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2016年12月31日

22 《あの人は広い傘をもっている》 Sean14 余命数ヵ月の花嫁(前)


今年一年ありがとうございました。
良いお年をお迎えください☆
小説 ▼△あの人は
広い傘をもっている△▼
キラリ!春〜^^
 

今日は急展開!
どこかで聞いたようなタイトルを
持ってきてスミマセン★



Sean14 余命数ヵ月の花嫁 127486796702016104458.jpg



 正月は過ぎ、“さと”も営業が始まり、暢の冬休みも終わった。
 何も以前と変わらないように見えるが、今までは間に入ってくれていた百合子は介さずに、暢は美里に直接電話やメールで連絡をくれるようになった。
「毎日お店に来てくれるし、メールもくれるから。それに日曜にはアパートにも行ってるんです」と、美里は百合子に報告した。
「そんなんで、いいわけ?」と百合子はあきれたように言った。

 今年に入ってから、祖母のマツは店を休みがちで、出ても早めにあがることが多かった。
「お祖母ちゃんの小言を聞かないと、なんか一日が締まらないんだけどね」と、暢が言った。
「今まで、働きずくめだったから、これからはゆっくりしてもらいたいの」と、美里は言った。
 店は忙しく、バイトを雇う予定にしているようだった。美里も、正月から、ずっと風邪気味なのに店があるので体を休めないようだった。
「私はお祖母ちゃんに似て、丈夫だから、寝れば元気になります」と、美里はいつも言っては疲れを見せないようにしていた。しかし、その日の美里は特にしんどそうだったので、暢は百合子の所の受診を勧めた。
 そして数日後のことだった。とうとう美里は風邪で寝込んでしまったようだった。
 美里の携帯に電話してみると、マツが出た。
「ちょうどよかった。あんたに話があるんだよ」と彼女は言った。

 暢は佑太を迎えに行く前に、“さと”に寄った。本日休業の札が掛かっているが、手動で引き戸を開け、中に入った。
 中ではマツが待っていた。
「思い出すね、前あんたにお説教したことがあったね。覚えているかい?」
 忘れられるわけがなかった。「覚えてますよ、もちろん」
「今となっては、もう、あの時のようには頼めないがね、言ったことは本当の気持ちだよ。あんたの気持ちは今更探ったりしないよ。そんな時間もないからね」
「…お話というのは?」
「入院することになってね」
 風邪で熱を出したのではなかったのだろうか。そんな深刻な状態だったのか、と暢の頭の中でいろんなことが渦巻きのように回った。
「確かにずっと疲れているみたいでしたが、入院ですか?」
「ああ。相当根気強く、養生した方がいいということだ」
「美里さんは、あの、大丈夫なんですか?」
 暢の真剣な質問に、マツは思い切ったように話し始めた。
「医者ははっきりは言わないが、実はかなり深刻らしいよ」
「いつ、入院ですか?」
「明日だよ。徹が仕事が休めるから丁度いいらしい。今日は、自宅でしっかり休んでればいいということだ」
「あの、まさか、命に関わるってことはないですよね」
「人間、いつまでも命を持ってはいられない、いつかはお呼びがかかるんだから」
「でも、突然すぎて…」
「事故とか、戦争で爆弾でも落ちれば、一発でおしまいだ」
「そうですが…。何と言ったらいいか…」
「美里のことをあんたに頼みたかったのに…今となってはね」
「…」
「ただ、あの娘が心細いだろうと思ってね。せめて佑太君とお見舞いでも、来てもらえたら嬉しいと思うよ」
「はい。わかりました」そう答えてから、少し間を空けて言った。「あの、…美里さんに会えませんか?具合が悪いから、無理ですよね」
「さっき食事に起きて来ていたから…待ってなさい」
 しばらくして、部屋着にジャンバーをまとった美里が、家の方から、店に入って来た。
「先生…」
「休んでいたのに、ごめん」
「大丈夫。今日昼間たくさん寝たから…」そういう美里の顔は、いつもより青白かった。
「…入院なんだって?お祖母ちゃんに聞いたよ」
「ええ。しばらくはこのお店も閉めなくちゃ」
「そうだね。お店どころじゃないよね」
「…ええ。お祖母ちゃんと何か話しましたか?」
「入院のことを聞いて、佑太とお見舞いに行ってくれって」
「…実はお祖母ちゃんには話してないから知らないと思うんですけど、パパとママがお医者さんと話しているの、私も聞いちゃって。」
「結構深刻だと言ってたんだけど、養生すれば治るんだろ?」
 美里は首を静かに横に振った。
「どういうこと?」
「末期の癌なんです。分かりにくい場所で、もう手遅れになってて…」
 癌で余命数ヵ月の宣告を受けたのだという。
50

