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2018年08月22日

(詩) 茜空には届かない 〜朝顔の詩(うた)〜  2018


明け方の爽やかな陽射しに呼びかけられ 
目覚めた朝顔は、
愛の喜びを知り、
満面の笑顔を広げました★

6904405朝顔 by sae.jpg



「 茜空には届かない 」
〜朝顔の詩(うた)



 朝顔は朝が好き
 朝日に向かって大輪を開く
 雨の日も 晴れの日も

 ありきたりの日常だけど
 あきが来るまで 咲き続けよう
 鮮やかな青 淡いピンク

 青空に憧れて
 熱い思いに心を焦がす
 甘い夢 淡い想い

 あの人が通る道
 歩いていく後姿
 朝顔の滝壁が涼しげに揺れている

 朝顔は朝が好き
 赤い夕日は見たことがない
 あんなに丈を伸ばしても
 茜空には届かない


朝顔が夢見るものは
朝日が昇る夜明けが来ること
明るい未来か 
明日への希望か

暑い夏は 晴れの舞台
ありったけの力でつるを伸ばし駆け上る
厚い緑のカーテンも 竿のタワーも

朝顔は朝が好き
朝露に濡れながら
愛に命をかけるけど
明るい間に花を閉じる


朝は愛に目覚め
昼は愛に身を焦がし
夕は愛の余韻に浸り目を閉じる
夜は愛のゆりかごに揺られ
また新しい朝が来て 
希望の中で花を開く


朝顔は朝が好き
朝日に向かって大輪を開く
雨の日も 晴れの日も

朝顔は朝が好き
赤い夕日は見たことがない
あんなに丈を伸ばしても
茜空には届かない




朝顔の「あ」の頭韻でつづった詩。
「紫陽花は雨が好き」という詩を
もじって作り始めましたが、
全然趣きの違う詩になりました。

太陽が照り輝く日中をすぎると、
朝顔は陰りを見せはじめます。
あんなにひろげていた花は
夕方までには閉じてしまいます。
日没の慈愛に満ちたオレンジの光が 
きりりと閉ざされた白い蕾によく映えます。
そして、朝になると
また かわいい花を開くのです。

2連目「あきが来るまで」は
「秋が来るまで」と、
「飽きがくるまで」の
掛詞(かけことば)
「亜紀が車で」ではありません…(笑)




よいい一日 よい夢を

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写真は:朝顔  by saeさん
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京都と関東のとある海沿いの町を舞台にした物語
 雪洗YOU禅物語 
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シャボン玉飛んだ
映り込みの家庭
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小説 ▼△あの人は
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「ひのくに物語」全59話完結!




プロフィール
ほんままゆみ(本名:栗原まゆみ)
物心ついた時には、何かを読んでいました。物語は小学生、詩作は中学生から始めるも、世界平和と結婚の夢の前に、一物書きになる夢は横に置いて、気づけば元文学少女に過ぎない、おばさんになっていました。子の乳離れを期に、書き溜めた小説を編集し始め、その後ブログをはじめました。
ヨーロッパ滞在歴≒ボランティア歴ありの、三男一女の母。

見えない世界、霊界、神様について、人生については、もう一つのブログをどうぞ。
夢を叶えたい人、カウンセリング募集中!(四柱推命鑑定も可。)
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2018年07月21日

