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2017年05月02日

1 《海、山、街'17》 〜待ちびと暮らしの達人たちへ  【三月さくらX1】



小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
初夏から夏にかけての物語──

2012.05.30 和泉川 木陰


今日からの1週間は
一朗が父として登場する
「海、山、街」をお楽しみください。
一挙連載でお送りします★



第X部 待ちびと暮らしの達人たちへ



   第一章 海、山、街
 



泣きたくなるのは夕暮れ
名もない花を見て
懐かしむ 母の面影
泣かない約束は いつでも
泣いた後で思い出す
七つの願い事が贅沢ならば
流れ星にひとつだけ託してもいい?
夏の夜の夢 
泣かずに超えたなら
夏の夜の夢 それはみんなの幸せ

内緒のはずだったよね…
仲直りが苦手な太陽が
仲良しの月と喧嘩した晩
失くしてしまったものは
泣いても 戻ってこないと知った
流れ星はいつも気まぐれだから
七つ星 私の願い叶えて
夏の夜の夢 
流した涙の分だけ
夏の夜の夢 それはあなたの幸せ

泣き疲れて 今朝は明けたのに
余波(なごり)を残さず 
凪いだ沖のように
和んだ一日
眺めのいい部屋から 夕空を見ると
泣き顔(ツラ)に 雨上がりの虹

  涙はどこから来るの?
  なんで温かいの?

七色の虹が
何かしら答えを教えてくれる
夏の夜の夢 
無しのつぶての初恋のよう
夏の夜の夢 それは私の憧れ


  

 青山家の庭は、以前と遜色なく花木が生い茂り、よく手入れされていた。斜向かいの橘家とお揃いの梅の木は、今も変わらず両家に立ち、更に幹を太くしていた。
 両家のお揃いは、実は梅ばかりでなく、通りから見えにくい所では、冬の山茶花、春のツツジ、そして梅雨近くなった今の季節だと、紫陽花が瑞々しく咲き始めていた。
 そして、葉奈が愛した畑には、今も様々な野菜が栽培されていた。葉奈が子供たちを呼び賑わったものだったが、子供たちが成長していき、中高生になる頃には、集まることもなくなって久しかった。
 葉奈の死を契機に、橘家には別居していた葉奈の弟夫婦が両親と同居するようになり、母を亡くした葉摘と初樹の姉弟は、両祖父母と、叔父、叔母たちに愛されて見守られて育った。
 その気持ちよく晴れていきそうな初夏の早朝、一朗は玄関で立ち止まり、きれいな緑の葉で覆われた梅の木を見上げてから門を通って出て行った。
 早朝から、畑には、つばの広い農作業用の帽子を被った女性が畑仕事をしていた。そろそろ日差しが強くなってきて、切り上げようと彼女は腰を上げた。
「もしかして、葉摘(はつみ)?」青年の声が彼女を呼んだ。
 彼女は顔を上げて、声の人の方を向いた。父親似と言われ続けてきたが、年頃になってどこか亡き母の面影を持ち始めた葉摘だった。
「“星の家”の星矢(せいや)だよ」
「お兄ちゃん?」と葉摘は言った。星矢は、星一と一朗、治郎の子供たちの中でも年長だったので、そう言われることも多かった。彼が青山家を訪れるのは、十何年振りだろうか。
 葉奈が亡くなった時、小学生だった彼は、その母が、葉奈と一朗の為にお腹の子の命に代えてもと祈って生れ落ちた、星一とみどりの最初の子だ。
 母から預かっていたものを渡し、お焼香を済ませた星矢にお茶を出しながら、葉摘の祖母は「りっぱになって…」と言いながらいろいろ話し掛けた。
 しかし、チャイムに一呼吸置いて、斜向かいのもう一人の葉摘の祖母、常葉が呼ぶ声が聞こえるので、「残念だけど、老人会の集まりがあって出掛けるの。ゆっくりしていってね」と、言って腰を上げた。
「いえ、僕はもう…」と、星矢が言うのも耳には届かないらしく、「お祖父さん、常葉さんがもう迎えに来られたよ。行きますよ」と、大声で呼びながら行ってしまった。
「祖母さん、お客じゃなかったのか?」と、言いながら入れ替わりにやって来た祖父が、玄関脇の居間を覗いた。
「いらっしゃい」
「ご無沙汰しています、星矢です」
「おお、星矢君か。立派になって。お父さんに似てきたか」葉摘の祖父は目を細めて言った。
1