こういう急展開です
さぁ、暢の反応は?
引き続き、↓次の回もご覧ください。






春待つきらめき☆〜


余命数ヵ月?!
あまりに突然の衝撃的な話に
暢は…★
 

 美里は言った。「もう手術もできないみたい。これ以上進行しなければいいけど、多分数ヵ月ってこともあるから、覚悟しなさいって」
「そんなことって…!」暢は声を失った。
 美里の目から涙がこぼれた。
「大丈夫?」ようやく暢は声を掛けた。
「私は大丈夫。まだ心の整理はつかないけど、先生に話せてホッとしました。聞いてくれてありがとうございます。びっくりしたでしょう?」美里はこのことでかなりショックだろうに、涙を浮かべながらも、暢に笑い掛けた。
「こうはしてはいられないですね。数ヵ月だから、悔いのないようにしなくちゃ」
 美里は気丈な姿を見せていた。
 もう一度「大丈夫?」と言い掛けて、彼は口ごもった。平気そうでも、そんなはずはない。何度も安易にかけられる言葉ではない。
「…僕にできることがあれば、なんでも言って」
「ありがとうございます。お祖母ちゃんが言うように、今度、佑くんとお見舞いに来てください。…あ、お迎えいいんですか?」
 保育園の迎えの時間が迫っていたので、去らなければならなかった。何か言おうとするのだが、暢は美里に言うべき言葉が見当たらなかった。

 佑太を迎えに行ったが、彼は心ここにあらずで、あやうく佑太の荷物を忘れてくるところだった。
「パパ、“さと”に行かないの?」と佑太に言われて「“さと”は休みなんだ」と答え、コンビニで弁当を買って、なんとかアパートには到着した。
「パパ、食べないの?」と言われても暢は箸を持つ気にもならずに言った。「パパはお腹すいてないんだ。佑太はたくさん食べろ」
 あまりに突然のことだった。数日前、調子が悪そうだったので内田医院に行くように勧めて、こんなにすぐに大病院に入院が決まるなんて。検査の結果なのだから間違いはないはずだとはいえ、にわかには信じられなかった。
 いたたまれず、暢は百合子に電話した。
「この間美里さんが行かなかったか?入院のこと知っているのか?」
 畳み掛けるように質問してから、何か言おうとする百合子を制して、アパートに来るように言った。
 百合子はすぐにやって来たが、狭いアパートで佑太に聞かせる話ではない。好きなDVDの中で長めのものをかけた。見させておけば、彼はそれに集中して、同じ部屋で起こっていることも気づかないはずだった。
 それでも、念のために二人はダイニングに行き、小声で話をした。
「どうして急にこんなことに?!」と、暢は言った。
 百合子はなかなか口を開かなかった。
「もう手遅れなのか?数ヵ月しか持たないかもしれないって、本当なのか?!」
「美里さんから?」
「ああ、お祖母ちゃんに会った後、美里さんとも話したんだ。さっき」
「彼女は、よっぽどあなたを信頼しているのね。あのねぇ、こういうことはね、医師の口からは言えないのよ。でもまぁ既に聞いていることなら、その通りよ」
51

百合子からも確認して
間違いないようです。
こんなことって!
いきなりの展開で申し訳ありません。
引き続き、↓次の回もご覧ください。






咲いています・・・♪〜


動揺している暢です★

 
「私がK病院を紹介したの。後は専門の医師に任せたから、美里さんが言うなら、間違いないと思うわ」と、百合子は言った。
 どこかで否定してほしかったのだが、百合子の口から聞いたのでは、もう疑う余地がなかった。
 しばらくしてから、暢はかすれたような声で言った。「何をしてあげたらいいんだろう」
「できるだけ顔を出してあげたら、家族のように」
「家族…」と暢は呟いた。
「こういう時、家族は大変よ。患者を支える立場だから。話を聞いてあげたり、笑わせてあげたりそんなことがきっと嬉しいと思う。いつものように接してあげるのがいいわ」
「…そう」と、暢は考え込んだままだった。
 そのうちに幼児用のDVDはすぐに終わってしまい、佑太が「パパ」と言い始めた。

