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2017年04月30日

[終]12《Jiro'17》 プロポーズ・シーズン 再びの初夏(4)  心晴れ渡る五月 【三月さくらW】



小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
お取り込み中。


あんなに緊張していた
プロポーズも
いつの間にか済んでしまい、
それからまた新しい年を迎えています。
治郎の物語は、
今日が最終話ですが、
これがすべての始まりでもあります★



 治郎のプロポーズについては、きっと彼はバッチリ決めただろうし、陽子の涙は、やはりあったかもしれないが、割愛する。
 治郎の店は、順調に準備され、生ピアノが聴けるカフェ・バーとして秋にはスタートした。
 自称ロミオとジュリエットの治郎と陽子は、悲恋に終わることはなく、死に至ることももちろんなく、反対する者もなく、結ばれることになった。物語ならここであってもいい、どんでん返しも、ついに起こらず仕舞いだった。
「お前のファンは卒倒するかと思ったのにな。最近の若い娘(こ)たちは、割り切ってるんだな」と、星一が言った。
「そこまで雲の上のスターじゃないからね」
「三和産業の面目もあるしな」
 治郎のファンたちの様子は、もっとショックを受けるだろうという予測とは裏腹に、案外静かにそれを受け止めて祝福する感じだったので、肩透かしを食った感じでもあった。
 陽子は卒業した一月半後には、花嫁となる予定だった。
 四年前は、ビン底眼鏡に素顔を隠すようにして、俯きがちな引っ込み思案の女の子だったのに、見違えるような輝く瞳と、愛を受けたからこその紅潮した頬が、幸せを物語っていた。別人と言っても言い過ぎではないほどの、変化だった。
 披露宴の衣装合わせで、ウェディング・ドレスをまとった陽子を、眩しそうに見ながら、治郎は、『本当にきれいだ』と、心の中で呟いた。
 そうして、二人はこんな会話を交わした。
「あの時、お前を見つけなかったら、どうなってただろうな、俺」
「治郎さんが見つけたの、私を?」
「そうだろ?」
「ありがとう、治郎さん。普通、私のことなんか、見過ごすのに誰でも」
「お前の下手くそなノクターンのせいだ。お陰で、俺の胸はあれからおかしくなったんだから」
「胸が?どんな風に」
「ドキドキしたり、苦しくなったり…。わからないか?今もだよ。陽子が、可愛いから」
「今でも嘘みたい。治郎さんが私を、なんて」
「何度でもみつけるさ。でも、あんなところで、ピアノを弾くのは普通よほどの自信がないと…」
「それも不思議だったの、今思うと。たまたま、触ってみたら鍵が掛かってなくて、ピアノのふたが開いたの。なんか弾いてほしそうで…。誰もいなかったし、ちょっとだけのつもりで…」
「ピアノが、選んだんだな、お前を。そういうことって、あるさ。『ノクターン二番』を弾いたのは?」
「うーん、それもなんとなく」
「なんとなく、か?」
「もっとうまく弾ける曲もあるのに」
「うまく弾いちゃ駄目だったんだよ。俺が見つけられなかっただろ?」
 二人は、にっこりと笑い合った。
「俺のことだけ、見てろよ、これからも」
「うん。…でも親衛隊の子たちは、もっと前から治郎さん一筋だったのに…」
「それは、どうかな。俺じゃなくてもよかったんだよ、彼女たちにとっては。なんていうか、好きな趣味やブランドみたいなものだろ」
「中学から一緒だった人がいたでしょ?」
「?」
「私はかなわないって思ってた。今でも一番のファンだって言ってる」
「ああ、会長のこと?」と、治郎は言った。
 彼の親衛隊だったかつての女子大生たちは、治郎のファンクラブを運営する主力メンバーになって、今でも篤い声援を送り続けている。
「へー、陽子がやきもちを焼いてくれるわけ?」と治郎はおかしそうというよりも、嬉しそうに言うと、彼女をやわらかく抱擁した。
「お前の視線はいつも逸らすのが大変だった。この胸がおかしいのも、お前のせいだし…。今ピアノを弾けるのも、お前のせいだ。責任を取れ」
「…」
「一生側にいろよ」
「うん」
 その約束は、きっと守られるに違いなかった。咲き始めた桜が二人の未来を祝すように、この日を忘れられないものにするために、飛びっきりの演出をしていた。
 また再び初夏を迎える時、彼らの晴れ姿が見られるはずだった。
47

