ぴかぴか(新しい)毎日クリックありがとうございます
にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へ にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説(純愛)へ にほんブログ村 小説ブログへ
にほんブログ村 ポエムブログ 自作詩・自作ポエムへ にほんブログ村 ポエムブログへ   にほんブログ村
 

2017年08月01日

135 志道の最期1 〜泣いてしまうのはきっと… ❀三月さくら2017❀  【三月さくらZ2-1】



小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
2009.05.09 日比谷公園 薔薇


志道の最後の願いとは?
最後まで、わがままというか、
志道は志道というか…★


志道の最期




 志道が父に告げた願いとは以下のようだった。
「まだ作曲し掛けの曲があるんですよ。コンサートもやりたい。もう一度だけでいいから。いつかは、キリをつけなければならないですが」
 志道は、子供たち一人一人と、一対一で、あるいはさちも交えて三人での時間を綿密に取っていった。それぞれの子供たちのピアノ演奏も聞いて、最後の指導の時間を取った。
 志道はコンサートをするつもりでいた。今の志道に、最後まで演奏する体力があるのか、皆が心配するのは当然だった。志道の健康状態は安定はしていたが、さちは強硬に異を唱えた。
 志道は静かに言った。「あなたが反対するのはわかります。でもね、僕は子供たちとあなたに、最後の姿を見せたいんですよ」
「今まであなたが見せてくれたもので十分よ」
「わかってないな」
 そこで、さちは泣き出した。
「どうしてそんなこというの。わかってるから、止めるんじゃないの。あなたはいつだって、音楽のことばっかり。自分の体のことなんか、考えないのよ。それを心配してる私の気持ちも」
「音楽のためじゃないですよ」微笑みをたたえたままで、志道はさちをみつめて言った。「あなたや子供たちを愛しているから。最後のプレゼントですよ。させてください。何度も蒸し返すようですが、僕に音楽の道を行かせた以上は、ここで止まれと言わないでください。今だからしたいんだ。今回しなければ、次は二度と出来ないんですから。そこで死んでもいいと思ってるんですから」
 さちの涙でさえも、志道を止められなかった。
 さちの口からはこんな言葉まで漏れた。「あなたは死ぬ日が近づくのが嬉しいみたい」
 呟くように言ったその言葉を逃さず「そんなことはないですよ」と答え、もう言葉もなくなった涙の女王に対し、微笑みのキングの勝利に終わったかのようだった。
「最後のわがままなんですよ。あなたのために弾くんですから。あなたに会わなかったら、僕の音楽も生まれなかったし、子供たちも生まれなかったんです。僕だけのものじゃない。僕たちの愛の結晶でしょう、子供たちも、音楽も」
 しかし、さちの涙を、どうしても誰も止められなかった。志道の決意を誰も変えられないと、同じように。
「わかってますよ。あなたが心配するのは。泣き虫なのも」彼は優しく言った。「初めて海に行った時のことを、覚えていますか?あの時のことを思い出して、『わかってないな』って、言ったんです。
 実際わかってないですけど、さちさんは。どれだけ、僕があなたを愛していて、離れたくないと思っているか。逝くのは嫌だけど、どうせ逝くなら、思い切りあなたを愛してるって、表現してから逝きたいんです。絶対、あなたが僕のことを忘れないように。子供たちもね」
 志道は静かに話し続けた。そして、さちは涙を流し続けた。どちらに勝敗が下ったかは、夫婦だけにしかわからない。
6

こういうこと、やっぱり言いますね。
でも、本心でしょうから…
志道の最期はいよいよ近づいたようです。

引き続き、↓次の回もご覧ください。






アキハバラ。


「最後にもう一回だけコンサートを」
それが志道の願いでした★


 最後の仕事は、初樹がずっとサポートした。志道は初樹に自分が持っているアイデアを伝えた。
 “Jiro's home”の、支店のライブハウスは、小コンサートができるホールに改装されて“Jiro's music home”と呼ばれていたが、そこで志道のラストコンサートが行われることになった。ラスト≠ニかファイナル≠ニいう言葉はそこにはなく、感謝を込めてという言葉と共に、志道や家族が招待するサンクス・コンサート≠ニいう形で行われた。
 それは、心の温まるコンサートだった。志道を愛する人が集まっていた。
 志道の演奏に先立って、前座を願い出る者も多かった。丹野家の従兄たちのクラッシックのアンサンブルと、治郎と麗美も演奏した。志道は、最前列でその演奏を聴いていた。
 麗美が演奏を終えると、兄妹たちが登壇し、志道を手招いた。
 いつか一世を風靡した四兄弟姉妹(きょうだい)が舞台に立つと、以前にはない貫禄があり、変わらず流れている兄弟姉妹間の和やかさが、会場全体に伝わった。
 最初のCMは彼らの輝きが若さと共に溢れていた。その後少なくとも数年に一回は、続編のCMを取り続けていた。
 未来と空が舞台を降り、麗美も自らが降壇する前に、志道の妻子を舞台に招いた。
 志道はさちと子供たちを紹介してから、思い立ったように「一緒にやってみますか?」と、言った。
 壇上にある二つのピアノに二人ずつ座り、あぶれた下の二人、長女のみちと、末っ子の志郎がマイクを持った。
 先日、家で遊びのように演ったのと同じ曲、志道が何年も前に作って麗美に提供していた曲だった。下の姉弟が透明感のある声で歌を歌い、ピアノが二台で掛け合って輪唱のように演奏するのが、まるで家庭での様子のようで、楽しげだった。
 そして、続く演目は全て志道の独壇場だった。彼は病というものを感じさせなかったし、手を抜かなかった。丁寧に、そしてまさしく全身全霊を込めて、全てを演り終えた。

 袖にいた初樹に向かって志道は言った。
「伝わったと思いますか?」
「もちろん、しっかり伝わったと思うよ」
 さちがすぐに傍らに現れた。志道はさちに向かって笑い掛けると言った。
「ほら、できたでしょう?」
「ええ、とてもよかったわ」
「僕の気持ちがわかりました?」
「わかってるわ」
 志道はその日は早々に休んだ。志道の口はまだいろいろ話したそうだったが、さちがその口を押さえた。やはり疲れたのだろう、彼はそのまますぐ眠ってしまった。
7

明日は、「志道の最期」
そして
「涙の理由」の最終話です

前後のお話 はこちらから→ 三月さくら 目次                        
登場人物の確認は家系図で→ 《17年後》 三月さくら家系図 6



よい一日 よい夢を

クリックありがとうございます
にほんブログ村 小説ブログ 純文学小説へ
写真は:日比谷公園 薔薇
by (C)ひでわくさん
アキハバラ。
(C)芥川千景さん
画像あるいはタイトルクリックで写真のページへ
撮影者の名前をクリックすると撮影者のページへリンク
撮影者に許可を得て使用しています
無断転用はご容赦願います



プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に、書き溜めた小説を編集し始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
夢を叶えたい人、カウンセリング募集中!(四柱推命鑑定も可。)
こちらから→幽霊っているんでしょうか