37 プロポーズ・シーズン再び(歴史は繰り返す)2 〜引き出しの秘密  (眠り姫と眠り王子‘18) 【三月さくらY-5・1】



小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
1660232薔薇と音譜と.jpg


作曲家、音楽家として絶好調の志道。
その秘密はもちろん…★


 ちょうど、夜勤明けの時間に間に合った。こうして迎えに来るというそんな些細なことが、志道の単純な願いの一つだった。当たり前の、日常のひとこまを共に過ごせることが、喜びだった。
 病院の駐車場にある顔馴染みの銀杏の木は、新しい芽を吹いて志道を迎えた。その樹に手を触れていると、いつか、彼女と会うのも最後だと断腸の思いでその場に立ったことを思い出した。
 どれだけ変わってしまったか、志道は自らを思い返していた。もう捨てることができない大切なものを持ってしまったのだ。以前の自分には戻れないし、戻るつもりもなかった。
 さちが通用口から出てくると、志道は笑顔で手を挙げた。彼女が彼を見てどのような顔をするのかというと、やはりこの上もなく嬉しそうに駆け寄ってきた。
 車で丹野家までは10分も掛からない距離にあった。さちが、うとうとするかしないかで着いてしまう。
「疲れてるでしょうが、聴いてほしいものがあるんですよ」と、志道は得意げに言った。
「えっ、また曲が?」
「出来立てのホヤホヤですよ。やっぱりあなたは僕にとって、特別です。創作のインスピレーションを連れてくるんですよ。あなたにちょっと会っただけで、閃きまくってしまいました」
 志道は、その作ったばかりの曲を、居間でさちに聴かせていた。音楽一家のこと、すぐに家中の者が集まってきた。
「子犬のワルツを思わせるような可愛い曲だよね、ワルツではないけど」と、空が言うと、
「ええ、とっても可愛いわ」と陽子も言った。
「さちさんに真っ先に聴かせるには、それなりの意味があるんだろ?」と、治郎が言った。
「はい、もちろん」と、志道が言うのを、「さちさんは、兄貴の創作の源泉なんだもんね」と、空が更に持ち上げていく。
「ほぉ」と、治郎も嬉しそうだった。
 さちは恥ずかしそうにして「作ったのも弾いたのも志道さんだから」と、言った。
「そうだ。志道はすごいよ」と、治郎が言った。「でも、君がいなければ、治郎も作れなかった。曲というのは不思議でね、その本人が作るというより、何か曲になるイメージなり、何かのきっかけが必要なんだ。インスピレーションというのは、何かから与えられるものだからね。君という刺激がなければ、志道もそうそう曲を作れないはずだ。
 志道一人では、曲も作れないし、それに、幸せになることも出来ないってことさ」
「その通りですよ。皆でさちさんを大切にしてあげてくださいね」と、志道は言うと、家族の一人ひとりを信頼の瞳で見つめた。


 和気藹々とした朝食を囲んだ後、さちはシャワーを浴びて休んだ。
 その間、志道は治郎と居間で話をしていた。最初は音楽の話だったが、治郎はようやく気になっていたことを話し始めた。
「志道、さちさんのことはどうするつもりなんだ?お前の仕事が一段落するまで様子を見ていたが。結婚するつもりなんだろう?」
「父さんはどうなんですか?許してくれるなら…」
「母さんはずっとそのつもりだし、家に寝泊りさせているんだからね。お前の留守中は問題なかったが、ずっとそういうわけにはいかないんじゃないか?父さんもいい娘さんだと思っているよ。しっかりしているし、明るいしね。お前がどれだけ大切に思っているかもわかっている。どうなんだ?」
「結婚は、最初の時点から考えてます。それが自然だと思うんです」

丹波野家でのシーン、
家族が集まってきますが、
麗美はおそらく仕事で不在、という設定です。
未来には台詞を与えていないのですが、
それとも朝寝坊で起きてきてなかったか…。