これでおしまいです。
予想通りの展開に終わって
なんの障害もなくゴールインさせてしまって
面白みにかけ、申し訳ありません。
でも、治郎の場合は
こうならざるを得なかったかも…。
行動パターンが
読めてしまう単純さ、
そして、結局は人に好かれてしまう
魅力も
治郎なんですから。
第V部の後半と第W部からなる
「治郎の物語」に
お付き合い頂きまして
本当にありがとうございました。

明後日からは、久しぶりにほぼ本編の順序通りに
第X〜Z部を再公開します

「三月さくら」シリーズ前後のお話 はこちらから→ 三月さくら 目次
登場人物の確認は家系図で→ [三月さくら 家系図]



よいい一日 よい夢を

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プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に、書き溜めた小説を編集し始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
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こちらから→幽霊っているんでしょうか


2017年04月29日

11《Jiro'17》 プロポーズ・シーズン 再びの初夏(3)  心晴れ渡る五月 【三月さくらW】



小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
次はどこへいこうかな。


飾らないままの治郎の心は、
陽子の両親に届いたようです★


 孝司は治郎に心からの感謝の思いを伝えた。「君は陽子の心がきれいだと言ってくれただろう。外面で寄って来る品性のない奴らとは違った。私も、君が陽子を想ってくれる様子というのか、その愛し方に感動していたんだ」
「そんな…」と、治郎は恐縮した。
 陽子の母が言った。「聡子も言っていたけど、陽子は治郎さんと会ってから、とってもきれいになったって」
「そうだな。三人姉妹の二番目だから、親としては可愛がってるつもりでも、つい問題のない娘だから、一番手を掛けないで来たかもしれない。自己主張も激しくないし、目立たない娘だったから」と、孝司が言った。
 陽子の母が言った。「ええ。でも気立てがいい娘なんですよ。親に対しても誰に対しても、わきまえてるし、控えめすぎるからわからないけど。
 でもね、お店で働くようになってからですよね、とても明るくなって。今はとても活き活きしてるから、姉や妹が翳むくらいだわ。よく、きれいになって、って言われるの」と、言いながら母は嬉しそうだった。
「もともと美しかったんですよ、陽子さんは」と、治郎が言うのに対して、また孝司が言った。
「愛されるときれいになると言うが、その通りだと驚くよ。父親としては娘を取られるようで、複雑な気持ちになるんだろうが、私の場合は息子が出来たようで、かえって嬉しいんだ」
「そうまで言ってもらえると…。僕はそこまで喜んでもらえると思ってなくて」
「受け狙いでないところが、爽やかというか、いいんだよ」
 確かに、治郎はこの三和家の雰囲気を変えたようだった。すっかり治郎を気に入った孝司たちは、当然のように、治郎の魅力を知っていたが、彼自身は、彼らほどには評価していなかった。
 三和家の家族はある意味、彼の一番のファンのように、篤く応援してくれるのだった。三和家の内外の後押しが、今後治郎の将来には、更にかけがいのないものになっていく、兆しがもう見えていた。
23


緑と青と白い花。


いよいよ、プロポーズとなりますか…!
乞うご期待!






