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2017年08月03日

138 眠り姫の子供たち 〜ニュー・ムーン・ウィーク〜 ❀三月さくら2017❀  【三月さくらZ2-2】


志道を中心とする物語の最終話!
主人公の最期の、後日談★
小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
薔薇と新緑


新しい節は、
志道が亡くなってからの
エピソード★



   第二節 眠り姫の子供たち
    〜ニュー・ムーン・ウィーク〜




 志道が亡くなった晩、大きく円かった月が、日に日に痩せていき三日月になる頃、彼の死を悼む人たちがまたひと所に集まった。
 彼のラストコンサートに参加した顔ぶれは残らず“Jiro’s music home”に集まっていた。
 初樹から伝えられた志道の提案は、遺言のように、皆によってなされることになった。
 それは、志道の追悼公演となった。一晩で終わることなく、若い甥、姪、子供たち、またかつて“Jiro‘s home”関わった音楽家に至るまでが参加した志道の追悼ウィークになった。
 志道の子供たちの中では、長男の志幸(しこう)と次男の志貴(しき)が連弾で演奏し、三男の志音(しおん)も独奏した。
 志幸と志貴の演奏に先立ち、無口な兄に代わって、口の立つ志貴がまず壇上に立って挨拶をした。
「僕は、僕たち兄弟は、父を亡くしたことは悲しいですが、残してくれたものを大切にしていきたいと思っています。
 父は、最後の最後まで僕たちを目いっぱい愛してくれました。ピアニストとして作曲家として父が残したことを、誇りに思っています。でもそれ以上に、父が家族に示してくれた姿を大切にしていきたいです。
 臨終の時、もう目を開けないと思っていたのに目を開けてくれて、僕たちの名前を呼んでくれました。ほとんど声にならない声だったんですが、順番に呼ぶのでわかったんです。
 僕たち兄弟は小さい頃よく喧嘩をしたんですね。みんなが自分が自分がと主張するので、何かちょっとした物でも、一人にだけあげたら大変なことになるんです。だから、なんでも全員に必ずくれるんです。順番に兄から。
 最期の時は、まず最初に母の名を、それから「父さん、母さん…」って。母のことは、いつでも別格でしたから。そして、祖父母を大切にしていました。
 その後僕たち兄弟の名を順番に上から。最期の時まで、抜かすことなく呼んでくれて…、その時はもう言葉はほとんど声にならなかったんですが、僕には皆さん≠ニ言ったような気がしました。父の兄弟や、友人や、音楽を聴いてくれる人達や、そういうみんなをひっくるめて。そして、もう一度母の名を。もう口の動きしかわかりませんでした。『愛しています』それが父の最後の言葉でした。『皆さん、愛しています』と、父は言ったのだと思います。単に、母に言った言葉、家族に言った言葉ではなく…。僕も、父の言葉を胸にしっかり受け止めていきます」
 このように、志貴の語った内容は、最初から会場にいた人々の胸に響くものだった。
 しんみりさせた後は一転して、明るい話術を見せた。祖父母、叔父、叔母や従弟妹たちのことを、驚くほど鋭く観察していて、時には滑稽な話を取り混ぜながら、父とのエピソードを中心に話していった。
「僕たちの両親は、本当に仲のいい夫婦でした」
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次男、志貴の話でこの節は
ほとんど成り立っています。
お付き合いのほどを
よろしくお願いします。
引き続き、↓次の回もご覧ください。






薔薇〜孤独感〜


今日も引き続き
次男の志貴の語りから★


 志貴は、若い頃の父親の面影を垣間見るような爽やかな笑顔と、滑らかな語り口で皆の心をつかんだ。
「両親は、二人共に仕事を持っていて忙しいので、一緒にいられる時は、他のものが何も目に入らない感じでした。母は今でも少女のようなところがあって、父も母の前では万年青年で、お喋りでいつも笑わせていました。母を感激させるのが趣味のようなところがあって、新しい曲が出来ると、真っ先に母に弾いて聞かせるんです。母は、涙もろい人ですから、父のピアノを聴きながら、よく涙ぐんでいました。
 その父が、亡くなる日に書いてた曲があるんです。まだ未完成で、残されていたメッセージを繋ぎ合わせるとこんな感じです。
 夢から覚めると…お伽話…」
 志貴が朗々と読み上げたものは、曲のイメージをグッと広げるもので、それはもうほとんど完璧な作詞になっていた。
「お伽話というと、母がよく僕たち兄弟に読んでくれていました。ついこの間までは、末の弟に読んであげているのを聞きながら、懐かしいと思いましたが、父も聞いていたんでしょうね。蛙にされていた王子様がお姫様のキスで魔法が解けたり、死んだはずの白雪姫が生き返ったり…。
 僕たちの祖父母は、とてもチャーミングな人たちで、祖父は『自分たちはロミオとジュリエット≠セ』と自称しています。ロミオとジュリエットなら悲恋の果てに死んでしまうはずなのに、なぜ今も現役で元気なのかわかりませんが…。祖父は昔ピアノ王子≠ンたいに言われてたんですって。今はまさにキングです。
 僕は幸せな少年時代を過ごしたと思います。生まれたのはアメリカで、兄が学校に上がるまでいましたから、今でも覚えています。
 在米中、まだほんの小さい頃ですが、母に訊いたことがあります。「僕は王子様なの?」って。
 母はにっこり笑って、「そうよ」って答えてくれました。「でもね、志貴、みんなには内緒よ」
 そう母に言い含められたのに、僕はすぐに父に言ってしまって。
 すると父は「ママがそう言うんだから、志貴は本物の王子ですね。でもね、悪い奴に知られるとまずいから、誰にも言っちゃ駄目ですよ」って。子供に対しても、丁寧な言葉使いをする人でした。
 僕は、自分が王子だっていう秘密をしばらく黙っているんですが、現実的な兄に話して、僕の淡い空想というか、妄想は終わりました。
「お前がプリンスなら、俺もプリンスだろ?そして、パパとママはキング&クィーンだ」って。
 なんかわからないんだけど、兄の言葉で目が覚めました。「あ、そうか」って。
「今日は、そんな現実的な兄、志幸と連弾したいと思います。僕たち兄弟は、小さい頃から、ピアノを習ってきました。まぁソツなく弾けるんですが、僕は父や祖父のような才能はないと思うんです。…。でも、ピアノや音楽は大好きですし、真似は得意なんです。
 では、父の真似をして弾きますので、聴いてください。皆さんに楽しんでほしいです」
 志幸と志貴の連弾は、若さと兄弟の息の合ったところを見せて、とても微笑ましいものだった。
11