とうとう「結婚」の二文字が。
好調な志道の道を遮るものは
何もないはずですが…。






ピンクのモーツァルト。


父、治郎から出た「結婚」の言葉。
志道もその気のようです…★


「じゃあ、もうそろそろけじめを付けた方がいいんじゃないか?さちさんの家にも行ってないんだろ?」と、治郎は言った。
「ええ、まだ」と、志道は答えた。
「二人の間では、そういう話はしてないのか?」
「いえ、まだ」
「じゃあ、プロポーズして、両親に挨拶に行ってだな」
「…プロポーズ…挨拶」
「そうだよ」治郎が、自らが妻に求婚した時の話を延々としているのも上の空で聞きながら、志道は二つの言葉を、顔を赤らめながら何度も呟いていた。
 それまでも、意識しないわけではなかったプロポーズだったが、二つペアの単語が来た時、彼の海馬のどこかが反応し始めるようなのだった。
 母がやって来て、「志道も疲れているんだから…」と言ってくれて、ようやく父から解放された志道だったが、シャワーを浴び、休む支度をしている間も、プロポーズ≠ニ挨拶≠ニいう言葉が頭を離れないのだった。
 眠るために二階に行くと、どうしても恋人の顔を見たい思いに勝てず、休んでいる部屋のドアをそっと開けた。しばらく志道は、さちの寝顔を見ながら床に跪いていたが、案の定、ベッドに頭をもたげて眠ってしまった。
 数時間後、熟睡した志道の体をめぐって、二人の女性が格闘を繰り広げていた。男性たちも仕事に行ってしまっていたので、陽子とさちが、なんとかベッドに寝かせるしかなかった。決して華奢ではない、どちらかというと大柄な志道の体を、動かすのは簡単ではなかった。
 その時、志道が寝言を言ったとしたら、あの二言に違いなかった。その言葉を母親や恋人が聞いたかどうかはわからないが、誰もいなくなった部屋で、呟かれていたことは確かだった。


 志道がずっと気にしているにも関わらず、“プロポーズ”と“挨拶”については、なかなか進行しなかった。
 まず、志道が相談した相手が悪かった。
 星矢のことを、志道は年長者として頼りにしていたし、彼に後押ししてもらいたいくらいの思いがあったのだが、彼はその父と同様にプロポーズに時間が掛かるタイプであった。歴史は繰り返すというが、この三家の親子の様子を見ていると、おかしいくらいに、子が親の道を辿って行くようだった。
「僕の母も卒業してすぐに結婚しているんです。星矢兄と葉摘ちゃんは年齢差もあるし、もうそろそろ、話が決まってるんじゃないですか?」
そう志道が何気なく言ったのだが、星矢には全くの逆効果だった。
 これによって、プレッシャーの掛かった星矢は、更にプロポーズに後ろ向きになり…、その状況を父親たちもかぎつけて心配しだしたので、志道はそうならない前ならまだしも、尚更、年長の星矢を差し置いてはできない雰囲気になっていった。
 志道は、机の引き出しに入れてあったケースを取り出し、中の指輪を眺め、溜息をついた。
 さちが「この引き出しには、どんな秘密があるの?」と訊いてきていた。彼は笑って、「今度開けて見せますよ」と、言ってしまったのだった。そしてプロポーズしようと。
「ここには入れておけないですね」と、志道は呟いた。

指輪も準備してあったんですね。
「プロポーズ」と「挨拶」に向けて、
さて、どうなりますか…!

今日登場の星矢とは、
“星の家”のマスターの息子です。
星矢と葉摘の物語は
こちらからどうぞ。
登場人物の確認は家系図で→ [三月さくら 家系図]
 この時から2年の時が流れています



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2018年07月20日

36 プロポーズ・シーズン再び(歴史は繰り返す)1 〜引き出しの秘密  (眠り姫と眠り王子‘18) 【三月さくらY-5・1】



小説 ▼△三月 さくら待つ月
四月 しあわせの始まり△▼
薔薇と音譜と.jpg


新しい章に突入と共に、
志道はさちとの結婚に
突入していきたいところですが…。
さて…★



 第五章 引き出しの秘密



   第一節 プロポーズ・シーズン再び(歴史は繰り返す)