カラスアゲハ。


いよいよ治郎のプロポーズ?!★



 さて、治郎にとっては次なるハードルが待っていた。それは緊張するコンクールを思い起こさせた。
「今からそんなに落ち着かなくてどうするんだ。ま、お前の場合、本番ではビシッと決めるんだろな」と、星一に言われた。
「これはコンサートとか何かの簡単なイベントじゃないんだから」と、治郎。
「確かに一大イベントだ」と、星一は笑った。
 人生で最高の、飛び切りの舞台とならなければならない。いつものコンサートであったとしても、趣向を凝らし、最高のものになる準備もし、本番では全身全霊を込めるのだが、それとは、まるきり質が違うものだった。
「頭が真っ白なんだ。どうしようかアイデアも浮かばない。浮かんできても、なんか奇想天外すぎて…」
 そんな治郎に、星一は自分の話を始めた。「俺の中ではプロポーズって、あんまり意識してなかったんだ」
「っていうか、マスターはプロポーズしたんだよね、やっぱ?」
「うん、付き合って二年近くたって、祖母ちゃんが動き出して、日取りが決まっちゃったじゃないか。最初からみどりのお母さんには結婚を前提の付き合いって言ってあったし。お前ほどのこだわりはなかったしな、プロポーズに。だからしないでいたんだけど」
「まさかしないで済まそうとしたの?みどりさんかわいそう」
「そういうこと。ある時突然、『なりゆきで、いやいや結婚するならしなくていい』って言われてさ。びっくりして、次の日それなりの店予約してさ、花束も用意してさ、言ったんだよ。
 イチの時もそこ予約してあげたんだけど、花束のタイミングが助かったって言ってた。席着いてさ、ウェイターがセッティングして行ってしまって、さぁというタイミングが難しいじゃないか。どうしようかっていう一分以内に花束が届くんだよ」
「うん。単純だけどいいかも」
「イチの時もちょうど一年前だな。お前も行くか、そこで?」
「そうだね。どうしようかな」
「それともやはりピアノを弾きながらか?」
「またって感じ。それって通常だもん」
「なんでもいいさ。心が通じれば」
「じゃあ、マスターとイチさんの成功を受け継ぐかな、やっぱり」
「いろいろ趣向を凝らさなくていいのか?」
「シンプルがいいかも。かえって野暮な気がするから。花束だけで充分だ。また後で指輪を買いに行くかな」
「そこ予約する?花も?」
「任せていい?」
 こうして治郎も、星一、一朗と同じ経路をたどることになった。
24

さて、プロポーズは
バッチリ決められるでしょうか。
明日は「治郎の物語」感動の(?)最終話です。

「三月さくら」シリーズ前後のお話 はこちらから→ 三月さくら 目次                        
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2017年04月28日

10《Jiro'17》 プロポーズ・シーズン 再びの初夏(2)  心晴れ渡る五月 【三月さくらW】



小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
2011.04.25 和泉川 フユシラズにベニシジミ


星一のアドバイスを受け、
今日は今まで治郎が避けていた実家、
初公開です!
まずは星一と治郎の会話の続きから★


「ワンツーコンビのいた頃だったから、一通りのことは任せられたからね。店主としても一応どれ位外せるか考えてるさ。まあ、あの時は、お陰で客足も順調だった。やはり、お前は人を呼ぶものは、持ってるよ。店をやれば流行るだけのものはな」と星一。
「でしょ。そういう自信はあるんだ。でも、マスターに言われたことは、肝に銘じるよ」と治郎。
「結婚のことはどうだ?陽子ちゃんとのことが前提での話だろ?」
「結婚はしたいよ陽子と。プロポーズもしてないし。何をどうしたらいいか、ちょっと混乱してる」
「そもそも、お前が自分の家を敬遠してるからいけないんだろ。そっちから、筋道を立てるべきだよな。陽子の親をクリヤしたんだから、潮時だよな。」
「俺の家か」
「お前がデビューして喜んでくれてないのか?」
「喜んでるみたい。カチカチのクラッシックしかできない人たちだけど、人の音楽には理解があるんだ。音楽を愛しているから」
「お前のことも愛してるさ、音楽以上に」
「うん。それもわかってる」
「まず、店のことに関して、しっかり片を付けろよ。でも、その前にいい機会だから、お前の親にも報告して相談してみろよ」
「うん」
「そうしておいてから、経済的なことに関して、三和さんと話を付けて、プロポーズはやっぱその後だろ。すっきりしないで、結婚のために、うやむやにするなよ。結婚するからこそ、けじめを付けろ」