 百合子が帰り、佑太を寝かしつけてからも、暢は考え込んでいた。
 彼はすごく動揺していた。自分でもそれは自覚していた。美里があの若さで入院し、数ヵ月後には帰らぬ人になるかもしれないのだ。
 彼女に深く同情した。
 以前母、春子が言ったように、彼は同情心に人一倍篤かった。百合子が「最大の弱点」と言った通りだった。
 今までの人生で一番、後悔を感じていた。いつも、正しいと思うことをしてきたから、罪悪感、というものとは自分は無縁だと思っていたが、さっきから波のように湧いてくる思いは、同情と罪悪感の混じった後悔の繰り返しだった。
 かつて、教え子である佑太の実母、佑美が窮地に陥った時、自分の立場を考えずに、その子を引き取った。その時以来の強烈な感情だった。その時も同情心に従って行動したが、今でも後悔はしていなかった。
 しかし、今回は同情だけで彼が動揺しているのではなかった。彼は抑えがちにしてきたが、美里を心から愛していた。
 いつまでも変わらないで、彼女の笑顔を見ていられると思っていたのに、何もしてあげられないまま、永遠に別れなければならないのかと思うと、耐えられない気持ちだった。
 かわいそうなことをした、と思った。
 自分が結婚には逃げ腰だったのだ。彼女の父親に何か言われたとしても、本当に好きならば、簡単にあきらめるなんてできないはずだった。なんと薄情だったのだろう。
 彼女から告白までされて、それまでも突っぱねた。そのくせ、完全に関係を絶つことができずに、曖昧な関係を続けて来た。
 失ってからしか気づけないことがあるというが、その通りだった。
 美里の顔が浮かんできて、胸が苦しかった。
 母たちに仕組まれたことが、どこか癪だったのだ。しかし、素直に受け入れていればよかったのかもしれない。そうすれば、今、恋人として近くにいてあげられたはずだった。
 もう、そういう機会がないのだろうか。
 自分に病状を打ち明けてくれ、話してホッとしたと言っていた美里の顔を思い出した。ああいう時に、優しく抱きしめてあげ、寄り添ってあげる存在を彼女は求めていたはずだ。不憫でならなかった。
 同情と罪悪感の波よりも更に強いのは、彼女を慕う思いの波だった。
 彼はその晩まんじりともできなかった。
 暢の同情心と正義感は、彼の愛情を後押しして大きく動き出し、ひとつの結論を導き出した。
52

暢が出した結論とは…
おそらく彼のことですから?!

あと2日分を残していますが、
今年もこの作品の連載中に
年を越すことになります。
どうもありがとうございました。
目次・登場人物紹介は
こちらから ↓

目次 ▼△あの人は広い傘をもっている△▼



よい一日 よい夢を

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写真は:50 キラリ!春〜^^
51 春待つきらめき☆〜
52 咲いています・・・♪
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プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に小説を書き始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
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2016年12月30日

21 《あの人は広い傘をもっている'16》 Sean13 鬼のかく乱3



煌いて・赤い実♪
 

恋人との結婚を控えた染野が、
暢に知恵を授けようとしますが…


「プロセスというのがあるから」と暢は言った。
「そうなんですが、今更無理ですね。彼女がツムジを曲げるのも分かるな。肝心なあなたがそんな反応じゃ」と染野は笑った。「実は、僕もあやうく捨てられるところだったんですよ」
「尊敬するよ、あの前川と結婚するなんてね。絶対落ちないって言われてたんだよ、あいつは」
「付き合い始めるのは順調でしたよ。僕は年下だからかな、よけいに気兼ねなく話せたのがよかったのかも」
「あいつも過激だよな、狂言結婚の相手にされて、こっちはいい迷惑だったよ」
「実は、本気で嫉妬したんですよ、長尾さんのこと。それで火がついてプロポーズしたんですから」
「まさか僕にも、プロポーズしろって?」
「そうですねぇ、それくらいでもいいと思いますよ。僕の時もそうだったけど、ちょっと歩が悪過ぎますね。男のメンツなんて関係ないですからね、女性には。照れたりしている場合でもないと思いますよ」
「どうしたらいいって?」
「面と向かって言ってないんでしょう、好きだって。言わなくてもみんなに分かるほどバレバレでしたけど。長尾さんも、僕のことを美里さんの相手と思って、嫉妬しませんでしたか?その時に言っちゃえばよかったのに。まぁ今更ですが」
「僕は君とはだいぶ違うようだ」
「違いませんよ。僕だってプロポーズする前は、もう死に掛けるくらい萎えてたんですから」
「発奮したんじゃなかったの」
「そうですね。当たって砕ける覚悟はありましたが、つまり撃沈寸前ですよ。ダメ元で後がなかったので、思い切れたんですね」
 暢は染野の、結局は成功したその体験談をしっかり聞いてから、言った。
「分からないわけではないんだけどね。ただ、僕には無理だな。みんなに気にしてもらうのはありがたいんだけど、僕たちのこと、急かさないでほしいんだ」
「確かに外野が先走り気味でしたね。でも、少なくとも二人きりで、佑太君も抜きで話した方がいいとは思いますよ」と、染野は〆るに留めた。

