなかった?卒業と同時にここを受け継いだの?」
「これでも、一年近くサラリーマンをしたんだよ。前のマスターに頼まれてね。実は卒業前からそんな話はあったんだが、したい思いもあったけど、自信がなくて断ったんだ。それ程の気持ちもなかったのかな。卒業してここを辞めてから、どんなにこの店が俺にとって大切か気付いたってわけ。
 みどりは何を悩んでる?就職も決まったんだろう?」
「今まで通りここでバイトしようかな」
「…だめだめ、そういうのはお断り。またフレッシュな学生を雇うんだから。いつまでも学生でいたい気持ちはわかるけどな、どうせOLになれば、ここに来たいと思わなくなるさ」
そんなふうにその時は星一は軽く受け流したのだった。
1




 年が変わった。日が暮れるのが早いこの時期は、夜が長いが、客足も早く引いていく。
 その日は客が少なく、一朗・治郎は先に帰った。星一はカウンター席にいる学生に恋愛の相談を受けていた。それは、よくあることだった。彼は学生の話をよく聞いてあげたし、切れる意見を言うと信頼されていた。
 その男子学生が帰ると、奥で片づけをしていたみどりが言った。
「『振り向いてくれない相手をずっと見ているっていうのは辛いよな』って、それマスターの経験?」
「聞いてどうする?」
「答えたくないならいい」
「相談を聞く時にはな、そいつの気持ちに成り切るんだよ。でないと相手も話しづらいだろ」
 みどりはさっきから機会を伺っていたのか、思い切ったように星一に言った。
「マスター、私の相談にも乗ってくれる?」
「いいとも。なんだ?」
「…あのね、私…」言い掛けたものの、みどりは話すのを戸惑っているようだったが、心の中で『一、二、…』と掛け声を掛けるようにしてから、口を開いた。
「…私ね、好きな人がいるんだけど、ずっと振り向いてくれなくて。卒業したら会えなくなるし」
 星一はみどりの性格をよく知っていた。きっと片思いに違いない。
「…そいつはお前の気持ちを知らないわけ?」
「知らない…と思う」
「卒業までにどうにかお前の気持ちをわかってもらうしかないよな。告白するとか」
「できないと思う」
「バレンタインデーは?」
「マフラーを編んだの」
「いいね、渡せばばっちりだろ」
「渡す勇気があれば相談しない」
「相手はお前に対してどんな感じなの?」
「どんなって?」
「面と向かって告白できなくても、素振りというのがあるだろう。友だちは友だちなんだろう?」
「いつも私はからかわれてばかりで。どんな風に見てくれているのかな。わからない」
「俺の知らない奴か?今度ここに誘えよ。無料券使っていいから。俺が取り持てるものなら取り持ってやるよ」
「うん」
「どんなやつだ?治郎とか見慣れてるから、かなりのイケメンか?」
「そうね。イチ君と治郎君にはさすがに顔では負けるかもしれないけど、頼れる感じで、根はとても優しいの」
「いい奴ということなら、応援するよ。バレンタインまでには連れて来い。見極めてやるから」
2



 二月十四日のその日が来ても、みどりの相手は店に現れなかった。星一はあの話を忘れたわけではなかったが、あえてみどりにそのことを尋ねなかった。片思いの恋は成就しなかったのかもしれない。
 その日の帰りがけ、みどりが突然言った。
「マスター、土日だけでもいいから、卒業してからもここで働かせてもらえませんか?私、このお店が好きだし、四年間ずっと来てたのに辞めるなんて寂しくて」
「客でおいで」星一は一言そう言った。
 みどりは目の前の星一の方は見ることなく、店の空間のどこかを、ぼんやり見ながら呟いた。「…それなら最初からここでバイトしなければよかった。最初からお客さんなら、ずっと変わらなくてよかったのに」

 それからしばらく、みどりはバイトも休み、姿を見せなかった。やはり、失恋したのかもしれない、と星一は思った。店に誘っても来てくれないようなら、望みはないはずだ。
「みどりさんがこれだけ休むなんてめずらしいね」と、一朗が言った。
「常連のお客さんにも訊かれるんだよね。みどりさんがいないと、なんかつまんないな。お店大好きでいつもいてくれたのに」と、カウンターの中に置いてあるティッシュの箱を掴んで治郎も言った。
「…どうせもうすぐ卒業で、ここも辞めるんだから」と星一は言った。
「風邪でも引いたのかな」と、治郎。
「…みどりが?」
「いや、俺。なんかしんどくて。鼻水も出るし」
 治郎は、営業中は暇な時でも休憩以外は座ることがないのに、カウンターの椅子に腰掛けていた。
「大丈夫か?」と、一朗が言った。
「治郎、お前もうあがっていいぞ。さっきからティッシュ一箱使っちゃうんじゃないか?帰って休めよ」と、星一は言った。
「みどりさんがいれば優しくしてもらえるけど、そうね、悪いけど、帰らせてもらおうかな。鼻水止まらないんじゃ仕事にならないし」と、治郎は帰って行った。
「なんか寂しいな、後姿が…」と、一郎は治郎を見送りながら言った。
「イケメンもこういう時、支えてくれる女一人いないとはね」と、星一。
「治郎は、口だけで純粋だから」
「お前もだろ?」
「俺はもてないから…」と一郎は言った。
「そんなことないだろ…」と、星一が言うのを振り切るように、一郎は言った。「それよりマスター、俺用事があるんで明日は休みたいんだけど、治郎も駄目かもしれないよね」
 心配そうに一朗が星一を見たが、星一は笑顔で豪語した。
「ああ、そうだったな。大丈夫だよ、なんとかなるから休めよ」
3


今回再連載は、以前に連載したものを組みなおして、
T部とU部の前半までで、
10日ぐらいになるようにお送りしたいと思います。
(1話ごとの通し番号は、以前のものとは異なります)
「三月さくら」の大御所的存在、
星一と、ワン・ツーコンビと言われていた一朗と
治郎、そしてみどりが顔をそろえました。
初々しい恋愛模様となるかと思います。
あらためて、またお楽しみ頂けたら嬉しいです。


お話の続きは はこちらから→ 《New》三月さくら 目次
                        章ごとのお話のミニ解説つき
登場人物の確認は家系図で→ [三月さくら 家系図]

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写真は:シクラメン
by (C)ひでわくさん
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posted by kuri-ma at 05:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 (再UPなど) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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