 あの日、さちの涙を拾い集めてから、線のように細かった月は徐々に太り始め、三日月と呼ばれる姿になっていた。
 次の夜勤明けの朝、さちが仕事を終えて駐車場に向かうと、志道の車があった。車を見つけて笑顔で近付いたさちは、出て来た弟の空(そら)を見て、その顔を一瞬で曇らせた。そして、たちまちその目は潤み始めた。
 空が後部座席のドアを開けると、そこには陽子が座っていた。
「こんにちは。驚かせちゃったわね」と陽子が言った。「さぁ乗って」
 さちが挨拶して乗り込むと陽子は言った。「この車を見るだけでそんな反応じゃかなり重症ね」
「母さん、やっぱりいきなり兄貴の車っていうのは、さちさんには酷だよ」と、空。
 陽子は朗らかに言った。「ごめんなさいね。でも、さちさんの気持ちが痛いほどわかってよかったわ。やっぱり空には荷が重いわ。今度から私が迎えに来ますよ」
 二人が驚く中、陽子は既に決めているようだった。「とにかく、さちさんは疲れているから、うちに来て休んで頂くわ。さぁ、車を出して」
 若い頃とは違って、逞しくなったと治郎が言う陽子の姿は、さもありなん、人を動かす強さがあった。それは母となった陽子の愛ゆえの強さなので、人も動かざるを得ないのだった。
 さちは、陽子と話していると、気持ちが落ち着いた。陽子は、自分の娘に接するように、また更に娘よりも細かい配慮を持ってさちに接した。

 さちは、自分の家よりも病院からの距離がかなり近い丹波野家で、特に夜勤明けの時は過ごすことが通常になった。数日分の着替えを持って丹波野家に送ってもらい、日勤や休日の日に自宅に帰るだけになっていた。
 丹波野家にいる時は、留守でいない志道の部屋を使っていた。
 彼の影の残っていそうなその部屋、長年愛用している家具や本や備品一つ一つを見ているだけで、さちは心が満たされてきた。寂しいことは寂しいのだが、彼の一部に触れているような安堵感があった。
 また彼の家族の中にいると、温かい気持ちになり、落ち着いた。
 知らなかった志道の様々なことを、家族の話や、彼の部屋を通して知ることが出来た。時にはその丹野家の空気というのか、その和んだ雰囲気の中にいるだけで嬉しいのだった。
 その中に、彼女が彼の側ですぐ寝付ける理由があり、お互いの魂を掴むようになった根拠があるようだった。
 楽しみながら、さちは思いつくままに彼の物に触れていった。
 ただひとつ、鍵の掛かっている机の引き出しだけは、開けられなかったが。

 そのようにして時は流れた。
 ある朝、居間で陽子と、出勤前の空が話をしていた。先ほどいつものように陽子が夜勤明けのさちを迎えに行って、彼女は志道のベッドで眠っていた。
「母さんの判断が正しかったよね。あの時のさちさんは、見ていられないくらい辛そうだったけど、兄貴に会わなくても、見違えるほど元気になったね」
「実は本当にあの娘(こ)は限界だったのよ。睡眠薬を飲まなければ眠れなくなっていたの。体も神経も疲れ切って。思い切ってうちに連れてきて正解だったわ」
「そうだったんだ。俺では本当、何もしてあげられなかった。母さんに話してよかったよ」
「あの時、あなたには荷が重いと言ったけど、今ならもう、あなただけで送迎してあげても大丈夫だと思うわ。あの時はね、若い男性のあなたではね、いくら兄弟でも兄の恋人に対して、代役できないこともあるわ。かえって母さんでよかったのよ」
「そうだね」
「それに志道もさちさんも、滅多に会えない生活にちょっと慣れてきたのね、きっと」
「うん、楽しそうに連絡取り合ってるよね」
 その時、玄関のチャイムが鳴り、志道が現れた。
「どうしたの?」
「レコーディングで缶詰状態じゃなかったの?」
 母と弟に言われる中、志道は言った。「ラストスパートで、もうエネルギー切れなので、ちょっと時間をもらいました。仮眠させてくれって。ホテルで寝ようとも思ったんですが、帰って来ちゃいました。さちさんは?」
「休んでるわよ。夜勤明けだから」
「起こさないから、そっと顔を見させてください。僕の部屋ですか?」
 志道は愛おしげに、眠っているさちを見下ろした。