 初詣に行くであろう染野と百合子とは別れて、暢は佑太と二人で過ごした後、実家に戻った。
 佑太を引き取る時には大反対した父も、今となっては「子どもには罪はない」と言って、孫として認めていて、長期休暇の時には彼らが帰ることを、はっきりとは言わないが心待ちにしているようでもあった。特に暢の姉が、夫の海外赴任で正月ですら帰らないことが多いので、尚更だった。 
 暢は、両親が佑太を構っている間に、こっそり携帯で電話をかけた。相手は美里だった。
48

久方ぶりに暢と美里の絡みが見られるでしょうか。
どうぞお楽しみに。
引き続き、↓次の回もご覧ください。






なごりの涙?
 

外野が盛り上がってますし、
暢と美里の二人は
今度こそ進展しそうですが。
電話のシーンから★


「風邪、ひどくなってない?」と、暢は言った。
「大丈夫です」という答えを先に聞き、言い訳できないようにしたのか(?)とも取れる暢の問いかけだった。
「ちょっと会えないかな」
「…今ですか?」
「出て来れないなら、家まで行くけどいい?」と、今度は脅しとも取れる言い方だった。
 暢は、約束を取り付けて、美里を待った。彼女はほどなくやって来た。
「ようやく会ってもらえた」と、暢は言った。
 しかしその後は、彼は特別な話はしなかった。もしかして、今までのことを弁解してきたり、告白されたりするのかと、身構えていた美里だったが、拍子抜けするくらいだった。
 暢が、年末年始、実家で両親と過ごす佑太の様子などを話すと、美里は自然に会話を交わし始め、いつの間にか気持ちがほぐれていたのだが、それは彼の思いやりが通じたからかもしれなかった。
 次の約束も一応交わしたが、またハンバーグを作りにアパートに行くことだった。
 百合子や春子そしてマツたちが、取りもってくれようとするのはありがたかった。クリスマスの一日をじっくり過ごすことができたのも、彼らのお陰だというのは分かっていた。彼らは、即結婚していいくらいの段取りまで組んでくれてあった。 
 しかし、放っておいてほしい、というのが美里の願いでもあったし、暢も同様だった。
49

マイペースに関係を
築き始めた暢と美里ですが…
今度こそ大転回が!

目次・登場人物紹介は
こちらから ↓

目次 ▼△あの人は広い傘をもっている△▼




よい一日 よい夢を

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48 煌いて・赤い実♪
49 なごりの涙?
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プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に小説を書き始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
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2016年12月29日

20 《あの人は広い傘をもっている'16》 Sean13 鬼のかく乱2



小説 ▼△あの人は
広い傘をもっている△▼

移ろい・・野草のなみだ・・・


さて、暢が美里を避けていた
理由が、いよいよ明かされます★


 美里はその晩、家に帰るなり、徹を探して詰問した。
「お父さん、先生に何を言ったの?!」
「先生?」
「佑太君のパパよ。お父さんが余計なことを言ったのはわかってるのよ」
「あの子持ち男が何か言ったのか?」
「先生が何か言うわけないじゃない。何一つ自分のことは言わない人なんだから。何を言ったの、お父さん」
「何をって…」徹は少したじろいだようだが、胸を張ったように言い切った。「お前に近づくなと言っただけだ。当たり前だろ、子持ちのバツイチ男にお前はもったいない」
「彼はバツイチじゃないわ」
「じゃあ、なんだ未婚の父か?!もっと悪いじゃないか」
「何がいけないの。人から誤解されても、教え子の子を引き取って育ててるのよ。立派なことだと思うけど」
「あの子は、あいつの子じゃないのか?」
「実の子じゃなくても、あんなにしっかり育ててるわ」
「子供がいることには変わりないだろ。俺が認めないと言ったら認めないんだ」
「私たちは付き合ってたわけでもない、何の関係もないのに、何でお父さんがそんなこと言うのよ」
「何かあってからじゃ遅いだろ。下心があったんだよ、あいつには。一切、一対一では会わないって、自分から約束したんだ」
「どんな下心なのよ!」と、美里は声を荒げた。「あの人は、食事がおいしい、くらいしか言わないわ。私が何を言っても、お母さんや、うちのお祖母ちゃんや、みんなして私とくっつけようとしてくれても、手も出さなければ、気持ちだって絶対言わない。一昨日だって、『サンドウィッチがうまかった』しか、言われてない。私がどんな気持ちで過ごしてたか。お父さんがそんなこと言ったなんて知らないから。そんな約束させてるなんて…」
 美里はとうとう涙をこらえられなくて、父を捨てるように残して、自分の部屋に行ってしまった。何に対して腹立たしいのか、何が悲しいのか、よくわからなかった。父に詰め寄ったのは、鬱憤の腹いせのようなものだった。
「先生のバカ」と呟いてベッドに突っ伏した。