 治郎の家は、音楽関係者がよく出入りする開放的な家だった。
 治郎は、子供の頃、そこでのアイドルだった。客が来るのが好きだった。皆が彼を可愛がった。誰からも愛されないことがなかった。
 兄姉からも、愛を受ける立場だった。喧嘩はあったかもしれないが、いつも皆が彼に甘かったし、彼も甘え上手だった。
 はじめからピアノが重荷だったわけではなかった。
 最初は誰かの真似であり、楽しい遊びだった。いつもピアノを弾くのを見てきたので、見よう見まねで弾くのは、いくらやってもあきることがなかった。
 久し振りに実家に戻ると、懐かしい日々が思い出され、自然に気持ちよく遊び感覚でピアノを弾いていた、幼い頃の気分が蘇ってくるのを感じていた。
 ここから、自分は出てきたのだ。この家が自分と無関係だとは絶対言えない。今の治郎にはよくわかっていた。
 治郎は星一のアドバイスを元に、両親に、孝司からの提案と、自分の考えを話した。
「それで間違ってないと思う?」という彼の問いに、両親は笑顔で推してくれた。
「それよりも、陽子さんをいつ連れてきてくれるの?」と、母親はそちらの方が気になるようだった。
21

え?!治郎の両親ってもしかして…。
治郎の家の問題って、
なんだったの???
さて、プロポーズに近づくか!






2011.04.29 和泉川 クロアゲハ


治郎の両親は
厳しいのかと思ったらその逆で
もしかしたら甘すぎなんじゃないでしょうか?
治郎と陽子の前にもしかして
誰も反対するものはないのかも?!


 治郎によく似た眼元と口元をした母は、笑うと更に彼に似ているようだった。
「そんな良い所のお嬢さんと、あなたが付き合ってるなんて。何にも言わないんだから。でも大丈夫なの?事業資金の為にお付き合いしてるんじゃないでしょうけど」
「もちろんだよ。いい娘だよ。三年も見てるから。付き合ってからも、もう一年以上経つんだ。その頃からずっと三和の家には出入りしてたんだ。ごめん、ここには連れてきてないのに。デビューしてからは忙しくて、あっちにも顔を出せなかったんだよ」と、治郎は言った。
 ここ何年も家族と話をする習慣がなかったが、これを機会にその心の距離が縮まったようだった。
 学生時代はわざと避け、最近は忙しさにかまけて、しっかり向き合って来なかった。両親に理解してもらい、兄姉からも温かい声を掛けられて、彼は心からホッとした。
 彼は家族から愛されていることを、よくよく知っていた。だからこそ、期待を裏切って大学に入ったことを、申し訳ないと思っていた。ようやく胸のつかえが取れ、甘えん坊の末っ子に戻れたような気がした。


 また初夏が来ていた。
 三和家の西洋風の庭園には、様々な植物が咲いていた。菖蒲だろうか、紫と黄色の群生が気持ちよさげに立っていた。
 治郎は、陽子とその庭を歩いていた。去年にも見た紫陽花がまた咲いているのが目に入った。赤紫の明るい色合い…。
「今日今から、お父さんにこの間の話の返事をするよ」と、治郎は言った。
 陽子は、どんな話をする予定か、訊こうとしなかった。
「お前も一緒に来る?」
 陽子は静かに首を振った。
「何にも訊かないの?」と言って、治郎はにっこり笑った。
「じゃあ何にも言わないよ今は。後にとっておく」 
 こういう時、治郎は陽子が愛おしくてたまらない気持ちになる。抱き締めてキスしたい思いを抑えて、そっと抱き寄せてから言った。
「じゃあ行くよ」

 治郎は、陽子の両親に自分なりの思いを告げた。
 資金の一部を治郎自らが出し、後は出資してもらいながら、やはり治郎自らが経営していきたいということ。陽子が一緒にしてくれるならそれも嬉しいが、それは彼女の意思に任せること。そして、結婚の許可を改めて請うた。
「いやぁ、安心したよ。もしかして何もかも突っぱねられるかと心配していたんだ」孝司が言った。「君は実に骨があるよ。情も豊かだし、才能もある。陽子のことを大切に思ってくれることがありがたいよ」
 孝司は上機嫌でこんな話もした。「実はね、陽子を眼鏡で過ごさせたのには、悪い虫を付けさせない私の思惑があったんだ。三和の娘であることもあまり出さないようにして、私なりに守ってきたんだよ」
22

やはり、治郎と陽子の前に
反対する人は
いないかのようですが…
「三月さくら」シリーズ
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