これが、星矢の登場場面です。

冒頭に挿入した詩は、
詩の中に「懐かしむ母の面影」とあるように
母・葉奈を亡くしている葉摘を
念頭に置き、作りました。

引き続き、↓次の回もご覧ください。






2012.06.01 山手 山下公園 銀杏の中のイチョウ


星矢はお祖母ちゃんたちに大人気。
そして今日は
一朗の息子、初樹も登場です★


 すると、玄関で聞きつけた常葉も上がってきた。「あの星矢君?!久し振りね。立派な青年になって…」と始まり、星矢は今日三度目の勤め先と仕事の説明をした。
 もう一人の祖父、肇は、橘家の前で待っていて、気付かなかったのが幸いだった。
「葉摘の所は、お祖父さんとお祖母さんが二人ずついるんだね。俺の所は一人ずつしかいないから、その点は羨ましいな」と、星矢は言った。
「そう。皆して構ってくれるから、うるさいくらいよ。お陰でママがいなくても、忘れていられた。でも、みんな溺愛で甘すぎるから困るの。
 私はまだいいんだけど、初樹はね。今年大学に入りはしたんだけど、甘やかされてるから、大丈夫かな。将来、お嫁さんの来てがあるかなって。マザコンってあるけど、初樹の場合は橘のお祖母ちゃんと、叔母ちゃんにべったりなの」
 葉摘は、母の葉奈がこの地に再び戻って来た頃と同じ年回りになっていた。亡くなった母のことをほとんど知らないのに、あの頃の母親と同じようなことを言うと、父親たちに言われるようになった。
 と、そこへ当の弟の初樹が顔を出した。
「ねぇ、姉さん、今日のお昼って…」と言い掛けて星矢に気付いた。
「こんちは」と星矢に挨拶し、「めずらしいねー、姉さんが男連れてくるなんて」
「違うわよ、“星の家”の」
「初樹、久し振り。見違えたよ、でかくなったな」と、星矢が言った。
「星矢兄(にい)?」 
「球場で会って以来か?イチおじさんと応援に来てくれたろ、碧斗(あおと)の」
 碧斗は星矢の弟で、高校野球の予選のいいところまでいった時、応援に行ったことがあった。二年前のことだ。結局その試合は負けて、これに勝てば総出で応援しようといういう計画は流れてしまい、その後皆で集まる機会はなかった。
「祖母ちゃんたちは?」と、初樹は姉に尋ねた。
「出掛けたわよ」
「俺の昼は?…あ、まぁいいや。祖母ちゃんたちがいないなら叔母ちゃんに作ってもらうから」
「ほら、こんな調子なのよ」と、葉摘が星矢に言った。
「甘え上手なんだね、初樹は。羨ましいな」と星矢。
「俺が?」と初樹。
「そう、みーんな、あんたには甘いものね」と葉摘。
 初樹は気にしている様子もなく言った。「星矢兄、朝飯食べてきたの?」
「それがさ、コーヒーを飲んでたらさ、お袋に早く行って来いって、お昼に掛かっちゃうと失礼だからって、食べずに来たんだ」
「じゃあ、姉さん何か用意したげなよ」と、初樹は言った。
「わかったわ」と、葉摘は言って、カウンターで仕切られた台所に向かった。
2

葉摘は気づいていませんが、
母、葉奈と同じような
台詞を言っています。
不思議なことに、親子とは似るもの。
そして、この初樹は…。
前後のお話 はこちらから→ 三月さくら 目次                        
   登場人物の確認は家系図で→ 三月さくら家系図2(「海、山、街」)



よい一日 よい夢を

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写真は:木陰
銀杏の中のイチョウ
by (C)ひでわくさん
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撮影者に許可を得て使用しています
無断転用はご容赦願います



プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に、書き溜めた小説を編集し始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
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