 寝床から起きて来たマツは、「トンチンカンなことをしてくれたね。早いうちに、先生に謝るんだね」と、一言息子に言うと、また部屋に戻った。
 芳美は夫を宥めようと試みたが、ついつい、本音が出てしまい、結局は娘や母以上に手厳しい言葉を連発してしまった。
「娘の幸せを邪魔するなんて」
「なんだよ、俺は悪者か」と、少し事情を理解してバツが悪い徹は、それでも納得できないようだったが、翌朝、春子が百合子医師と共に訪ねて来て、丁重に挨拶されると、あいつ呼ばわりしていた暢のことを、もう悪くは言わなかった。
 亭主関白の夫に仕えてきた、おっとりした妻、春子の風貌は、徹の反対する気持ちをいっぺんに萎えさせたようだった。
46

展開が変わってきましたね。
暢と美里、これで反対する人は
いなくなりました。






蜘蛛の糸と雨
 

暢と美里に対する
風向きの変化…。
皆が二人を応援しているようですが★


 暢は風邪が治るなり、状況の変化に戸惑うばかりだった。徹に呼び出されて、今までは失礼なことを言ってすまなかった、娘を誘ってやってくれ、と言われた時は、本当に驚いた。
 何と答えたらいいかと思って口を開けないでいる暢の答えなど聞きもせず、徹はとめどなく話し続けているのだった。
 最後に「よろしく頼むよ」と言われ、暢は「はい」と答えるのがやっとだった。

 一方、徹が急に暢のことをいい青年だ、と言い始め、媚びるように話し掛けて来るのを、美里は無視していた。
 彼女はそれまで、普通の娘ならウザイというに違いない父親の状況を見ても、邪険に扱ったりすることはなかった。中高生頃は、ちょっと距離を置いていたものの、OLをやめて店を手伝うようになってからは、「粗大ゴミ」とまでは言わないまでも父に配慮しない母の分も、優しくしてあげていたのは美里だった。
 その美里が、人に気を遣っている時ほどお喋りになる父のことを分かっていながら、その言葉を耳に入れようともしなかった。
 年末年始は“さと”も休みだった。
 百合子を通して、初詣に行こうという誘いがあったが、美里は風邪気味だと言って断った。暢からもメールがあったが、そっけない無難なメールを返しただけだった。

 喫茶店で、佑太を連れた暢は、百合子と話していた。
「どうしたんだろう」と暢が言った。
「間違いない、怒ってるのよ」と、百合子。
「怒ってる?!何で?」
「複雑な乙女心よ」
 百合子はできるだけ分かりやすく説明した。
「もう全部バレてるんだから、ちゃんと言うべきこと、言ってあげなさいよ。わかった?」
 暢はどうも分かったとはいえない表情(かお)だった。
 そこへ、染野がやって来て、彼らに合流した。彼は状況を聞くと、笑って言った。「長尾さん、観念して女性の言う通りにするのが無難ですよ。と言うか、それしかないですよ」
「訳が分からないな」
「小さい子どもの相手も秘訣があるでしょうが…」
 そこまで話した時、百合子が佑太を外に連れ出してくれたので、暢はじっくり染野の話を聞くことができた。
「彼女の方から告白されたんですか」と染野。
「ええ」
「結婚してもいいと言われて、断ったとか」
「僕には佑太がいるし、彼女にはふさわしくないと思って」
「お父さんに止められなかったら、自分から告白してプロポーズしてたんですか?」
「…いや、プロポーズまでは」
「それじゃダメですよ。学生の男女交際じゃないんだから、結婚する気がないなんて、絶対口が裂けても言っちゃダメですよ。女は本気じゃなければ納得しませんからね」
47

美里の態度を理解できない暢。
鈍感すぎるような…。
早くなんとかしなさい!と言いたくなります。
染野のアドバイスは役に立つでしょうか。
続きをお楽しみに。
引き続き、↓次の回もご覧ください。

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写真は:46 移ろい・・野草のなみだ・・・
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47 蜘蛛の糸と雨
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ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に小説を書き始め、その後ブログをはじめました。
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