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2017年08月02日

136 志道の最期2 〜泣いてしまうのはきっと… ❀三月さくら2017❀  【三月さくらZ2-1】



小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
Pinkish.


いよいよその時が
近づいてきました★


 コンサートの後、志道はしばらくはピアノの前に座ることもなく、大事を取って過ごした。傍らには大概いつもさちがいて、それか治郎か陽子、子供たちの誰かが離れずに付き添った。
 病状も安定していたが、着実に体力は落ちていき、先週は出来たことが、もう次の週には出来なくなった。
 診察の結果、再度入院した方がいいと言われたが、夫婦はぎりぎりまで自宅で過ごすことを選択した。さちに看護師の資格がなければ許可は出なかったかもしれない志道の状況だった。
 もう志道は、自分の足で歩くこともままならず、体を長時間起こしていることも出来なかった。食べ物も家族が普通食べているものは食べられなかった。何ひとつ自分では出来なくなっていた。
 それがある深夜のこと、ピアノまでどうやって移動したのか、志道が倒れているのが発見された。
 そこには、新しい曲が書かれていた。曲はまだ未完成のようだった。そして、いくつかのメッセージ的な言葉が書かれていた。

  
    夢から覚めるといつも 
    あなたをさがす
    おとぎ話
    キスでとける魔法
    永遠のねむり
    これは夢の続きなのか
    真実の涙 
     〃  愛

 
 最後の字はかなり崩れていた。

 志道は結局病院に運ばれた。意識はもう戻らないと思われたが、目を開けた。そしてさちを呼んだ。
 もうかすれて声とならないほどだった。口の動きと息だけだが、その場にいる者にはそれが伝わった。
「父さん、母さん、志幸、志貴、志音、みち、志郎。…みんな…」と。そしてまたさちを呼んだ。「さちさん」
 さちはその手を握っていた。
「愛してます」と、その口は動いたようだった。それが志道の最期だった。

 志道の遺体はまたすぐに家に戻った。彼の死の知らせは、速やかに伝わっていて病院から付き添っていなかった者も、皆がお別れに来た。丹野家のそこここで、その死を悲しみ悼む声が囁かれていた。
 それは、不思議なことに、いつか志道が夢に見たのと同じ光景だった。彼しか知り得ない夢。
 亡くなった志道はおそらくその場面を見守っていただろうが、当然誰も、これは彼の夢の筋立て通りだと、気が付くはずもなく、まるでその光景を演じているかのようにも見えた。
 さちが志道の動かなくなった体を抱き起こして泣いていた。彼女はまるで目覚めさせようとするように、志道の体を揺すった。
 さちは小さい声で呟いていた。「目を覚まさないの?起きて『僕は死んでないですよ』って、言うんじゃなかった?」
 さちは、志道に最後の口づけをした。数十年前、皆の見ている前でキスするのは嫌だと、あんなに言い張ったさちだったが。
 奇跡はこの場合、起こらなかった。
 お伽話なら、ここで魔法が解けるはずだが、志道は眠りから覚めることはなかった。
 さちは、はらはらと涙を流し、泣き続けた。息子たちと、兄弟姉妹(きょうだい)たちが交互に来て、結局は離れさせるまで、さちは志道を放さなかった。
 いつの間にか夜が来ていた。月の明るい晩だった。かぐや姫が月に還って行ったのもこんな晩だったのかもしれなかった。さちが流す涙を拾って呑み込んでくれるように、月は大きかった。
8

「志道の最期」でした…。
第1節「涙の理由」は
本日で終了です。
明日は第2節をお送りします。
そして、それが、
「志道の物語」の最終話となります。

志道が以前に見た夢のエピソードは ↓ こちらから
夢が繋いだもの2

前後のお話 はこちらから→ 三月さくら 目次                       
登場人物の確認は家系図で→ 《17年後》 三月さくら家系図 6



よい一日 よい夢を

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写真は:Pinkish.
(C)芥川千景さん
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プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に、書き溜めた小説を編集し始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
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