志貴は志道よりも
明るく柔軟な印象があります。
子どもたちが、どんな風に成長するかは
いずれお送りする続編を
お待ちください。
明日は最終話です。
引き続き、↓次の回もご覧ください。






蕾の薔薇はピンクと白のグラデーションでした


三日月の夜に行われた
志道の追悼コンサート。
今日は、
登場人物の最多記録となります★


 この追悼公演を企画した亡志道の最大の意図は、新星の発掘だった。その意味で、初樹が目を付けたのは、三男の志音だった。
「志音は、父たちを越えるよ」と、初樹は予言するように言った。
 これは初樹だけが感じたことではなかった。彼は既存の曲ではなく、自分のオリジナル及び即興の曲で、自分の時間を弾きまくり、彼の描く世界に、聴く者を引き込んだ。
 まだ、荒削りな面が目立ったし、その時点では、技術的には兄たちの方が上を行っているように聞こえたのだったが。

 志道の遺作となった曲は、彼の遺言通り、麗美が作詞して完成させたが、それは志貴が朗読した内容と、志音が弾いたもので既に大方出来ていたといってもよかった。
 麗美はその曲を、志道たち四兄弟姉妹の子供たち、総勢十五名を壇上にあげ、コーラスをさせ、志道の娘みちにソロを歌わせ披露した。
 コーラスに参加したいとこたち、十五人の内訳は以下の通りだった。
 志道とさちの子供が五人。長男・志幸(しこう二十)、次男・志貴(しき十八)、三男・志音(しおん十六)、長女・みち(十四)、四男・志郎(しろう七)。
 橘家に入った空と、美和の子供は三人。長男・大地(だいち十九)、長女・美空(みそら十六)、次男・海斗(かいと十五)
 麗美は青山家に嫁いで、初樹との間に四人の子供があった。長女・初花(はつか)と、長男・一樹(かずき)は双子で十七歳、次男・陽樹(ひろき十四)、次女・麗華(れいか十二)
 美和家を継いだ未来と碧斗との間には、三人の子供があった。長男・太陽(たいよう十五)、長女・月奈(るな十三)、次男・星斗(せいと十)

 志道の末息子の志郎は、従兄姉たちとコーラスで壇上に上がった以外は、ずっと母さちの傍らにいて、離れなかった。彼が甘えることで、母の慰めになることを、本人はよく知っていた。
 実際彼は、母だけではなく、祖父母や兄姉たちの慰労の対象となった。可愛がられる方法を、生まれながらに才能として持っているかのようだった。丹羽家の年老いた大伯父(治郎の兄)たちが、治郎の子供の頃によく似ていると、口を揃えて言っていた。

 志道の追悼ウィークの間中、彼の両親と共に、一朗や星一たち、そして、その子供たちもずっとその場にいて、志道の死を悼んだ。そして、志道の子供たちの演奏には特に惜しみない拍手を送った。
 かつて亡き志道も気をもんで、養子をあげようかとも本気で考えていた、星矢と葉摘の夫婦の間には、八年目にして子供が授かり、亡くなった母と同じように、葉摘は女児と男児を出産して、育てていた。
 “星の家”の茜と桃の姉妹はそれぞれ四人の子持ちとなっていた。
 堂々たる三家の子供たちは併せて二十五名になった。その祖父母となる星一とみどり、一朗、そして治郎と陽子はその姿を微笑んで見守っていた。

 追悼コンサートの間中、空には三日月があった。
 最初は日に日に細くなり、新月を交えて次には徐々に肉厚をもっていく、そんなニュー・ムーン・ウィークとなった。
 彼らの大きな星、志道の魂は、天に還っていった。きっとどこかで皆を見つめているに違いなかった。
 そして、もう一つ彼らを見つめているのが、月だった。それは、三十日の周期で満ち欠けしながら、どんな時も、彼らの思いを吞み込んでは、抜群のタイミングでその願いを叶えてくれるに違いない。永遠にそれは、日々変わりつつ変わらないだろう。
 
12

最終話は
名前の羅列で失礼しました。
名前があがらなかった
他の十名の子どもたちの名前は、
家系図でご確認ください。
《17年後》 三月さくら家系図 6

これにて、「志道の物語」のすべてを終了しました。
第Z部はまだまだ続きますが、
今日の節は、「三月さくら」をいったん締めくくる
ものであり、更なる後日談、
「夏の忘れ形見(さちの娘みち)」や
成長した志郎の物語(最終章)の
序章ともなる部分です。


前後のお話 はこちらから→ 三月さくら 目次


よい一日 よい夢を

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写真は:薔薇と新緑
薔薇〜孤独感〜
蕾の薔薇はピンクと白のグラデーションでした
(C)akemiさん
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プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に、書き溜めた小説を編集し始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
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