ピアニストとしての活動も
順調そうな志道。
彼の道はまっすぐに、
彼の思うままに続いているようですが…。
父親たちのプロポーズも彷彿させる本章、
どうぞお楽しみください







313005朱色のバラ.jpg


大切に思う人が出来たとき、
人はどんな風に変わるのか。
志道を見て下さい★


 志道は跪いて更に近くで顔を見たが、起こすのを懼(おそ)れて、結局その手を彼女に触れなかった。
 声にならないほど微かに「さちさん」と呼んで微笑んだが、間もなく部屋を後にした。
 志道は母たちに言った。「休みますから、昼食はいいです。さちさんは何時頃起きるんですか?」
「今日また夜勤だから。三時過ぎに起きると思うわ」
「じゃあ、その頃起こしてください」
 そこへ眠っていたはずのさちが姿を現した。
 志道は、さちを見ると、すぐに駆け寄って抱擁した。
「また、兄貴は大胆だよな。俺たちが目に入らないのか」と、空がぼやいた。陽子は二人を微笑んで見ていた。
 さちの目は少し潤んでいた。
「夢の中であなたの声が聞こえたような気がしたの」
「夢じゃないですよ」
 さちは目を潤ませながらも、笑顔で志道をみつめた。そして、陽子と空を気にして言った。
「どうして?まだレコーディングが終わるわけないわよね」
「うん。まだですよ。今晩一晩で出来るか、というところまで来ましたがね」と、志道は言った。
「すごい。急ピッチだね」と、空が言った。
「ええ。調子がいいんです。早く終わって家に帰って来たい、って思いがありますし」
「さちさんに会えるもんね」
 志道は笑顔でそれは否定せずに、更に言った。「さちさんは、僕の創作の源泉ですから。でも、家に帰って来たかったのは、皆に会いたかったからですよ。母さんの食事も恋しいし、家族一人一人が、僕にはなくてはならないんですよ。家を離れてわかったんですが」
 そこまで話して、志道はさちのことを気にして言った。「明けでしょう。もう休まなければ。起こすつもりはなかったんです」
「いいの、私は休まなくても。せっかく帰ってきたんだから」と、さちは言った。
「僕も休みたいんですよ。仮眠のために帰ってきたんです。一緒に夕食を軽くして、仕事も僕が送りますよ。だから…」
 さちは頷いた。
「空、ベッド借りますよ」
 志道は、さちを部屋に連れて行った。抱擁とキスの後、さちは再びベッドに入った。つい、お喋りが始まってしまう二人だったが、ようやく志道が手を握って、彼女は落ち着いて寝付き、志道は空の部屋に行ってベッドに入り、微笑みを浮かべたその目はすぐに閉じ、寝入ってしまった。
 二人は三時になる前に起きて、台所で陽子と共に、ずっと楽しげにお喋りしながら食事を整えた。志道はさちを笑わせることにピアノ以上の才能を発揮して、食事の時間も、時折さちが鈴の鳴るような声で笑い転げていた。
 志道は自分も笑いながら、笑っているさちの姿、声、そして曇りのないその姿を胸に刻むように取り込んだ。
 そして、夜勤に入るさちを車で送り、志道はレコーディングのスタジオに入ったが、その胸にはほっこりと彼女の笑顔が残り、口許にはその残りかすのせいで、ずっと微笑が浮かんでいた。
 当初予定されていたレコーディングの曲を全部録り終えるという時、志道は続けてまた弾き始めた。
 まったく新しい曲だった。志道には、ずっとさちの笑い声と、その姿が浮かび続けていた。
「即興の新曲かな」「すごいね」スタッフが言い合っていた。
 終わると「今何時ですか?」と、志道は訊いた。
 打ち上げに夕方飲みに行こうというスタッフの誘いを丁重に断り、心を占めてしまっているその人の許にまっすぐ向かった。

志道という人は…。
愛する人しか目に入らないかのようです。
登場人物の確認は家系図で→ [三月さくら 家系図]
 この時から2年の時が流れています




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